神速無敵の|幻想機竜《ファントムドラゴン》   作:晴月

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Episode1 煌き(ライト)の先へ

城塞都市『クロスフィード』に建てられた王立士官学園(アカデミー)。そこに新しく生徒として入学するものがいた。

 

「.....それで、ちゃんとした理由があるんですよね?」

 

とある黒髪の少年が、学園の理事長らしき人の前で怒りを露にしていた。

 

「あら?一体何を怒っているのかしら?ライト(・・・)君。」

 

理事長らしき女性はとぼけた様子でライトと呼ばれた少年に問いかける。

 

「そりゃ何も説明せず、ここまで誘拐みたく連れてこられたら怒りますよ!」

 

今朝方、ライトは自分の機攻殻剣(ソード・デバイス)を整備していたところ、突如背後から頭に袋を被せられ、そのまま誘拐犯の人質のようにして連れてこられた。だから、ライトの怒りは至極真っ当なものであった。

 

「ご免なさい。何しろ緊急事態だったのでライト君の答えを聞いている暇がなかったのよ。」

 

と理事長は悪びれずに答える。

 

「......はぁ、まぁいいですよ。......つまりはこの学園に入学しろということですね。理事長(・・・)

 

ライトが理事長に対して皮肉を効かせると、理事長は少し不機嫌そうになった。

 

「まぁ!ライト君ったら、何時もみたいにレリィ姉さんって呼んでくれていいのよ。」

 

と、ウインクしながらライトに言う。

 

「流石に自重してください。......俺は公私混同するつもりはありませんから。」

 

全く、この人は...とため息をつくライト。

 

「...それで、今回勤務するのは俺だけですか?」

 

レリィはライトの問いに対して首を横に振った。

 

「いいえ。"もう一人"要るわ。」

 

レリィがそう言い切るや否や理事長室の扉をノックする音が聞こえた。

 

「入っていいわよ。」

 

レリィがノックの主に部屋に入るように伝える。

 

「失礼します。」

 

扉を開けて入ってきたのは金髪の少女とライトの年齢とそう変わらない見た目の少年だった。髪は銀色で、その首にはまるで囚人がつける枷のような黒い首輪が見えた。

 

「ライト君、紹介するわ。彼がその"もう一人"ルクス・アーカディア君よ。」

 

「初めまして、ルクス・アーカディアです。宜しくお願いします。」

 

と、まるで貴族に対して敬意を表すかのようにライトにお辞儀をする。

 

「ライト・アイングラムだ。宜しく頼むルクス。」

 

二人は互いに握手を交わし、それを見ていたレリィはうんうん。と頷いていた。

 

「というかルクス。貴族に対してするみたいにお辞儀しなくていいんだぞ。......俺は別に貴族じゃないし。」

 

「あら?でも貴方は私と同じアイングラム財閥の一員よ。それを忘れて貰っては困るわ。」

 

「ハイハイそういやそうでしたね。ご当主様(・・・・)。」

 

ライトはまたレリィに対して皮肉を言う。ライトなりのせめてもの反抗なのだろう。

 

「もう!ライト君ったら。.....まぁいいわ。」

 

レリィも流石に皮肉を言われていることに気付いたのかそれ以上何もライトには言わなかった。

 

(さて、次はどう動くべきかなっと。)

 

ライトは心の中で次に何が起こるかを予測していた。実を言うとライトはこの時代、厳密に言えばこの"世界"の人間ではない。

 

ライト―来人(くると)それが以前のライトの名前であった。

来人にとってこの世界は二次元の世界の出来事。それはライトノベルと呼ばれるイラストが描かれた小説の中での話。だが、ある日を境にして来人にとって二次元の世界が現実と化してしまった。来人がある日、家に帰ってくると自室の本棚の中のある一冊が光っているのを見つけた。

 

「なんで光ってるんだ....?」

 

恐る恐る近付き、光っていた本を手に取りそしてページを開いた。すると本の中から眩いばかりの光が溢れ、その光はまるで来人を包み込むようにして放たれた。

 

「眩しっ!!」

 

来人はとっさに目を瞑り、腕で光を遮るようにして光を防いだ。

 

そして次に目を開けた時には、この世界へと降り立っていた。

 

専用の機攻殻剣(ソード・デバイス)を手にして。

 

その後、士官学園の理事長を務めるレリィに拾われ、養子という形でレリィの家━アイングラム家に住ませてもらい、その家名まで使わせてもらっている。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

