戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第65話

フロンティアの浮上により、二課の潜水艦はフロンティアの陸地に打ち上げられていた。

 

「下からいいものをもらったみたいだ!」

 

「計測結果出ました!」

 

「直下からの地殻上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込むことで…」

 

「フロンティアを引き上げた!!?」

 

「それだけじゃない!ドクターウェルの奴、とんでもないことしやがった!」

 

ナナシはそう言って、モニターに映る月に視線を向けた。

 

 

 

 

 

「行き掛けの駄賃に、月を引き寄せちゃいましたよ」

 

笑みを浮かべたまま、ウェル博士がそんなことを呟く。

 

「月を!?落下を速めたの!?救済の準備は何もできていない!このままでは本当に、人類は絶滅してしまう!!」

 

マリアがウェル博士を押しのけてフロンティアを操作しようとするが、マリアの操作をフロンティアが受け付けることは無かった。

 

「どうして!?どうして私の操作は受け付けないの!!?」

 

「ふひひひ…LiNKERが作用している限り、制御権は僕にあるのです。人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね。これが僕の提唱する、一番確実な人類の救済方法です!」

 

「そんなことのために、私は悪を背負ってきたわけではない!!」

 

そう言ってマリアはウェル博士に詰め寄るが、ネフィリムの左腕でマリアは払いのけられてしまい、地面に倒れ込む。

 

「ここで僕を手にかけても、地球の余命が後僅かなのは変わらない事実だろう?駄目な女だなぁ!フィーネを気取ってた頃でも思い出して、そこで恥ずかしさに悶えてな」

 

「セレナ…セレナ…私は…」

 

マリアは何もできない現実を前に、立ち上がることもできずに涙を流し続ける。

 

「気の済むまで泣いてなさい。帰ったらぁ、わずかに残った地球人類をどう増やしていくか、一緒に考えましょう」

 

そう言い残し、ウェル博士はその場を後にした。

 

 

 

 

 

二課の指令室で、ライダースーツを身に着けた翼が一同から見送られていた。

 

「翼、行けるか?」

 

「無論です」

 

「翼さん…」

 

響が不安そうに翼の名を口にする。

 

「案ずるな、立花」

 

翼は響に笑顔でそう言った後、今度は奏の方を見る。

 

「…行ってくる」

 

「ああ、行ってこい!」

 

優しく微笑む奏に見送られながら、翼は指令室を後にした。

 

 

 

 

 

潜水艦のハッチが開く。翼がバイクに乗ってそこから飛び出し、フロンティアの大地を進んで行った。

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

バイクを走らせながらシンフォギアを身に纏った翼は、足のギアを変形させて車体の前方に剣を展開する。そんな翼に向かって、前方からノイズの群れが接近してきた。

 

騎刃ノ一閃

 

翼は巧みなバイク操作で前に進みつつ展開した剣でノイズを切り捨てて進む。その様子を、二課の人間はモニターで見ていた。

 

「流石翼さん!」

 

「こちらの装者はただ一人…この先、どう立ち回れば…」

 

「いえ、シンフォギア装者は一人じゃありません」

 

緒川の言葉に、響がそう答えた。それを聞いた弦十郎が、響に対して注意する。

 

「ギアの無い響君を戦わせるつもりはないからな」

 

「いえ、戦うのは、わたしじゃありません」

 

「響…?」

 

 

 

 

 

「…あなた達は、学ばないの?」

 

二課に捕まった調は、連れてこられた指令室で開口一番に辛辣な言葉を放つ。それに苦笑を浮かべながら、緒川が調の手錠を取り外した。

 

「一度裏切った私にまた出撃要請って…どこまで本気なの?」

 

「もちろん、全部!」

 

笑いながら力強く断言する響に、調は険のある目を向ける。

 

「あなたのそういうところ、好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者のあなたが…」

 

「わたし、自分のやってることが正しいだなんて、思ってないよ」

 

調の言葉に、響は困ったような笑みを浮かべて話し始めた。

 

「以前、大きな怪我をした時、家族が喜んでくれると思ってリハビリを頑張ったんだけどね。わたしが家に帰ってから、お母さんもおばあちゃんもずっと暗い顔ばかりしてた…それでもわたしは、自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる」

 

「手を繋ぐ…そんなこと本気で…」

 

調の言葉の途中で、響は調に手を差し出してきた。捕虜として二課にいた時、幾度となく調が振り払い続けた、その手を…

 

