それ以上でもそれ以下でも無いッ!!
私の名前はシャア・アズナブル。
突然だが…どうやら私は現在記憶喪失というモノになってしまっているらしい。
それと言うのも、私自身ここトレセン学園の生徒達に助けられた以前の記憶が自身の名前以外に全く無かったからだ。
私はトレセン学園の合宿場の浜辺に流れ着いていたそうだ。
私を診た医者が言うには普通に暮らしていればその内記憶が戻ることもよくあることだそうなので、現状出来ることはないらしい。
そして時間を持て余すようならと、トレセン学園の理事長である秋川やよい女史と駿川たづな女史のご好意に甘える形で約半年の勉強の末にトレーナー試験を受け、見事合格を果たして晴れて新人トレーナーとしてデビューを果たしたわけだ。
とは言え、ウマ娘という存在は私の中では未だに謎だが。
しかし聞くところによると古くから人々の良き隣人だったそうで、人間社会に溶け込んでいるそうだ。
興行としてもウマ娘のレースはとても人気で、世界中で愛されているらしい。
そして、そんな新人トレーナーの私が受け持つこととなったウマ娘は……。
「は〜いトレーナーさん♪いいこいいこ♪」
…彼女の名はスーパークリーク。
今日の分のトレーニングは既に終わり、制服に着替えている。
実家が託児所をしているからか、おっとりとしていて世話好きな性格。
それ故か母性に満ち満ちていて、いつも隙あらば周囲を甘やかそうとしてくるウマ娘だ。
未だ寮暮らしに慣れなかった頃の私がインスタント食品で済ませようとしたら食事を作ってくれたり、雑に脱ぎ捨てた服をハンガーにわざわざ掛け直してくれたり、参考のために読み漁ってそのままの資料を片付けてくれたり…。
「は〜い。今日も頑張ったトレーナーさんにはでちゅね遊びのご褒美ですよ〜♪」
…正直言って、割と依存してしまっているかもしれん。
「は〜い♪ママでちゅよ〜♪」
ともあれ、トレーナーと担当ウマ娘のスキンシップは十人十色。
どれが正解ということも無いそうで、一概に距離感が近い方がいいだの、開けたほうがいい、という取り決めは余程のことでもなければ事実上無いらしい。
「よちよち〜♪いつもお疲れ様ですね〜♪」
しかし、何故だろうか………?こう言うのは悪くない…寧ろイイと思ってしまうのは…。
「ええい!!これも生徒のため生徒のため…」
「も〜、ダメでちゅよ〜?赤ちゃんはちゃ〜んと大人しく甘やかされてくださいね〜?」
いつの間にやらガラガラを手にしたクリークが近づいてくる。
「ちゃ〜んとご飯も食べさせてあげますからね〜♪」
何故だろうか?
……記憶、戻らなくても良いかもしれない。
たぶん続かない。