戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第90話

響達が自身の心の闇に打ち勝ち、追い詰められた錬金術師キャロルが自害した…周囲がそう信じてから数日後、一同は指令室に集まっていた。

 

「こちらが、生まれ変わったあなた達のギアペンダントです」

 

ナスターシャ教授がマリア、切歌、調の三人に、ギアペンダントを差し出す。

 

「機能向上に加え、イグナイトモジュールも組み込んでいます」

 

三人が同時に手を伸ばし、ギアペンダントを受け取ろうとして…ナスターシャ教授が、三人の手を包み込むように押さえた。

 

「無茶をするな、とは言いません。これはそのための力です。ですが、全員生きて戦場から帰って来なさい…娘に先立たれるのは、もう二度と御免です」

 

「…ええ、分かったわ。マム」

 

「ちゃんと帰ってくる」

 

「約束するデス!」

 

母親の想いに三人はそれぞれ答えながら、ギアペンダントを受け取った。

 

「まあ、ナスターシャはマリアちゃん達の無茶を注意なんてできないわよね?私がどれだけ注意しても隙あらば娘達のギアの改修作業を続けるんですもの。ほんと、似た者母娘なんだから」

 

「っ!?了子、あなたは…!」

 

「事実でしょ?まあ、何処かの誰かがここ最近エルフナインちゃんを独占していたせいで私達が忙しかったって理由もあるけど?」

 

「はうっ!?ずびばぜん!」

 

「大人げないぞ、了子。出来る女は子供に八つ当たりするんじゃない」

 

「この場で恐らく一番年上の男の子に言ってるんだけど?」

 

「ぼくさんさいだからわかんない」

 

「都合の良い時だけ精神年齢を使わないの!」

 

「ブーメランだぞ中身数千歳の自称女の子!!」

 

「喧嘩売っているのか推定数千歳のクソガキがぁ!!」

 

『あはははは!』

 

了子とナナシのやり取りに、周囲の人間が思わず笑い出す。そんな中で、マリアはナスターシャ教授から受け取ったアガートラームを見つめていた。

 

「セレナから受け継ぎ、マム達によって生まれ変わったアガートラーム…この輝きで、私は強くなりたい」

 

「うむ。新たな力の投入に伴い、ここらで一つ特訓だ!」

 

「「「「「「「「「特訓!?」」」」」」」」」

 

弦十郎の言葉に、それぞれ反応が分かれる。マリア達とエルフナインは良く分からずキョトンとした顔になり、響は瞳を輝かせ、翼は気を引き締め、奏は苦笑し、クリスは顔を顰めて、ナナシはそんな全員の顔を見てニヤリと笑う。

 

「オートスコアラーとの再戦へ向け、強化型シンフォギアと、イグナイトモジュールを使いこなす事は急務である!近く、筑波の異端技術研究機構にて、こちらが依頼した品物の受領任務がある。諸君らはそこで、心身の訓練に励むと良いだろう!」

 

「特訓と言えばこの私!任せてください!」

 

「依頼した品物?…ああ!アレか!了子とナスターシャ教授が用意してくれた玩具(おもちゃ)!」

 

「「「「「「「「玩具?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

時は過ぎ、装者達は筑波にある政府保有のビーチに赴いて特訓…とは名ばかりのバカンスを楽しんでいた。

 

「えい!」

 

パシャッ!

 

「きゃあ!?」

 

「やったな!お返しだ!」

 

バシャッ!

 

「わぷっ!?やりましたね!お返しのお返しです!あっ…」

 

バッシャア!

 

「ぶふぁっ!!?ぺっぺっ!やりやがってなてめえ!!」

 

ガシャガシャッ!

 

「ちょっ!?何でクリスちゃん、水鉄砲なんて持ってるの!?しかも二丁!?」

 

「ご都合主義の野郎が「クリスにはこれがないとな!」って訳わからん理由で渡してきやがったんだが丁度いい!!持ってけダブルだ!!」

 

バシャシャシャシャッ!!

