六話 初クエスト(1)
いつもより早くに目を覚まし装備を整える、持って行くのは
ナイフ、ロープ、松明、手拭い、麻袋、焼却用簡易スクロール、解毒用の薬草に回復ポーションとショートソード。
ナイフとショートソードは革のベルトに装着し後は鞄に入れ背負う、準備をしながらもあの人にアイテムボックスも貰えば良かったなと思うが後の祭りだ。
この世界にもマジックバックはあるのだが今の俺では手が出せない金額のため諦めた。
ショートソードは持って行きはするが戦闘で使う予定は無い、草を刈ったり解体に使ったりと鉈の様な使い方になるだろう。
と言うのも、一度ゴルドに剣の使い方を聞いたら
「剣だぁ?お前さんにはいらないだろ。やめとけやめとけ無駄になるぜ」
「何でだ?」
「お前さんのユニークスキルは俺と同じで武器との相性が悪いんだよ」
「その辺の剣にお前さんの魔力流せば直ぐに駄目になるぜ、デカくて丈夫な剣で潰す様に切るってなら別だがお前さんには合わないだろ」
「まじかよ、、エンチャントとか無いのか?」
「それは魔法だな、魔法なら武器に属性エンチャント出来るが俺やお前さんのユニークスキルじゃ無理だ」
「魔法とユニークスキルで何が違うんだ?」
「魔法の場合はあくまで武器に魔力を纏うだけで、火のエンチャントをしても武器が燃えるんじゃなくて燃えんのは纏った魔力だ」
「だがユニークスキルで同じ事をするなら武器に直接魔力を流すしかねぇ」
「俺の場合は武器が爆砕して終わるしお前さんの場合は多分力に耐えられねえぞ」
「まぁミスリル製や耐性を持った魔物を素材にした上等な剣なら行けるだろうが、手に入れるまで使い潰し続ける何て金がいくらあっても足りねえよ」
「まじかよ、、雷の剣とか使いたかったのに、、」
「ハハッ気持ちは分かるぜ、俺も最初は武器ぶっ壊しまくったからな!」
「俺たちの場合は殴った方が早い、お前さんは遠距離攻撃も出来るしな」
そんな流れがあり剣を使うのは諦めた。
俺のはチートスキルだし行けるんじゃとナイフで試したが駄目だった、魔力を流したナイフは見事に砕け俺は素手で戦う事を決めた。
幸いゴルドはその戦い方のスペシャリストだ、ユニークスキルを使った近距離戦闘はかなり上達したし、今ではこれもカッコいいしありだなと思ってる。
そんな事を考えならがも準備を終えギルドに向かう。
ギルドでゴルドと合流しクエストボートで今日受けるクエストを探す。
クエストは主に調査、討伐、納品に分かれている、その他だとペットの捜索や剣術指導、護衛などがあるが数は少ない。
Gランクでも受注可能なクエストを探すが、運が悪いのかペットの捜索ぐらいしか無い。流石にこれは受け持ち人同伴で受けるクエストではないだろう。
「こりゃ駄目だな、仕方ねぇこれするぞ」
「ゴブリンの調査?Eランクだけど良いのか?」
「あぁ今は俺とパーティだからなパーティランクはEの筈だ」
「そう言えばパーティランクが受注の基準だったか」
「出来れば最初はFとかのが良いんだがな」
「Gじゃ無いのか?」
「G何てガキの使いみてーな依頼しか来ねーよ、Gランクの依頼なんてある方が珍しいぜ」
そう言いならがゴルドは依頼書を引き剥がしカウンターに向かう、その後俺はクエストを受ける流れや受ける際の注意点を教わる。
クエストの受注が完了しギルドを後にする、今回のクエストは近隣の村の近くでゴブリンと思わしき足跡を見たから調査して欲しいと言うものだった。
クエストの達成条件は村周辺の調査、ゴブリンなどの脅威が居た場合の排除だ。
調査段階で危険度が高いと判明した場合はその情報をギルドに伝えるだけでも達成になるらしい。受付のお姉さんからはゴブリン数匹なら討伐、それ以上なら直ぐに引き返して報告に来てと言われた。
「良いか?こっからは油断するなよ、俺が付いていようと死ぬときゃ死ぬからな」
街から出て村に向かおうとするとゴルドはそう言ってきた。
「あぁ、流石にもう調子に乗ってない」
この世界に来た当初ならチュートリアル感覚で挑んで居ただろうが、今は全くそんな気にはなれない。
やっと冒険者らしい事が出来る嬉しさはあるが油断は絶対にしないと決めていた。
と言うのもゴルドから聞いた話だが、この世界は長閑な林でも化け物級の魔物が出て来る事があり、RPGの様に場所によってレベル帯が分かれている何て事は無い。
