戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第51話

「綺麗事を口にしないで!この偽善者!!」

 

「ぎ、偽善…?」

 

突然調に言われた言葉に、響は動揺していた。そんな響に、調は怒りに震えながら更に言葉を放つ。

 

「何も背負わずに、仲間とふざけ合いながら笑っているような人が、簡単に分かり合えるなんて綺麗事を口にしないで!!」

 

今までマリアの横で静かにしているイメージのあった調の豹変に、部屋にいる二課の面々は動揺を隠せなかった。マリアと切歌は、調を気遣ってはいるが、その表情には調の言葉に共感することがあるようだった。

 

「痛みを知らないあなたに、誰かのために何て言って欲しくない!!本当に困っている人を助けると言うなら、どうして…」

 

「……」

 

そこで言葉を止めてしまう調。勢い余って、口にするつもりの無いことまで言いかけたようだ。響は、黙って調の話を聞き、少しだけ目を閉じて…

 

 

「偽善、か…そう言われちゃっても、仕方ないのかな?」

 

 

…そう言って、困ったように笑いながら調の言葉を肯定してみせた。

 

「わたしにとって、人助けは趣味みたいなもので、困っている人がいたなら、手を伸ばさずにはいられなくて…でも、わたしは神様じゃないから、知らないところで苦しんでる人達にまで、手を伸ばすことはできない…だけど」

 

そう言って、響は再び調に手を伸ばす。

 

「知ったからには、手を伸ばしたい。このまま無かったことにはしたくないんだ」

 

「っ!?」

 

そう言葉にする響を、調は睨みながら再度響の手を弾く。

 

「それが偽善だと言っている!そんな考えのない理由で、手なんか差し伸べないで!!」

 

怒りを増して叫ぶ調に…それでも響は、手を差し伸べるのを止めない。

 

「っ!?一体何のつもり!?」

 

手を叩きながら、調が響の行動に困惑しながら叫ぶ。そんな調に、響は静かに語り出した。

 

「わたしは、昔ある人達に助けてもらった。死にそうなわたしを、必死になって助けてくれた人達がいたお陰で、わたしは今日も笑って、ご飯を食べたりしている」

 

そう話す響の姿を、二課の面々はジッと見ていた。奏は苦笑し、翼は心配そうに、そしてナナシは静かに微笑んで、響の言葉に聞き入っていた。

 

「わたしが人助けを始めた切っ掛けは、やっぱりその出来事があったからだと思う。あの日、沢山の人が亡くなった中で、わたしは助けてもらって、『生きるのを諦めるな』って言葉に勇気をもらったから、せめて誰かの役に立ちたくて、手を伸ばし続けた」

 

「…自分が助けてもらったから誰かを助けたい?そんなのはただの言い訳だ!あなたはただ、自分だけ生き残った負い目を感じているだけでしょう!?そんなものを私達に押し付けないで!!」

 

そう叫ぶ調の言葉に、響は困ったように苦笑する。そんな響の態度に、調の苛立ちは増すばかりだ。

 

「そんなわたしが、シンフォギアの力を手に入れて、この力があれば、誰かの助けになれると思ってた…でも、それは思い上がりだった。あたしはどこまでも未熟で、頑張っても空回りして、傷ついて、傷つけて…一番守りたいと思った居場所を、危うく壊してしまう所だった」

 

「…居場所」

 

響の言葉に反応した切歌が、ポツリと呟いた。

 

「でも、そのお陰で、大切なことに気づくことができた。本当の人助けは、自分一人の力じゃ無理なんだ。助けるわたしだけが、一生懸命なんじゃない。助けられる誰かも、一生懸命…だから、あの日あの時、奏さんはわたしに、『生きるのを諦めるな!!』と叫んでいたんだ。だから…」

 

そう言って、響はまた、調に手を伸ばす。

 

「っ!?」

 

「困っているなら、手を伸ばして。あなた達が…あなたが困っているなら、わたしは何度でも手を伸ばす。叩かれたって、傷つけられたって構わない。今日が無理なら明日、明日が無理ならその先の、未来に手を取って貰えるまで何度でも…だから、助かりたいなら、助けて欲しいことがあるなら…この手を取って欲しい」

 

 

 

…以前の響なら、調の言葉に狼狽えていたはずだった。伸ばした手を拒絶され、自分の行いを偽善と言われたら、恐らくショックで言葉を失っただろう。

 

だが響は、過去の話し合いで学んでいた。親友と、仲間との話し合いで、傷つき、傷つける言葉が、それ以外の意味を持つことを知っていた。例え相手を傷つけるとしても、大切な想いに気づかせてくれる言葉があることを…自分の兄弟子から学んでいた。だから、響は…想いを伝えることを躊躇わない。

 

 

 

