戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

91 / 212
第89話

ジュ~~~…

 

「あ、あんなにキャベツを入れるんですか!?ボク、食べきれませんよ!?」

 

「だいじょーぶ!おばちゃんのお好み焼きは美味しいから、気が付くと五枚や六枚はぺろりと食べれちゃうよ!」

 

「そりゃてめえだけだろ、この大食いバカが…」

 

「フフッ、きっと大丈夫だから、出来上がるのを楽しみにしてね」

 

「は、はい…」

 

「外国の子かい?可愛らしいお嬢ちゃんだね」

 

「ちょっとした縁でしばらく俺達と過ごすことになったんだ。お好み焼き食べるの初めてだから、この子がお好み焼きを好きになるかはおばちゃん次第だ!」

 

「おやおや、責任重大だね?ほら、出来たよ!」

 

「あ、あんなにキャベツが入っていたのにここまで薄く…そうか!キャベツは約九割が水分だから、加熱することで収縮して…」

 

「おや?随分利発そうな子だね?」

 

「こう見えて響よりもずっと賢いからな!」

 

「ちょっ!?言い方悪くないですか兄弟子!?確かにそうですけど、それはここにいる皆同じでしょう!?」

 

「あたしらまでお前と同列みたいに言うな!!」

 

「エルフナインちゃん、冷めちゃうから考えるのは後にして、先ずは食べようか?」

 

「は、はい!頂きます………!お、美味しいです!キャベツが甘くて、ソースが濃厚で、とっても美味しいです!」

 

「あははは!それは良かった。ほら、顔にソースが付いてるよ。拭ってあげるからジッとしてて」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「あははは!そうしてるとエルフナインちゃん、見た目通りの子供みたい…わぷっ!?」

 

「響も顔にソースと青のり付いてるよ。ほら、こっち向いて」

 

「全く、てめえも人のこと言えねえくらいガキじゃねえか…ふぐっ!?」

 

「お前もだよ、クリス。何なら一番ひどいじゃないか。全く…大きな子供の世話は大変だな?未来お母さん」

 

「でも、元気で笑っている姿を見るのは幸せですよ?ナナシお母さん」

 

「違いない」

 

「あっはははは!まるで子持ちの母親同士の会話だね!」

 

「「いえいえ、ペット自慢をする飼い主の会話です」」

 

「ちょっと未来―!?兄弟子―!?」

 

「てめえご都合主義!?その子にまで悪影響を与えるんじゃねえ!!」

 

「フフッ、皆さん仲良しですね」

 

 

 

 

 

「よっと」

 

パコォォォン!

 

「奏さん、凄いです!またストライクです!」

 

「次はエルフナインの番だ。頑張りな」

 

「は、はい!」

 

「あまり気負うなよ?」

 

「エルフナイン、投げる時に重心が右に寄り過ぎだ。少しだけ…そうだな、体重の5パーセントくらい左に傾けるようイメージしてみろ」

 

「5パーセント…やってみます!えい!」

 

パコォォォン!

 

「やった!やりました!ストライクです!」

 

「……」

 

「どうした?SAKIMORI?『投げる相手に話しかけて妨害をするのは無し』ってルールは守っているぞ?ただアドバイスをしただけだ」

 

「…分かっている。だが、アドバイスと称してこちらの邪魔をするのは許さんからな!」

 

「分かっているさ!さーて、『ボウリングの優勝者はビリに好きな命令ができる権利』、SAKIMORIに何をさせようかな~?」

 

「自分が優勝するだけでなく、私がビリになることまで勝手に妄想するんじゃない!見ていろ!剣としてこの身を鍛えた私はこの程度の児戯、容易く好成績を叩き出してみせる!」

 

「「おお~!(フリだな…)」」

 

「頑張ってください!翼さん!」

 

「無論だ!よし、行くぞ…!」

 

「あ、エルフナイン、翼に着せるとしたら、この中ならどんな服が良いと思う?」

 

「えっ!?こ、こんな過激な服を着てもらうんですか!!?」

 

ツルッ ガタンッ!

