戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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これからも本作品をよろしくお願いします!


第72話

調と切歌が外出する予定日の朝

 

「久しぶりの外デス!」

 

「良い天気…」

 

その日は天候にも恵まれ、二人は囚人服のような衣服から、返却された私服に着替えて、久しぶりに感じる外の風や太陽の日差しにテンションを上げて駆け回っていた。

 

「こらこら、勝手に進むなよ。約束を忘れたか?」

 

その様子を、微笑ましそうに眺めながらナナシが二人の後について行く。

 

「忘れてないデス!約束その一、ナナシさんの目の届かないところに勝手に行かない!」

 

「約束その二、通信機と“血晶”は無くさないよう気を付ける!」

 

「よろしい!その二つさえ守れば基本問題ない。お前達は良い子だから、人様に迷惑をかけることは無いだろうしな!」

 

ナナシの言葉に、二人の顔が思わずにやける。無理なお願いを聞いてくれただけでなく、自分達を信じて最低限の約束事以外に細かな制限を付けないでくれることを、二人は嬉しく感じていた。

 

「さて、移動を開始しよう。今日の目的地はちょっと距離がある。車で送ってもいいけど、どうせなら色々寄り道をしよう。公共交通機関の乗り方、お金の使い方、拘束期間が終わった後に知っておいた方が良いことを学びながら行こう」

 

「大賛成デース!」

 

「クスッ…学校の先生も、こういう感じなのかな?」

 

「あははは、俺みたいな適当なのが先生だったら、生徒には好かれるけど、保護者には嫌われそうだな!教育にはやっぱり厳しさも必要だと思う。俺も弦十郎達にはボコボコにされたり、影縫いで動きを止められたり、心臓を貫かれたりした」

 

「「それは厳し過ぎ(デス)!?」」

 

そんな会話をしながら三人が歩き出すと、調と切歌が何かを思いついたのか、お互いに視線を合わせて頷くと、それぞれがナナシの左右の手を取った。

 

「ん?」

 

「逸れたらいけないデス!」

 

「響さん達とは手を繋いだけど、先生とはまだ繋いだことが無かったので…ダメですか?」

 

「そんなことないさ。二人が良ければこのまま行こう」

 

「「はい(デス)!」」

 

 

 

三人が手を繋いで仲良く進んでいく…その様子を、物陰から密かにマリア達が窺っていた。

 

「あ、あの子達ったら、あんな男に簡単に手を繋ぐことを許すなんて…」

 

「調ちゃんと切歌ちゃん、とっても楽しそうですね!」

 

「そりゃあ、ずっと潜水艦に籠りっぱなしだったんだ。はしゃぎたくもなるだろ?」

 

マリアは二人とナナシの距離が近いことに狼狽え、響と奏は二人の楽しそうな様子に笑みを浮かべる。

 

「ところで…マリア、その恰好は何のつもりだ?」

 

奏がそう指摘する今のマリアの恰好は、黒いスーツを身に纏い、顔には黒いサングラスとマスクと着けて、頭にはニット帽を被るという、どう見ても不審者としか思えない姿をしていた。

 

「この“血晶”の能力は、元々あの男の力でしょう?それなら、あの男に“認識阻害”が通用しない可能性が高い。変装は必須よ!」

 

((帰りたい…))

 

確かにこの恰好なら、“血晶”が無くても誰も彼女のことをマリア・カデンツァヴナ・イヴだとは思わないだろうが、もし“血晶”が無ければ、物陰から調達の様子を窺う彼女を見た者は迷わず警察に通報するだろう。そんなマリアと今日一日行動を共にすると思うと、奏と響は気が重くなった。

 

「あれ?兄弟子って、“血晶”の場所が分かるんですよね?そもそも尾行は無理なのでは?」

 

「意識を集中する必要がある上に、大雑把な位置しか分からないらしい。だから…」

 

そこで言葉を区切った奏が、少し離れた位置にいる男性に手を振った。すると、男性は苦笑を浮かべながら手を上げて応えた。

 

「あたし達以外にも、“血晶”を持った二課の職員が切歌達やマリアを護衛してるから、ナナシには判別できないだろ」

 

「職員の方々も、大変ですね…」

 

「正直申し訳ない気持ちはあるわ…だけど、これならバレる心配をすることなくあの子達のことを見守ることができる!!」

 

そう熱弁するマリアに、響は困ったように話しかけた。

 

「う~ん…そんなにマリアさんが心配する必要はないと思うんですけどねぇ」

 

「だな。他人と関われば多少は影響を受けるものだろ?それに、あいつに限っては、あんたが心配してるような問題は起こさないさ」

 

先日未来とOHANASHIしてマリアの危惧を理解した響と、ナナシと長い付き合いのある奏がマリアにそう語り掛けるが、マリアの表情は優れない。

 

「分かっているわよ、そんなことは…」

 

別にマリアも、本気でナナシが調達に何かをするとは思っていないし、ナナシが二人に与える影響が悪いことだけではないと理解している。

 