どこまでも、真っ直ぐに見つめて言葉を伝えてくる響から、調は目を逸らす。手を伸ばすことは無い。それでも…その手を弾くことは、もう無かった。

 

「…私達は…私は、あなたの仲間を殺そうとした。あなたがあの場に居れば、私はあなたのことも殺そうとした…そんな私と、あなたは仲良くできると、本気で思えるの?」

 

俯きながら、調は響にそう問いかけた。差し伸べられる手を、引かせるために。だが…

 

「あはははは!うん、大丈夫!それは自信がある!」

 

…何故か、響は明るく笑いながら、調の言葉に断言してみせた。

 

「な、何で、そんなことが言い切れるの!?」

 

「それはね~」

 

響は後ろを…翼達の方を見ながら、ニヤリと笑顔を浮かべる。その笑顔に、ナナシ以外の面々は既視感を感じていた。

 

 

 

「わたし、二課の装者の人達全員から、殺されそうになったことあるから!」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

「ブファッ!?」

 

響の言葉に、奏、翼、クリスの三人は驚愕し、ナナシは噴き出して笑い出した。

 

「…ぷ、あははは!響の奴、言うようになったじゃないか!」

 

「おいナナシ貴様!?立花になんてことをしてくれた!?あんな笑顔を覚えさせて!!」

 

「てめえご都合主義!あのバカをあんなにしちまって、あの子に何て詫びるつもりだ!?」

 

「ぷっ、くふふっ…い、いい笑顔だ妹弟子…その調子ですくすく育ってくれ…ブフッ…」

 

響の一言で、先程までの険悪な雰囲気が一気に霧散してしまった。まさかの響の返答に困惑するマリア達三人に、響は更に言葉を続ける。

 

「それに、もしわたしの手を取れなくても…わたしの兄弟子は、わたし以上のお人好しだから、三人共きっとあっという間に手を伸ばしたくなっちゃうと思うよ?」

 

「「「「「「ブファッ!?」」」」」」

 

「……」

 

今度は大人達を含めた二課の全員が笑い出し、ナナシは無言になる。

 

「響、確かに以前もっと周りを頼るように言ったけど、いきなり他力本願は良くないな?今度学校の課題を手伝う約束だったけど、ちょっと自分で頑張ってみようか?」

 

「ええ!?そんな、酷いです兄弟子!?」

 

「弦十郎、お前がまだ見ていない映画のオチだけど…」

 

「ナナシ君!?それは卑怯だろう!?」

 

「慎次、先日SAKIMORIが出演したバラエティー番組、評判良かったな?流石、お前が番組関係者に自分から掛け合っただけはある」

 

「ちょっと!?ナナシさん!?」

 

「…どういうことでしょう?緒川さん…」

 

「了子、ちょっと寂しいと思うなら仕事に逃げてないで自分でクリスをお茶会にでも誘えよ。お互い様なんだから」

 

「ちょっとナナシちゃん!?」

 

「なっ!?てめえ!?何言ってる!?」

 

「奏、翼と弦十郎のおやつ盗み食いしたよな?今日の晩飯サラダだけな」

 

「ちょっ!?おいナナシ!?勘弁してくれ!」

 

…口を開いたナナシは、笑っている全員を淡々と撃墜していった。

 

「…はぁ…どうせ知っているでしょうけど、私達にはまだ仲間がいる。その仲間達を裏切ることはできない」

 

…弛緩した空気の中で、マリアがそう切り出し始めた。

 

「…だけど、私達の目的は、話してもいい」

 

「「マリア!?」」

 

マリアの言葉に驚く調と切歌。

 

「勘違いしないで欲しいのだけれど、あなた達を信用した訳じゃない。だけど、何もできない間に全てが手遅れになるのは避けたい…他のレセプターチルドレンのことは、私達には知ることができないから要求しても無駄かもしれないけど…この子達の身の安全の保障、それさえ確約してくれるなら、話してもいい」

 

そう言って、マリアは調と切歌をその手に抱え込む。

 

「お前はアイドル大統領と言う個性を確立しているから、ツンデレ属性は無理に付けなくていいぞ?それはクリスの担当だ」

 

「「喧しい!!」」

 

「まあ、了解した。お前達『三人』の身の安全は保障する…どちらにしろ、それを守るかどうかもこちら次第の状況で、歩み寄りを見せてくれただけで充分だ」

 

ナナシの言葉を聞いた後、マリアは真剣な顔をして、自分達の目的を話し始めた。

 

「私達の目的は…」

 




無印後日談のあの話は、G編を改変させる上で響を事前に成長させる目的もありました。マリア達とのぶつかり合いが無いと、響は精神的に弱いままになってしまうので…あと、響に悪い笑顔をさせたくてw元気な笑顔の響さんも素敵ですけど、違う外見の響さんみたいな笑顔も見てみたい…某幼女とか、英雄の領域に足を踏み入れた人外さんみたいなw
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