実際にゴルドと修行中も何度かギルドで冒険者を引退する奴を見た、新人ばかりではあったが中にはDランクの冒険者も居た。
引退する奴は大体が心折れたか大怪我負って続けられなくなったかのどちらかだ、引退すら出来なかった奴はそういう事なのだろう。自分を除くパーティは全滅したと報告する奴も居た。
この世界には回復魔法があり数は少ないが回復魔法を使える冒険者も居る、しかし四肢の欠損や命に関わる大怪我の治療は専門の神官でないと出来ないそうだ。
当然無料では無く莫大な治療費がかかり、その費用はゴルドの様なベテラン冒険者でもかなり厳しいらしく新人や若い冒険者にはとても払う事は出来ない。
それ以外だとダンジョンの宝箱から極まれに出るフルポーションを探し出すしか無いが、深く潜らないといけない為自力では無理だし、買うのは同様の理由で無理。
大怪我を負えばそのまま引退するしか無くなるのだ。
そして引退出来るのはまだましだと言う現実。お陰で冒険者はいつでも人手不足だが一旗あげようと言う志望者は後を絶たない。
この世界の冒険者は俺が思って居たよりも強く、そして魔物は更に強い。
チートスキルが有ろうと今の俺が舐めて掛かれば直ぐに死ぬかもしれない、俺のチートは攻撃力に偏ってるしな。
「だと良いんだがな、何度も言ってるが壁から離れりゃ安全はねぇ、死にたくなきゃ油断すんなよ」
「おう」
俺はもう一度気を引き締めゴルドに着いて行く。
街を出て三時間程歩いただろうか、途中魔物に遭遇する事も無く順調に進んだ。
「見えて来たぜ、あれが今回の依頼主のラタ村だ」
ゴルドが指差す先は木製の壁で囲われていた、門の上には矢倉があり兵士が此方に手を振る。
そのまま門まで行きゴルドが兵士に話しかけた
「依頼を受けた冒険者だ、ゴブリンの調査って依頼だ」
「ああ、今開ける」
門が開き兵士に出迎えられる、村はいくつもの住居があり人は多そうだ。農業を営んでいるのか桑などの農具を手にする村人が多い。
村は思ったよりでかい、でも木の壁だけって大丈夫なのか?
ゴルドと兵士の話を聞くと畑から少し離れた場所にゴブリンと思われる足跡を発見したとの事だ。
兵士の案内で畑に向かう途中、村の中心部に魔石の飾られたオブジェが建っていた。
「なぁ、あれって何だ?」
気になった俺はゴルドに聞いてみると。
「何って普通の魔除けじゃねーか、何だお前さん街育ちか?」
(魔除け?この世界では一般的なのか?)
どうするか迷うが街育ちって事にしておく。
「そんな感じ、魔除けって事はあれで魔物から村を守ってんのか?」
「ハッどんな感じだよ、まぁ良いか」
「あの魔除けで魔物が来ねーように守ってんだ、魔石を使うしゴブリンやコボルトみてえな魔力の低い奴には効きづらいけどな。」
「勿論クルトにもあるぜ、貴族が管理してっから見る事は無えだろうけどな」
なるほど、木で出来た壁じゃ防御力低過ぎると思って居たけどそう言う仕組みだったのか。
俺はもう一つ気になった事も聞いてみた。
「兵士の人が居るのに冒険者に依頼をしたのって何で何だ?」
この村には兵士が普通に居た、見たのは五人程だがあれが全員では無い事から最低でも十人はいるだろう。
それだけ兵士が居るのに金を払ってまで依頼する理由がわからなかった。
「兵士は基本的に村を守んのが仕事だからな、小規模な調査や森の中での討伐は冒険者に依頼すんのさ」
「ま、役割の違いって奴だ。少人数で村守ってる以上犠牲を出す訳にも行かねーしな」
「そう言う事だったのか」
そんな話をしながらも門に着いた、入って来た門とは反対側にある門を超えると畑が広がっていた。
畑は広くいくつかの野菜を栽培している様で、その外周には木製の柵が設置されて居た。
畑の中央には村と同じオブジェが建てられ、畑も同様に守っている様だ。この世界でどうやって農業やってるのか気になって居たが、魔除けが有れば出来なくは無いのかと納得した。
「足跡があったのはこの柵の奥です、足跡の数から少数だとは思うのですが調査の程よろしくお願いします」
兵士の指す方向を見ると柵の奥は切り開かれた平地が続くが、少し奥には林が見える。
俺はゴルドと共に柵を乗り越え調査を開始した。