だが、マリアの脳裏には、以前ナスターシャ教授のお見舞いをした時のやり取りが残り続けていた。あの真面目なナスターシャ教授が口にした冗談としか思えない言葉が頭から離れない。確かにマリアはナナシに対して恩義を感じている。しかし、それとこれとは話が別である。自分とナナシがそのような関係になる可能性など皆無。そう結論を出したはずなのに、胸のざわつきが治まらない。

 

そして、思考の途中である可能性に思い当った。あの二人はどうなのだろう、と…

万が一にも調と切歌のどちらか、或いは両方があの男に好意を抱くようなことになったら…そう思い至ったマリアは、もう冷静ではいられなかった。

 

そう考えた最中に、二人が自分を置いてナナシと出かけると聞かされ、大人しく待つことなどできなかったのだ。

 

「お願いだから、今日だけは私に付き合って!ほら、このままだとあの子達を見失っちゃうわ。追うわよ!」

 

そう言って駆け出すマリアを、奏と響は苦笑しながら追いかけて行った。

 

 

 

 

 

「フゥー、何とか無事に電車に乗れたデス!」

 

「何度も迷いそうになった…」

 

「日本の鉄道は複雑だからな。まあ、そのうち慣れるだろ」

 

目的地の最寄り駅に降りた三人が感想を口にする。

 

「料金も少し高い気がする」

 

「歩けるなら歩いた方が良いデスかね?」

 

「倹約家なのは良いことだけど、それで無理をするのはやめた方が良い。あくまで俺の意見だけど、お前達に必要なのは経験だ。出費を抑えて乗り物を利用しないと、行動範囲が狭くなって決まった場所にしか立ち寄らなくなる。経済的に余裕があるなら、上手く乗り物を利用して色んな場所に行ってみると良い」

 

「なるほどデス!」

 

「勉強になります!」

 

「まあ、臨機応変にな。倹約家って言うのは、節約だけじゃなくてお金の使い方も上手な人のことだから、二人も二課から給料を貰うようになったら意識してみると良い」

 

「お給料…私達、本当に貰っても良いんでしょうか?」

 

「当然だ。お前達装者は命懸けで戦っているのに、タダ働きなんてあり得ない。ただ、世間慣れしてないお前達が持つには、ちょっと額が大きいから、当面はナスターシャ教授が預かって、お前達が自由に使える金額をお小遣いとして渡すことになっている」

 

「マムが…無駄遣いして、怒られないようにしないとね、切ちゃん」

 

「だ、大丈夫デス!」

 

「まあ、足りなければ素直に追加をお願いすれば良いだろ?」

 

「マムは厳しいから怒られちゃいますよ!?」

 

「そうか?『お母さん、お小遣い頂戴』って言えば、口では注意しつつ内心で喜んで出してくれると思うけど?」

 

 

 

「お金の管理か~。調ちゃん達、わたしより年下なのにしっかりしてますね」

 

物陰から三人の会話を聞いていた響がそんな感想を口にする。

 

「日本に来てから、あの子達には経済的な苦労をかけてしまったからね…」

 

「響はちゃんと管理できてるか?」

 

「あ、あははは、月にどれぐらい使ったか未来に確認して貰ってます…」

 

「既に怒られた後だったか…」

 

「ご飯が美味しくて、つい…兄弟子はどうなんでしょう?」

 

「あいつはお金を使うのが下手だね。漫画や映画、後はあたし達や二課の連中によく差し入れをするくらいで、残りは全部貯金してる。出撃手当だけじゃなくて、二課の仕事もやってるから貯まる一方だ。本人は要らないって言ってるけど、ダンナ達がしっかり計算して押し付けてる」

 

「そうなんですね。よく奢ってもらいますし、以前皆で遊んだ時も、服の代金の他にも色々出して頂いたので、お金遣いは少し荒いのかと思ってました」

 

「まあ、他人のために使う時はポンと大金を出すから、間違ってはいないね。この前も…」

 

「あの男のことはいいでしょ?それより、先に進むわよ!」

 

 

 

 

 

街の中を見て回りながら目的地へ向かっていたナナシ達は、途中で昼食を取るためにファミレスに立ち寄った。マリア達もコッソリ入店し、ナナシ達の席と仕切りを挟んだ隣の席に着くことに成功する。

 

「ここはどういうお店なんデス?」

 

「ファミレス…ファミリーレストランと言って、主に家族連れのお客を対象とした飲食店だな。比較的安価で料理もすぐにできるから、友達連れの学生なんかも良く来る」

 

「家族でご飯を食べるお店デスか!」

 

「お料理、美味しそう…っ!?た、高い!?お料理一つで、以前の私達の一日分以上の食費がかかる!?」

 

「…確かに、自炊する人間にとっては割高ではあるけど…一体どんな食生活だったんだ?」

 

「基本的に、マリアがコッソリ持ち帰ったご飯で凌いでいました…」

 

「298円のカップ麺がご馳走だったデス!」

 

「うん、分かった。好きな物を好きなだけ頼め」

 