「だから調ちゃんにも、やりたい事をやり遂げて欲しい。もしわたし達と同じ目的なら、力を貸して欲しいんだ」

 

「私の、やりたいこと…」

 

「やりたいことは、暴走する仲間を止めること…先程、そう言っていましたよね?」

 

緒川に保護された直後、調はそう懇願していた。仲間を…家族を助けて欲しいと。

 

調は響の手をジッと見つめた後…そっぽを向きながらも、ゆっくりと自分の手を響の手に重ねた。

 

「…皆を助けるためなら、手伝ってもいい」

 

手を繋いで、そう告げる調の言葉に、響が目を輝かせる。顔を赤くした調は、すぐに手を振りほどいて後ろを向いてしまった。だが、すぐに少しだけ視線を前に戻して、不安そうに問いかけてきた。

 

「だけど信じるの?敵だったんだよ?一度裏切ってるんだよ?」

 

「敵とか味方とかいう前に、子供のやりたいことを支えてやれない大人なんて、カッコ悪くて敵わないんだよ」

 

「師匠~!」

 

弦十郎の言葉に、響が喜びを露わにする。

 

「それに、あんたらの裏切りなんて、ナナシの悪戯に比べたら可愛いもんだよ」

 

そう言って、奏が調の頭にポンと手を置く。

 

「先生の…?」

 

「ああ、あいつは人の気にしていること、触れられたくないことに容赦なく踏み込んでくるからな。お陰で皆、あいつにはよく泣かされている」

 

「なら、何であんなに仲良さそうに…?」

 

そう疑問を口にする調に、奏が優しく微笑みながら答えた。

 

「…それは、あいつが誰よりも相手のことを想って行動しているからだ。自分のこと以上に頭を悩ませて、例え相手に嫌われたとしても、そいつが笑顔になってくれるなら構わないとあいつは思ってる。皆それが分かってるから、酷い喧嘩になっても最後は仲直りするんだ。喧嘩する度にお互いのことを深く理解できるから、仲直りする度にもっと仲良くなる」

 

「喧嘩して、仲良く…」

 

調が奏の言葉を聞いて何かを考えていると、弦十郎が調のギアペンダントを差し出してきた。

 

「こいつは、可能性だ」

 

調はギアペンダントを受け取って、思わず流れそうになった涙を拭う。

 

「お人好しですね。ここにいる人達は…」

 

「甘いのは分かってる。性分だ。それと、これも持っていけ」

 

「…!これって!?」

 

「ハッチまで案内してあげる!急ごう!」

 

弦十郎から何かを受け取った調は、響に手を引かれて歩みを進める。繋いだ手の温もりを感じ、調はこれから戦場に向かうというのに安堵を覚えていた。

 

(もし、全てが丸く収まったなら…私達家族は、あなたとも手を握れますか?先生…)

 

 

 

 

 

ハッチから、ギアを纏った調が鋸を車輪のように展開して飛び出した。それをモニターで見ていた指令室の人間は、一様に驚愕の表情を浮かべる。その原因は…

 

「響!!?」

 

「何をやっている!!?響君を戦わせるつもりはないと言ったはずだ!!」

 

…調の背中に、響もくっ付いて一緒に出撃して行ったからだ。

 

『戦いじゃありません!人助けです!』

 

「減らず口の上手い映画など、見せた覚えはないぞ!!」

 

「アッハハハ!これはナナシの影響だよ。行かせてやりな、ダンナ!」

 

「行かせてあげてください!人助けは、一番響らしい事ですから!」

 

奏と未来の言葉に、弦十郎は思わず苦笑した。

 

「こういう無理無茶無謀は、本来俺の役目だったはずなんだがな…」

 

「弦十郎さんも?」

 

「帰ったらお灸ですか?」

 

「特大のをくれてやる!だから俺達は…」

 

「バックアップは任せてください!」

 

「私達のやれる事でサポートします!」

 

「子供ばかりに、いい格好させてたまるか!」

 

弦十郎の宣言と共に、二課の大人達が響のバックアップをするため慌ただしく動き始めた。

 

 

 

「ところで、ナナシさんは今何をやっているんですか?気が付いたら翼さんよりも先に姿を消していましたけど…」

 

「ああ、ナナシなら、今は…」

 

 

 

 

 

「立花が、あの装者と一緒にですか?」

 

二課から通信を受けた翼が、驚きと共にそう呟く。

 

