調査開始からまだ一時間程だろうか、今は畑の奥の林に居る。木陰に隠れながら様子を伺う先には五体のゴブリンが居た。
足跡を辿り林に入ればゴブリンは直ぐに見つける事ができ、俺は息を整え先制攻撃を行う。
「サンダーアロー!」
生み出された三本の雷がゴブリンを貫く、不意を突かれたゴブリンは反応する事も無く三体がそのまま倒れた。
俺は間髪入れずに次の技を発動する。
「サンダーフォース」
雷を纏いゴブリンに急接近、相手はまだ状況が理解できておらず手に持つ武器を構えもしない。
こちらを向いたゴブリンの頭を飛び膝蹴りで砕く、やっと理解したのか武器を構えるゴブリンは、その武器を振り下ろすよりも早く右の拳で殴りつけた。
周囲を警戒し敵がいない事を確認した俺は技を解き腰のショートソードを抜く。
倒れ伏すゴブリン達の首を切り裂きとどめを刺す、恐らく既に絶命しては居るが念の為。
ゴブリンは生命力が高く死んだフリをする事もある故ゴルドから、「殺したと思っても取り敢えず首を切っとけ」と教わった。
首を切った次は胸を切りゴブリンの体の中に手を入れる、ゴブリンの魔石は胸部にあり取り出すと指の爪程度の魔石が出て来た。最後に討伐証明の右耳を切り取り袋に入れる。
討伐証明を回収し終わるとゴルドが近付いて来る。
「ハハッ奇襲は出来は上々じゃねーか」
ゴルドは「やばくなったら入る」と言い、基本的には今回の依頼で起こる戦闘に参加しない。俺は一人立ち出来るかを見るためにも必要なんだろうと納得していた。
「だがここからだぜ、気抜くなよ」
「ここから?調査の続きって事か?」
倒した事に油断するなって事か?
事実ゴブリンは倒したがこれは依頼の完了では無い、この後更に調査を続け無ければ行けない。
「直ぐわかるさ、ほらもう来たぜ」
こちらに近く足音、直ぐに警戒体制を取り敵に備える。
さっきの戦闘音を聞き付けて来たのか武装したゴブリン達が飛び出して来た。数は七体程、先程と違い完全に戦闘態勢に入られている。
「サンダーアロー!」
再度雷の矢を飛ばす、今の俺が同時に撃てるのは三発までだが当たればゴブリンなら即死は間違い無い。
仲間がやられた事を気にも止めず接近するゴブリン達。
「ショックガン!」
四発の小さな雷の弾が手から撃ち出される、当初は教官に一切効かなかった技だが今は大幅に強化され撃たれたゴブリン達が大きく怯む。
その隙にもう一度サンダーフォースを発動させ二体のゴブリンを殴殺、残りのゴブリンにも攻撃しようとするが
その瞬間林の奥から再度足音が聞こえたかと思えば、新手のゴブリン達が現れた。その数は十を超え、奥にはやたらデカい奴も居る。
「また増援かよ、、」
迫るゴブリンに対し直様後ろへ引く、怯みから解放されたゴブリンも新手と合流し、ゴブリン達は勝ち誇った様に下卑た笑い声を上げ向かって来る。
「行けるかぁ?」
「大丈夫だ!」
後ろから聞こえたゴルドの声に短く返す。
こんなに増援が来るのは予想外だが冷静に考える、これだけ数が多いと接近戦は避けたい。
ゴブリンならば一撃で殺せるが不意を突かれれば俺も一撃で死ぬ、囲まれたら厄介だ。
俺は両手を前に突き出し溜めに入る。
まだ技が未完成で溜めが必要なのが難点だがゴブリン達との距離はまだある。
ゴブリン達が直ぐ近くまで迫るが溜めは完了し技を発動する。
「サンダーストーム‼︎」
放たれたいくつもの荒れ狂う様な電撃がゴブリン達を呑み込む。
雷が通り過ぎ次々に倒れるゴブリン、だが後ろに居たデカい奴は味方を盾にする事で防いでいたらしく、黒ゴケになった味方の死体を投げ捨てる。
通常のゴブリンの倍はある、恐らく上位種のホブゴブリンだろう。ホブゴブリンは怒り狂った様に叫び声を上げ突っ込んで来る。
「サンダーアロー」
短時間に多くの魔力を消費し僅かに怠さを感じるが確実に殺す為電撃を放つ。
それと同時にホブゴブリンは武器を盾にし防ごうとした、ホブゴブリンが持つ木製の棍棒は電撃が直撃した瞬間弾け飛んだ。電撃も霧散しホブゴブリンには当たらなかったが立て続けににもう一発放つ。
直撃したホブゴブリンは倒れ伏す、即死せずまだ息はあるが戦闘不能だろう。最後はショートソードでとどめを刺した。
「疲れた、、」
三連戦、それも最後は範囲攻撃まで行った。
暫く周囲を警戒して居たが増援はさっきので最後だったらしいくもう近づく様な音はしない。
足早に魔石と討伐証明の回収を済ませるが、危険を感じその場を飛び退く。
その直後自分の居た場所に投げられる石、投げられた方を見ればゴルドが立って居た。
「良く避けたな!油断してんじゃねーかと思ったが大丈夫そうだな」
そう言って近づくゴルド、その顔には全く悪気は無くいつもの様に豪快に笑っている。
「確かめる為に石投げるって危ないだろ」
「これが一番教訓になるから良いんだよ」
一理あるか?
はぁ、これで納得する辺り俺も大分この世界に染まったのか。
「勝ったと思った時が一番油断すっからな、お前さんは上出来だ」
「誰かさんに散々教え込まれたからな」
修行中もこの手の内容は多かった、魔物から不意打ちをくらえば死ぬ可能性が高い為俺自身も危険察知能力は出来るだけ鍛えて居た。
「ハハハッ!ならお前を育てた俺が優秀って事だな!」
「はぁそんな冗談言って無いで死体運ぶの手伝ってくれよ」
「仕方ねえな、さっさと終わらせて村に戻るか」
「村に?調査はもう良いのか?」
ゴブリンの追撃は無い様だが、まだ居るかも知れないしこの後調査再開すると思って居た。
「ホブが出て来た以上今回の原因はそいつらで全部だ、大方この辺りを新しく縄張りにした群れって所だろうな」
「追撃が無えのがその証拠だ」
「じゃぁもう帰れんのか、魔力大分使ったし又連戦とかだったらやばかったな」
その後ゴブリン達の死体を一箇所にまとめて燃やす、これをしないと死肉を食べに他の魔物が寄って来たり疫病が発生したりする為、緊急事態以外は厳守する様に言われている。
肉が食える場合や死体が素材として売れる場合は持ち帰るのだが、生憎ゴブリンは魔石以外は価値が無い。
村に戻り兵士へ報告する、調査結果と俺が一人で倒した事に驚いては居たがつつがなく進んだ。
クエスト達成のサインを貰い街へと帰る、帰りも特に魔物と遭遇する事なく終わった。
偶にゴルドから石が飛んで来たが、、
ギルドでの報告も終わり、新人の初クエストの結果としてはかなり凄かったらしく追加報酬を少しだけ貰えた。
その後は初クエスト達成の祝いとしてゴルドの奢りで酒場へ行き
飲み過ぎて吐いた。
酒場の外で吐き散らす俺を見てゴルドは豪快に笑って居た。