お目汚し失礼します。
少し時は遡り黒い霧によって飛ばされた直後
その場に残された数人の生徒と13号は、黒い霧のヴィランと対峙していた。
「障子君、皆は居るか。確認できるか。」
飯田は黒い霧のヴィランから目を離さずに多数の複製腕を持つ青年、障子目蔵にクラスメイトの安否を確認する。
「散り散りになってはいるが、この施設内にはいる。」
その言葉を聞き他の者達は安堵の息を吐く。だが、すぐに気持ちを切り替える。今は他人の事を気にする暇もないのだ、A組がバラバラになった元凶が目の前にいるのだから。それに、黒い霧は爆豪と切島の攻撃が効いていなかった。つまり。
「クッソ、物理攻撃でワープって最悪の個性だぜ。オイ。」
瀬呂の言い放った言葉には此処に居る全ての者が賛同しているが、口に出して賛同する雰囲気じゃない。それ程までにこの施設内の空気には緊張感があった。
そんな空気の中、13号は口を開いた。
「委員長。」
「はッ」
短く鋭い返事を飯田が返す。
「君に託します。学校にまで走って、この事を伝えてください。」
「なッ.........」
13号の口から出た言葉を飲み込むのに少しの時間を用いた。だが、さっきまでとは違いここは既に戦場である。出来るだけのタイムロスを減らしたい、その為13号は間髪入れずに話を続ける。
「警報がならず、そして電話も圏外になっていました。警報機は赤外線式。先輩いや、イレイザーヘッドが下で個性を消し回っているのにも関わらず無作動なのは、恐らくそれ等を妨害可能な個性がいて、即座に隠したのでしょう。」
「とすると。それを見つけ出すより、君が走った方が速い!」
13号の言っている事は正しい。この場では今の作戦が1番クラスの皆が生き残る確率が高いのだ。だが、飯田は口を開く。
「しかし、クラスの皆を置いていくなど委員長の風上にも」
飯田自身も、正しいという事は分かっているが緑谷に託された委員長という肩書きを背負っている以上クラスの皆を置いて行きたくなかったのだ。そんな、葛藤を見抜いたのか黄色いスーツの巨体を持つ青年、砂藤力道が口を開く。
「行けって!非常口。外に出れば警報が有る。だからコイツらはこん中だけで事を起こしてんだろ。」
やや粗暴だが、飯田の背を押すためにかけられた言葉だとわかる。瀬呂も続く。
「外にさえでりゃ、追っちゃ来れねぇよ!お前の足でこのモヤを振り切れ!」
「救うために個性を使ってください!」
その声と共に障子は前に足を進める。
「食堂の時みたくサポートなら私チョー出来るから!する、から!!」「ウンウン」
麗日と芦戸も飯田をサポートする気概を見せる。
いつの間にか、障子、13号、砂糖、瀬呂が飯田を守るようにして前に立っている。そして最後に麗日が。
「お願いね委員長!」
と、発破をかける。
そして、その発破が効いたのか飯田は覚悟を決める。自分の足で黒い霧を振り切り校舎に向かい助けを呼ぶ事を。
だが、それを見逃す程ヴィランは甘くなかった。
「手段が無いとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますかッ!!」
ヴィランは黒い霧を伸ばす。それを13号は、
「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」
返答しながら指のキャップを開きブラックホールで黒い霧を吸い込んでいく。危機的な状態の筈が多少の焦りしか見せない黒い霧のヴィラン。その事を不気味だと考えていた時、黒い霧のヴィランは口を開いた。
「全てを吸い込み塵にするブラックホール。なるほど、驚異的な個性だ。しかし13号、貴方は災害救助で活躍するヒーロー。やはり、戦闘経験は一般ヒーローに比べて半歩劣る。」
そう言うと口辺りに黒い霧のゲートみたいな物を展開するヴィラン。その直後、13号の後ろから同じ様なゲートが現れた。そのゲートは13号のブラックホールの吸引力をそのまま返すために展開したようだ。あと少しで13号の体が吸い込まれそうになった時。
「うわッ」
「何ッワイヤーだと!!」
何処からか飛んできたワイヤーが13号の身体に巻き付きゲートの直線上から逃したのだ。その事に1番驚いたのは他でも無い黒い霧のヴィランの方でブラックホールが解除されたにも関わらずほんの少しの間、動け無かったのだ。
「飯田!走れって!!」
