戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第94話

チフォージュ・シャトーの広間にて、ファラがレイアに見守られながら何か作業をしていた。ファラは、先日筑波の研究機構で盗んできたデータを入れたマイクロチップを口に入れると、錬金術を使ってマイクロチップのデータを出力する。すると、ファラの前には筑波にあったフォトスフィアと同じものが展開された。

 

「筑波で地味に入手したらしいな?」

 

「強奪もありでしたが、防衛の為にデータを壊されては元も子もありません」

 

そう言って、二体のオートスコアラーはフォトスフィアに視線を向ける。

 

「一本一本が地球にめぐらされた血管のようなもの。かつてナスターシャ教授は、このラインに沿わせてフォニックゲインをフロンティアへと収束させました」

 

「これが、レイラインマップ…」

 

「世界解剖のために必要なメスはここ、チフォージュ・シャトーに揃いつつあります」

 

「そうでなくては、このままでは暴れたりないと、妹も言っている」

 

 

 

 

 

リディアンからの下校中、調と切歌の二人は自販機で飲み物を買っていた。調がりんごジュースを買い終え、切歌が自販機の前に立つ。

 

「今朝の計測数値なら、イグナイトモジュールを使えるかもしれないデス!」

 

切歌が飲み物を選びながら、お気楽な様子でそう語る。一方、調はりんごジュースを一口飲んで、真剣な表情で懸念事項を口にした。

 

「あとは、ダインスレイフの衝動に抗える強さがあれば……ねえ、切ちゃん…」

 

「これデス!!」

 

一つに絞れなかったのか、切歌が複数のボタンを同時に押し込み、一番左にあったブラックコーヒーがガシャンと自販機から出てきた。

 

「あぁー!?苦いコーヒーを選んじゃったデスよぉー!」

 

自分が飲めない物を買ってしまい、嘆く切歌を眺めながら、調は胸元のギアペンダントを取り出し、呟く。

 

「誰かの足を引っ張らないようにするには、どうしたらいいんだろう?」

 

「きっと自分の選択を後悔しないよう、強い意志を持つことデスよ!」

 

切歌がブラックコーヒー片手に、顔を引きつらせながら調にそう答える。全然説得力の無い切歌から調がコーヒーの缶を取り上げて、一口しか飲んでいない自分のりんごジュースを手渡す。

 

「およ?」

 

「私、ブラックでも平気だもの」

 

「ご、ごっつぁんデス…」

 

正直助かったといった様子の切歌が、りんごジュースに口を付けた瞬間、二人の通信機に本部からの緊急通信が届いた。

 

『アルカノイズの反応を検知した!場所は、地下六十八メートル、共同溝内であると思われる』

 

「きょうどうこう…?」

 

「何デスか?それは?」

 

『電線をはじめとする、エネルギー経路を埋設した、地下溝だ。すぐ近くにエントランスが見えるだろう?』

 

弦十郎の言葉通り、二人が指示された道を進んでいると、それらしき建物が見えてきた。

 

「お?」

 

「あれが…」

 

『本部は現場に向かって航行中』

 

『先んじて立花を向かわせている』

 

『緊急事態だが、飛び込むのはバカと合流してからだぞ!』

 

「先生は?」

 

『悪い、野暮用を済ませていたせいで響よりちょっとだけ遅れる!何なら待っていてくれても良いぞ?』

 

「…いえ、被害が出たらいけないので、響さんが到着したら私達で先行します」

 

『分かった。無理はするなよ』

 

「任せてくださいデス!」

 

それから少しして、調達が待つ現場に響が姿を現した。

 

「あ、ここデース!」

 

切歌が響に手を振って声を掛けるが、響は答えずに二人の間を通り抜ける。少しだけ見えたその表情から、響は泣いているようだった。

 

「何かあったの?」

 

「…何でもない」

 

調が心配して響に声を掛けると、響は小さく力のない声でそう答えた。顔を見せずに肩を震わせるその様子からは、とてもそうは思えない。

 

「とてもそうは見えないデス…」

 

「二人には関係ないことだから!!」

 

「「っ!!?」」

 

切歌がそのまま口に出した疑問に対して、響が振り返りながら怒鳴りつける様にそう答えた。二人は思わずビクリと体を震わせて、悲しそうな表情を浮かべる。

 

「…確かに、私達では力になれないかもしれない。だけど、それでも…」

 

「…ごめん…どうかしてた…」

 

調の言葉と、二人の表情を見て少しだけ冷静さを取り戻した響は、二人に謝って歩き出す。

 

(拳でどうにかなることって、実は簡単な問題ばかりかもしれない…だから、さっさと片づけちゃおう!)