 

「わあーーー!!?やめてとめてやめてとめていやー!!」

 

「「あははははは!」」

 

「はしゃいでいるな、立花達は…」

 

「本当にね…あら?ナナシと調達、それにエルフナインは何処に?…まさかあの子達、あの男とコッソリ遠くへ遊びに!?」

 

「マリア~!ただいまデス!」

 

「む?戻ってきたようだぞ?」

 

「ちょっとナナシ!その子達を連れて勝手に遠くへ行くんじゃないわよ!一言声をかけなさい!」

 

「悪い悪い」

 

「全く…一体何処へ行っていたの?」

 

「海底探索していました!」

 

「「想定以上の遠出だった!!?」」

 

「凄かった…“障壁”のお陰で、海の中を歩きながら見て回れた…」

 

「まるで絵本の中に入ったみたいだったデス!」

 

「とても貴重な経験でした!」

 

「思い付きで誘ってみたけど、好評で何よりだ。ただ、“血晶”を使って勝手に行くのは禁止な?万が一“障壁”が解除されたら危ないし、普通に遭難する可能性が高いからな。また行きたかったら必ず俺に声をかけること!約束だからな!」

 

「「「はーい!!」」」

 

「その男の前に、まず私に声をかけなさい!!」

 

「ふふっ、お前達、まるで親子のようなやり取りだな?」

 

「なっ!!?ななな、何を言っているのよ!?この剣!!?」

 

「お父さん…こんな感じなのかな?」

 

「ナナシさんがお父さんなら、毎日とっても楽しそうデス!」

 

「確かに…ナナシさんからは、時々パパと同じ暖かさを感じます」

 

「う~ん、俺は何処かの誰かさんのせいで、父親よりも母親の方がしっくりくるな。何処かの誰かさんのせいで…」

 

「私の方を見ながら二回言うな!?」

 

「信じられるか?このSAKIMORI、以前朝に起こすために部屋の前で声をかけたら、下着姿のまま襖を開けやがったんだぞ?」

 

「ナンデストー!?」

 

「翼さん…」

 

「翼、あなた…」

 

「あ、あれは偶々寝ぼけていただけだ!そんな残念なものを見る目をしないでくれ!」

 

「翼さん…幾ら親しい間柄だとしても、礼節はしっかりするべきです。見方によっては、ナナシさんのことを異性だと見なしていないということになりますよ?」

 

「がはっ!?」

 

「あ、エルフナイン(見た目幼女)の言葉がクリティカルヒットした」

 

「だ、だが!私は奏よりマシなはずだ!奏なんて先日、暑いからと居間で上半身を下着だけで扇風機の風に当っているところにナナシが通りかかっても、「ナナシなら良いか!」と流そうとしたから私が慌てて止めたのだぞ!?」

 

「ちょっと両翼二人はそこの砂浜に正座しなさい!!幾ら何でも酷過ぎるわ!お説教よお説教!!」

 

「なっ!?」

 

「えっ!?ちょっ!!?いきなりどうした!?」

 

「あー…うん、俺は別にそういうものかと流していたけど、やっぱり二人の将来を考えると問題あるよな?悪いけどよろしくお願いします、ママリアさん」

 

「任せなさい!あと、また変な渾名を付けるな!!」

 

 

 

 

 

装者達が海を楽しんでいる一方で、緒川と藤尭は筑波の異端技術研究機構に赴いていた。二人の目の前には、研究室の機械によって部屋の中央に光の球体が表示されていた。

 

「これが、ナナシの言っていた玩具…?」

 

「『フォトスフィア』…フロンティアのデータから、ナスターシャ教授達が基礎理論を構想して、あの人達が多忙だったためにこちらの施設の方々にデータの構築を依頼した物です」

 

「…こんな物を、ナナシはどう使って遊ぶつもりなんです?」

 

「これを使ってというか、既に遊んでいるというか…ナスターシャ教授達がこのフォトスフィアを構想しているのを見て、ナナシさんが“妄想”したことを、司令や僕達が協力して実験しているんですよ」

 

「…緒川さん達の所で情報が塞き止められている時点で、かなりの大事になってませんか?俺が聞いても良かったんですか?」

 

「大丈夫ですよ。ちょっと規模が大きいだけで、機密性や重要性が特出して高い訳ではありませんから。情報がそこまで出回っていないのは、半分はナナシさんのいつもの悪戯です」

 

「それはそれで不安なんですが…心臓に悪い悪戯は勘弁して欲しいですよ?」

 