「だ、大丈夫デスよ!?今は皆で美味しいご飯が食べられるので、幸せいっぱいです!」

 

「今朝も、しっかり朝ご飯を頂いたから、そんなにお腹は…」

 

グゥ~…

 

メニューの写真を見て食欲が刺激された二人のお腹から、空腹を訴える音が聞こえてきた。

 

「良いから食べろ。食べてください。よろしくお願いします!ほら、デザートもあるぞ!パフェでもケーキでも好きな物頼んで良いから!!」

 

 

 

「ごめんなさい…満足に食べさせてあげられなくてごめんなさい…」

 

「ま、マリアさん、元気を出してください!ほら、マリアさんも何か食べましょう!!」

 

隣では、三人の話を聞いていたマリアが響に慰められていた。

 

「本当なら、無理やり付き合わせた私が支払うべきなのは分かっているけど…」

 

「細かいことを気にするんじゃないよ。ほら、あいつらより先に注文しないと置いて行かれるよ。響も好きな物頼みな。ここはあたしが払うから」

 

「ご馳走様です!ほら、マリアさんも食べましょう!マリアさんにはこれから大仕事が待っているんですから、しっかり食べて力を付けないと!」

 

「…ありがとう」

 

響達に元気づけられたマリアはお礼を言って、隣で嬉しそうにはしゃぐ二人の声を聞きながら自身もメニューを選び始めた。

 

 

 

 

 

「さて、到着だ!」

 

「「おお~!!」」

 

お昼を食べた後、ナナシ達は目的地に到着した。

 

「あれ?ここって…」

 

「前にあたし達が遊びに来たショッピングセンター?」

 

そこは以前、翼が退院した後に遊びに来た大型ショッピングセンターだった。雑貨屋や洋服屋、ゲームセンターなど複数の施設が集まったこの場所は、今日も大勢の人で賑わっていたため、マリア達は人混みに紛れてナナシ達の後について行った。

 

「兄弟子達、何のためにここへ来たんでしょう?やっぱりデート?」

 

「そんなはずは無いわ!!きっと学祭での買い物が楽しかったから、あの男のお金で好き放題買い物がしたいとお願いしたのよ!!」

 

「あんた的には、それなら問題ないのか?」

 

普通に考えて、自分の家族が他人のお金で好き放題買い物しようとしていることの方が問題だと思うが、マリアは調と切歌の現状を頑なにデートだとは認めようとしなかった。

 

「広いデス!大きいデス!色んな物がいっぱい売っています!」

 

「本当に大きい…何処から回ればいいんだろう?」

 

「時間はあるし、適当にぶらついて自分の興味がある店に入ってみればいい。品物だけ確認して、買うか買わないかは後で相談して決めればいいし」

 

「「はーい!」」

 

ナナシの言葉に二人が元気に返事をした後、三人は店を見て回るために歩き始めた。

 

「好き放題かはともかく、お買い物をしに来たのは確かみたいですね」

 

「欲しい物を一つずつ自分で選んで買いたい、ってところか?」

 

「まあ、あの一件のお詫びとしては、無難なお願いだと思うわ」

 

「手を繋いで一緒に好きな物を選んでお買い物って、やっぱりこれはデート…」

 

「立花響?」

 

「何でもありません!!」

 

「はいはい、いいから追いかけるよ」

 

 

 

 

 

「わああ!」

 

「やっぱり調はここに興味を持ったか」

 

「デスね」

 

ナナシ達が入店したのは、調が気になった調理器具を扱うお店だ。

 

「凄い!フライパンだけでこんなにいっぱい種類がある!このお鍋を使えば固いお肉が短時間で柔らかくなるんですよね!?この包丁、お肉でもお野菜でもスパッと切れるみたいです!」

 

「し、調、落ち着くデス!?包丁を持ってニッコリしてるのはちょっと怖いデスよ!」

 

様々な調理器具を前に、調は無邪気に目を輝かせていた。

 

「あはは、調ちゃん楽しそうですね!」

 

「よっぽど料理が好きなんだね」

 

「ええ…最近は、私達の食事に調が作った料理が一品加えられることが多くなってきたわ。今は厨房の道具を借りているけど、やっぱり自分だけの調理器具に憧れがあるのね」

 

楽しそうな調の様子を、マリア達は微笑ましそうに見ていた。

 

「どうする?買うか?」

 

「うっ…いいえ、今回はやめておきます」

 

「まあ、だろうな」

 

「あれ?買わないみたいですね?」

 

調は何一つ選ぶこと無く、名残惜しそうにナナシ達の元へ戻る。その様子に、響が思わず疑問を口にした。

 

「いつか、自分のお金で揃えてみせます!そして料理をたくさん覚えて、マムや切ちゃんが苦手なお野菜でも美味しいって言ってもらえるようになります!!」

 

「ナスターシャ教授は知っていたけど、お前もか、切歌…」

 

「マ、マムみたいにお肉しか食べない訳じゃないデスよ!?ただちょっと色の濃い野菜が苦手で…」

 

