戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
ナナシが二課の仲間入りをしてから、一週間が経過した。
ナナシは現在、二課施設内のトレーニングルームにいた。向かい側に立つのは、特異災害対策機動部二課司令官…風鳴弦十郎。
これから、二人による模擬戦が行われる。
「俺はナナシ君の戦闘能力については翼達から口頭で聞いただけだ。だから少しずつ様子を見ながらどの程度動けるかを確認していく。問題ないか?」
「問題ない」
ナナシはこの一週間の間に、さらに会話能力を向上させており、既に“念話”を使用することはほとんどない状態だった
「まずナナシ君、手を前に出してくれ。そこに俺が軽く攻撃を加える」
「分かった」
ナナシが言われた通り手を前に出す。
バシンッ!
そこに弦十郎が軽く…サンドバックが吹き飛ぶくらいの力と速度でナナシの手を殴る。
「これぐらいの力と速度でお互いを攻撃するんだ。俺の方で徐々に力と速度を上げていくから、それに合わせてナナシ君も制限を除いていって欲しい。お互いに怪我をさせないこと。無理をしないこと。俺が合図をしたら模擬戦を終了すること。これらを守ってほしい」
「分かった」
そこから二人の模擬戦が開始された。
開始から一分、ナナシの攻撃が全く当たらず、弦十郎の攻撃がナナシに何発も当たる。
開始から二分、ナナシの攻撃は変わらず当たらないが弦十郎の攻撃も数発しか当たってない。
開始から五分、自動車が吹き飛ぶくらいの力と速度で弦十郎とナナシが打ち合う。お互いに数発の攻撃が当たっている。
開始から十分、大型トラックが粉々になるくらいの力と速度で二人が打ち合う。お互いの攻撃はほとんど当たっていない。
開始から十五分…
その光景をモニタールームで見ていたオペレーターの藤尭朔也は、思わずポツリと呟いた。
「有名漫画の天下一を決める大会の観客は、こんな気持ちだったのかな…」
ナナシが弦十郎の懐に入り、そのわき腹に拳の一撃を突き入れる。まともに当たれば人間の原型など保てなくなるほどの一撃。しかし…
「
…弦十郎が発勁を放つことで、衝撃で逆にナナシが吹き飛ばされる。ナナシは流れに身を任せ、バク宙するように体を回転させ、地に足をつき体勢を整える。
「
…その目前に弦十郎の正拳突きが迫る。ナナシはその拳の真下から掌底を当てて軌道を逸らし、そこから反撃を試みた。
室内の壁は凹み、床は罅割れる。二人の模擬戦の余波でもはや室内は最初の状態から一変していた。
「ここまでにしよう」
ナナシの拳を弦十郎が受け止める。弦十郎は微動だにしないが、その足元の床に扇状の罅が広がる。弦十郎がナナシの手を離すと、ナナシも追撃はせずにその場に立ち尽くした。
「いやー!ナナシ君はすごいな!あっという間に技術を身に着けてしまった!これは俺も次からは油断できないな!お互いの戦力向上のためにも今後も定期的に模擬戦を行いたいのだがどうだろうか?」
「構わない」
現時点で計測したナナシの力は弦十郎にやや劣る程度、技術については成長速度が異常であり、今回の模擬戦だけで弦十郎の繰り出した技をある程度習得していた。
二人が会話をしていると、トレーニングルームに緒川が入ってきた。
「…司令と対等な戦いを出来るナナシさんが凄いのか、ナナシさんと渡り合えてしまう司令がおかしいのかは判断がつきませんが、今後は室内での模擬戦はご遠慮ください」
「む?だが、ナナシ君の戦闘技術の向上は今後のことを考えると必要なことだぞ?」
「ええ、ですが頻繁に設備を壊されるのは問題ですし、建物自体の強度にも関わってきますので、どこか周囲に人のいない屋外でお願いします」
「うーむ、俺が住んでいるところの近くに、たまに訓練で使っている場所があるが、二課の施設に住んでいるナナシ君を迎えに来てから戻るとなると…」
しばらく弦十郎が悩んだ後、何か思いついたのかナナシに質問をする。
「ナナシ君、俺の家に住まないか?」
風鳴弦十郎の家、というか屋敷は広く、奏と翼もこの屋敷の部屋を使って生活している。
空いている部屋はまだあること、弦十郎がナナシに施設の部屋を使わせ続けていることが気になることもあり提案した弦十郎の誘いをナナシは了承。荷物がほとんどないナナシはその日のうちに弦十郎の屋敷に移住することになった。
今後同じ屋敷に住むということで、弦十郎は翼に話を伝えるため、ナナシを連れて翼の部屋へ向かった。
「翼、今大丈夫か?」
「叔父様?はい、問題ありません。今開けます」
少しして翼の部屋の扉が開く。すると…
「…翼、三日前に緒川が来て掃除をしていったよな?」
「…すみません」
…翼の部屋の中は、とても散らかっていた。
布団が床に敷かれたままでしわくちゃになっており、衣服、下着が床に散乱している。音楽のディスクがケースに入れられることなく放置され、机の上には日用品が乱雑に置かれている他、倒れて中身を零したコップやペットボトルがそのまま放置されていた。
「…とりあえずこのことは置いとくとして、今日からナナシ君をこの家で預かることにしたから、何かあったら助けてやってくれ」
「っ!?ナナシも来ていたのですか!?」
弦十郎の陰に隠れていて翼からはナナシが見えておらず、部屋の惨状を見られて赤面する翼だったが、ナナシはそんな翼を無視して部屋に入り込み、床に散らばった衣服を畳み始めた。
「ナ、ナナシ?一体なにを…」
「了子が、『お部屋はきれいに使いましょう』と言っていた」
ナナシが好奇心のままに施設の部屋のものを引っ張り出していた時に言われた言葉だ。その部屋を清掃に職員が来た際、その様子を見たナナシが真似して片づけているのを見て、職員達はナナシに一通り清掃の手順を教えていた。
ナナシがテキパキと翼の部屋を片付け始めるのを見た弦十郎が、ナナシに一つ提案した。
「ナナシ君、定期的に翼の部屋の掃除を手伝ってもらっていいだろうか?」
「叔父様!?」
「分かった」
「い、いや、ですが…」
「緒川に掃除をしてもらっている時点で今更だし、気になるなら翼もこれを機に自分で掃除をするようにすればいい」
こうしてナナシは翼の部屋の清掃を請け負い、その後料理や洗濯などの家事全般も学習していったため、風鳴家の主夫のような立場で生活を送ることになった。
翼と奏は弦十郎の屋敷に住んでいる設定です。
公式設定と矛盾があるようでしたらオリジナル要素ということでお願いします。