「あはははは…」

 

「そこで乾いた笑いは不安が大きくなるだけですよ!?」

 

「おっと、僕は一度翼さん達に状況確認の連絡を入れるので、藤尭さんは引き続きデータ受領作業をお願いします」

 

「ちょっ!?緒川さん!?誤魔化すならせめてちゃんと騙してくださいよー!!?」

 

藤尭の叫び声を聞きながら、緒川は一度外に出て翼へと通信を繋いだ。

 

「データの受領任務は順調です。そちらの特訓は進んでいますか?」

 

『くっ!なかなかどうして、タフなメニューの連続です!』

 

「?」

 

翼の答えに、緒川は疑問を感じる。今回の任務は、装者達にとっては特訓とは名ばかりのバカンスのはずだが、何故翼はここまで切羽詰まった様子なのだろう?と…

 

 

 

 

 

「後でまた連絡します!詳しい話はその時に!」

 

そう言って、翼は話を切り上げて通信を切った。

 

「待たせたな!」

 

「構わないさ。さあ、決着を付けようか!」

 

「吠え面かかせてやる!」

 

「任せたわよ!エルフナイン!」

 

「は、はい!」

 

…装者達がいる砂浜では現在、ナナシvs参加希望者全員という形の変則ビーチバレー対決を行っていた。『玩具』について詳細を語ろうとしないナナシに翼達が繰り返し問いかけたところ、「じゃあ、俺にビーチボールで勝ったら答えよう!もちろん、ハンデは付けるからさ!」とナナシが提案したのだ。

 

ハンデはシンプルに人数に差を付けた。ナナシは一人、それに対して参加者は翼、クリス、マリアの普段からかわれているメンバーと、ビーチバレーを体験してみたいと主張したエルフナインの四人である。人数の他にも、翼達のチームはボールへの接触回数を無制限にした。

 

一セットのみ、先に二十一点先取することを勝利条件としてゲームは開始され、序盤はナナシがハンデをものともせず圧倒していた。だが、途中で翼が以前ボウリングで行った歌による応援(妨害)を開始し、クリスとマリアも追従したことで徐々に巻き返していき、現在は二十対二十の最終局面、エルフナインにサーブの順番が回ってきた。

 

エルフナインがボールを上空へと放り、翼達がナナシの気を引くために全力で歌う準備をする。ナナシも全力で歌を聴きつつ、無理やり体を動かす覚悟を決めてエルフナインのサーブに集中して…

 

スカッ!

 

「あれ!?」

 

…エルフナインがサーブを空振りして、勝負はナナシの勝利で終結した。

 

「よっしゃ勝ったー!!」

 

「大人げねえぞ、ご都合主義!」

 

「喧しい!勝負は何事も全力でやるから楽しいんだろうが!!ていうか俺が指摘したく(でき)ないのを良いことに全力で応援(妨害)してきたお前らが言えることか!?」

 

「くっ!」

 

ナナシ達が言い争っている間に、マリアがボールを拾って転倒したエルフナインに近づいた。

 

「何でだろう?強いサーブを打つための知識はあるのですが…実際やってみると全然違うんですね?」

 

「背伸びをして、誰かの真似をしなくても大丈夫。下からこう…こんな感じに」

 

マリアがエルフナインでも簡単にできそうな、下からボールを打つやり方を見せた。

 

「はうぅ…ずびばぜん」

 

「弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つことだから」

 

「はい!頑張ります!」

 

「ええ、頑張りましょう…という訳で、二回戦を始めるわよ!ナナシ!」

 

「はあ!?まだやるのか!?」

 

「当然よ!あなたの隠し事、力尽くでも聞かせてもらうわ!そうね、体力が無尽蔵なあなたと違って、こちらは消耗しているから、次は今見学している子達も含めた全員を相手にしてもらいましょうか?それから、あなたがボールに接触する回数も二回までとしましょう!」

 

「容赦無いなおい!?さっき接戦まで持ち込んでおいて更にハンデ要求するか!!?」

 

「あら?断っても良いのよ?私達の歌を聴く機会をあなたが放棄すると言うのなら、好きにすれば良いのではないかしら?」

 

「なっ…くっ…上等だオラァ!!!全力で相手してやる!!」

 