「そ、そうか…因みに、調やアイドル大統領は苦手な物はあるのか?」

 

「私は特に。マリアはトマトが苦手です」

 

「トマトか。それはちょっと苦労しそうだな、調」

 

「どうしてですか?」

 

「トマトは調理方法で味や食感が大きく変化するからだ。その分、料理のバリエーションも広い。生のトマトは嫌いだけど、ケチャップやパスタソースは好きって話はよく聞く。アイドル大統領にトマト料理で美味しいって言わせるには、まずアイドル大統領がどんなトマトが苦手なのかを調べないといけない」

 

「なるほど」

 

「しかもあいつ、お前が作った料理なら我慢して美味しいって言いそうだから調べるのも簡単にはいかないだろうし…今の内に俺が色々トマト料理を提供して反応を見るか?」

 

「良いんですか?」

 

「トマトは栄養が豊富で美肌効果もある。アイドル大統領には是非食べてもらいたい。もし意図的だとバレても俺の料理ならいつもの悪戯だと思われるだけだし、素直な反応が見られる内に調はアイドル大統領の様子を窺えばいい」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

 

「ぐふっ!!」

 

ナナシと調の会話を聞き、マリアが床に崩れ落ちる。盗み聞きをしたせいで、二人の善意だと知った上で今後トマト料理を食べることになるため、ナナシに恨み言すら言えなくなった。

 

「マ、マリアさん!?しっかりしてください!!」

 

「前向きに考えな。今後出てくる調のトマト料理をあんたは無理せず美味しいって言えるんだ。そのために精々ナナシの料理には正直にダメ出ししてやれ。ほら、あの三人移動し始めた。あたし達も行くよ」

 

 

 

 

 

「おお~!」

 

「切ちゃん…」

 

「あははは、まあしょうがないだろ」

 

切歌が思わず見入ったのは、様々なスイーツの店舗が並ぶコーナーだった。色鮮やかなお菓子がショーケースに並べられた光景に、切歌は口からよだれを垂らしそうになる。

 

「切ちゃん、さっきファミレスでご飯だけじゃなくてケーキまでご馳走になったでしょう?太るよ?」

 

「うぐっ!?」

 

「気にする必要は無いと思うぞ?むしろお前達は細すぎる。もっとしっかり食べて大きくなれ」

 

「で、デスよね!アタシ達は育ち盛りデスから!」

 

「でも、ただでさえ最近は色々なものを食べさせてもらっているから、やっぱり体重が…」

 

「体重が気になるなら、十代の間は食べる量を減らすんじゃなくて、運動を増やす方が良い。体の成長は基本的に二十代までで止まる。だから、若い間は栄養が不足するよりは余る方が良い。良く食べ、良く遊び、良く寝る。今は色々なダイエット方法が考案されているけど、結局はこれが一番だ」

 

「な、なるほど」

 

「夕食が食べられるなら好きな物を買えばいい。体重に問題があるかは“解析”を使わなくても体形を見れば大体分かるから、そうなったら責任を持って運動でも何でも付き合ってやる!」

 

「良いんデスか!?今回の目的に関係ないデスよ!?」

 

「別に構わない。今回のお願いと言い、お前達はちょっと良い子過ぎる。このままだとSAKIMORIやアイドル大統領みたいに頭の固い女になるぞ?何もかも許されなかった今までとは違うんだ。我儘を言え我儘を。駄目なら駄目だとハッキリ言って理由も説明する」

 

「なら、あの三段重ねのアイスが食べたいデス!」

 

「はいはい。ほら、自分で好きな味を選んで買ってこい」

 

「ありがとうデス!」

 

「調も、何か気になっているだろう?」

 

「あ、あのお魚みたいなお菓子、作り方が気になって…」

 

「たい焼きか。注文すれば目の前で作ってくれるからお前も行ってこい」

 

「先生、ありがとう!」

 

ナナシからお金を受け取った二人は、いそいそとお菓子を買いにお店に近づいて行った。

 

 

 

「いいな~。わたしもお菓子食べたい…」

 

「た、食べ物で二人の気を引くなんて卑怯よ!」

 

「話は聞いてただろ?今まで不自由していたんだから少しくらい構わないじゃないか?」

 

「駄目よ!百歩譲って二人を甘やかすのは私かマムの役目でしょう!?あの男が甘やかす加減を間違えて二人が不良になったら大変じゃない!!」

 

((考え方が姉と言うより母親みたいになってきたな))

 

騒ぐマリアに、奏と響が同じことを思った。三人がそんな会話をしている間に、調がたい焼きを食べながらナナシに話しかけていた。

 

「次は、先生の行きたいお店に行ってみましょう。何か良い物が見つかるかもしれません」

 

「俺の?そうだなぁ…ああ、そういえば俺も買うものがあったな」

 

 

 

 

 

「ここだ」

 

「「本屋さん?」」

 

ナナシが二人を連れて訪れたのは、書店だった。

 

「予想外だったか?」

 

「先生なら音楽関係のお店だと思いました」

 