(想像の斜め上すぎる…無茶な所まで、叔父様やあの男に似て欲しくないのだがな…)

 

そんなことを考えて、翼は思わず苦笑を浮かべた。

 

「了解です。直ちに合流します」

 

翼はそう言って通信を切り、周囲を見渡す。

 

「ノイズを深追いし過ぎたか…」

 

翼が進路を確認してバイクを走らせようとした、その時…上から無数の矢が飛来してきた。翼は咄嗟にバイクから飛び降り矢を躱すが、バイクは貫かれて炎上してしまった。

 

「どうやら誘い出されたようだな」

 

そう言いながら、翼は矢が飛んできた方向に顔を向ける。

 

「そろそろだと思っていたぞ、雪音!」

 

翼の視線の先には、崖の上から翼を見下ろすクリスの姿があった。

 

 

 

 

 

翼とクリスが遭遇した同時刻、調と響がフロンティアの中枢へと向かっていた。

 

「あそこに行けばいいの?」

 

「そう!あの大きなアンテナみたいなのが付いた建物だって、兄弟子が言っていた!」

 

「何で、先生がそんなことを知って…!?」

 

「どうしたの!?」

 

言葉の途中で、調はギアを収納して停止してしまった。その視線の先には、建物の上で待ち構える切歌の姿があった。

 

「切歌ちゃん!?」

 

Zeios igalima raizen tron

 

切歌はシンフォギアを纏い、大鎌を構える。

 

「切ちゃん!!」

 

「調!どうしてもデスか!?」

 

「ドクターのやり方では、何も残らない!」

 

「分かってるデスよ!でも…ならどうすれば良いんデスか!?」

 

切歌は涙を滲ませながら、苦しそうな表情を浮かべている。

 

「分からないんデスよ!どうすれば良いのか!!アタシは家族と一緒に居たいデス!一人になって欲しくないデス!!一人になりたくないデス!!でも、傍に居るのにマリアは苦しそうで、マムは病気で苦しんでいて、調はそいつらに捕まって…考えても考えても答えが出てくれないんデス!!家族のことが分からないんデス!!……帰ってきて欲しいんデス、調……皆が頑張ってるのに、アタシだけ……置いていかないで……一人にしないで……」

 

切歌は、あれからずっと悩んだままだった。ナナシの言葉で、傍に居てもマリアやナスターシャ教授の存在が何処か遠いところに居るような感覚に囚われ、今は響と一緒に行動している調にも置いていかれているように思え、家族で一人だけ取り残される現状に、何もせずにはいられずに、響達の前に飛び出してしまったのだ。

 

「切ちゃん…」

 

流れる涙を止めることが出来ないまま大鎌を構える切歌を見た調は、あることを決意して響に声を掛ける。

 

「あなたは先に行って。あなたならきっと、マリアを止められる。手を繋いでくれる」

 

「調ちゃん…」

 

「私とギアを繋ぐLiNLERだって、限りがある。だから行って!」

 

「でも…」

 

「大丈夫…これは、私達の『喧嘩』なんです」

 

響は二人が争うことを止めたかったが、調の言葉を聞き、その意図を察し、涙を流す切歌を一瞥して…無言で調に頷き、先へと進んで行った。

 

「ッ!?マリアやマムの邪魔は、させるもんかデス!!」

 

響を止めるため動こうとする切歌に、調が丸鋸を飛ばす。切歌は咄嗟に大鎌で丸鋸を防いで無傷で済んだが、調に攻撃されたことにショックを受けていた。

 

「調!?なんであいつを!!?あいつは調が嫌った、偽善者じゃないデスか!!?」

 

「でもあの人は、自分を偽って動いてるんじゃない。動きたいときに動くあの人が、眩しくて羨ましくて、少しだけ信じてみたい」

 

「そんな…」

 

調の言葉に、切歌は悲しそうな表情を浮かべる。そんな切歌に対して、調は更に言葉を続ける。

 

「切ちゃん、戦おう」

 

「ッ!!?調は…アタシのこと、嫌いになったデスか…?」

 

「違う。私は切ちゃんが大好き。それを知ってもらうために…喧嘩するの」

 

「大好きなのに…喧嘩、デスか…?」

 

「これがあの人達の…先生の、仲良くなる方法なんだって。相手を傷つけてでも、気持ちをぶつけて、理解し合って、相手の傍に近づいていく…きっと、今の私達に必要な事。だから…喧嘩をしよう?切ちゃん。私の気持ちを全部籠める。だから、切ちゃんの形にできない想いも、全部私に教えて?」