 

「きっさまぁあああああああ!!!」

 

「俺はエルフナインと話していただけだ。盗み聞きなんて趣味が悪いぞ?」

 

「貴様は何処まで姑息なのだ!?」

 

「フッフッフッ!お前をからかうためなら、俺は何処までも姑息になれるのさ!さて、弦十郎仕込みの力の制御で、華麗に優勝を掻っ攫うとしよう!」

 

「…~♪~♪~♪」

 

ツルッ ガタンッ!

 

「SAKIMORI、貴様…!?」

 

「私はただ、応援の歌を歌っただけだ!」

 

「上等だ!お前にだけは絶対に負けない!!」

 

「それはこちらのセリフだ!!」

 

(悪戯心が籠った翼の歌とか激レアじゃないか最高か!!?奏、エルフナイン!後で何でもするから余計な指摘はしないでくれよろしくお願いします!!)

 

「…さて、エルフナイン?あたし達で優勝対決をするとしようか?お互い全力を出してあのバカ達に下す命令を考えるとしよう!」

 

「あ、あははは…ま、負けません!」

 

 

 

 

 

『ピーカンの空に シュワシュワな噴水のシャワー いえーっす!ナウいワンピ GoGoデス~』

 

「何だか明るい曲ですね?」

 

「これは何の曲なの?ナナシ?」

 

「知らない。適当に調べて歌詞を見てみたら、何となく曲の雰囲気が切歌に合いそうだから奨めてみたんだ」

 

『はいけい、みなサマへ えっと、なんといいますか 冷たくなった手に つなぐ場所をどーも☆^(o≧∀≦)oデス』

 

「確かに、切ちゃんに合った明るくて楽しい雰囲気の曲…だけど…?」

 

「ああ、そのはずなんだが…?」

 

「…?お二人共、どうかしましたか?切歌さん、そろそろ歌い終わりますよ?」

 

「……」

 

「切歌?どうしたの?気分でも悪いの?」

 

「…消えていなくなってしまいたい、デス…」

 

「切ちゃん!?」

 

「切歌さん!?」

 

「切歌!?ちょっとナナシ!切歌に何を歌わせたの!?」

 

「いやマジで分かんねえ!?切歌どうした!?何故そんなに絶望しているんだ!!?生きるのを諦めるな!」

 

「ア、アタシもよく分からないデス…何故かこの曲を歌っていたら、言いようのない恐怖と恥ずかしさと、アタシは絶対に逃げられないんだっていう無力感に襲われて…まるで、鎌を持った死神サマから命からがら逃げ切って、家族が待っているお家に帰ってホッとしたと思ったら、お家の中で死神サマがお茶を飲んで寛いでいた、みたいな、そんな絶望を感じたデス…」

 

「そ、そうなのか…?えっと、悪かった。何だか怖い想いをさせたみたいで…」

 

「イ、 イヤイヤ!ナナシさんは別に何にも悪くないデス!アタシももう全然平気デス!!」

 

「そ、そうか、それなら気を取り直して次の曲に行こう!次は調だったよな?」

 

「は、はい…あれ?先生、この曲って…?」

 

「ああ、さっきの曲の関連曲みたいだ。曲名も歌詞の雰囲気も近いから、また切歌の番になったら歌ってもらおうと思っていたんだが…」

 

「なら、せっかくだからこれは私が歌って…」

 

「それはダメデェェェェェェェス!!?!?」

 

「ッ!?切ちゃん!?」

 

「その歌を他人に歌われるくらいなら、アタシが歌うデス!アタシが一人で死神サマに打ち勝ってみせるデス!!」

 

「待て待て落ち着け!?無理するな切歌!別に誰も歌わなければ良いだけだから!俺が変な曲奨めて悪かった!」

 

「そ、それならナナシさん、一緒に歌ってください!歌うのが苦手なナナシさんが勇気を出して一緒に歌ってくれるなら、きっと死神サマにだって負けないデス!!」

 