「あ!漫画デスか?よく読んでるところを見かけるデス!」

 

「確かに漫画もよく買うけど、今回の目的はこれだ」

 

「問題集?」

 

「何だか難しそうな本デス」

 

「そうでもないぞ?お前達が通う予定のリディアン音楽院で学ぶ範囲の問題集だからな」

 

「ナンデストー!?」

 

「何で先生が高校の問題集を?」

 

「響のための教材だな」

 

「響さんの?」

 

「あいつ、二課の活動で時間が取られるから、学校の勉強は課題を済ませるので精一杯でな。成績が落ちているんだ。進級については二課で手を回すこともできるけど、ズルみたいで気乗りしないみたいだから、俺があいつ専用の問題集を作って渡しているんだ。これはその参考書」

 

「専用の問題集デスか!?」

 

「そう。響の性格を考えて、分かりやすい解説や、テスト対策問題と、オマケを記載した問題集」

 

「オマケ…?」

 

疑問を感じた調に、ナナシが“収納”から一冊の本を取り出して差し出す。それは『立花響、おバカからの脱却 ~テストなんてへいき、へっちゃら~』と表紙に掛かれた、無駄に凝った作りの問題集だった。調がパラパラとページを捲ると、各教科の問題と、デフォルメされた奏や翼、未来やクリスなど、響の近しい人間が問題の解き方を説明しているようなイラストが描かれていた。

 

「凄く手が込んでいる!?」

 

「この本、面白いデス!」

 

「だろ?そして注目して欲しいのが最後のページ」

 

「スタンプカード?」

 

「一定範囲終わらせる度に小テストを実施、正解率が八割以上だったらスタンプを押して、その数に応じたご褒美が出される」

 

「ふらわーのお好み焼き食べ放題…遊園地の一日フリーパス付ペアチケット…ツヴァイウィングのライブ特別席チケット(注意:〇月〇日以降無効)…?」

 

「有効期限のあるご褒美を混ぜて危機感を煽っている。響は逆境に強いからこの方法が効果的だ」

 

「アタシも高校に入ったらこの問題集が欲しいデス!」

 

「良いぞ。ただし、学校の課題が終わるまではスタンプは押されないし、一回でもご褒美を貰った後に追試になるようなら未来のお説教、SAKIMORI流の生活指導、弦十郎との二十四時間組手が待っている」

 

「「ペナルティーもあった!!?」」

 

「当然だ。まあ、お前達にも用意する場合は、通常より勉強が遅れていることも考慮してペナルティーも少なくするつもりだ」

 

「ち、因みにどんな?」

 

「ナスターシャ教授に報告する」

 

「「ヒィィィー!!?」」

 

「高校に入学したら渡すけど、ご褒美を貰うなら覚悟しておけ」

 

 

 

「響、あんなもの作って貰ってたのか?」

 

「訓練中に勉強が大変だってポロッと言ってしまったことがあって、その数日後にあの問題集を渡されました。凄いですよ、あれ。お陰で全科目平均点を越えました…ご褒美よりも、お仕置きが怖くて頑張りました…」

 

「マムのお仕置き…(ブルブル)」

 

マリアが何かを思い出したのか、青い顔で身を震わせていた。

 

「そんなに怖いのか、ナスターシャ教授のお説教…」

 

「でも、分かります。わたしもお仕置きの中で一番怖いのが、未来からのお説教だから…(ブルブル)」

 

 

 

「…ねえ、切ちゃん。本なら良いんじゃないかな?」

 

「お~!確かに良さそうデスね!!」

 

「じゃあ、後はどんな本を選ぶかだね」

 

そう言って二人は、棚に並んだ本を確認し始めた。

 

「ん?あいつら、本を買うことに決めたのか?」

 

「ちょっと意外ですね。マリアさん、調ちゃん達は本を読むのは好きなんですか?」

 

「いいえ、特に好きではなかったはずよ。特に切歌は文字ばかりの本は嫌いだったはずだけど、今眺めているのは小説よね?どういうことかしら…?」

 

マリア達が疑問を抱いていると、調達にナナシが声を掛け始めた。

 

「連れてきておいて悪いが、本はあまりお勧めできないかもな」

 

「え?」

 

「どうしてデスか?」

 

「俺みたいに“収納”が使えないと、本って持ち運ぶのに向かないからだ。大きい本は重くて嵩張る。文庫本ならある程度は問題ないけど、他の物と一緒に鞄に入れたり、常にポケットに入れたりしていると、カバーを付けていても劣化が激しい。何より…雨が心配だな」

 

「あ、そうか。向こうは雨が多いんでしたっけ?」

 

「降水量はそうでもないけど、コロコロ天気が変わるらしい。突然通り雨に打たれることが考えられる」

 

「それじゃあダメデスね。違う物にしましょう」

 

そう言って、ナナシ達は書店を離れ始めた。

 

「一体どういうことでしょう?ただのお買い物じゃないみたいですね」

 

「何故雨を気にするの?…ま、まさか、私に内緒で何処かに遠出する計画を立てているのかしら!?」

 