その隙を逃さぬように砂糖が飯田に声をかける。その瞬間、黒い霧のヴィランの横を走り抜ける。その事に気付いた黒い霧のヴィランは飯田の進行方向にゲードを設置する。
「少々遅れを取りましだが。行かせませんよ、教師たちを呼ばれては私達も大変ですので!」
飯田は必死に急停止しようとするがスピードに乗ってしまった体はすぐには止まらない。その僅かな時間の中で飯田は考える。
「(みんなを僕が、任された。クラスを、僕が!)」
あと少しでゲートに飲み込まれそうになった飯田は後ろから来た障子によって助けられた。障子は複製腕で腕を作り、ハグの要領でゲートを包み押さえ込んだ。
「行け、早く!」
気迫の籠った応援は飯田直ぐに現実に呼び戻した。すぐさま走り出す飯田をまだ黒い霧のヴィランは追いかける。だが、同時にヒーローに弱点をさらけ出してしまったことを知らずに。
飯田は走る。友の為にクラスの為にそして委員長としての責務を果たす為に。だが、相手はそんな事関係ないと言わんばかりに追ってくる。飯田がスピードを出しているのにも関わらず、不定形なその体を伸ばし上から迫ってくる。
「生意気だぞ、メガネ!!消えろ!」
全力疾走の飯田に追いついた黒い霧のヴィランは黒い霧を飯田の上から被すように包んだ。だが、直ぐに黒い霧のヴィランが驚愕の声を漏らす。何故なら。
「理屈は分からへんけど、創司君も言ってた。体の全てを通り抜けさせる事は出来ないって、ならここがその実体化してる場所じゃないかなぁ!!」
麗日が個性「無重力」によって黒い霧はヴィランを宙に浮かせたからである。
「行け〜、飯田君!!」
「しまった、体が!!」
その隙を突き飯田は走り抜ける。直ぐにドアへと着き開けようとするが、ドアは固く閉ざされており。すんなりと開ける事は出来ない。そんな隙だらけの姿を見た黒い霧のヴィランは追い討ちを掛けようとするが。
「だが!!」
「させねぇ!!」
瀬呂のテープが首の弱点にひっつき其れを砂糖の怪力で引っ張りあげた事によって追い討ちは失敗に終わる。
飯田が駆けると同時に黒い霧のヴィランは天井高くに飛ばされる。
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またも遡り山岳ゾーンを出た後
黒い霧のヴィランを倒そうと創司がワイヤーのスウィングで向かっている途中、中央広場での戦闘が目に着いた。創司はイレイザーヘッドに任せておけば何とかなると思っていたがある存在を目にしその考えを捨てて助けに入る。
「先生を離しな!不気味野郎!!」
身体中に手をつけたヴィランに肘を掴まれたイレイザーヘッドを助けようと上からワイヤーでヴィランを拘束しようとする。だが、寸前でかわされる。それによって手を離されたイレイザーヘッドは後ろに大きく跳躍する。2人は華麗に着地を決めた後、流れるように周りのヴィランを次々に倒していく2人。一段落着いた時、イレイザーヘッドは暗野の方を向き言い放つ。
「暗野!何しに来た。」
「勿論、先生を助けに来ました。あと、今は説教は無しでお願いします。それにそんな余裕先生も無いでしょ。」
「・・・・・」
「無言は肯定と取りますよ。先生。それに2人で戦った方が合理的ですよ。」
「わかった、フォーメーションは俺が前衛 お前が後衛だ。」
「はいッ」
2人して手が付いているヴィランの方を向き構える。先程の一部始終を見ていた創司は手のひらに触れないよう注意する。ヴィラン対ヒーローの一対二が始まると誰もが思ったその時、
「何か勘違いしてる様だけど本命は俺じゃない。」
2人は背後に気配を感じ振り返る。そこには脳みそが丸出しの化け物が居た。その化け物はこっちを向くと拳を振りかぶり振り下ろす。その拳はイレイザーヘッドの顔に目掛けて振り下ろされた。だが、そこに割って入る者がいた。それは。
「ウグゥ・・・・・「身体操作」ありでこの威力か、どんな馬鹿力だよ。」
足が地面に陥没しながらも身だった傷もない状態でそこには暗野創司が居た。
「はァァ゛何でお前が無傷なんだよ!!可笑しいだろ!その脳無はオールマイト専用に作った奴だぞ何で学生がその攻撃で死んでねぇんだよ。」
話している間にも脳無は創司を殴打する。創司はガードをしながらもどんどん足が地面に陥没していっている。それでも創司に目立った傷は現れない。その事にイラついたのか脳無にぶっ殺せと指示を出すヴィラン。その時、創司は目を見開く。
「さてねぇ、なんでだろうな!」