「うぐっ!!?………………よ、よーし!!やってやろうじゃないか!!ただその前にエルフナイン!調!アイドル大統領!何かテンションが上がりそうな歌を歌ってくれ!ただの人間と“紛い物”に、神に挑むための勇気を分けてくれ!よろしくお願いします!」

 

「え、えっと…わ、分かりました!エルフナイン、マリア、私達の歌で、先生と切ちゃんを元気付けてあげよう!」

 

「は、はい!微力ながらお手伝いします!」

 

「何故カラオケで神に決戦を挑む覚悟を決めなければならないの!?」

 

 

 

 

 

錬金術師キャロルが自ら命を絶ったことで、世界が分解される危機は去ったと判断された。主を失ったオートスコアラーの存在や、未だ所在の判明しないチフォージュ・シャトーなどの問題も残っているが、そちらは今後時間を掛けて捜索していくことがS.O.N.G.の方針として決定された。

 

事件が一応の解決をしてからというもの、ナナシはエルフナインと装者達を連れて遊び回っていた。

 

「普段休めと煩いんだから別に構わないだろ?」と言って、かなり強引にエルフナインの外出許可をもぎ取り、仕事もせずに遊ぶナナシだったが、周囲の人間はむしろそんなナナシの様子に心から安堵していた。一時期、誰の目から見ても危ぶまれる様子だったナナシが、他人をからかい楽しそうに笑っている姿を見て、ようやくいつも通りのナナシに戻ったと考えたためだ。

 

普段注意されても仕事を続けるナナシが珍しく遊び回っているのも、キャロルを救えず、失意に落ち込むエルフナインや装者達を茶化して元気付けようとしていると考え、大人達はむしろナナシが気にせず遊べるように、気合を入れて仕事に取り組んでいた。装者達もまた、そんなナナシの思惑に気づきつつ、それでも特に指摘することなくエルフナインと共に色んな遊びに付き合っていた。

 

そして、それも偽りのないナナシの思惑であるが故に…共犯であるエルフナインを除き、ナナシの『悪巧み』に気が付く人間は、S.O.N.G.には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「どうだ?エルフナイン?タイトルの通り、モロに錬金術をテーマにした話だけど、気になるところはあったか?」

 

「非情に興味深いですね…物質を再構成したり、生命力をエネルギーとして利用するといった思想は、ボク達の知る錬金術の技術にも近いものはありますが…魂を無機物に定着させたり、錬金術師が追い求める『真理』に意思があるように表現して『神』と同列に扱うなどといった発想は、なかなかに斬新な考えだと思います」

 

「あの変態人形共は魂を定着させているのとは違うのか?」

 

「キャロルのオートスコアラー達は、キャロルの思考パターンを参考に作り上げた人工知能をインストールすることで人に近い思考演算を行っているため、魂の定着とは異なるものですね」

 

「…ん?と言うことは、あの人形共の言動はあのクソガキの潜在意識に起因するってことか?」

 

「ま、まあ、そうとも考えられますね」

 

「…へぇ(ニヤリ)」

 

「ど、どうしましたか?」

 

「いやいやいや、何でもない何でもない!」

 

ナナシとエルフナインは現在、風鳴家にあるナナシの自室にいた。

 

弦十郎から部屋を与えられてはいるが、常に活動し続け、“収納”の能力があるナナシの部屋は、アニメや映画を見るために設置した大型モニターと再生機器ぐらいしか置かれている物が無く、最近まではベッドすら存在しなかった。現在はとある理由で設置されたベッドに腰かけて、ナナシとエルフナインが一緒に漫画を読みながら他愛無い会話を繰り広げていた。

 

「あとオススメの作品は…これとかどうだ?」

 

「このキャラクターは…青い…何ですか?これ?」

 

「作中だと青狸って言われて怒ったり、海外だとアザラシって言われたりするけど、正解は猫型ロボットだな。俺の目指す理想のキャラクターだ」

 

「猫!?ロボット!!?え!?これがナナシさんの理想ですか!!?」

 