響とマリアが、調と切歌の目的が分からず色々と仮説を立てている隣で、奏だけが何かを察していた。

 

(『持ち運びに向かない』、『向こうは雨が多い』…なるほど、それでさっきあいつはあの二人に『良い子過ぎる』って言っていたのか)

 

奏はチラリと自分の隣で未だに頭を悩ませている二人を見て、自分の思い当った事柄を伝えるか一瞬だけ考えて…黙っていることに決めた。

 

「ほら、何時までも考えていると、あの三人どっかに行っちまうよ」

 

「そうね、追いかけましょう!外泊なんて絶対に認めないわ!必ず証拠を押さえて阻止してみせる!!」

 

「マ、マリアさん、ちょっと待ってください!?」

 

突飛な方向に仮説を立てたマリアが急いで三人の向かった方向に進みだす。響が慌ててマリアの後を追い、奏もそれに続いた。

 

(どうせ、すぐに分かるだろう)

 

 

 

 

 

その後、調達は幾つかの店舗を訪れては何も買わずに出ることを繰り返し、合間にゲームセンターなどで遊ぶなどして過ごすうちに、あっという間に時間が経ち、気が付けば日が大分傾いていた。三人は今、飲み物を買ってベンチに座り休憩している。

 

「ま、まだ決まらないんでしょうか…?」

 

「い、一体何を探していると言うの…?」

 

一日中三人に見つからないように気を付けながら尾行を続けていたマリア達にも、流石に疲れが見えてきた。

 

「さて、大分時間が経ったな。どうする?まだ店を回って良い物を探すか?それとも日を改めて別の場所に探しに行くか?」

 

ナナシが調と切歌にそう声を掛けると、二人は顔を合わせて頷き合い、ナナシの質問に答えた。

 

「先生、私達…」

 

「何にするか決めたデス!」

 

「「マリアへの贈り物!!」」

 

「………え?」

 

物陰で二人の言葉を聞いていたマリアは、思わず声を漏らした。

 

「マリアさんへの、贈り物?」

 

(やっぱりね)

 

響もマリアと同様に疑問を感じていたが、奏は調達の言葉に納得していた。

 

「先生、今日一日私達の我儘を聞いてくれて、ありがとうございました!」

 

「俺は約束を守っただけだ。それで、『これから海外で頑張るマリアのために、何か少しでも力になれるような贈り物を選びたい』ってお願いは達成で良いのか?決まったなら買いに行こう。何に決めたんだ?」

 

「「!!?」」

 

ナナシの言葉に、マリアと響が驚き、そして今日一日、調達が何を悩んでいたのかを理解した。

 

 

 

 

 

国連と日本政府の話し合いの結果、特異災害対策機動部二課は国連直轄の組織として再編されることが決定し、マリアも調と切歌と同様にそこに所属することが決まっていた。

 

ただ、マリアは拘束期間が終われば、ツヴァイウィングの二人と共にイギリスでライブを行うことになっている。その後も、彼女の歌を多くの人に聴いて貰うため、各国を回っていく予定だ。

 

これまで頑張ってきた、そして、これからも頑張る家族のために、調と切歌は自分達に何かできることがないか考えた結果、二人はナナシに今回のお願いをしたのだ。

 

 

 

 

 

品物を買いに行こうとナナシが二人に促すが、二人はその場を動こうとしない。ナナシがそのことに疑問に思っていると、二人は笑顔でナナシに話し始めた。

 

「私達、今日は色んな事を経験することができました」

 

「乗り物に乗って、美味しい物を食べて、色んなお店を見て、とっても楽しかったデス!」

 

「それで、決めたんです。私達は、マリアに『想い出』を贈ろうって!」

 

「想い出?」

 

「はい。私達が今日教えて貰ったことを、今度は私達がマリアに教えてあげるんです!」

 

「それでそれで、最後に約束するんデス!『マリアが日本に帰ってきたら、今度は自分達で見つけた楽しい場所に連れて行くから、楽しみにしていてください』って!」

 

「そうすれば、マリアは日本に…私達の所に帰ることを楽しみに、外国でも頑張ってくれるかなって」

 

「アタシ達で、マリアをエスコートするデス!その時までにお小遣いを貯めて、今度はマリアと一緒に、マムに感謝を込めたプレゼントを買いに行くんデス!」

 

「マムが元気になったら、家族皆で一緒にお出かけする場所も決められたら良いなぁ」

 

調と切歌は、自分達の未来について語り続ける。もうそこには、迫り来る悲劇に怯え、苦しむ姿は見られず、家族全員が幸せになれる未来を信じて疑わない、輝かしい笑顔を浮かべていた。

 

「家族との想い出か。それは最高の贈り物だな!」

 

「そうデスよね!!…それで、デスね…」

 

「先生に、お願いがあるんですけど…」

 

「ん?」

 

調と切歌は、先程と一転して気まずそうな表情を浮かべたかと思うと、ナナシの方を向いて頭を下げてきた。

 

「お願いします、先生!お金を貸してください!」

 

