戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第47話

黒いガングニールを纏うと同時に『フィーネ』の名乗った、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。その振る舞いに、ツヴァイウィングの二人は驚愕していた。

 

『我ら武装組織『フィーネ』は各国政府に対して要求する』

 

マリアは、その場に存在する人間の困惑を他所に、中継を通して全世界へと語り掛けた。

 

『そうだな…差し当っては、国土の割譲を求めようか?』

 

「馬鹿な…」

 

「…一体何の冗談だ?」

 

あまりに現実味の無い要求に、翼と奏が絶句する。

 

『もしも二十四時間以内にこちらの要求が果たされない場合は、各国の首都機能がノイズによって不全となるだろう』

 

「どこまでが本気なのか…」

 

マリアの宣言に、翼は思わずそう呟いた。

 

「私が王道を敷き、私達が住まうための楽土だ。素晴らしいとは思わないか?」

 

 

 

(…さしずめ、『アイドル大統領』と言ったところか)

 

マリアの言葉を聞いてそう考えたナナシは、口角を上げて悪い笑みを浮かべるが、すぐに気を引き締めてマリアの行動を観察する。

 

(……?)

 

だが、マリアを観察するナナシは、途中で『あること』に気が付き、頭に疑問符を浮かべた。

 

 

 

「何を意図しての騙りか知らぬが…」

 

「私が騙りだと?」

 

「そうだ!ガングニールのシンフォギアは、貴様のような輩に纏えるものではないと覚えろ!」

 

そう言って、翼は聖詠を奏で始める。

 

Imyuteus ameno…っ!?」

 

「っ!?」

 

…だが、途中で聖詠を中断し、翼と奏が驚きを露わにする。その様子を見たマリアは、二人に通信が入ったのだと認識した。

 

「確かめたらどう?私の言った事が騙りなのかどうか」

 

マリアが翼を挑発するようにそう言うが、翼はマリアを真っ直ぐ見つめて動かない。

 

「なら…」

 

マリアが次に取った行動は、翼達には理解できないものだった。

 

『会場のオーディエンス諸君を開放する!ノイズに手出しはさせない…速やかにお引き取り願おうか!』

 

その発言に、翼と奏、そして遠くから見ていたナナシが面食らう。

 

「…なあ、あんたは一体何がしたいんだ?」

 

奏の問いに、マリアは不敵な笑みを返すだけだった。

 

 

 

マリアの通信機から、女性の声が聞こえてきた。

 

『何が狙いですか?こちらの優位を放棄するなど、筋書には無かったはずです。説明してもらえますか?』

 

マリアを責める厳しい口調の声に、それでもマリアは凛として答える。

 

「このステージの主役は私。人質なんて、私の趣味じゃないわ」

 

『血に汚れる事を恐れないで!』

 

女性は強い口調で叫ぶ。そして両者は数秒沈黙した後…女性は短くため息を吐いた。

 

『ふぅ…調と切歌を向かわせています。作戦目的を履き違えない範囲でおやりなさい』

 

「了解、マム…ありがとう」

 

マリアがそう言うと、マムと呼ばれた女性は通信を切った。

 

 

 

観客達の避難は、マリアの宣言通り滞りなく行われ、会場は無人の客席と、佇むノイズの群れだけとなった。

 

「…帰る所があるというのは、羨ましいものだな」

 

その光景を前に、マリアはポツリと呟いた。

 

「マリア、貴様は一体…」

 

「…それで?あなたは避難しないのかしら?」

 

翼の問いには答えずに、マリアは翼の背後に佇む奏に声を掛けた。

 

「相棒だけ戦場に残して、自分は安全な場所で眺めるだけ…そんなのはいい加減飽き飽きでね。何もできないにしても、偶には傍にいるくらいはしてやりたいのさ。翼はこう見えて、寂しがり屋だからね」

 

「奏…」

 

「あたしと翼は、両翼揃ってのツヴァイウィングだ…ステージの上くらい、隣に居させてくれ」

 

「…分かった。なら、奏のことは私が守る。防人として、奏の相棒として」

 

そう言って、翼は奏から視線を外し、マリアの方を向き直る。二人のやり取りを見たマリアは、これ以上奏に何かを言うのをやめることにした。

 

「さて、観客は皆退去した。もう被害者が出ることは無い。それでも私と戦えないと言うのであれば、それはあなたの保身のため」

 

「……」

 

「あなたは、その程度の覚悟しかできていないのかしら?」

 

無言で身構える翼にノイズが迫り、マリアが翼に攻撃を仕掛けようとした…その時

 

 

ドゴンッ!!