「ふう...。それじゃ結局、今回のは不幸な事故、ということでいいのよね?ルクス・アーカディア君?」

 

ルクスは自分が起こした騒ぎに至った経緯を話すと同時に今回の学園での仕事内容と学園そのものについてライトと共に説明を受けていた。

 

この士官学園では機攻殻剣を使い、召喚された装甲機竜(ドラグライド)を使用出来る人間を育成すること。それこそがこの学園の設立理由でもあり目的でもあるとレリィから説明を受けた二人。

 

だが、

 

「でも、なんで僕なんかが呼ばれたんですか?」

 

何故自分なのかと疑問を口にするルクス。それに対してレリィは━、

 

「あらあら。かの『最弱の無敗』ともあろうものが、随分と謙遜をするのね。」

 

年上らしい悪戯っぽい笑顔でルクスに返してきた。

 

「この学園でも屈指の使い手であるリーズシャルテさんにも劣らない実力でしょう?けして場違いな仕事ではないと思うけれど?」

 

「......ほう」

 

レリィの言葉が不服だったのか、レリィの近くにいた金髪の少女。リーズシャルテが肩を震わせた。

 

(な、何か、まずい気配がする.......!)

 

(あーこれは、まずいな.......。)

 

リーズシャルテの様子にルクスとライトは同じように不穏な雰囲気を感じていた。

 

「そ、そういうことじゃなくて、ここって女学園だそうですし、僕が仕事なんて━━」

 

「残念だけど人手が足りないのよ」

 

ルクスが反論する前にレリィが答える。

 

機竜使い(ドラグナイト)の歴史はまだ浅いでしょう?長年、装甲機竜を独占していた旧帝国の使い手は、大半がクーデターで死んでしまったし。となれば、不本意といえど、定期的に男の協力者を招くしかないのよ。機竜整備士も機竜使いもね。」

 

「...僕は、整備の方はそこまで出来ませんよ?」

 

「それなら問題無いわ。ライト君に教えてもらいながら覚えればいいわ。」

 

レリィは即答する。

 

「成る程。その為に俺を誘拐紛いの手で連れてきたと。...まぁいいですけど。」

 

ライトは拗ねた様子でレリィの頼みを承諾した。

 

「ええ。...ホントにご免なさいねライト君。」

 

ライトの方を向いて謝罪の言葉を述べるレリィ。直ぐにルクスに向き直り、話を戻した。

 

「この学園の敷地内にある、新王国第四機竜格納庫。あなたの働き口はそこだから、今日から週三回、通ってもらうわ。汚れるし、重労働だし、怪我の危険もあるわ。良家のお嬢様達に、そんな仕事はさせられないでしょう。あなた達も男冥利に尽きると思わない?」

 

からかうような声で言いながら、レリィが微笑む。

 

((強引だなぁ........))

 

と、ルクスとライトは苦笑いを浮かべる。

 

財閥クラスの大商家、アイングラム家の長女のはずなのだが、なかなかに個性的な性格をしている。

 

二人が内心でため息をつくと、レリィもひとつ、深呼吸をして、

 

「機竜使いとしてのお仕事は、まだ考えてるから、それもいずれ━━━━ね」

 

そう、話がまとまりかけたとき、

 

「学園長。少しいいか?」

 

ふいにリーズシャルテが手を挙げ、話に割り込んできた。

 

「話は分かった。だが、わたしたち(・・・・・)はまだ、この男達を認めた訳ではないのだが?」

 

鋭い眼差しでライトとルクスを見据えて言う。

 

その口端は、微かな笑みを作っていた。

 

「.........」

 

(ホントにお嬢様かよ、コイツ。.....まぁ、その眼差しがルクスだけに向いていると思いたいが、)

 

「私の疑いは晴れていないぞ。この男は覗き魔、痴漢、下着ドロの変態で犯罪者だ。隣の男もどうせ似たようなものだろう。そんな『男』をこの学園で働かせるなど、あり得ないな。というか、まずは軍に突き出す方が先だ。司法の場で裁かれ、臭い飯を数年食ってからの外の空気を吸うがいい!」

 

何故かライトまでもが犯罪者扱いされているが、間違いなく誤解だということは理解できた。

 

「い、いえっ、ですからそれは誤解で━━━━!!?」

 

「俺に至っては完全な冤罪なんですけど━━!!?」

 

ルクスとライトは反論しようとするが、リーズシャルテに睨まれてしまいやむなく口をつぐむ。

 