 

歩きながらそう考えて、響が無理やり意識を切り替えていると、三人は地下に続く大穴へとたどり着いた。

 

「行くよ、二人共!」

 

響が空元気を出して二人に明るく声を掛けて、聖詠を奏でる。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron

 

響がガングニールを身に纏い、眼前の大穴へと飛び込んだ。調と切歌の二人もシンフォギアを身に纏って後に続く。三人が地下に到着して共同溝内を少し進むと、地面に赤い陣が輝き、そこからアルカノイズの群れが現れて三人を取り囲む。三人のすぐ近くには、錬金術を使って何やら共同溝の端末を操作するミカの姿があった。

 

「来たなぁ。だけど、今日はお前たちの相手をしてる場合じゃ…」

 

ミカが響達に何かを言い終わる前に、響が一気にミカへと接近して殴りかかった。まさかノータイムで攻撃してくるとは思わず、ミカがとても驚いたような顔をしながら咄嗟に攻撃を回避し、響の拳が壁の一部を粉砕する。

 

「まだ全部言い終わってないんだゾ!!」

 

ミカが怒りながら水晶をばら撒いてアルカノイズを呼び出す。響は躊躇うことなく腰部のブースターで加速しながらアルカノイズの群れへと突っ込み、次々とアルカノイズを殲滅していく…その瞳から、涙を零しながら。

 

「泣いてる!?」

 

「やっぱり様子がおかしいデス!」

 

近くのアルカノイズを処理した響は、今度はミカに対して我武者羅に攻撃を繰り返す。ミカが攻撃を避ける度に、共同溝内の壁や設備に被害が出るが、それでも響は止まらない。

 

(何でそんな簡単にやり直したいとか言えるんだ!?壊したのはお父さんの癖に!お父さんの癖に!!)

 

「突っかかり過ぎデス!!」

 

切歌がそう指摘してしまうほどに、響はひたすらにミカと近くのアルカノイズに攻撃を繰り出し続ける。

 

「お父さんの癖にいいいいいいい!!!」

 

そして、響はそんな言葉と口にしながら数体のアルカノイズを天井へと叩きつけた後、腕部のバンカーを使って外壁諸共アルカノイズを粉砕して…砕け散る瓦礫の破片から、過去に家の窓ガラスに石を投げ込まれたことを思い出してしまった。

 

(違う…壊したのはきっと、わたしも同じだ…)

 

家族が迫害され、父親が出ていく原因を作ったのは自分である…そう思ってしまった響は、唐突に動きを止めてしまう。

 

「しょんぼりだゾ!」

 

その隙を突いて、ミカは左の掌に炎の球体を生成すると響に向けて射出した。

 

ドゴォォォン!!

 

「うわあああああ!!?」

 

響に着弾した炎は爆発して、衝撃で吹き飛ばされた響は後方の足場にぶつかって気絶してしまった。

 

「言わんこっちゃないデス!」

 

気絶した響に、切歌が駆け寄って様子を窺う。

 

「大丈夫デスか?」

 

切歌が響に声を掛けるが、響はピクリとも動かない。

 

「歌わないのかぁ?歌わないと…死んじゃうゾォォォ!!」

 

隙だらけの響と切歌に対して、ミカが左の掌から炎が放射される。響を抱えていた切歌は咄嗟に動くことが出来ず、迫る炎に思わず目を瞑ってしまう。だが、少ししても熱と衝撃が襲ってこない。疑問に感じた切歌が恐る恐る目を開けると、そこには大きな丸鋸二つを盾のように展開して炎から二人を守る調の姿があった。

 

「くっ…うぅ…」

 

だが、迫る炎の勢いと熱量は凄まじく、調は苦しみながらも必死に踏み止まる。

 

「切ちゃん…大丈夫…?」

 

「…な…わけ…ないデス…」

 

「え…?」

 

「大丈夫な訳…無いデス!!」

 

切歌達を守ろうとして苦しむ調の姿を見て、切歌は以前クリスを救出した時のことを思い出していた。

 

『大丈夫なものかよ!』

 

助かったはずのクリスは苦し気で、悔しそうで、切歌は自分が守りたいと思う調に守られている現状から、クリスがあの時感じていたであろう憤りを理解した気がした。耐え難い感情から、切歌の手がギアコンバーターへと伸びる。

 

「こうなったらイグナイトで…!」

 

「ダメ!…無茶をするのは、私が足手纏いだから…?」

 

調もまた、大切な切歌が無謀な行動をするのは、自分の力が足りないからだと疑い、切歌に対して言葉に出来ない憤りを感じる。

 

「ニヒヒ!」

 

ミカは、自分に手も足も出せない三人に対して笑みを浮かべて…

 

ドゴシャッ!!

 

「ギャフッ!!?」

 

ドゴォォォン!!!

