夜の帳が下り静けさが街を覆う、相反する様に賑やかな酒場で男は酒を飲んでいた。
「彼の調子はどう?」
そんな男に話しかける隻腕の女、断りなく対面に座ると自分の酒を頼む。
男の脳裏に浮かぶのは最近任された新人、ギルドから期待され自分の元で修行に励む少年だった。
「かなり良くなったぜ、後は明日のクエストでどうかだな」
「今でどれくらい?」
「破壊力だけなら余裕でCでも通用するな、全体的に見ればDぐれえだ」
「二ヶ月でえらく上がったじゃないか、あんたに任せたのは正解だったね」
女は上機嫌になりながらも酒を飲む、自ら試験をしその強さに対して密かに期待していた。
その期待通りとも言える進歩に嬉しく思うが、少しだけ真剣な目をして男に聞く。
「能力の適性は?」
女の言葉に男は大きくため息をつき顔を横に振った。
「駄目だな、あれは俺と同じで冒険者に向いてねぇ」
「俺と違うのは兵士には向いてるって所だ」
「はぁ、やっぱりか。ギルドとしてはあんたらみたいなのも必要何だけどね」
女はため息を吐くものの落胆まではしなかった、この目で見た故にある程度の懸念はしていた。
「ハハハッ!そいつはありがてぇが食って行けなきゃどうしようもねえからな」
「まぁ暫くは冒険者続けるんじゃねえか?その後どっちを選ぶかは知らねえが」
「あんたやあの戦闘狂に加えて新人までも、どうしてこの街のユニークスキル持ちは癖が強いんだろうね」
「ハッ俺が知るかよ」
「明日のクエストはゴブリンの調査だったっけ?わかって居ると思うけどただの新人と同じ扱いはするんじゃ無いよ」
「大丈夫だ、その辺はしっかりやっとくぜ。俺も最初の頃は痛い目に合わされたからな」
女は酒を飲み干すとテーブルに小銭を置いて去って行った。自分の酒も無くなり追加で注文した、酒が来るまでする事もなく考えに耽る。
「面白え奴だがな、現実知ったらどっちに転ぶか、、」
自分が今面倒を見ている新人、最初こそ能力に溺れる奴の典型的なタイプだったがこの二ヶ月あいつは文句は言うが休む事無く修行に着いてきた。
能力の使い方も精神面もかなり成長し、ある一点を考え無ければ冒険者としてやって行けるだろう。
若く強力な才能を持ち修行でも根を上げない、その性格は絵に描いたような英雄志望。
(冒険者に不向きな英雄志望、まるで昔の、、、)
思考はそこで一度止まる。
「ハッ新人見て自分と重ねるなんざ俺も年とったな」
男は一人笑う、頼んだ酒が来ると一気に飲み干し給仕に金を渡す。
酒場を出れば少し涼しげな夜風が心地良かった。