 

「ナナシさんの…アタシが、調の傍に…」

 

調の言葉を聞き、切歌は涙を拭って大鎌を構え直す。近いのに遠い、そのもどかしさを解消することは、二人にとって世界の命運よりも重要なことだった。

 

γ式 卍火車

 

調は切歌に向けて二つの巨大丸鋸を放つ。

 

切・呪リeッTぉ

 

切歌はそれに対して、大鎌の刃を二つ飛ばしてぶつけ、互いの攻撃を相殺させる。切歌は勢いのままに調に大鎌を持って切りかかる。

 

裏γ式 滅多卍切

 

調は四本のアームドギアを展開し、切歌の大鎌を防ぎつつ攻撃を繰り出す。切歌はもう一本大鎌を展開して、両手に鎌を持って調に向かって行った。

 

「この胸に!」

 

「ぶつかる理由が!」

 

「「あるのなら!!」」

 

大切な家族のことを理解するために、二人は互いに刃を向け合った。

 

 

 

 

 

フロンティアのブリッジで、調と切歌が戦う様子をモニターで見たマリアは、その光景が信じられずにいた。

 

「どうして…仲の良かった調と切歌までが!?私の選択は…こんなものを見たいがためではなかったのに!!」

 

自分の選択の結果を前に、マリアは立っていることすらできずに涙を流して膝から崩れ落ちる。

 

『マリア』

 

そんなマリアに、ナスターシャ教授からの通信が入った。

 

「マム!?」

 

『今、あなた一人ですね?フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました』

 

「えっ?」

 

『最後に残された希望…それには、あなたの歌が必要です』

 

「私の、歌…」

 

『Exactly!!』

 

「えっ!!?」

 

突然通信機から聞こえてきた声に、マリアは酷く動揺した。

 

『何を呆けているんだ?アイドル大統領!お前の歌で、世界を救うぞ!!』

 

「何故…何故あなたがそこにいるの!?『悪夢』!!?」

 

 

 

 

 

ナスターシャ教授がマリアに通信を繋ぐ少し前…

 

「お邪魔しまーす!」

 

「ナスターシャ、一度変わって!」

 

「来ましたか!」

 

フロンティアの制御室の中に、“血晶”を目印にたどり着いたナナシと、ナナシに抱えられた了子が飛び込んできた。ナスターシャ教授は一度下がって了子に操作端末の場所を譲り、了子が凄まじい速度で端末を操作する。すると、地面から新たに二つの端末が現れた。

 

「二人はそっちで私の補佐をお願い!」

 

「了解!ナスターシャ教授、俺はお手伝いレベルしかできないから基本はそっちで了子のフォローしてくれ!必要なことがあるなら指示を頼む!」

 

「分かりました!」

 

ナスターシャ教授と協力を取り付けたナナシ達は、当初は制御室に了子を連れてくることでフロンティアの制御権を丸々奪い取ることを計画していた。了子とナスターシャ教授の異端技術知識、そしてルナアタック以降、今まで遠ざけられていた了子の仕事に関わるようになり、辛うじて手伝いができるようになったナナシなら、この制御室からそれが可能であるはずだった。だが…

 

「全く!体の一部とはいえ完全聖遺物と同化しその力を行使できるなど、只人の学者風情に完全に出し抜かれた!!ナスターシャ、エネルギーラインの設立をお願い!」

 

「分かりました!」

 

「制御権奪ってウェル博士を捕獲、月落下までの期間でフロンティアをデュランダルからエネルギー抽出できるように改造するはずだったのに…初手でこっちの計画全部潰されたな。改造なしではやっぱりデュランダルは使えないか?あと、フィーネ漏れているぞ、了子!」

 

「茶化すな!エネルギーを受け止める炉心が無いのだからどうしようもない!無理に利用しようとすればフロンティア自体がデュランダルのエネルギーで破損する!」

 

「まあ、最悪の事態を想定して短期間でエネルギーを集める代案を考えていたお陰でまだ詰みでは無いはずだろ?嘆いてないでさっさと巻き返すぞ、フィー子!!」

 

「混ぜるな!!代案と言ってもほとんど机上の空論のようなものでしょう!?本気で上手くいくと思っているの!?」

 

「当たり前だ!俺としてはこっちの方が断然良い!デュランダル使う方が色々問題が少なかっただけで本心では絶対こっちの方が良かった!各国の中継をジャックする準備はできたぞ!」

 

「こっちもエネルギーを月へ放射する機能の準備は完了よ!後はナスターシャが設立させたエネルギーラインを通してフロンティアにエネルギーを集めるだけ!」

 

「よっしゃ!始めるぞ!!」

 

ナスターシャ教授は不思議に思った。ウェル博士の予想外の行動によって当初の計画は破綻寸前、最後の希望である代案はとても現実的な計画とは言えないものなのに、自分の向かい側で端末を操作する、『悪夢』の二つ名を持った青年は、何故こうも…楽しそうなのだろう?