創司は、ガードしていた腕を相手が振りかぶったと同時に解き脳無の懐に入る。そのまま創司は、脳無の体を貫・い・た・。だが脳無はそんなのとお構い無しに丸太のような腕を創司に目掛けて振り下ろす。創司は体を少しズラすだけで難なく避けた。そのままの要領で腕を掴み創司は言い放つ。
「散々、殴ってくれたんだ。容赦はしねぇぞ!」
掴んだ腕を支点とし脳無を投げ飛ばす。追撃として手に持っていたワイヤーで四肢をきつく縛り、思いっきり引っ張るそうすると脳無の四肢はバラバラとなった。
その事に唖然とするヴィランと、イレイザーヘッド。だが、そんな気持ちも直ぐに吹っ飛んだ。なぜなら脳無のバラバラにされた四肢がくっつき始めたのだから。
「あの、クソガキのせいで一瞬忘れてたけどさ。脳無は「超再生」持ってるんだよね。だからさお前程度じゃ「死柄木弔」ちょうどネタバラシの時間だったんだけど。まぁ、いいや。で、13号は殺ったのか。」
「いえ、何者かの妨害を受けてしまい生徒も1人応援に行かせてしまいました。」
その瞬間、死柄木弔と言われた者の雰囲気が変わる。
「はぁ...はぁ...はぁ、黒霧お前がワープゲードじゃなかったら粉々にしてたぞ。」
だが、またも雰囲気が変わる、今度は逆には落ち着いている。
「流石に数十人のプロ相手には敵わない。ゲームオーバーだ。あぁーあ今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。」
「お前らこんな事をしてタダで帰れるとでも。」
「帰れるさ、絶対にね。たっく、脳無も簡単にやられちゃうしイライラするなぁ。あっそうだ、帰る前に平和の象徴としての教示を少しでも
へし折って帰ろう。」
水難ゾーンの水に浸かっていた蛙吹を襲った。その行動に対応できたのは隣にいた緑谷と創司だけだった。
「殺らせねぇよ、死柄木弔。」
そう言いワイヤーで死柄木弔を拘束する創司。本来なら拘束された事に焦らなければいけない。だが、その顔は笑っていた。
「アハッ、焦っただろヒーロー。でも、ダメだぜ脳無なら注意を離しちゃァ。」
その声に呼応するように脳無が起き上がりとんでもないスピードで創司に向かいそしてぶん殴った。
「ガハッ.......。」
死柄木弔を拘束していたワイヤーが解かれ自由となる。
「暗野君!!(そういう事か、わざと蛙吹さんを狙って注意を化け物から自分に向け不意打ちで暗野君を倒すために。)」
「(相澤先生は黒い霧のヴィランの個性を消すので手一杯。なら僕が、僕が倒さないと。)吹っ飛べ、スマッシュ!」
「脳無やれ。」
その短い指示で脳無は緑谷に向かって行く。その目には生気が無く何を考えているのかすら分からない。そんな化け物を前に緑谷は
「(怖い!でも、僕がやらなきゃ2人が殺される。なら!!)うおぉぉ!」
緑谷は脳無に向かって拳を振り抜いた。その拳は周りの空気を押し出しとんでもない風圧を生み出す、その攻撃は後のことを考えない捨て身の攻撃だった。緑谷も来るであろう腕の痛みを覚悟していたがその覚悟は裏切られる事になった。
「(痛みが来ない...もしかして、コントロールに成功したのか!)」
少し場違いながらも喜んでいた緑谷に辛い現実が襲いかかる。
「・・・・・」
「スマッシュ?もしかしてオールマイトのフォロワーかい。」
目の前には無傷の脳無とその後ろに居る死柄木弔の姿があった。死柄木は少しの喜色を含んだ声で緑谷に問う。だが、緑谷は脳無が無傷だという衝撃の事実に混乱していまい。体が硬直する。その隙を見逃す筈もなく脳無は緑谷に一撃加えようとしたその瞬間。
バコン
突如、USJのドアが破壊された。そのせいで煙が立ち上がり犯人の姿を隠す。時間が経つにつれ煙は晴れていき姿を現す。黄色のスーツに黄色の髪の毛、その体格は日本に住んでいるものなら毎日のように見てきた。だから見間違えることは無いその姿は、
「もう大丈夫、私が来た」
「オールマイト」
その顔は、何時もの笑顔ではなくオールマイト自身の気持ちを表すかのような般若の顔になっていた。
お目汚し失礼しました。
1話の長さどっちの方がいいですか?
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短い方
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長い方