「成る程、猫を追って偶然風呂場に乱入したと言っていたな。だが、それはどう証明する気なんだ? 学園長。信用に足らない犯罪者を匿うのはかえって危険だと私は思うぞ。」

 

「そうねぇ。ライト君はともかくとして、私は付き合いがあったからルクスくんのことはよく知っているけど━━━」

 

レリィはそれを聞いて苦笑する。

 

「今回の騒ぎを、本当に偶然起こしたと、断言はこれっぽっちもできないものね。」

 

「いや、そこは断言してくださいよ!?」

 

やや涙目でルクスは訴える。

 

てっきり擁護(フォロー)してくれると思っていたのだろう。

 

「でも実際、故意かどうかと言われると、誰にも証明はできないのよね。なら、本件の被害者でもあり、二年の主席でもあるリーズシャルテさん。彼の処分は、あなたの裁量に任せてもよろしいかしら?」

 

「えええっ!?」

 

(何で任せちゃうんですか!?)

 

という魂の叫びを必死に呑み込んで堪えるルクス。

 

「ふっ」

 

ルクスが慌てるのを見たリーズシャルテは、小さく鼻で笑い、

 

「じゃあ、そうだな。ではお前にも一度、名誉挽回の機会をくれてやろう」

 

「.......えっ?」

 

「お前が、本当に『男』の機竜使いとして、この学園で働く程の価値があるヤツか。単なる変態じゃないのか。その気概と実力を、私が試してやる」

 

そう告げて、リーズシャルテは帯剣の柄に触れ、同時にゆっくりと、学園長室の扉の前に歩いていく。

 

「私に負ければ、お前『達』は犯罪者として牢獄行き、勝てば、無罪放免で働いてよし。勝負は装甲機竜を使った短時間一騎討ちの模擬戦。━━━━それでいいな。野次馬たち!」

 

そう言って、リーズシャルテが部屋のドアノブをひねった瞬間、

 

「きゃあっ....!?」

 

ばたばたと、ドア越しに集まっていた女生徒たちが、部屋になだれ込んで山を作った。

 

「ん?おい、ちょっと待て。まさか俺もやるのか!?」

 

先程のリーズシャルテの発言に違和感を覚えたライトがリーズシャルテに詰め寄る。

 

「当たり前だ。そこの男が犯罪者なら、貴様は犯罪者予備軍であろう。━━なら、同じようにするまでだ。」

 

その時、ライトの中で何かがプツンと音をたてて切れた。

 

「.....分かった。、なら先ずは俺と戦え。」

 

「ほう?威勢がいいな。━━━━なら、」

 

「ただし!」

 

リーズシャルテは野次馬達に伝えようとしたところでライトから待ったが入る。

 

「今、俺の機攻殻剣は整備中でね。装甲機竜では戦えない。...だから、整備技術対決としよう。」

 

ライトの提案に対してリーズシャルテはニヤリと意地悪く笑った。

 

「ほぉ。大した自信だな。私に整備技術で勝つだと?...大きくでたな。....まぁいいだろう。」

 

レリィ達はライトのマジギレ状態にハラハラしながら事の行く末を見守っていたが、

 

「理事長」

 

「は、はい。」

 

「審査は成るべく公平にしたい。....だからあんたが審査員を選んできてくれ。そこのお嬢様に八百長されたくないんでね。」

 

ライトの発言に対してリーズシャルテもカチンときたのかライトに詰め寄った。

 

「随分と言ってくれるな犯罪者予備軍男。....私がそんな事をするとでも?」

 

「人のことを勝手に犯罪者予備軍にするような奴なんだからそう思われても仕方ないのでは?」

 

今の二人の間には間違いなく火花が散っていた。こんなので大丈夫かなぁ。とルクスは内心不安に思うのだった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

それから暫くして、学園の敷地内にある格納庫での整備対決が始まった。

 

二人の近くにこの学園の生徒であろう機竜(ドラグナー)の少女がそれぞれ一人ずつ立っていた。

 

「勝負はどちらの整備技術が上かという事だけど、それでいいわね?」

 

レリィの確認に対して二人は、

 

「「異論はありません。」」

 

と答える。

 

「制限時間は約1時間、それでは.....試合開始!」

 

開始の合図を皮切りに、リーズシャルテとライトはそれぞれ少女達へと向かった。

 

「では、早速で悪いが君の事と君の装甲機竜(ドラグライド)の特徴を教えてくれ。」

 

