俺は「俺TUEEEEE」がしたい   作:味塩

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二十一話 激戦

ゴルドに殴りかかるオーガを電撃で妨害する、威力は低くても顔に当てれば無反応とはいかない。

怯んだ隙にジーナが切り掛かり、続くゴルドが大きく振りかぶる。

 

 

「ぶっ飛びやがれ!バーストブロー‼︎」

 

 

次の瞬間、大爆発が起こりオーガは後方へと飛ばされる。

強烈な爆風が吹き付ける中、ゴルドは難しい顔をするが直ぐに切り替えこちらに向くと。

 

 

「頭は冷えたみてえだな」

 

 

何処か安心した様に笑うゴルド。

 

 

「ごめん、でももう大丈夫。あいつは皆んなで倒そう」

 

 

「ハハハッ!さっき迄とは別人じゃねえか」

「ま、先走んのなんざ若い冒険者の宿命みたいなもんだ、生けてりゃ上出来よ」

 

 

そう話すとゴルドの視線はオーガへと戻る。

爆発の衝撃から立ち上がったオーガは大きな傷も無くダメージはあまり期待出来なさそうだ。

 

さっきのバーストブローはゴルドの必殺技の一つ、片方の拳に魔力を溜めて殴るシンプルな技だが並の魔物程度なら体を爆散させる程の威力がある。

 

それでもオーガに対しては、後方へ飛ばすのが精一杯だった。

 

 

 

「しかしオーガか、オーガはBランクでも強い方だ。油断すりゃ一瞬で全滅だぜ」

 

 

「ハッ!上等だね」

 

 

ジーナは挑戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「Bランクの魔物がどんなもんか、前から試してみたかったんだ」

 

 

「一人じゃ死ぬだけだぜ」

 

 

ゴルドの忠告に対しジーナは俺を見ながら言った。

 

 

「大丈夫さ、さっきそんな馬鹿を見たばかりだ」

 

 

「(何も言い返せ無い)」

 

 

「ハッハッハッ!それなら安心だ、好きにやってみろ」

 

 

その言葉を聞くとジーナの笑みは深まる。

 

 

「狂化」

 

 

そしてジーナの瞳は狂気と歓喜で溢れ、衝動のまま駆け出した。

 

 

「アッハッハ!さぁ!アタシと遊ぼうぜ!」

 

 

いつもの如く常人離れした速さでオーガに迫るジーナ、迎撃の為放たれた拳を回転する様に躱し斬りつける、しかし薄皮が切れるだけで血は流れない。

 

その事を気にする事も無くジーナは回避と攻撃を続ける。

 

 

「アキラ!俺達も行くぞ!」

 

「あぁ!」

 

 

 

そこから激しい攻撃の応酬が始まる。

俺とゴルドもオーガがジーナに集中するのを防ぐ為に攻撃を行う。今もジーナに追撃を加えようとするオーガにゴルドの拳が炸裂した。

 

 

ゴルドに意識が向ければその隙をジーナは逃さない。

俺も電撃を顔に浴びせ、怯ませる事で二人を援護する。一見連携が取れている様にも見えるが俺達にはそんな高等な技術は無く、呼吸も合わず間合いもわかっていない。

誰かが攻撃すればその余波を受けるがそれを無視して攻撃し続けているだけ。

そんな連携とも呼べない全員での連続攻撃だが、スピードと数で勝る俺達にオーガは翻弄されていた。

 

 

 

しかしこのまま戦っていれば負けるのは俺達だと痛感する。流石のオーガもノーダメージとは行かないが、気力、体力の消耗が激しくこのまま行けば俺達の方が先にバテる可能性が高い。

 

 

 

「ハハッ笑えるぜ、こいつのタフさは予想以上だ。皮膚と筋肉が厚過ぎて爆発も大して効いてねえな」

 

 

額の汗を拭いながらゴルドがぼやく、雷撃も爆撃も斬撃もオーガの防御力を突破する事が出来なかった。

俺は戦いながらも必死に頭を回し打開策を探す。

 

 

(思い出せ、こんな状況の話もあった筈だ!人の冒険譚ならあれだけ読んだんだ、何か、何か使える案があるはず!)

 

 

頭の中にいくつもの戦闘描写が流れ、物語の主人公達が強敵を撃破した方法が数多く出て来るが、その殆どが俺達では不可能な物ばかりだった。

 

 

気の抜けない戦闘が続く中、これならと見出したのは体内からの攻撃。

オーガの防御力が高くとも体内まで頑丈と言う事は無いだろう、俺の中でその案を採用し実行に移す為の方法を考えるが

 

肝心なその方法が思いつかなかった。

 

案自体は記憶の中の作品と同じだが、能力も装備も置かれた状況が違い過ぎる。

俺は体から離れた空間に雷を発生させる事は出来るが、流石に魔物の体内は無理だ。

口に手を突っ込もうものならその瞬間に腕が無くなる、そもそもそんな器用にタイミングを計れない。

  

 

「くそっ、どうすれば、、、ジーナ!」

 

 

焦りから言葉が漏れた瞬間、ジーナはオーガの拳をモロに受け砲弾の如く飛ばされた。

 

 

「サンダーアロー‼︎」

 

 

すかさず雷撃を浴びせ追撃を阻止する。ジーナが地面にぶつかるとその衝撃から土煙りが上がる、だが土煙りが晴れる間も無く砲弾の如き速さで飛び出しオーガに向かった。

 