「アタシ達が自由になったら、すぐにマリアはイギリスに行ってしまうデス!お小遣いを貯めようにも間に合わないデス!」

 

「え!?元々お前達が選んだ品物を、俺が購入するところまでが今回のお詫びだろ?なら、お前達がマリアと遊びに行く時の資金を俺が提供すれば良いだけじゃないのか?」

 

「今日一日で、もう充分過ぎるぐらいお詫びして貰いました。これ以上は申し訳ないです」

 

「お小遣い貰ったら絶対返すデス!借りるのがダメなら、何かアタシ達に仕事をください。何でも…はダメでしたっけ!?えっと、お掃除したり、お皿洗ったり…そうデス!ナナシさんにアタシ達の歌を好きなだけ聴かせてあげるって言うのはどうでしょう?」

 

「幾ら貢げばいい?一千万?」

 

「多過ぎデス!?桁がおかしいデス!!?」

 

「マリアやツヴァイウィングのお二人じゃないんですよ!?」

 

「これ以上の金額を動かそうとすると弦十郎達にバレるんだよな。自由に使えって言うのに、あんまり高額な物を買おうとすると何故か怒られる。先日も奏と翼、アイドル大統領のためにイギリスで拠点として使える家を購入しようとして説教された」

 

「当然デス!!」

 

「と、とりあえず、そんなに高額を出してもらう必要はありません!」

 

「そうか…それなら、今日の残った外出時間でカラオケに行こう。そこで二人の歌を沢山聴かせてくれ。それと引き換えにお前達がマリアと遊ぶための費用を全て俺が負担する。これならどうだ?」

 

「そんなことで良いんですか?」

 

「俺には得しかないから全然構わない。要望があるとすれば、俺への見返りなんてどうでもいいから、あの学祭の時みたいに楽しく歌ってくれ!」

 

「…はい!」

 

「分かったデス!」

 

「そうと決まったら、一秒だって無駄にできない!近くにカラオケがあるからすぐに向かうぞ!」

 

ナナシは調達を急かしながら、ショッピングセンターの出口へと向かって行った。

 

 

 

物陰から出て三人の背中を見送ったマリアは、顔の変装道具を外していった。

 

「あれ?マリアさん、兄弟子達を追いかけなくて良いんですか?」

 

「…ええ、もう良いわ。二人共、今日は付き合ってくれてありがとう」

 

何処か晴れやかな表情をしたマリアは、歩みを進めながら言葉を続ける。

 

「あの子達の期待に応えるためにも、こんな事をしている場合じゃないわ。ロンドンでのライブまでに、少しでもコンディションを仕上げておかないと!」

 

そう言って、二課への帰路につくマリアの後を、奏達は笑みを浮かべながらついて行った。

 

 

 

 

 

翌日

 

あの後、本部へと帰ってきた調と切歌は、一日中歩き回った疲れからマリアに感想を伝えるのもそこそこに眠りについてしまった。マリアも二人が帰宅したのを確認したところで限界を迎え、ベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちた。

 

マリアが目を覚ます頃にはすっかり日も登っており、室内に調と切歌の姿が無かった。恐らく誰かと共に部屋の外に出たと思われ、ちょうどマリアが起床してすぐに響と奏がマリア達の様子を伺いに来たので、マリアは二人に頼んで調達を探しに部屋の外へと連れ出して貰った。

 

雑談をしながらマリア達が本部内を歩いていると、三人の視線の先に人だかりができているのが見えた。そこには翼とクリスの姿もあり、まるで誰かを憐れむような表情で一点を見つめていた。

 

嫌な予感がしたマリアは速足で人だかりへと近づき、マリアの接近に気づいた職員達は、スッと素早く場所を開けた。マリアが全員の視線の先に目を向けると、そこには…

 

 

 

『不審者に注意!!』と見出しを記載された記事に、顔を隠した黒スーツの不審人物が物陰から調と切歌の様子を窺っている写真が何枚も貼り付けてあった。

 

 

 

ビシリと固まるマリアと、自分達の姿は映っていないことに安堵した奏と響に、いつの間にか三人の背後に近づいていたナナシが笑いながら話しかけ始めた。

 

「いや~驚いたよ。昨日本部に帰った後、念のために街の監視カメラの映像を集めて確認していたら、変な奴が俺達の後をずっとつけていて…ああ、安心してくれ。既に身柄は確保しているし、今二課の人間が話をしているところだから」

 

嘘は言っていない。写真の人物の身柄は随分前から二課に確保されているし、今現在話しかけられている。

 

マリアが固まったまま動けないでいると、背後から今一番聞きたくない声が聞こえてきた。

 

「マリア…」

 

小さく、震える声で名を呼ばれたマリアが、ビクリと体を震わせて、まるで人形のようにぎこちない動きで振り返ると、そこには青い顔をした調と切歌が立っていた。

 

(お、終わった…)

 

怯えられるか、軽蔑されるか、激怒されるか…自分の家族達がこの後どんな反応をするかを考えて、マリアの心は恐怖に支配される。だが、マリアが予想した悲惨な未来が訪れることは無かった。

 

「わ、私達、まだ米国から狙われているのかな?」

 

「もう、お外には出ちゃダメデスか?」

 

「え?(私だってバレていない!?)」

 

ナナシの“認識阻害”は写真などの記憶媒体にも有効である。この場合、ナナシが能力を解除するか、調達が写真の人物がマリアだと見破らない限り“認識阻害”は有効のままだ。

 

(二人にバレていないなら、まだ誤魔化すことはできるはず…ならば!!)