 

「さあ!ナスターシャ教授!アイドル大統領に連絡を取ってくれ!あいつの歌で、世界を救うぞ!!」

 

 

 

 

 

『やることはシンプルだ。昔ツヴァイウィングがやったネフシュタン起動実験と、今回やっていたらしいネフィリムの起動作戦のように、歌を聴いた観客全員からフォニックゲインを集める。違うのはステージの規模が全世界ってだけ。世界を救うために、歌で世界を一つにする!これ以上無いくらい素晴らしい方法だ!』

 

「私の歌で、世界を…で、でも、何故私なの!?裏切り者の私ではなく、仲間のツヴァイウィングに頼らない理由は!?」

 

『確かにあいつらならやり遂げられるさ。でも、あいつらは両翼。最高の歌を歌うなら二人でないと駄目だ…いや、決して奏と翼のソロの歌が世界に通用しないという訳ではないぞ!?そこは勘違いしないでくれ!絶対にだ!!』

 

『話を進めなさい、ナナシちゃん!』

 

話を脱線させるナナシに、了子からのツッコミが入った。

 

『今その場に居て、それが可能なのはお前だけだ。全米チャートの頂点、世界の歌姫様!』

 

「だけど…嘘と血に汚れた私なんかの歌で…」

 

『お前ならできるよ、マリア』

 

弱気なマリアに対して、ナナシはそう断言した。

 

「…私は、あなた達を裏切って、あなた達の仲間の命を危険に晒したのよ!?何故あなたは、私のことを信じられるの!!?」

 

『あっはははは!そりゃあ、俺は体の一部を送るくらい熱狂的なお前のファンだからな!!推しのことを信じないでどうするんだよ!!』

 

マリアの問い掛けに、ナナシは明るく、何処までも茶化すように答える。

 

『それに、お前が俺達を裏切った?違うだろ。甘い俺達には下せない決断を、お前が変わってくれたんだ。お陰で、響と未来は救われた』

 

「そんなのは、偶然だ…フロンティアの封印を解くために、あの子達を利用しただけ…」

 

『じゃあ何でドクターウェルやナスターシャ教授にフィーネの生存を黙っていた?俺が人形だなんて嘘をついた?』

 

「それは…」

 

『どうせ、自分一人で罪を背負って、あわよくば俺達にナスターシャ教授や妹達のことを全て託そうとでも考えていたんだろ?』

 

「ッ!!?」

 

ナナシの言葉に、マリアが声を詰まらせる。どうやら図星だったようだ。

 

『そんなのはお断りだ!中途半端は嫌いなんだよ。『全て』の中には、お前のこともきっちり含ませてもらうからな!!覚悟しとけ!!まあでも、そのためにはまず、お前に世界を救ってもらわないと困るから、どうかよろしくお願いします!アイドル大統領!!』

 

「だけど…私は…私の歌では…」

 

『世界の命運を一人で抱えるのが怖いか?』

 

「ッ!!?」

 

『安心しろ!ここにはお前の偉大な母親と、できる女の了子、もとい人智を越えた存在のフィーネがいる。ここにはいないけど、お前の家族の調に切歌、今でもお前のことを心配している装者達や二課の皆がいる…あと、オマケでよく分からない“紛い物”も…例え頼まれたとしても、お前を一人になんてしてやるもんか!!』

 

「……あなた達は、どこまで…」

 

『…マリア、あなたならきっとできます……ぐっ!ごほっ!』

 

『ナスターシャ!?』

 

『ナスターシャ教授!?』

 

「ッ!?マム!?マム!!」

 

通信の向こうで何かが零れるような音が聞こえる。ナスターシャ教授が血を吐いたのがマリアにも分かった。それでも、かすれた声でナスターシャ教授はマリアに言葉を投げかける。

 

『…あなたの歌で、世界を救いなさい!』

 

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