OMORI×仮面ライダー555   作:ドルデダバ

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やっと会えた。

 その日、ピンク色の髪を持つ少女は友人との遊びに耽り帰りが遅くなっていた。もう既にすっかり夕日は落ちて辺りは暗くなっており、チカチカと不安定かつ弱弱しく地面を照らす街頭の周りには蛾がたかっていた。

 とはいっても彼女は左程それを重くは受け止めていなかった。自分の帰りを待つ人間など家にはいない。一日中テレビの前のソファに腰を下ろす母親と最後に会話したのは、もう何年も前のことだったからだ。

 釘の刺さったバットを地面に引きずりながら家の前まで帰ってきた彼女は、玄関のドアノブに手を伸ばそうとする。

 

「オーブリーちゃん」

「…え…?」

 

 その時だった。

 懐かしい…がしかし忘れられるはずもない声が彼女の鼓膜を震わせた。条件反射的に声のした方へと顔を向けると、歩道には白い服を着た女性が笑みを浮かべながら立っていた。

 

「ま、マリちゃん…ッ!?」

「…」

 

 カラン、地面に釘バットが零れ落ちる。まるで吸い込まれるようによろよろとオーブリーの足が白い服をきた女性の方へと動いていく。

 幻覚を見ているのだと思った。マリは数年前自宅に血痕を残し突如失踪した。警察は事件に巻き込まれたと判断して捜索を始めたが一向に発見できず結局数か月後に捜査は打ち切りに。オーブリーは慕っていたマリが死んだと思い込み、酷く塞ぎ込んだ。周りの友人に助けを求めようとしたが、各々負ったダメージはお互いに補強し合える限度を大きく超えてしまっており、結果として彼女は孤立してしまった。

 

「ふふ、」

「ま、マリちゃんまってッ!まってッ!!」

 

 あの時と姿も形も声さえも何一つ動いていなかった。

 白い服をきた女性は緩やかにその細い足を動かして歩き始める。オーブリーは何も考えられずただその後ろを追いかけた。

 その脚の動きはどこかぎこちなく決して早くはない…はずなのに、オーブリーが全力で追いつこうとしても徐々に距離が離れつつあった。

 

「マリちゃんッ!!マリちゃああんッ!!」

 

 自然と彼女の瞳からは涙が溢れて零れ、頬を伝った。

 夜中、周りは住宅街だというのに大声を出して泣き叫んだ。あの時、マリは死んだと悟った時と同じ泣き方をしていた。大好きな色に染めた髪の毛、本当に見せたかった人には見せられなかった。まるで過去の自分の背中を追いかけるようにオーブリーはマリの背中を必死に追いかけた。

 

「はぁ…ッ…はぁ…!!」

 

 白い服を着た女性は教会の中へと入っていった。

 オーブリーは両手で思い切り扉を開けて教会の中へと駆け込んだ。

 

「どこなのマリちゃんッ!!どこにいるのッ!?」

 

 光源のない暗い教会の中に声が響き渡る。

 最早幻覚だろうがなんだろうが彼女にとってはどうでもよかった。ただもう一度マリの顔を見たかった。あの胸の中で思い切り泣き叫んでしまいたかった。彼女はマリの中に本当の母親の影を見ていた。

 

「ここだよ」

 

 祭壇に光が差す。そこにはマリがいた。神々しささえ感じるその姿はまるで天使のようだ。

 よろ、よろ…とオーブリーはマリへと近づいていく。母乳を求め母親に近づいていく赤子の様に。

 

「あ、あのね、マリちゃん、…!私ね…マリちゃんがきえて、から…!」

 

 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながらオーブリーは声を絞り続ける。

 

「今までいなくなってごめんねオーブリーちゃん、でも大丈夫だよ。これからはずーっと一緒だから」

「…え、ぇ…?」

 

 マリの隣に一つの影が現れる。

 2m近くある全身の配色は灰色に近い白。肩、膝、両拳、そして背中には亀の甲羅に近いものが貼り付けられていた。一見着ぐるみを着ているようにさえ見えるそれが作り物でないことは、それが動き出した時のズシリとした重い音でハッキリと理解できた。

 

「ま、マリちゃん、そ、それ…」

「私の新しい友達だよ、オーブリーちゃんもいっぱい新しい友達を作ったみたいだね、ふふ、羨ましいなぁ…」

 

 明らかにマリの隣にいるそれは此方に対して敵意を持っている、直観的にオーブリーはそれを察した。

 それと同時に自分がどう足掻いても決して勝てる相手ではないことも理解できた。先程まであった感動の感情はすっかり拭い落とされ、本能的に一歩二歩…とその場で後退りする。