 

 

…上空から降ってきた人影が、ノイズを下敷きにして塵へと変える。それを為した人物…ナナシは、ゆっくりと立ち上がってマリアを見た。

 

マリアは、突然のナナシの乱入に慌てることなく、ナナシをジッと見つめると、小さな声でそっと呟いた。

 

「…あれが、日本に…特異災害対策機動部二課に潜んでいると言われている…『悪夢』」

 

 

 

 

 

聖遺物を研究する各国の機関で、密かに流れている噂話があった。

 

日本には『悪夢』が潜んでいる、と…

 

櫻井理論が日本政府から開示される以前から、秘匿されたシンフォギアについての情報を探る動きはあった。そして、中には情報獲得のために過激な思想を持った集団が行動を起こそうとする場合もあったが…日本に向かったそういった集団は、その悉くが精神に異常を発生させ、母国へ戻ることになるそうだ。そういった集団の共通点は、全員が眠ることを恐れて、譫言のように呟くのだ。「悪夢を見た」と…

 

今回の行動を起こす上で、武装組織『フィーネ』は装者の情報を調べてはいたが…『悪夢』に関しては、「詳細が不明な聖遺物に適合したシンフォギア装者」という情報以外に、何一つとして正確な情報が見つけられなかった。僅かに見つかった情報は、噂話レベルのもの。

 

曰く、目撃者はいるが、誰もその容姿について思い出せない。

曰く、他のシンフォギア装者と違い、歌声が聴こえない。

曰く、アームドギアを使わず、近接戦のみで戦う。

曰く、その言葉は心を乱し、苦しむ人間を見て楽しんでいる。

曰く、邪な考えで二課の人間に近づくと、悪夢に誘われる。

 

その噂話から、「精神に作用する聖遺物を使用している」と推測され、『悪夢』が活動し始めたと思われる二年前から現在までの間にアームドギアを使わないで戦闘を行うことから、戦闘能力自体はそこまで高くないと判断され、対策もシンプルな方法が採用されていた。

 

 

 

 

 

ナナシの登場と同時に、会場に更に多数のノイズが召喚される。観客席を埋め尽くす勢いで出現したノイズが、ナナシに殺到していった。

 

(『悪夢』が接近戦しか行わないのは、比較的確度が高い情報だったはず…『悪夢』がノイズを処理しきる前に、私が風鳴翼を…)

 

そう考え、マリアが翼の方に視線を向ける。だが…

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

「何!?」

 

何の迷いもなく聖詠を口にする翼に、思わずマリアは会場のモニターを確認した。そこには、未だに映像が映し出されている。

 

「あなたは、歌を捨てるつもりなの!?…それ程の覚悟を…」

 

目の前でシンフォギアを展開する翼を見て、マリアが動揺をしていると…

 

『ッ!?まさか!!?一体いつから…マリア、聞きなさい!』

 

「マム!?どういうこと!?」

 

『あのモニターの映像はダミーです!現在、世界への中継は遮断されています!』

 

「何ですって!?」

 

マリアが再度モニターを見る。そこには、世界に向けて宣言をする自分と、ノイズが出現する場面が映し出されているが…現在の、翼がシンフォギアを纏う姿を映す映像が一つも無かった。

 

「戦場で敵から目を離すとは、いい度胸だ!」

 

「!?くっ!」

 

マリアがモニターに気を取られている間に、シンフォギアを展開し終えた翼がマリアに接近していた。マリアは翼の剣の一撃を、ガングニールのマントを使って弾く。薄いマントであるはずなのに、硬質のものがぶつかり合うような高い音が響く。

 

「このガングニールは、本物!?」

 

「ようやくお墨を付けてもらった。そう、これが私のガングニール!何物をも貫き通す、無双の一振り!」

 

内心の動揺を押さえ込み、マリアは翼と対峙する。そうしている間にも、マリアの通信機からは声が聞こえ続ける。

 

『マリア、お聞きなさい。フォニックゲインは、現在八十パーセントを越えようとしています。残り二割弱を集めるために戦闘を継続しつつ、調と切歌が到着したら一気に攻め落としなさい。想定外の事態が起こっていますが、我々が退くことは許されません』

 

「残り二割…了解よ、マム。必ず成し遂げてみせる」

 