「本当は猫耳が付いていたんだけど、ネズミに齧られて無くなっちゃったらしい。それ以来大のネズミ嫌いって設定だ。そして、こいつはダメな主人公を助けるために未来の世界から来たロボットで、何でも入るお腹のポケットから凄い能力を持った未来の道具を出して、空を飛んだり、一瞬で外国に移動したり、時間を操作することさえ可能な、この国で一二を争うくらい有名なご都合主義キャラクターだ。俺もいつか、こいつみたいにあらゆる状況に対応できる万能なご都合主義になりたいと思っている!」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「別作品の、気合いだけでその世界の法則にさえ一時的に抗ってみせた、千の顔を持つバグキャラなんかも理想にしているけど…理不尽筋肉枠は俺の師匠で間に合っているからな。弦十郎ならきっとそのうち、全身からビームを放つことさえできるようになるはずだ!!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、もちろんだ!!」

※注意:主人公の勝手な“妄想”です。現時点でそんな流れを実装する予定はありません(by作者)

 

そうやって楽しく会話をしていたナナシとエルフナインだが、不意にエルフナインが表情を暗くして俯いた。ナナシは、そんなエルフナインの頭を優しく撫でる。

 

「不安か?」

 

「…はい…ボクに、できるでしょうか?」

 

「ああ、お前ならできるさ。何の根拠もない俺の“妄想”だけど…あのクソガキ以外では、お前にしかできないことだ」

 

「…でも…ボクは…」

 

「エルフナイン」

 

名を呼ばれ、エルフナインが顔を上げてナナシの方を見る。ナナシはエルフナインに優しく微笑んで、ある事を問いかけた。

 

「お前にとって、錬金術師イザークは何者だ?」

 

「っ!?」

 

その問いに、エルフナインはビクリと震えた後…ナナシの目を真っ直ぐに見て答えた。

 

「…『ボク達』の、大好きなパパです」

 

「なら、きっとできるさ!」

 

「…はい!」

 

ナナシの言葉に、エルフナインは笑みを浮かべて答えるのだった。

 

「ああそうだ、エルフナイン。もし俺達のやっていることがバレたら、ちゃんと俺に脅されて協力させられたって正直に言えよ?」

 

「っ!?」

 

…だが、続くナナシの言葉に、エルフナインの笑みは消えて驚愕の表情を浮かべる。

 

「そんな!?そんなことできません!!」

 

「いやいや、事実だろ?お前がキャロルのことを報告しようとするのを、お前と家族の身の安全を楯に俺は止めたんだから」

 

「それは、ボク達のせいで!!」

 

「違うな。俺は俺のやりたいことをやっているだけだ」

 

「…何で、ナナシさんは…」

 

クスクスと笑いながら話すナナシに、エルフナインはそう問いかける。

 

「ん~…当ててみてくれ。理由は大きく分けて三つだな」

 

「三つ…一つは、S.O.N.G.の皆さんのため、ですよね?」

 

「Exactly!!これからもあいつらをからかいながら、歌姫達の最高の歌を聴いていきたいからな!」

 

「…二つ目は…やっぱりボクの…ボク達のため、ではないんですか?」

 

「Exactly!!お前達の『せい』じゃなくて、お前達の『ため』な!ここ重要!テストに出るぞ!」

 

ナナシが茶化しながらエルフナインの言葉を肯定する。ただ、残り一つの理由が分からず、エルフナインは悩んだまま黙り込んでしまった。

 

「まあ、優しいお前には分からないか…最後の理由は、俺はあのクソガキのことを気に食わないから、報復のために嫌がらせをしたいだけだよ」

 

「報復、ですか…」

 

「あのクソガキのせいで、色々迷惑を被ったからな!俺は器が小さいから、仕返しをしたいだけだよ!あははははは!」

 

そう言って、ナナシは心底楽しそうに笑い声を上げて…

 

 

 

「…他にも、理由がありますよね?」

 

 

 

…エルフナインの言葉に、ナナシはピタリと笑うのをやめた。

 

「…どうして、そう思った?」

 

ナナシは焦ることも、取り乱すこともなく、ただ静かにエルフナインにそう問い返した。

 

