戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第50話

ナナシは了子に協力を約束してからは、了子から色々話を聞いていた。

その中でも、遺跡の捜索隊…奏の家族を襲撃した理由については、真っ先に確認していた。そこから、遺跡に安置されていた聖遺物『神獣鏡』の存在と、それを米国の聖遺物研究所『F.I.S.』に持ち込んだこと、その流れで月を崩壊させた後の計画について聞いていたため、レセプターチルドレンの存在はルナアタックの後、早々に二課の知る所となった。

 

弦十郎達は、レセプターチルドレンを保護するために行動し始めたが、事の大きさ故に、流石に早急に動き出すことはできなかった。斯波田事務次官を始めとした国の役人と根回しをしつつ、生存を秘匿している了子の証言以外の証拠集めをしながら計画を立てていた。

 

そんな中、ナナシは仕事漬けになっている了子を『QUEENS of MUSIC』に誘っていた。生存を秘匿していると言っても“認識阻害”を使えば外出することはできると考え、ナナシにとってこれ以上ない気晴らしとして提案したのだが、了子はそれを一蹴し…その際、ナナシの見せてきた広告の写真に、見覚えのある人物を見つけた。

 

そして、それとほぼ同時期に決まった、ソロモンの杖の米国連邦聖遺物研究機関への搬送計画…確証は無いが、ナナシはこれらが無関係だとは思えなかった。

 

『あんたももう少し、あたし達を頼ってくれよ』

 

『もう少し、俺達を頼ってくれてもいいんだがな』

 

…以前、奏や弦十郎に言われた言葉を思い出したナナシは、自分の“妄想”を弦十郎達に伝えた。ただでさえ忙しい大人達に負担をかけるのは申し訳なかったが、大人達はナナシの言葉を無碍にはしなかった。

 

まず、ソロモンの杖の搬送計画は中止できない。この聖遺物を日本が独占し続けるリスクは大き過ぎる。そのため、研究機関への搬送は予定通り行うこととなった。

 

当初、ソロモンの杖の搬送計画は、響とクリス、ナナシの三名で確実に遂行しつつ、『QUEENS of MUSIC』の会場は二課の面々が不測の事態に備える計画であったが…ナナシが能力開発の末に“血晶”を作り出したことで計画を変更。ナナシは会場に待機し、限られた時間で量産した“血晶”を身に着けた二課の職員を会場の各所に配置することで、会場全体を観察するナナシと二課の職員達で、観客の安全を確保することになった。

 

危険と思われる搬送計画に同行できないことに最初は抵抗があったナナシだが、“妄想”の裏付けができない間は装者達に詳細を伏せていた二課の面々がそれを利用して、響とクリスを「ナナシにツヴァイウィングの近くにいて欲しい」と言う限りなく本心に近い言葉で説得。「お任せください兄弟子!」「あたし達がそんなに信用できないか?」と言う二人の言葉に、ナナシは搬送作戦に参加する全ての職員に“血晶”を持たせることを条件に不承不承ながら了承した。

 

 

 

 

 

「つまり、“妄想”で終われば関係者全員に俺がDOGEZAして回れば良かった超絶警戒態勢の中にお前達は飛び込んできた、という訳だ」

 

ナナシの要所要所を端折った説明を聞き終えたマリアは、頭を抱えて机に突っ伏していた。自分達の計画が、決行前から万全の備えをされていたと知って、途轍もない虚無感に襲われたのだ。そんなマリアを、調と切歌は心配そうに見ていた。

 

「…兄弟子、わたし達に隠し事が多くないですか?」

 

「俺の“妄想”で終わって欲しかったんだよ。何も気にせず奏と翼に歌って欲しくて黙っていた。それなのに響とクリスだけに伝えるのもどうかな?と思って内緒にしていた。お前ら二人共隠し事できなさそうだし」

 

「そ、そそそ、そんなことありませんよ!?」

 

「あたしとこのバカが同レベルだって言いたいのか!?」

 

「Exactly!!」

 

「ぶっ飛ばす!!」

 

「二人共酷い!!」

 

「…つまり、あたし達は心配事があるくらいで歌えなくなると思ってたと?」

 

「随分と、舐められたものだな…」

 

「『良い』よりも『より良い』を選んだだけだ。俺が歌のことで妥協する訳無いだろう!!あと、色々抱え込んだ挙句に絶唱歌った奴に言われたくないぞSAKIMORI」

 

「くっ!?まだ言うか貴様!!」

 

「十年経とうが二十年経とうが言い続けてやる!二度と歌わないように一生傍で念押ししてやる!!」

 

「なあっ!!?」

 

「ぷっ、くくっ、良かったな、翼?一生傍に居てくれるって」

 