そう言って、マリアは翼に攻撃をしつつ時間稼ぎに徹する。

 

(残りのフォニックゲインが集まるまで、悟られないように戦闘を継続しないと…だが、時間を稼いでいる間に、『悪夢』がノイズを処理してしまったら…)

 

そう考えて、翼を警戒しつつ、マリアがナナシの方に視線を向けると…

 

 

 

ナナシに殺到していたノイズの、大部分が一瞬で塵になった。

 

 

 

「なっ!?」

 

思わず驚愕するマリア。そこに隙が生まれているが、翼もその光景に動揺を見せているため、二人の戦闘は一瞬止まることになった。

 

先程までノイズに囲まれて姿が見えなかったナナシの手には、何かが握られていた。それは…一振りの刀だった。片刃の直刀に近い形状の刀、おかしなところは、柄も鍔も無く、茎を直接握って使っていることと…何より、長さがおかしい。幅や形状は普通の刀と変わらないが、その長さは、五メートルはあるのではないだろうか?ナナシを中心に円形にノイズが消滅していることから、あの刀を横薙ぎに振るって一回転したということだろう。

 

(あれが『悪夢』のアームドギア!?今まで使用しなかったのは、長さ故に用途が限られるからか!精神を乱す妖刀の類?でも、あれなら対処は容易なはず!)

 

マリアがそう考えるのとほぼ同時に、今度は飛行型ノイズの群れが出現する。

 

(そう、上空から様々な角度で攻撃を仕掛けて来られたら、あのアームドギアでは対処できない!)

 

マリアの予想通り、ナナシは刀を使うことをやめて“収納”した後…跳躍して一体の飛行型ノイズに襲い掛かり、塵へと変えた。

 

「愚かな!無防備な空中では、攻撃を躱すことは叶わない!」

 

マリアの叫びと同時に、飛行型ノイズが一斉にナナシに攻撃を仕掛ける。空中で身動きが取れないナナシに、ノイズの攻撃が迫り…

 

 

 

攻撃が当たる寸前、ナナシの体が真上に(・・・)移動した。

 

 

 

「「「は?」」」

 

それを見たマリア、翼、奏の三人は、思わずそんな声を出してしまう。空中で跳躍(・・)したナナシは、まるで見えない足場でも蹴るように縦横無尽に空中を駆け回り、瞬く間に飛行型ノイズを殲滅してしまった。

 

その光景に、三人が呆けていると…地上に残ったノイズが、奏の方に接近し始めた。マリアはそれにいち早く気が付き、内心で舌打ちをする。

 

(勝手なことを!!)

 

マリアは未だにそのことに気が付かない翼に声を掛ける。それは動揺を誘うためか、あるいは…

 

「呆けていて良いの?あなたの相棒が、このままだと炭へと変わるわよ?」

 

「っ!?」

 

マリアの言葉を聞き、翼は背後を振り返ろうとして…途中でマリアに向き直り、一気に接近して攻撃を仕掛けた。

 

「ッ!?あなたは、相棒を見捨てるつもりなの!?」

 

攻撃を防ぎつつ、マリアは翼に向けて叫ぶ。翼はそんなマリアに対して、笑みを浮かべて答えた。

 

「見捨てる?否!信じたのだ!」

 

「信じる!?一体何を!!?」

 

「仲間をだ!!」

 

奏とノイズの距離が狭まっていく。奏は迫り来るノイズを眺めながら…逃げることなく、笑みを浮かべて堂々と立っていた。そしてノイズが奏に接触しようと目前まで迫り…

 

 

 

その歩みが、突如として『何か』に阻まれる。

 

 

 

「なっ!?あれは、一体!?」

 

奏の周囲には、半透明の壁のようなものが出現していた。その壁をノイズは透過することができないようで、攻撃を仕掛けるが壁には罅一つ入らない。

 

奏がノイズに囲まれて数秒後、物凄い勢いで駆けつけたナナシが奏の周囲のノイズを全滅させる。その後、ナナシが奏を責めるように無言で睨むが、奏は苦笑しながらナナシを宥めるように手を振った。

 

「くっ、想定外に次ぐ想定外…流石は聖遺物に関する技術で最先端を行く日本の『特機部二(とっきぶつ)』と言ったところか…」

 

「…アレと一緒くたに評価されるというのは、些か腑に落ちないのだがな」

 

