OMORI×仮面ライダー555   作:ドルデダバ

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守護

「…家まで送るよ」

「!」

 

 オーブリーは反射的に「いらない」と答えそうになった。しかしほんの少し考えてから「…それじゃ、お願い…」と小さい声でそう返答した。最早この町は少し前までの平和なハルバル町ではない。怪物が跋扈する戦場なのだ。もしも昨日の様に怪物に襲われた場合、自分は間違いなくなんの抵抗もできずに殺されるだろう。

 今朝の砂になった隣人を思い出し、オーブリーは肩を震わせた。

 

「お、それなら俺も送るぜ」

「アンタはいい」

「なんでだよ!そっちの方が安全だろ!?」

「…はぁ…」

 

 昨晩の戦いを見ていなかったケルにはその怪物とやらがどんな力を持っているのか、あまり時間が湧かなかった。

 まるで板チョコを指先で折るような感覚で椅子や壁を破壊するあの様子を見れば、普通の人間がどれだけ束になろうと意味がないことはすぐに理解できるだろう。

 

「ケルはもうすぐ夕飯の時間なんじゃない?」

「…やべ、母さんに怒られる…」

 

 そういうとケルは勢いよく立ち上がり、玄関から飛び出していった。

 サニーはそんな彼の背中を見送るとタンスの下からアタッシュケースを取り出し、蓋を開けてオーブリーに中身を見せた。

 

「あんた、それ…」

「うん、スマートブレイン社のものだよ、これでアイツらと戦える」

 

 オーブリーはベルトをそっと手に取った。ずしり、と手にかかる重さ。当然ただの腰を絞めるためのベルトでないことは明確であった。

 

「これ、何処で手に入れたの…?」

「…少し前に僕もあの怪物に襲われたんだ」

「…え!?」

「逃げたけどすぐに追いつかれて、どうしようもなくなって…気を失って、それで起きたらそれが落ちてた」

 

 オーブリーは困惑した。

 どうして怪物に襲われたはずのサニーが無事なのか、気を失っている間に何が起きたのか、何故このアタッシュケースが落ちていたのか。あまりにも謎が多すぎるのだ。

 しかし今その謎を真相を考えてもどうしようもない。ただ今はあの怪物に対する戦力を自分たちが辛うじて持っていることに安堵するほかなかった。

 

「ヒロは将来スマートブレイン社に入るらしい、だからケルにはこのことを言いたくなかった」

「…」

 

 アタッシュケースに刻まれたその社名は、突然現れた怪物のどんな形であれ必ずスマートブレイン社が関与していることの何よりの証拠であった。

 アタッシュケースの蓋を閉じてロックすると、持ち手を掴みサニーはその場に立ち上がった。もう既に時刻は7時近い、これ以上遅くなれば夜道を襲われる可能性も高くなる。

 

「さあ行こうオーブリー」

「…うん…」

 

 あの事件がってからサニーともまともに会話してなかった彼女は、なんだか昔よりも彼の口数が増えているような気がしていた。

 今までは、落ち込む自分に対して寄り添うことのなかった周りに対し怒りを募らせていた彼女だったが、よく考えれば、姉が家に血痕を残して失踪したとなれば最も動揺するのは弟の彼だったはず、オーブリーは今まで彼に対して冷たく接していた自分に罪悪感を覚え始めていた。

 サニーとオーブリーは家を出て歩道を歩き始めた。もう既に弱弱しい壊れかけの街頭が道を照らしており、背後の月夜がうっすらと地面に影を映していた。

 

「オーブリー」

「ぇ、な、なに?」

 

 突然話しかけられ思わずオーブリーは肩を跳ねさせる。

 

「…あの時、僕は君が落ち込んでいるのを知っていた」

「!」

「周りの人間は皆マリが死んだと思う様になっていった。母さんでさえ2年も探し続けて結局諦めた。でも僕はどうしてもそれを受け入れることができなかった」

「ぁ、…」

 

 自分もそうだ、とオーブリーは思わず口にしそうになった。ただ、途中でやめた。サニーが口にする()の中にはきっと自分の入っているのだと、口を開いた瞬間に理解したからだ。

 マリは生きている、何処かできっと、そんな風に最初は思っていたけど時がたつにつれ、そんなことはあり得ない。もし生きているのなら帰ってきてないはずがないのだ、と考えるようになっていたのだ。

 

「君が苦しんでいるは知っていたけど僕は君に寄り添うことも助けることもしなかった。声をかけた時に『マリは死んだんだ』と言われるのが怖かったんだ」

「…ッ…」

「勝手に君を恐れて遠ざけ、向き合おうともしなかった」

 

 彼はほんの少しだけ震えた声で「本当にごめん」と謝罪の言葉を漏らした。

 オーブリーはサニーの涙を決してみない様に前を向きながら震える唇をゆっくりと開いた。

 

「…わ、私も…勝手に悲劇のヒロインになってた…みんなそれぞれ、それぞれのやり方で乗り越えようとしていたのに…勝手に皆を責めて、それで…ッ…」

 

 しかしその言葉を言い終える前にサニーはオーブリーを隣へと突き飛ばす。

 何が起こったか分からず近くの民家の庭へと倒れこんだオーブリーは薄く目を開いてサニーを見た。

 

「!!」

 

 サニーの腕には細い針のようなものが数本刺さり、ぽたぽたと地面には血が流れ落ちていた。

 

「さ、サニーッ…!!」

「オーブリー、さがってて」

 

 針は青い炎に包まれて消えていくが、傷が治ったわけじゃない。オーブリーが針の飛んできた方へと視線を向けると、そこには身体中を棘で覆っている白い怪物がゆっくりと此方に忍び寄ってきていた。

 

「…あれ、外しちゃった…」

 

 サニーは血を流しながらもなんとか急いでアタッシュケースからベルトを取り出して装着し、ファイズフォンに555の数字を入力する。エンターキーを押すと辺りにはエネルギーが流れ込む鼓動のような音が響き始めた。

 

「変身」

 

 ファイズフォンをベルトに押し込む。すると赤い閃光がサニーの身体を包み込み、思わずオーブリーは目を閉じた。 

 そして次に目を開いた時、そこには赤い閃光の戦士ファイズの姿があった。

 

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