 

マリアは“血晶”を使って、とても楽しそうにマリアの様子を見ていたナナシに“念話”を繋げる。

 

(ナナシ、望みは何!?歌!?歌でしょう!!?いくらでも歌ってあげるからお願いだから二人には黙っていて!!!)

 

形振り構わず懇願するマリアにナナシは返事をせず、ニヤニヤと笑ったままナナシは調と切歌に話しかけ始めた。

 

「その心配はないぞ、二人共。この不審者の身元は分かっている。他国のエージェントでもなければ、お前達のことをシンフォギア装者や元F.I.S.として尾行していた訳でもない」

 

「え?」

 

「じゃあ、この怪しい人は一体誰デスか!?」

 

切歌の質問に、マリアは恐怖で体をビクリと震わせながらナナシに“念話”を飛ばし続ける。その全てをスルーしながらナナシは二人に話し続けた。

 

「この人物は、今は働いていない二十歳の大人で、俺達、というよりお前達二人を尾行していた理由は、『二人のことが心配だから、自分が見守っていてあげないと!』って思っていたかららしい」

 

(ちょっとーーー!!?)

 

ナナシの言葉に嘘は無い。だが、あまりに悪意のある言い方に、マリアは心の中で絶叫する。

 

「え?え?」

 

「な、何で知らない人がアタシ達を見守ろうとするんデス?」

 

困惑する調達に、ナナシは表情を真剣なものに変え、二人に説明していった。

 

「今までお前達には無縁だったかもしれないが、何処の国にもお前達みたいな可愛い女の子に邪な考えを持って近づいてくる人間がいるんだ」

 

「か、可愛いデスか!?え、えへへ、ちょっと照れくさいデス」

 

「先生、邪な考えって?」

 

「それを俺の口から説明するのに抵抗があったから、この前のお願い事をしたんだ。あまり大っぴらに他人に聞くことではないから、お前達の中で唯一成人しているアイドル大統領に自分で調べてもらって、それとなーくお前達に教えて貰おうと思って…一つ目のお願いも、お前達が安易に迂闊な言葉を言わないように気を配ったんだ」

 

「な、なるほど」

 

「そうだったんデスね」

 

「まあ、安心しろ。日本はかなり治安が良い国だし、拘束期間が終わっても二課の方でお前達のサポートはする。響達も先輩としてお前達に色々教えてくれるから、困ったらすぐに頼ると良い。悪かったな。俺がついて行ったのに怖い思いをさせて」

 

「先生は悪くないです!悪いのはその変質者です!」

 

「その通りデス!悪いのはその変態さんだけデス!」

 

「ッ!?」

 

調と切歌がナナシをフォローするために放った言葉がマリアの胸に突き刺さり、体が崩れ落ちそうになるのをマリアは必死になって耐えていた。

 

「そう言ってもらえると助かる。ああ、アイドル大統領。今更だけど勝手に二人を部屋から連れ出して悪かった。三人共寝坊して朝食が食べられなかったって切歌から“念話”が届いたから食堂に連れて行っていた。二人はお前にも声を掛けたけど起きなかったらしいから、先に二人だけ連れて行った。お前は朝食どうする?」

 

「…奏達に、食堂まで連れて行ってもらうから、二人は先に部屋に戻っていて」

 

「分かった。えっと、マリア、強引に調べ物をさせようとしてごめんなさい」

 

「これからはアタシ達も気を付けるデス。だから、あまり心配しないで大丈夫デス!」

 

力なく返事をしたマリアに、調と切歌が心配そうに声を掛けてからその場を離れて行った。マリアが離れていく三人の背を呆然と眺めていると、不意にナナシから“念話”が届いた。

 

(自ら行動して二人に危機感を持たせるなんて、流石はアイドル大統領!二人の頼れるお姉ちゃんだな!)

 

(ッ!!?)

 

(見返りなんて無くても二人には内緒にしておくから安心してくれ。拘束期間が終われば本格的に同じ組織の仲間になる。今後も末永く、よろしくお願いします!)

 

一瞬だけマリアの方を振り返ってニヤリと悪い笑顔を浮かべるナナシ。それを見たマリアはその場にヘナヘナと座り込んでがっくりと俯いてしまった。そんなマリアの肩を、翼とクリスが近づいてきてポンと優しく叩いたのだった。

 




長くなった割に食べ物ネタとお金ネタにだいぶ偏ってしまいました。もう少し多彩な話を考えられるようにしたいですね。
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