「か、からかうな、奏!」

 

そんなマリア達の前で、ナナシ達はそんなことを言いながら騒いでいた。どんどん収拾がつかなくなっていく室内の空気を変えるため、フィーネの姿から戻った了子がパンパンと手を叩いて話し出す。

 

「ハイハイ、痴話喧嘩はお家でやってね♪ナナシちゃんのお陰でソロモンの杖を搬送中の人的被害はゼロ。研究機関への引き渡しも無事完了のサインを貰えたわ。ただ、まさか引き渡し直後に奪われるとは思わなかったから、ソロモンの杖の所在は今のところ不明ね」

 

了子の言葉を聞いて、クリスの顔が一瞬曇る。了子はそれに気づいたが、とりあえず話を進める。

 

「一番の懸念事項は、ステージの観客達の安全確保だったんだけど…どういう訳かあっさり解決しちゃったから、ナナシちゃんが大暴れできたって訳。一応、避難後の観客達が襲撃される可能性を考えて、観客に紛れた職員達と、戻ってきた響ちゃん達に警戒して貰ってたんだけど、杞憂だったみたいね?」

 

了子の言葉に、突っ伏したマリアに見えない何かが突き刺さった気がした。心なしかプルプルと体が震えている気がする。

 

「そこで、昨日の内に俺達で考察した君達の目的は、自分達が騒ぎを起こすことでレセプターチルドレンの存在を公にして、我々…と言うより、日本政府や他国に保護してもらうことだと考えた。だが、それなら君達が口を閉ざす理由が分からない」

 

了子から説明を引き継いで、弦十郎がそう告げる。マリアは下に向けていた顔を僅かに上げたが、口を開くことは無かった。

 

「理由を教えて頂けませんか?それさえ分かれば、今回の件を切っ掛けにレセプターチルドレンの保護に動き出すことができます。あなた達のことも、決して悪いようにはしません」

 

続けて緒川がマリア達を説得する。マリアの目は、何かに迷うように揺れ動いているが、それでも口を開けないようだった。

 

「…正直な話、お前が予定に無い動きをした段階で、各国への中継を切ることはできた。機材のトラブルということにしてな。だけど、敢えて俺達はそれをしなかった。理由はさっき慎次が言った通りだ…卑怯な言い方になるけど、このまま手を拱いて俺達が動き出さなかったら、レセプターチルドレンの存在が公になることを恐れた米国が証拠隠滅に動き出すかもしれない」

 

「「「ッ!!?」」」

 

ナナシの言葉に、マリア達の表情が変わる。マリアは狼狽え、切歌は青ざめ、調はナナシを睨みつける。

 

「別に米国に確認した訳じゃない。全部俺の“妄想”だ…それでも、この“妄想”を否定できるだけの根拠が、お前達にはあるか?」

 

ナナシの問いに、三人は答えなかった。部屋の中を、沈黙が支配する。

 

「あ、あの!」

 

そんな沈黙を破ったのは…切歌だった。

 

「切歌!」

 

「切ちゃん!」

 

マリアと調が声を上げる。それにビクリと震える切歌だが、それでも切歌は言葉を続けた。

 

「本当に…そこの了子さんは本物で、フィーネの魂はまだ、了子さんの中に宿っているんデスか!?」

 

「…先程こうして見せたはずだ。恨み言でもぶつけたいなら、好きにしろ」

 

そう言いながら、再びフィーネの姿を現す了子。そんな了子を見て、切歌はさらに問いかける。

 

「なら、マリアは…マリアには、フィーネの魂は宿ってないんデスよね!?マリアが消えちゃうことはないんデスよね!?」

 

「…マリア、どういうこと?」

 

「……」

 

調の問いかけに、マリアは沈黙で応える。

 

「…?話が見えないな。了子、複数の体に了子の…フィーネの意識が宿ることがあるのか?これから先、第二第三のフィーネが現れる可能性があるのか?」

 

「…フィーネとして再誕を果たすのは、同じ時代に一人だけだ。私がここにいる以上、別の体に私の意識が宿ることは無い」

 

「だ、そうだ。心配しなくても、了子が生きている限り、そこのアイドル大統領がフィーネになる可能性は無い」

 

「!?な、何よそれ!?アイドル大統領って誰のこと!?」

 

「世界に対してあれだけ堂々と国土の割譲を要求していたじゃないか?お前が王道を敷いて人々を導くんだろ?よっ!アイドル大統領!!」

 

そう言って、ナナシは“投影”で過去の映像を流し始める。

 

『私は…私達は『フィーネ』…『終焉(オワリ)』の名を持つものだ!!』

 

『我ら武装組織『フィーネ』は各国政府に対して要求する』

 