「そういう訳だから、皆協力して!翼、クリス、人数が増えた分余裕が出来たから、私達は歌に集中するわよ!」

 

「承知した!」

 

「あのご都合主義に目にもの見せてやる!」

 

((((((よ、容赦ない(デス)…))))))

 

 

 

 

 

その後、白熱したバレーボール対決によって、全員が砂浜に力尽きて倒れ込んでいた。勝負に辛勝したナナシも、砂浜に大の字で寝転がっている。

 

「まさか、能力まで使って勝ちを拾いに来るとは…」

 

「こちらが打ち返す直前まで歌を聴くことに集中しつつ、フェイントも完全に読み切って最小限の動きで反撃してきたわね…」

 

「終いにゃあ、こっちの人数が多いことを利用して、声真似で指示出してミスを誘ってきやがった…」

 

「つ、疲れました…」

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

「あーうん、大丈夫大丈夫。疲れたんじゃなくて、これはあれだ。ルームランナーを全力でバック走しながら時折投げ込まれるボールを一つ残らず受け取ってジャグリングしていた感じ。終わっても脳が混乱して普通の動きが出来ないだけで、歌を聴き続けた俺の心は満ち足りている」

 

「そ、それは良かったデスね…」

 

「ところで皆、お腹が空きません?」

 

全員が一息ついたところで、響がそう切り出した。

 

「なら、“収納”から食べ物を出して俺が何か作るか?」

 

「今のあんたに料理させると失敗しそうだね…それに、偶にはコンビニとかで買った弁当が食べたいんだけど、ダメか?」

 

「ん~…まあ、これだけ動いたなら問題ないか。細かい所は後の食事で調整するから、今日ぐらいは良いだろう」

 

「よっしゃ!」

 

「それじゃあ、体の調子を戻すついでに買い出しに行ってくるよ。皆何が良い?」

 

「あたしはせっかくだから付いていくよ。自分で選びたい」

 

「う~ん、アタシも選びたいデス…でも、まだ遊びたいデス…」

 

「なら、ナナシと奏以外はじゃんけんで決めてしまおう。負けた者が買い出し係だ」

 

「良いですね!それじゃあ、行きますよ!」

 

『コンビニ買い出しジャンケンポン!』

 

掛け声と共にそれぞれが手を出す。その結果…

 

「あはははは!翼さん変なチョキ出して負けてるし!」

 

「変ではない!かっこいいチョキだ!」

 

親指と人差し指を真っ直ぐ伸ばした翼のチョキを見て、響が笑い声を上げる。

 

「ねえSAKIMORI?どの辺?どの辺がかっこいいか詳しく聞いていいかな?」

 

「なっ!?か、かっこいいだろう!?」

 

「ああ、うん、そうだな!通常鋏を連想するチョキを射撃武器である銃のように見立てたその指の形はなかなかに斬新だな!」

 

「そうであろう!」

 

響に追従してナナシが翼をからかおうとするが、本気で翼がショックを受けそうな雰囲気を察して急遽方向転換、ナナシの言葉で簡単に機嫌が良くなった翼を、奏達が呆れた目で見ていた。

 

「斬撃武器が…」

 

「軒並み負けたデス…!」

 

翼の他にも、調と切歌がチョキを出し、他のメンバーは全員グーで綺麗に勝敗が分かれた。

 

「まあまあ、これで好きな物を選び放題だぞ?元気出していこう!」

 

「…フフッ、そうですね」

 

「またナナシさんと一緒にお出かけデス!」

 

「…やっぱり私も付いていこうかしら?この人数の買い出しだと人手は多い方が良いでしょう?」

 

「俺の“収納”があるから問題ないな。寧ろ多いくらいだ」

 

「うん、大丈夫だよ、マリア」

 

「アタシ達に任せて、マリアはお留守番しているデス!」

 

「…勝ったはずなのに、何なのこの敗北感は…はぁ、好きなものばかりじゃなくて、ちゃんと塩分とミネラルを補給できる物もね」

 

マリアはそう言った後、奏と翼に近づいて、奏には帽子を被せ、翼にはサングラスをかける。

 

「人気者なんだから、これ掛けて行きなさい。ナナシの“認識阻害”があるでしょうけど、一応ね?」

 