そう言いながら、マリアと翼は戦闘を続ける。その間に、再度ノイズが出現してナナシと奏の周囲を取り囲み始める。飛行型と歩行型、あらゆる方向からノイズが迫ってくる。

 

(想定外の事態に取り乱したが、当初の予定通り、数で押すことで『悪夢』を押さえられれば…)

 

マリアがそう考えていると、ナナシは“収納”から何かを取り出す。それは先程の長い刀ではなく、三十センチ程の両刃の刃物だった。特徴としては、先端から茎にかけて、楕円形の穴が中心に空いていた。

 

 

 

刃物を手にしたナナシは…それを、自身の心臓に突き刺した。

 

 

 

「「「何をっ!!?」」」

 

突然のナナシの行動に、三人は本日何度目か分からない驚愕を声に出す。ナナシの胸からは、刃物に空けられた穴を通して夥しい量の血が溢れ出ていた。

 

(何故そこで自決!!?あちらにとって状況は確かに良いとは言えないが、悲観して死を選ぶようなことは無かったはずだ!!?)

 

度重なる驚愕と混乱に、マリアの思考はパンク寸前だった。目的のため、何とか思考停止せずに行動をしているが、もはやマリアには、この先の展開を読み取ることはできなかった。

だが、そんなマリアの眼前に、無慈悲にも更なる不可解な光景が広がることになる。

 

ナナシの心臓から溢れ出した血液は、勢いを失うことなく吹き出し続け、ステージの床に血だまりを作り出したかと思うと…

 

 

 

突如として、ナナシの血液が蠢き始めた。

 

 

 

血液は重力に逆らって宙に浮かび始め、ナナシの前の空中に集まり球体を形作る。先程まで無秩序に噴き出していた心臓からの出血は、まるで見えない管があるかのようにその球体へと延びてナナシの心臓と血液の球体を繋いでいた。

 

そうして出来上がった血液の球体は…突如として、ノイズに向かって無数に分かれて広がっていった。

 

針の様に鋭く尖った血液がノイズを貫く。

 

鞭の様にしなった血液がノイズを切り裂く。

 

メイスの様に丸まった血液がノイズを叩き潰す。

 

そうして無数に召喚されたノイズは、瞬く間に全滅していった。

 

「え?……え?」

 

まさに『悪夢』と言ってもいいその光景に、マリアの思考は完全に停止し言葉を失っていた。マリアにとって救いだったのは、隙だらけであるマリアに対して、マリア程ではないが衝撃を受けている翼が攻撃を仕掛けなかったことだ。

 

ノイズを全滅させたナナシは、心臓から刃物を引き抜いた後、宙に浮かぶ血液の球体を“収納”に仕舞い、未だ呆然とする翼に話しかけた。

 

「おい、SAKIMORI。敵から目を離して何をぼうっとしている?常在戦場はどうした常在戦場は?」

 

「…貴様には、後でゆっくり話を聞かせてもらう。ゆっくりとな…」

 

ナナシの言葉に、ようやく思考を復活させた翼が動き始める。そんな翼を前にしても、未だに動きを止めたままのマリアに対して、翼は少しだけ同情の視線を向けていた。

 

「なら、早く話をするためにさっさと終わらせよう」

 

ナナシはそう言って、一気にマリアに肉薄した。流石にマリアも危機感を覚えて、ナナシにマントを螺旋状に集束させた攻撃を放ち、ナナシはその攻撃を拳の一撃で迎え撃つ。二人の攻撃が接触し拮抗した、その時…

 

 

 

ナナシの右腕の、肘から先が弾けて消し飛んだ。

 

 

 

「「「「!!?」」」」

 

予想外の事態に、マリアが、翼が、奏が、そしてナナシが驚愕する。ナナシは瞬時に翼の元まで下がり、残った左腕を広げて翼を庇いつつマリアの様子を観察した。マリアは自分の攻撃の結果で起こったことに驚き呆然としている。

 

「ナナシ、何が起こった!?右腕は再生させないのか!!?」

 

「…分からない。腕の再生が始まらない。“高速再生”も、”ダメージの無効化”も…」

 

「何!?」

 

翼が驚いてナナシの顔を見る。ナナシの顔は、これまでになく険しい表情を浮かべていた。

 

「…ナナシ、お前は奏の傍で待機していろ。マリアの相手は私がする」

 

「だが…」

 