「…響さんが意識を失って、ナナシさんの様子がおかしくなってしまったために、奏さん達は弦十郎さんや了子さんといった大人の方々も集めて何度も話し合いを行っていました。その話し合いに、作業の合間でボクも参加させていただいていたんです」

 

「え!?そんな大規模な話し合いがされていたのか!!?…わ、悪い、続けてくれ…」

 

「ナナシさんについてのお話を聞いて、ボクがナナシさんに抱いた印象は、ナナシさんは嘘を好まない方だということです」

 

「え?そうか?俺、かなり適当なこと言って追及を躱したりするぞ?」

 

「確かに、全く嘘をつかない訳ではありません。ですが、ナナシさんは追及を躱すために、嘘を言って事実を捻じ曲げるようなことはしていないと思いました。そういった行いはせず、むしろ肯定してみせた後、一部の真実を前面に出すことで、本当に隠しておきたい事柄をコッソリ仕舞い込む…そういった印象を受けました」

 

「……」

 

「ですから、先程の理由も『大きく分けて』三つあると…つまり、大枠で肯定した先程の理由の中に、ナナシさんが隠しておきたい別の理由が存在するのではないかと…す、すみません、ボク、踏み込み過ぎましたか?」

 

「…エルフナイン、お前、凄いな?」

 

エルフナインの指摘を、ナナシは怒ることも、否定することもなく、称賛…肯定してみせた。

 

「ちなみに、どの理由か分かったりするか?」

 

「…根拠は、ありません…ですが…恐らく、『報復』では、ないでしょうか…?その、キャロルに対する当たりが、強い気がしたので…」

 

「うん、お前なら今回の作戦は上手くやれる!今確信した!!」

 

どうやら図星だったようで、ナナシはエルフナインをそう称えた。エルフナインは、これ以上踏み込んで聞いて良いのか分からず、ジッとナナシを見つめて返答を待った。すると…

 

「…ああ、俺が今回の嫌がらせをすることを決めた理由には、極めて個人的な八つ当たりが含まれている。ただ、凄くかっこ悪い理由だから、できれば内緒にさせてくれ。よろしくお願いします!」

 

…それまでの全てを肯定しつつ、ナナシは核心部分についての回答を拒否した。

 

「…分かりました。すみません、無遠慮に聞いてしまって」

 

「良いんだよ。俺はお前を脅迫して協力を迫っている酷い奴なんだから…ほら、そろそろ始めよう」

 

そう言って、ナナシが自分の膝をポンポンと叩く。エルフナインはコクリと頷き、手に持った漫画を閉じてベッドの上に上がると、横になってナナシの膝に頭を乗せた。

 

「頼まれたから続けているけど、寝苦しくないか?普通の枕が良かったら言えよ?」

 

「そ、その、以前して頂いて、凄く安心できる気がして…ご迷惑でなければ…このままで…」

 

「了解…お休み、エルフナイン」

 

ナナシは優しい笑みを浮かべて、横になるエルフナインの頭を撫でる。ナナシの手の温もりに安らぎを感じて、エルフナインの意識はすぐに眠りへと落ちていった…

 

 

 

 

 

目の前に、様々な光景が浮かび上がる。

 

場所も、昼夜も、季節も、何もかもが異なる光景が目まぐるしい勢いで流れていき、膨大な量の情報が周囲を行き交っていた。

 

それは、数百年に渡るキャロルの記憶…錬金術師キャロル・マールス・ディーンハイムが、自身の記憶を予備躯体に転写している際の、情報処理による『夢』のようなもの…

 

 

 

…だが、そんな光景の中に、突如として妙な光景が混ざり始める。

 

 

 

それは、誰かと一緒になって笑い合う自分の姿。誰かと一緒に知らない食べ物を食べて、知らない場所で遊んで、知らない歌を歌う…数百年、他人と関わることなく知識の探求を進めていたキャロルにとって、あるはずのない記憶。

 

有り得ないはずの、自身の記憶…それが映し出される理由もまた、その記憶の中に存在していた。

 