「…母親の様な顔になっているぞ、マリア」

 

「…『ママリア』って渾名、案外ピッタリなんじゃないか?」

 

「奏!あなたまで私をからかわないで!」

 

 

 

 

 

コンビニで買い物を済ませた五人は、店内でナナシの“収納”を使う訳にもいかず、それぞれが手に荷物を持って外に出る。切歌の持つ袋の中には、大量のお菓子やジュースが詰め込まれていた。

 

「切ちゃん、自分の好きなのばっかり」

 

「こういうのを役得と言うのデース!」

 

「ママリアさんにバレないよう、さっさと“収納”してしまおう。小出しに渡せばバレないバレない!」

 

「お願いするデス!」

 

「ナナシ、あまり暁達に悪影響が出そうな言動は…」

 

「これくらいの可愛い隠し事なら、良い想い出作りになるだろう?あんまり固いことばかり言っているから、頭が固くなるんだぞSAKIMORI?もっと奏を見習って隠し事の一つや二つしてみたらどうだ?」

 

「っ!?な、何のことだ!?何故そこであたしの名前が…!?」

 

「牛丼屋のつゆだく大盛牛丼に、コンビニ限定ケーキだろ?あとはファストフードのバーガーとポテト…俺に報告の無い買い食いが月に一回くらいあるだろ?」

 

ナナシの言葉に、奏がピシリと固まる。

 

「奏…ナナシに体を見てもらっているのに、隠し通せる訳ないだろう…」

 

「色々と工夫しているけど、俺の食事は満足してもらえないのかな…」

 

「切ちゃんも、偶にお菓子の食べ過ぎでご飯が入らない時があります…私の料理じゃダメなのかな…」

 

「ち、違う!ナナシの料理には充分満足させてもらっている!ただ、時々無性に食べたくなる味ってのがあってな!?」

 

「ゴ、ゴメンナサイデス、調!一度食べると、ついつい食べ続けちゃう時があるんデスよ!?決して調の料理に不満がある訳じゃないデスよ!?」

 

「まあ、その辺は察しているから、度が過ぎない限りは普段の食事で調整しているけどな…ただ、それだと翼が割を食っているから、ちょっと二人の食事に使う食材のグレードに差を付けたりしてみたけど、二人共気づかないし…」

 

「「そんなことをしていたのか!!?」」

 

「例えばこの前作ってやった唐揚げ、奏のは100グラム50円の鶏もも肉に対して、翼のは100グラム300円の肉を使っていたのに、二人共あまり気にしないし、何なら奏の方が美味しそうに食べていたし…」

 

「分かりにくい!!普通に美味かったらそりゃ美味そうに食べるわ!!」

 

「す、済まないナナシ。何となく普段よりも美味しいとは感じていたが、単純にナナシの料理の腕が上がったものかと…」

 

「うーん、なら奏の料理にもうちょっと奇抜な食材を使ってみるか?蛇とかカエルとか」

 

「悪かった!悪かったから勘弁してくれ!!もう二度と買い食いしないから!あんたの料理だと気づかず美味しく食べちゃいそうだ!」

 

「別に買い食いはしても良いけど、隠すのはやめてくれ。怒るというより何かこう…虚しくなる」

 

「蛇にカエル…」

 

「デェェェス!!?待つデス、調!?アタシも二度と調の料理をお残ししないデスから!!」

 

「そうじゃなくて、単純に美味しいのかなって気になって」

 

「普通に美味いぞ。買うなら割高になるけど」

 

「食べたことあるのか!!?」

 

そんな他愛無い?会話をしながら五人が歩いていると、その視線の先に人だかりが出来ているのを目撃した。集まった人々の視線を五人が追うと、そこには…鳥居や社がボロボロに破壊され、その所々に巨大な氷塊が突き刺さっている光景が映った。

 

 

 

 

 

一方その頃、海で遊び続ける響達に、エルフナインが話しかけていた。

 

「皆さん、特訓しなくて平気なんですか?」

 

「真面目だなぁ~、エルフナインちゃんは」

 

お気楽な様子の響に、エルフナインはキャロルのことを知っていることもあり、少し焦った様子で語り掛ける。

 

「暴走のメカニズムを応用したイグナイトモジュールは、三段階のセーフティにて制御される、危険な機能でもあります!だから、自我を保つ特訓を…」

 

ザバァン!!