『そうだな…差し当っては、国土の割譲を求めようか?』

 

『私が王道を敷き、私達が住まうための楽土だ。素晴らしいとは思わないか?』

 

次々と表示される過去の映像に、マリアの顔はみるみる赤く染まっていく。

 

「ほらほら、これだけ堂々と宣言するからそこの切歌も勘違いしたんじゃないのか?」

 

『私は…私達は『フィーネ』…『終焉(オワリ)』の名を持つものだ!!』

 

「全世界に向けてこんなセリフを言うお前を、アイドル大統領と呼ばずに何と呼べばいい?」

 

『そうだな…差し当っては、国土の割譲を求めようか?』

 

そんなマリアに、ナナシは笑いながら追い打ちを掛けていく。

 

「噂通りではないか…」

 

「落ち込んでたのが嘘みてえだな。新しい玩具を見つけたガキみてえだ…」

 

その様子に、普段被害を受けている二人が呟く。

 

「良かった…良かったデス…マリアが消えなくて…」

 

「…うん」

 

切歌はフィーネが生きていることを理解して、涙を流し始めた。調も、瞳を潤ませながら切歌の言葉に頷いている。

 

「調…切歌…」

 

その様子を見ていたマリアは、二人の名前を呟いた後…ナナシ達に対して、問いかけてきた。

 

「…どうするつもりなの?」

 

「ん?」

 

「…悪いようにはしないって…あんなことを仕出かした私達を、どうにかできるの?」

 

「とりあえず今考えているのは…過去にフィーネと米国の聖遺物研究機関が繋がっていることに気づいた俺達が、そこで囚われているお前達装者に秘密裏に接触して協力者になるよう説得、スパイとして活動してもらっていた。だけどフィーネが計画を進めた影響で、長い間連絡が取れなかったため、お前達が独自に計画を立てて自分達の存在を公にするために今回の騒動を起こしたってことにして、後はこっちで二課所属の装者としてお前達を保護して話を聞いた後、色々独自に動いたことの責任を肩代わりするってところだ。後は米国の連中にフィーネとの裏取引とレセプターチルドレンの存在を理由に慎次達と一緒に俺が交渉に行ってF.I.S.なんて米国の知らない間にできたテロ組織だって言質をとって、責任の所在を有耶無耶にする代わりにレセプターチルドレンを保護させるってところで落としどころにする。後の細かいところはお前達の話を聞き次第決める」

 

一気に流れを説明するナナシ。大分詳細を端折って説明したが、響と切歌は理解が追い付かないのか頭から煙を出していた。

 

「ナナシちゃんと交渉なんて、ちょっとだけ同情しちゃうわ」

 

「どうせ他にも後ろ暗いところの十や二十はあるだろうから、何日もかけて探りを入れまくって無理やりにでも頭を縦に振らせてやる。なーに、人間にとって幸せなのは特別な利権を持つことじゃなくて、ぐっすり眠ることができることだって教えてやるだけだ」

 

そう言ってナナシは、いつも翼達をからかう時とは異なる、少し暗さを感じる笑顔を浮かべた。それを見たその場の人間は、思わず背筋を震わせた。

 

「…私達の囚われる場所が、米国から日本に移るってことね」

 

「そこを誤魔化す気はない。上が動く理由に、新しいシンフォギア装者が増えるって考えがあるのは間違いないからな。だけど、こっちが用意する見返りは、レセプターチルドレン達の保護と、有事以外のお前達の生活面の保障。流石にしばらくの間は事情聴取やら何やらで監視することにはなるけど、可能な限り早く自由行動が許されるようにする」

 

「自由、ね…」

 

マリアはそう呟くのを最後に、黙り込んでしまった。そんなマリア達の様子を見て…響が前に出て、マリア達に声を掛け始めた。

 

「ねえ、訳を聞かせてよ。話せばきっと分かり合えるよ」

 

響の言葉に、三人がピクリと反応する。

 

「分かり合える?」

 

そう言葉にする調に、響が更に言葉を続ける。

 

「うん!訳さえ話してくれれば、きっと協力できる!そうすれば、もうわたし達が争う理由なんて無いでしょ?わたし達が使うシンフォギアは、困ってる人を助けるために使うべき力なんだ。だから、これからは一緒に…」

 

そう言いながら、調の方に響が手を差し伸べて…

 

 

バチンッ!!

 

 

…その手を、調に思い切り弾き飛ばされた。驚く響を、怒りに顔を歪ませた調が怒鳴りつける。

 

 

「綺麗事を口にしないで!この偽善者!!」

 




薄々気が付かれたと思いますが、マリアさんはSAKIMORI枠ですw今後も狼狽えまくるマリアさんを楽しみにしていてくださいw
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