『キャロルに、世界を見せる…?』

 

『Exactly!!』

 

それは、ナナシと呼ばれる“紛い物”と、自分が…否、エルフナイン(もう一人の自分)が会話をしている記憶。

 

『あのクソガキは今、ずっと眠っているのと同じ状態。途中で起きて行動を起こすことができない、そうだな?』

 

『は、はい…』

 

『なら、今のうちにあいつが知ろうとしない世界についての知識を、お前を通して送り届けてやろう!』

 

『っ!?ボクを通じて、キャロルに世界の知識を…?』

 

『Exactly!!あいつが拒否できない今のうちに、世界の楽しさ、素晴らしさを叩きこんで、世界を分解するなんて考えを捨てさせよう!』

 

『で、でも…そんなことをしても、キャロルはきっと…』

 

『まあ最後まで話を聞け…そうやってあいつに世界のことを知らしめて、あわよくばお前達の父親の命題も解いてしまおう』

 

『!!?』

 

『お前はあいつと一緒に、父親の命題の答えを探したかったんだろ?ならいっその事、『協力』だけじゃなくて『競争』しようぜ!お前があのクソガキに世界の知識を送って、クソガキに『万象黙示録』以外の答えを出させる。お前自身も世界を知りながら父親の答えを考え続ける。どっちが勝っても万々歳!俺としては、お前に完全論破されて悔しがるあのクソガキの顔が見たいから、是非お前に勝ってほしいな!』

 

そんな、何の勝算もない思い付きのような計画を、失敗すれば世界が分解されるかもしれないこの状況でナナシは行おうと言うのだ。正気の沙汰とは思えない。

 

不安そうにナナシを見るエルフナインに、ナナシは優しい笑みを向けて、エルフナインに協力するよう促す。

 

『確かに俺の言葉や、お前の言葉であいつが意見を変えるとは思わない。でも、あいつの父親の言葉ならどうだ?』

 

『!!?』

 

『あのクソガキが世界を敵にすることさえ厭わない、大切な父親…そんな父親が残した命題の答えなら、あいつ自身が止められない復讐心を、止めてくれないかな?お前がそんな父親の命題の答えをあいつに示して、あいつを納得させることができれば…今度こそ、あいつを生かしたまま助けることができる』

 

『キャロルが…生きて…』

 

『ま、ダメだったら俺がご都合主義パワーで何とかしてみせるさ!…どうする?エルフナイン?成功すれば、あいつと一緒に笑える世界が手に入るかもしれないぞ?』

 

『……ナナシさん』

 

ナナシの計画を聞いたエルフナインは、しばらく悩んだ末に口を開く。

 

『ボクは、キャロルの計画を阻止するために…その過程で、キャロルが命を失うことも覚悟して、あなた達の元へ来ました』

 

『……』

 

『でも…それでも…我儘を言って、良いですか?』

 

『どんと来い!!』

 

 

 

『ボクは…キャロルに世界を識ってほしい!!笑ってほしい!!生きてほしいです!!!…だから…どうか、力を貸してください!!ボクがパパの命題に、答えを出してみせます!!』

 

 

 

(できる訳があるはずない…あれはただの廃棄躯体…パパの命題に、答えるなど…)

 

『キャロル…生きて、もっと世界を識るんだ』

 

エルフナインが伝えてくる記憶に交じって、父親の最期の記憶が映し出される。

 

(パパの命題には…私が答える…万象黙示録の完成によって…)

 

『パパはね、世界の全てを識りたいんだ。人が人と分かり合うためには、とても大切なことなんだよ』

 

そう決意するキャロルの目の前に、イザークの記憶が流れ続ける。それはまるで、記憶の中の父親が、目の前の娘に何か大切なことを伝えようとするかのようだった…

 




カラオケの件は世界線とか複雑な設定は無く完全なネタですw
度重なる主人公のご都合主義によって消えてしまった原作の名シーン、名エピソードを何とか出来ないかと作者が頭を悩ませた結果、切歌本人に例の曲を歌ってもらうという鬼畜の所業になりましたw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。