 

エルフナインの言葉を遮るように、突如として海面から水柱が噴き出す。その頂点には、ポーズを取って笑みを浮かべるオートスコアラー…ガリィの姿があった。

 

「ガリィ!!?」

 

「夏の想い出作りは充分かしらぁ?」

 

「んなわけねえだろ!!」

 

ガリィの出現に、クリスが急いで未来達の元へ駆けつけ、聖詠を口にする。

 

Killiter Ichaival tron

 

イチイバルを身に纏うクリス。それに続いて響もガングニールを身に纏い、二人がガリィに攻撃を仕掛けるが、ガリィは以前響に使った水の分身を使い二人を翻弄する。

 

「くっ!マリアさん!二人をお願いします!」

 

ガリィの攻撃を凌ぎながら叫ぶ響の声にマリアが頷き、未来とエルフナインを連れてその場を離れる。マリア達にガリィが視線を向けるが、響とクリスが素早くガリィの前へ躍り出る。

 

「キャロルちゃんからの命令も無く動いてるの!?」

 

「さあねぇ~?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながら、はぐらかす様な言葉を口にしてガリィが水晶をばら撒く。水晶が砕け、召喚されたアルカノイズの大群が響達へと襲い掛かった。

 

強化されたシンフォギアを纏った二人にとって、最早アルカノイズは敵ではない。迫り来るアルカノイズを、響が格闘によって蹴散らし、上空に飛来するアルカノイズをクリスがミサイルを放って派手に殲滅してみせた。

 

 

 

 

 

クリスが放った攻撃は、遠目からでもしっかり確認でき、買い出しに出ていた翼達や、破壊された社を見ていた近隣住民も目撃していた。

 

「あれは…!」

 

「もしかして、もしかするデスか!?」

 

「行かなきゃ!」

 

調と切歌がビーチの方へ駆け出し、奏とナナシがパニックで動けない子供の集団に声をかける。

 

「皆落ち着け!慌てずに避難するんだ!」

 

「ほらほら野球少年共!ここの綺麗で頼れるお姉さんに勇気を見せてアピールするチャンスだぞ!」

 

「この状況で茶化してんなバカ!!」

 

そして翼は、その場に唯一いる成人男性に協力を要請するために声をかけた。

 

「ここは危険です!子供達を誘導して、安全なところにまで…」

 

「冗談じゃない!?どうして俺がそんなことを!」

 

だが、男はそう叫ぶと一目散にその場から逃げ出してしまった。男の信じられない行動に、翼は一瞬唖然としてしまう。そんな翼に、子供達を落ち着かせたナナシが声をかける。

 

「呆けるなSAKIMORI。普通はあんなものだ。それよりこいつらを避難させるぞ!」

 

「あ、ああ、そうだな。大丈夫!慌てなければ危険はない!」

 

「ナナシ!ここはあたし達で大丈夫だ!あんたは響達の援護へ行ってくれ!」

 

「了解!野球少年共!俺は悪者退治に行ってくるから、そこのお姉さん達にしっかり付いて行くんだぞ!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

翼が目を離した隙に何があったのか、先程まで怯えていたはずの少年達は力強くナナシに返事をして翼達の周囲に集まった。その様子を確認したナナシは、後のことを翼達に任せてビーチの方へと駆け出した。

 




さて、読者の皆様。少し”妄想”してみてください。
奏さん、本当に平気でスルーしたと思いますか?
作者的には、明るく気さくな彼女はほとんど家族同然で過ごした相手なら異性でもあまり気にしないイメージがあります。相手が弦十郎さんで考えてみたら余裕でイメージ出来ました。
ただ、矛盾するようですが、皆の頼れる姉御としてその辺は結構しっかり気を付けるイメージもあるんですよね。
主人公にそれだけ気を許しているのか、はたまた別の思惑があり内心ドギマギしているのか…考えたら楽しくないですか?作者も敢えて明言しません。皆様が面白いと思う考えを信じてください。
え?SAKIMORIさん?…仲間外れは可哀そうなので、”妄想”してあげると良いと思いますw
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