「え!?···あの···」

 

「!···あぁ、済まない。君の事というのは君の装甲機竜を扱う際の動きだとかそういうことを聞きたいだけなんだ。」

 

「あぁ、そういう···それなら···」

 

誤解を招かないように言葉を選びつつ、ライトは少女からの情報をメモしながら話を聞いている。

 

「なる程。そういう使い方(・・・)ね···ありがとう、これで整備できる。」

 

そう言ってライトは直ぐ様工具を手に、少女の装甲機竜を一瞥して整備に取り掛かる。

 

「ふん!随分と余裕のようだな···それが貴様のやり方か?あわよくば手でも握ろうものなら、この工具を貴様に投げつけるところだったぞ!」

 

「······」

 

リーズシャルテの挑発的発言に対してライトは聞くを耳持たず、そのまま整備を続ける。

 

「おい!聞いているのか!」

 

そんなライトの反応が癇に障ったのか、リーズシャルテはライトを怒鳴る。

 

「煩い···!」

 

「!」

 

「今整備してる途中なんだ···邪魔すんな···!それとも、あんたはそうやって他人を馬鹿にしながらでないと整備できないのか?」

 

「な、何だと!?」

 

「俺は作業に集中するときは黙ってやるんだよ···今の挑発を妨害行為として咎められたくなければ、黙って整備しろ!」

 

「···くっ!」

 

ライトの正論に何も言えず、黙るしかないリーズシャルテも直ぐに整備に戻った。

 

 (彼女···リーズシャルテに挑発されても整備に集中する姿勢···こういう所を皆が見習うべきね。)

 

ライトの整備士としての心意気を垣間見たレリィは皆にこうあって欲しいと願うのだった。

 

―――――――――――――――

 

「そこまで!」

 

制限時間となり、レリィが整備を終えるように二人に促す。

 

「さて、先ずはリーズシャルテさんの整備した機竜から見ていきましょうか。」

 

レリィがそう言うと、審査員達がリーズシャルテの整備した機竜の状態を確認する。

 

「···うん。この感じ···いつものね。」

 

「やっぱり、格が違うわね···」

 

「何時もながら完璧ね。」

 

そう口々につぶやく声が聞こえてくる。

 

「ふん!どうだ、これが私の実力だ!貴様ごときが私に勝とうなどと思い上がりも甚だしいのだ!」

 

そう言うが、ライトは黙ったまま審査が終わるのを待つ。

 

「では次に、ライト君の整備した機竜を見てもらいましょうか。」

 

レリィがそう言うと、審査員達は次にライトの整備した機竜の状態を確認し始める。

 

「な!?コレは···!」

 

「凄い···!こんなことが···?」

 

「まるで新品同然···いや、それ以上···!?」

 

「!?」

 

審査員達の絶賛の声にリーズシャルテは驚愕した。まさか、今日現れた男がそんな技術を持っているとは思わなかったからだ。

 

「どうだ?俺の技術は?」

 

そう言葉を口にしたライトは得意気に笑みを浮かべる。

 

「ふ、ふん!どうせ偶々であろう···そんなことで私に勝った気でいるとは···」

 

「勝った気じゃねぇよ···ちゃんと勝ってるんだよ。」

 

「は···!?」

 

ライトの言葉に疑問符を浮かべるリーズシャルテだったが、

 

「凄い···!私の思い通りに動かせる···!」

 

ライトが担当した少女の喜びの声を聞き、驚愕した。

 

「整備を行う前、俺があの娘に質問したのはどういう風に使っているのかを聞いたんだ。」

 

「そんなもの···使っている身であれば質問せずとも分かる筈···」

 

そう言って言葉を続けようとした所で、

 

「やっぱり···分かってないみたいだな。」 

 

「な、何だと!?」

 

「いいか?そもそも俺達機竜使いは、戦いの際に全力をも発揮しなければならない···其のためにも、機竜は完璧以上に仕上げなければならない···それこそ、使い手が今まで以上に使いやすいように···」

 

そう言ってライトは自分が整備を手掛けた機竜と使い手の少女を一瞥し、笑みを溢す。

 

「さっきも言ったがな···整備をするってのは、使い手にとって最善を尽くせるように完璧以上に仕上げなければならない···だから俺は、常にそれを念頭において整備を行っているだけだ。」

 

そう言って今度はリーズシャルテが整備を手掛けた機竜へと近づく。

 