「先程の現象は、マリアにとっても予想外のようだ。私との先程までの戦闘では、特出した問題は発生しなかった。ならば、私がマリアを降してしまえば問題は終息する。考えるのは後にすればいい…信じろ。お前も奏も、私が守ってみせる」

 

「…先走って絶唱歌うようなら無理やり参戦するからな…よろしくお願いします」

 

そう言って、ナナシは奏の元まで下がった。それを確認し、翼はマリアとの交戦を開始する。

 

「ナナシ!!その右腕は…」

 

奏は心配そうにナナシに声を掛ける。ナナシは、無くなった右腕に目を向けると…残った二の腕部分を左手で掴んで、引きちぎった。すると、ナナシの姿が一瞬ブレた後、次の瞬間には、ナナシの右腕は元通りに復元された。

 

「ッ!?一体何なのよ、あの『悪夢』は!!?」

 

「私を相手に気を取られるとは!」

 

ナナシの右腕が元に戻るのを目撃したマリアが悲鳴に近い叫び声を上げる。その隙に翼は二本の剣を取り出して、その柄同士を連結させる。

 

風輪火斬

 

連結させた剣の刃に炎を纏わせ、掌で高速で回転させる。炎を纏った翼は一気にマリアに接近し、通り過ぎざまに渾身の一撃を叩き込む。

 

「く、ぐうっ!?」

 

マリアの顔に苦悶の表情が浮かぶ。翼は振り返り、止めの一撃を与えるために叫びながらマリアに突撃する。

 

 

 

「話はベッドで聞かせてもらう!!」

 

 

 

…翼の宣言を聞いたナナシが、とても、とても悪い笑顔を浮かべるのを、奏は見逃さなかった。

 

翼の攻撃がマリアに直撃する…その直前、翼に向かって背後から無数の円盤が飛んできた。

 

α式 百輪廻

 

翼は立ち止まり振り返って円盤の攻撃を防ぐ。視線の先には、歌を響かせながら無数の円盤を放出し続ける薄紅色と黒の鎧を…シンフォギアを纏った少女がいた。その少女の背後から、今度は緑と黒のシンフォギアを纏った少女が飛び出して、手にした鎌を構える。

 

「行くデス!」

 

切・呪リeッTぉ

 

少女の持つ鎌の刃が三つに分かれ、少女が鎌を振り下ろすと刃の二つが鎌から離れて翼に向けて飛来する。円盤を防ぎ続ける翼は、その攻撃を避けられずに直撃して地面に倒れる。

 

「がっ!?」

 

「翼!?」

 

ナナシが翼の名を叫ぶ。翼が攻撃を受けたことにナナシは動揺していた。

 

「危機一髪」

 

「まさに間一髪だったデスよ!」

 

マリアの近くまで移動してきた二人が、倒れた翼を見下ろしながらそう言った。

 

「装者が三人!?」

 

マリア以外の装者の存在に、翼が動揺する。

 

「調と切歌に救われなくても…と言いたいところだけど、正直なところ助かったわ。あまりにも、想定外が重なり過ぎたからね」

 

そう言って、マリアはナナシの方を一瞬睨んだ後、翼の方に視線を向けた。

 

「形勢逆転ね?」

 

「くっ!」

 

余裕を取り戻したマリアが翼にそう宣言し、翼が痛みに耐えながらゆっくりと起き上がる。

 

「この状況で、まだ戦おうとするのね?」

 

「当然だ!防人である私が、守るものの前で剣を下げることなどあるはずが無い!!」

 

「…そう、ならばせめてもの情けで、一気に決めさせてもらう!」

 

そう言って、マリア達三人が一斉に翼に襲い掛かろうとする。その光景を、ナナシがジッと見つめていた。

 

 

 

 

 

(…想定外の事態が発生。作戦コード“E”…“エマージェンシー”の遂行…よろしくお願いします!)

 




原作で二割だったフォニックゲインが八割なのは、奏さんが存命だから。MAXまで貯まらなかったのは、例の聖遺物が伝承の通り大喰らいなのと…言い方が悪いですが、マリアさんが邪魔をしたためです。三人で一緒に歌うつもりだったツヴァイウィングと、目的のために一人で歌っていたマリアさんの心境が原因ですね。
主人公の腕が吹き飛んだ理由は、察しの良いシンフォギアファンの皆さんなら分かると思います。
えっ?それよりも説明すべき事がいっぱいある?…申し訳ありません。説明は次回となります。まあ、何となくは分かると思いますが…
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