ある日の事、いつもの様にギルドでクエストを選んでいると。
「緊急クエスト!!」
深刻な顔付きのスーリが大声を上げる、その言葉が発せられるとギルドの喧騒が止み皆がスーリに注目した。
「ラタ村で異常事態発生、現在複数の魔物に襲われていると報告があったわ」
「救援の為早急にラタ村へ向かう、Dランク以上の冒険者は門まで急いで!」
スーリの説明が終わるとギルドに居た冒険者達が慌ただしく動き出した。
「寝てる奴起こしに行け!」
「飲み代置いてくぞ、釣りはいらねぇ」
「新人はここで待ってろ!おい、急いで向かうぞ」
ベテランの冒険者達は直ぐにギルドを後にしギルドには新人のみが残されていた、俺は即座に動く事が出来なかったがゴルドに「俺達も向かうぞ」と声をかけられ門へと向かう。
門の前には何台もの馬車が用意されており次々と冒険者達が乗り込んでいく、俺達も馬車に乗ると定員になったのか直ぐに走り出した。馬車には俺達ともう一パーティ乗っている様で一人の男が話しかけて来る。
「俺はこのパーティ『鷹の目』のリーダーメルビスだ、よろしくな」
年は三十代程、長髪を後ろで結い少し渋いが精悍な顔付きをしている。装備は革鎧に矢筒そして無骨な弓、ベテランのアーチャーと言った所か。
「よろしく、俺は、
「ハハッ知ってるさ、『戦いの灯』のリーダー、アキラだろ、この街の冒険者であんたらを知らない奴は居ないさ」
メルビスは笑いながら返す。俺達のパーティは思っていた以上に知名度がある様だが、こう「期待の新星!」みたいな感じじゃ無いんだろうな。
そんな事を考えて居るとメルビスが言葉を続ける。
「しかし『戦いの灯』と同じ馬車か、いつもならご遠慮願いたいが今日に限っては心強いな」
「随分な物言いじゃないか」
短く怒気を発するジーナにメルビスは慌てて謝る。
「怒らないでくれ、褒めてんだぜ」
「ちょっとリーダー、緊急クエストで他のパーティと揉めないで」
「気を悪くさせてごめんなさい。私はストレイ、よろしくね」
若い女剣士が仲裁に入る、ジーナもそこまで気にしてる様子は無くつまらなそうに鼻を鳴らし怒気を治める。
その後ストレイを含めた『鷹の目』のメンバーと簡単に挨拶を交わしゴルドに状況に付いて聞く。
「緊急クエストってこの後はどうなるんだ?」
「今回の内容はシンプルだぜ、村に着いたらスーリの指揮に従って魔物を倒すだけだからな」
「緊急クエストって珍しいのか?」
「緊急クエストっつっても規模や内容は違うからな、一概にや言えねえが今回みたいなのは珍しいぜ、しかも内容は最悪に近い」
「最悪に近い?今の状況ってそんなにやばいのか?村が襲われてるって言ってたけど魔除けもあるし兵士だって居るだろ?」
「村の兵士じゃ抑えられねえから緊急クエストが出てんだ、それに魔除けも完全じゃ無え」
「魔除けってのは特殊な魔力を出して村を魔物から隠してんだ、前にゴブリンとかには効きづらいって言ったのは雑魚は魔力の感知能力が低いせいで効きづらいんだよ」
「なら今襲って来てるのはゴブリンとかコボルトって事か?」
「それはわからねえな、確実にそいつらは居るが多少の雑魚が来たぐらいじゃ問題無え」
「考えられんのは兵士じゃ抑えられ無え程の数で来たのか、戦ってる内に他の魔物が来始めたのかだな、魔除けは中に魔物が居ると効果が弱くなる」
「ゴブリン+別モンスターで考えていた方が良いか、、、」
こう言った時は最悪を想定して行動するべきだと考えていた、如何に自分の想定した最悪が甘いかを直ぐに思い知らされるが。
「緊急クエストは内容がどうあれ毎度激しい戦闘になる、気張り過ぎる必要はねえが覚悟はしておけよ」
「あぁわかった、ジーナも緊急クエスト行った事あるのか?」
「アタシがこの街に来てからは一度だけ、後方待機で回復だけやらされた忌々しい記憶さ」
「まぁ今回はパーティだから前に出れるけど、今日は楽しめはしないだろうね」
後方待機で回復、必要な役目だがジーナが最も嫌がりそうな内容だな。しかし俺は今日は楽しめないと言うのが気になった。
「何でだ?」
「冒険者の数も多い、抑えて使うのは面倒なんだ。」
「あぁ確かにそうか」
ジーナの狂化はスキル発動後、戦闘すればする程出力が上がり続け、全開放まで行くと理性が完全に無くなる。そして全開放やそれに近い状態になると敵味方の判断が付かなくなる。
一応理性が無くならない様に抑える事は出来るが連携等は不可能だ、今回の様に周りに他の冒険者が居る場合かなり抑えて戦う必要がある。
ジーナからすれば今回の緊急クエストは前回よりもマシってぐらいなのかもしれない。因みにスキルを使わないと言う選択肢は無い、戦闘を行うとほぼ自動的に発動する上に完全に抑えようとすると反動が来るらしい。
ジーナとの会話が終わるとゴルドは真剣な顔で語りかけて来た。
「アキラ、先に言っとくがのまれんじゃねえぞ」
「のまれる?」
「初めて参加する奴は空気に飲まれる事が多い、ジーナも言ったが冒険者自体も多いから混戦になりやすいしな。広範囲技何か使えや事故が起きるぜ」
「あぁわかった」
見知らぬ冒険者との連携が苦手なのは俺も同じ、今回は初めての経験と言う事もあるし注意深く戦う必要がありそうだ。
「後は何見ても、いや、これは言ってもしょうがねえか」
ゴルドは何か言いかけるが言葉を止める、そのまま俺達を乗せた馬車はラタ村へと向かった。