 

…突如、側面から伸びてきた巨大な赤い腕に殴られて、そのまま腕と壁に押し潰された。

 

「えっ!!?」

 

「何事デスか!!?」

 

ミカからの攻撃が止まり、驚く二人が腕の伸びてきた方向に視線を向けると、そこには両手に血液を纏い、憤怒の表情を浮かべるナナシの姿があった。ナナシが血液で巨大化させた腕を引くと、壁に人型の穴を残してゆっくりとミカが倒れ込み、ピクピクと痙攣していた。完全な不意打ちであったために、それなりのダメージがあったようだ。

 

「てめえ…何度も何度も俺の可愛い妹弟子と後輩共を傷つけやがって…覚悟は出来てんだろうな?」

 

思わず切歌と調の二人までもがビクリと震えてしまう冷え冷えとした声を出しながら、ナナシが自分とミカの周囲を“障壁”で取り囲む。これで、“障壁”が解けるまでミカは三人に近づくことは出来ない。

 

「ぐっ!…調子に乗るんじゃないゾ!!」

 

ミカはガバリと立ち上がると、両手から炎の球体を展開してナナシを威圧する。

 

「フフン!幾らお手手の形を真似っこ出来ても、これはミカにしか出来ないゾ!悔しかったらお前もドッカーンってやってみせて…」

 

ドサッ!(ナナシがダイナマイト満載の箱を設置)

 

ドサッ!!(ナナシが手榴弾満載の箱を設置)

 

ドサドサドサッ!!!(ナナシが何かもう明らかに火気厳禁といった雰囲気の物満載の箱を複数設置)

 

「………えっ?」

 

「くたばれ♪」

 

ミカが呆けている間に、ニッコリ笑顔を浮かべたナナシが手榴弾のピンを抜いてポイッと放り捨てると、自身の周囲に“障壁”を展開して…

 

「ちょっ!?まっ!!?」

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!

 

…手榴弾が起爆し、周囲の大量の爆発物に誘爆したため、“障壁”内部で凄まじい爆発が巻き起こった。衝撃も破片も全て“障壁”で阻まれているため、切歌達や共同溝内に被害は出ていないが、その分“障壁”内部の爆発の威力は想像を絶するものとなった。

 

「せ、先生!!」

 

「無事デスか!!?」

 

思わず二人がナナシの心配をしていると、“障壁”内の煙が少しずつ収まり、そこには無傷のナナシだけが佇んでいた。ミカの姿は何処にも見当たらない。

 

「や、やったデスか!?消し飛んじゃいましたか!!?」

 

「…いや、多分直前で逃げられた」

 

ナナシが“障壁”を解除して、三人の方に近づく。そして、ナナシは気絶する響の様子を簡単に確認した。

 

「…とりあえず、大きな怪我はない。気絶しているだけだ」

 

ナナシの言葉に二人が安堵していると、今度は調に近づいたナナシが“収納”から出したペットボトルの水を調の頭に浴びせかけた。

 

「ッ!!?」

 

突然のことに驚く調だったが、先程のミカの炎による熱が残っているのか、調のギアからジュ~と水の蒸発する音が聞こえる。

 

「ギアのプロテクターによる装者の保護機能は優秀だけど、一応な?二人共、撤収するぞ。響は俺が運ぶ。切歌、調に肩を貸してやれ。後始末は慎次達に任せて、メディカルルームに直行だ。良いな?」

 

「はい…」

 

「分かったデス…」

 

淡々と指示を出すナナシに、二人が暗い顔で返事をする。びしょ濡れの調に切歌が肩を貸し、二人は終始無言で響を抱えて先行するナナシの後を追った。

 

 

 

 

 

「押っ取り刀で駆け付けたのだが…」

 

「間に合わなければ意味がねえ…」

 

「人形は何を企てていたのか…」

 

ナナシ達が去った後、ようやく現場に駆け付けた翼、クリス、マリアの三人が、周囲の状態を確認しながらそんな会話をしていた。オートスコアラーの目的を調べるために、緒川とS.O.N.G.職員達も周囲の調査を続けていた。

 

共同溝内は至る所が破損され、甚大な被害が出ていたが…

 

「大きく破損した箇所は、いずれも響さん達の攻撃ばかり…」

 

タブレットを手に周囲を観察していた緒川がそう言うように、共同溝内の破損は響達の戦闘によるもののため、ミカの目的はこの場の破壊工作では無かったことになる。何か他の目的があったのかと緒川が更に調査を進めていると…その視界に、共同溝内の設備を操作する制御端末が映った。端末のパネルは青白く光っており、何者かが端末を操作していた痕跡があった。

 

「これは…!?オートスコアラーの狙いは、まさか!急ぎ、指令に連絡を!」

 

「はっ!」

 

緒川が何かに勘付き、弦十郎へと連絡を取るため近くの職員に指示を出した。

 

 

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