 しかし無慈悲にもその怪物はオーブリーに向かってズシズシと勢いよく近づいてきていた。

 

「ぅあッ!?」

 

 迫ってくるタックルをなんとか側方へと飛び込み回避する。

 オーブリーは元からスポーツは得意な方であったが、ここ数年不良としてすっかり鍛え上げられフィジカルならそこらの男子でも軽くぶっ飛ばせるほど成長していた。

 そんな彼女でも、木製のイスをまるでシャープペンシルの芯でも折るように破壊する化け物の力を見て全身の産毛を逆立てた。

 

「でも大丈夫!きっとオーブリーちゃんも私たちみたいになれるよ!だから怖がらないで!」

「やめてマリちゃん!私こんなの…!」

「うるさい」

 

 先程まで聖母のような優しい笑顔を浮かべていたマリが一瞬で無表情になった。

 

「…え?」

「結局オーブリーちゃんも同じなんだ、私がこんなに努力してるのに…わかってくれないんだね」

「な、なにいって…ッ!?」

 

 動揺と恐怖で腰が抜けてしまったのかオーブリーはその場から立ち上がることができずにいた。

 化け物はそんな彼女を見ると両拳に生えた棘をゆっくりと彼女の胸へと近づけ始める。オーブリーはなんとか地面を掴んで逃げようとするが、どう考えても避けることのできる時間は残されていなかった。

 

「さようならオーブリーちゃん。また会おうね」

 

 もう少しでその棘が胸へと突き刺さる。

 

「やめろ」

 

 その時だった。教会の扉が開いて外から街頭の光が差し込んだのだ。

 化け物の手がぴたりと止まる。逆光でハッキリとは分からないがその身体に赤い光の線が伝っているのがぼんやわりと見えた。

 

「その人には指一本触れさせない」

「…サニー…」

「ぇ、さ、さにー…なの…?」

 

 マリの口から小さく声が漏れる。

 

「ぐぉおおあああッ!!」

 

 化け物は標的を素早くオーブリーからその赤い戦士へと変更すると、再びタックルを放った。途中その進行方向にあったあらゆる物体は枯れ木の如くバキバキと粉砕されていき、もう少しで接触する…その寸前で赤い戦士はその場に飛び上がった。

 空中で背中の甲羅を蹴り上げたことにより、化け物は勢いのままに前のめりに壁へと叩きつけられ、顔を壁にめり込ませる。

 

「ぅがああッ!!ファイズッ!!」

 

 なんとか顔を壁から抜いた化け物はファイズと呼んだ赤い戦士へと飛び込んでいく。

 拳の棘を使ったパンチを一発、二発、と連続で打ち込むもファイズはバックステップを踏んで軽々とそれを躱す。

 そして腰にあるファイズショットを取り外すと素早く拳に装着。三発目のパンチが繰り出されると同時に、向かってくる化け物の拳に向けて自分の拳を突き出した。

 

「うぎぁあッ!!?」

 

 化け物の拳を覆っていた甲羅がバキンと音を立てて砕ける。

 

「ぐ、ぁ…ッ…!!」

 

 あまりの痛みに悶える化け物。

 そのほんの数秒の時間が彼の運命を決した。ベルトのチップを抜いたファイズはそれをファイズショットへと挿入、ファイズフォンのエンターキーを素早く押すと、その場には『エクシードチャージ』という機械音が流れる。

 音声によって今自分がどんな状況に立たされているかを理解した化け物はその場から逃げ出そうとするも、その鈍重な体は今から逃げるにはあまりにも重すぎた。

 

「ご、ぉッ…!!」

 

 ベルトから放たれた赤い閃光は体を伝い拳へと流れ込む。

 閃光と共に放たれた赤いパンチは化け物の腹部へと直撃。化け物は体を大きく跳ね上げると、膝から崩れ落ち、灰となって崩れ落ちた。

 ファイズはマリの方をじっと見つめる。マリは彼を一瞥するとそのまま光の中に溶けて消えていった。

 

「…オーブリー…大丈夫…?」

 

 オーブリーは口をパクパクと動かしていた。

 自分の理解を超えることがこうも短時間に連続して起きると人は何も考えられなくなってしまうものだ。更には命の危機に瀕したことで疲労も蓄積し、緊張の糸が切れた様にその場に気絶してしまった。

 

「…ごめん…」

 




『アーカイブ№1』

【ハルバル町の地域新聞】
見出し:町の端にできた大企業、スマートブレイン社
本文:遂に長年かけていたビルの工事が完成し、来月からスマートブレイン社が運営を開始する。携帯、バイク、カメラから何から何まで作るこの会社は我らがハルバル町の文化を20年は進歩させることになるだろう。
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