「済まない、少し質問してもいいか?」

 

「え?なに···かしら?」

 

「その機竜、はっきり言って使いやすいか?」

 

「おい!何を言って···!」

 

「う〜ん···傷無く完璧に直してくれてるみたいなんだけど···」

 

少女はリーズシャルテに遠慮してか、言葉を濁す。

 

「あぁ、今は審査の途中だからか···」

 

少女は自分の一言で結果が決まってしまうと思っているのだと思い、ライトは口を開く。

 

「別に今は言ってもいいと思う···だから教えてくれ···今の使い心地はどうだ?」

 

「······その、前よりも機動力に制限が掛かった感じがする···と、思う···かな?」

 

少し口をつぐんだが、直ぐに指摘を始め現状よりも以前の方が扱いやすかったと呟いた。

 

「ふむふむ···なる程····」

 

そう言われたライトは直ぐ様機竜を一瞥し、それだけでなく内部の確認も行った。

 

「原因はコレか···」

 

そう呟くと直ぐに工具を使い、機竜のフレームを弄る。

 

「おい!勝手に触るな!」

 

そう怒鳴ってライトを引き剥がそうとするリーズシャルテだったが、

 

「よし出来た。」

 

「は!?」

 

肩に触れようとした所で、ライトは機竜から少し離れる。

 

「動かしてみてくれ。」

 

「は、はい。」

 

すると先程よりも動きが軽くなったように見えた。

 

「す、凄い!さっきよりも軽い!」

 

少女が歓喜の声を上げる中、そうだろうなと呟くライト。

 

「貴様、一体何をした!」

 

リーズシャルテが怒りを剥き出しにしてライトに詰め寄るがライトは素知らぬ顔で一言、

 

「螺子が一つ緩んでいたから締め直しただけだ。」

 

と返す。

 

「な!?たったそれだけのことで治ったというのか!?」

 

たったそれだけ(・・・・・・・)のことが、大きな事故に繋がることだってあるんだよ。」

 

と、これを一蹴。

 

「整備士ってのは、完璧に仕上げるのは勿論のこと。顧客のニーズにも答えなければならない····それが出来てこそ、初めて一人前の整備士になれるんだよ···憶えておきな。」

 

と、すれ違いざまにそう言われ、リーズシャルテは何も言えずに立ち尽くすのみ。

 

「決まりね。」

 

「整備技術対決は、ライト・アイングラムの勝利とする!」

 

「···まぁ、だろうな。」

 

審査結果を前にしてもライトは当然といった様子でそれだけを呟く。

 

「さて、次はルクス君とリーズシャルテさんの機竜対決ね。」

 

そう言ってレリィが審査員達に目配せをすると審査員達は何人か生徒を引き連れて何処かへと行ってしまった。

 

「ふん!先ずは一敗か、だがこれで勝ったと思うなよ!次こそは、私が勝ってみせるのだからな!」

 

と、ライトに向かって言い放つと走って何処かへと行ってしまう。

 

「負け惜しみか···」

 

と、興味なさそうに呟くライト。

 

「さて!私達も移動しましょうか···!」

 

と、レリィが残った生徒達にそう言い聞かせるが、

 

「あ〜悪いんですが理事長、俺は自分の機竜を整備してから行きますね。」

 

「え!?」

 

突然そう言われてレリィは少し戸惑いを見せたが、

 

「あ〜そっか···わかったわ···終わったら直ぐに来て頂戴ね。演習場はここから東に真っ直ぐ進んだ所にあるから。」

 

「分かりました。」

 

そう言うとライトはレリィ達に目もくれず、自身の機竜を召喚しようとする。

 

「はい!じゃあ皆此処から出ましょうか!」

 

そう言ってレリィは生徒達を連れて行こうとする。

 

「な!?ち、ちょっと!?」

 

リーズシャルテはライトの機竜がどんなものなのか見ようとしていたのだが、レリィに押された生徒達に更に押される形で格納庫の外へと追い出されてしまった。

 

そして、誰もいなくなった所でライトは、

 

「ふぅ〜〜〜〜〜、危なかった。」

 

と、大きなため息を漏らした。

 

 (あっぶねええ、俺の機竜は人に見せる訳(・・・・)にはいかないからな···レリィさんが追い出してくれなかったら、色々と危なかった···。)

 

そう思案すると、ライトは直ぐに自身の機甲殻剣を顕現し、誰もいない格納庫で黙々と整備を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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