怒りの籠った一撃はオーガの首を狙うも腕に防がれる。切られた腕は血が噴き出るものの直ぐに止まり重傷を負わせるには至らなかった。

 

 

(早く何とかしないと、、)

 

 

ーハハッ気持ちは分かるぜ、俺も最初は武器ぶっ壊しまくったからな!ー

 

その時、いつかのゴルドの言葉が頭を過り一つの案が浮かんだ。

成功するかはわからない、しかし何もしなければ全滅してお終い、そんな結末を変える為動き出す。

 

 

「二人とも少し待ってて!直ぐ戻る!」

 

ジーナは目配せを、ゴルドは短く「おう!」と返す、何も聞かない仲間の信頼に応える為にも全力で走り目的の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

着いたのはあの兵士の元だった、倒れ伏したままの亡骸の近くには血濡れた槍が。

 

その槍は余計な装飾などは何も無く、見た目だけならば地味でありふれた槍だ、それもかなり長く使い込まれている。しかし手入れが行き届いており穂先に欠けや歪みは無い。

持ち主を失った今も、自らの役目を果たすべく佇んでいる様にも思えた。

 

 

 

「あなたの力お借ります」

 

 

槍を手に取ると重量以上に重く感じた、落とさない様強く握りしめ仲間の元へと急ぐ。

 

 

 

 

 

「ハァハァ、、、」

 

 

ジーナが息を切らし呼吸する度に大きく肩を動かす、これまでの冒険では見た事無い事態に驚くが直ぐに切り替える。戻ってからも即座に妨害を入れる、一呼吸だけだがこの状況では大きな時間だ。

 

「で、あいつを殺す方法は見つかったか?」

 

息を整えながらジーナが話す、その目にはいつもの狂気は無く疲労が見えていた。離れる前よりも理性的なジーナに再度驚く、狂化を維持出来ない程に疲弊しているのかも知れない。

 

 

「あぁ、この槍をあいつにブッ刺して俺とゴルドで魔力を流すんだ。そうすれば体の中から攻撃出来る」

 

「だったら穂先が完全に入り込むまで刺さなきゃだ、あの筋肉の壁を越えるのは素人のあんたやゴルドじゃ無理だね」

 

「ジーナなら?」

 

「私でも無理だ。でもその為に出来る事はある」

 

「出来る事?」

 

「見てればわかるさ、さっさと離れな」

 

ジーナは覚悟を決めた様に笑う、俺は嫌な気配がし慌ててオーガと対峙して居たゴルドに声をかける。

 

 

その場を離れジーナに目を向ける、ジーナは両手に剣を握りしめて低い体勢でオーガを見据えていた。

そして次の瞬間、ジーナの放つプレッシャーが格段に上がった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!」

 

 

咆哮、しかしオーガのものでは無い。

 

ひりつく空気の中ジーナはじっとオーガを見ていた、その顔は暗いわけでもないのに何故か見えない、言い表すとすれば闇そのもの、そして血の如く紅い瞳だけが輝いていた。

 

 

全開放。恐らく今のジーナに理性は無い、ただ自らの衝動に従う暴力と狂気の権化。

その威圧感にオーガすら警戒を露わにしている。

 

 

ジーナは姿勢を更に低くし剣を構え

 

 

俺はその動き出しを捉える事が出来なかった。

 

気が付いた時にはジーナはオーガの目の前まで迫っておりオーガの胸を切り裂いた。

かつてアーマーグリズリーの鎧を切り裂いた時の様に両の剣を交差させる、しかしその威力は比べる事が出来ない程のものだった。

 

溢れ出る鮮血から傷の深さが窺える、切られたオーガも困惑しているほどの一撃。

致命傷にはならないが確かに重症を与える事に成功していた。

 

 

ジーナは剣を振るいながらオーガを通り過ぎそのまま力なく倒れた、オーガの攻撃は当たっていない、体力を使い果たしたのかも知れない。

 

 

奮闘した仲間に駆け寄りたくなるがジーナが作ってくれたチャンスを無駄にする事は出来ない。

俺はゴルドに共に走り出した、作戦を説明する余裕は無くゴルドには槍を渡しながら「魔力を流す!」としか言えなかったが伝わった様だ。

オーガは向かって来る俺達に気付くが傷が深いのか動きが悪い。

 

 

 

そしてゴルドがオーガの胸に突き刺し槍を押し込む、俺も槍を握り締め力を加える。

 

 

「やるぞ!アキラ!」

 

「ああ!」

 

俺とゴルドはありったけの魔力を流し込む、穂先目掛けて溢れんばかりの魔力が迸った。

槍は耐え切れずヒビが入るが構わず残った魔力を全て流す

 

 

 

「「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」

 

 

 

 

槍の限界を超え、行き場の無い魔力が大爆発を引き起こす

 

 

世界が破れる様な轟音、辺りを白く染める閃光。

その勢いは容易に俺達を吹き飛ばした。

最後に見えたのは上半身の無くなったオーガだった物、飛び散る臓腑に塗れ、爆風に肌は焼かれているが興奮状態のお陰か痛みは無く心は晴れやかだった。

 

 

(槍、壊しちゃったな、、、)

 

 

吹き飛ばされながら心が呟く。

こうなるとわかって居たとは言え勝手に借りて壊した事に申し訳ない気持ちが湧き出て来る。

そして地面に叩きつけられ意識を失う瞬間に

 

良くやった

 

そんな声が聞こえた気がした。

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