マリオファンタジー   作:上代わちき

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・ここから六章本編です。
→いよいよネタバレ前提展開が始まります。



→ほんとにはじまります。





→こうかいしませんね?


6-1

 

 

 

 

 

 

 

 あの日。

 あの部屋は暖かく、穏やかな安らぎそのものだった。

 

 

 

「う、む……?」

「目が覚めた?」

「ここは、どこじゃ? よもや、人間の城……っ?!」

「動いちゃだめよ。貴女、雪の中で倒れていたのよ。雪なだれに巻き込まれたのね」

「……お主、人間じゃな? わらわが恐ろしくないのか?」

「何を言っているの? 人間じゃない人なんてこの街じゃ一杯いるし……それに、ケガをしている人を放っておけないでしょう?」

 

 

 

 それが、彼女と出会った日。

 この時こそ、なんとも思っていなかったが。

 

 思えば、これが全てを変えたのだろう。

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

「うおーっ! さぶーっ!」

「流石は雪山地帯。カメック達に改造してもらった耐寒ツナギを着てきて良かったぜ」

 

 六つ目の星石があるという雪山地帯。

 途中まではクッパが貸してくれた小型船で移動し、寒さで使えなくなる前に降りた。

 

 

「うへぇ、雪が深い……」

「こっちのわだちを使うんだ。わだちを使った方が歩きやすいし、わだちがあるってことはあっちに街があるんだろう」

 

 辺りを見渡せば、一面銀世界がずっと広がる。

 どこまでも雪まみれで、雪の中を踏みしめばどんどん沈んで行ってしまう。

 

 幸いにも、行商人の馬車が通った後──いわゆる「わだち」──があったので、そのわだちに沿って歩いていくことにした。

 馬車の重みで雪がかためられていており、比較的歩きやすいのだ。

 

 

 

「それでルイージ。木箱の調子はどうだ?」

「今のところ大丈夫だ。わだちを歩いていく分なら滑りはしても転ぶ心配は殆どないし、中の鍵はきっちり守って見せるぜ」

 

 

 今回の目的は、雪山地帯の奥にある遺跡に向かうこと。

 ただしその前提条件として、入り口を開ける鍵をそこまで持っていかなければいかない。

 

 そういうわけでいつかと同様に空手のルイージが鍵を収めた木箱を背負って、この雪山地帯を行く。

 ハンマーを背負うマリオは、ルイージと木箱を守る役割を担う。

 いつかと同じやり方である。

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ早速出発だ」

「このまま一気に遺跡まで着ければ楽なんだがなぁ」

「こんな雪山で無理は命取りだ。とりあえずは途中にあるっていう街に向かおう。千里の道も一歩からって奴だ」

「だな。……それと、雪なだれに注意だな。ここら辺はそういうのが多いらしいし」

 

 

 そうして、六つ目の星石への旅が始まった。

 

 なんだかわくわくするが、それ以上に一筋縄では行かないという確信が重い。

 そんな旅の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

「ふー、ふー」

「大丈夫かルイージ」

「なんとかな。……だが正直、砂漠の時よりも疲れがたまるぜ」

「背負ってる木箱を壊したらゲームオーバーなのに、今回は滑りやすいっていう危険性があるからなぁ。ちょっと早いが、少し休憩するか」

「悪いな、助かる」

 

 

 しばらく歩いているうちに、ルイージが音を上げた。

 流石に今回は足場が悪すぎるから仕方がない。

 

 そういうわけで、ちょっと向こうに見える洞窟に向かうことにした。

 あそこならちょっと焚火を囲って休憩することが出来そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「んっふっふ、やっぱり来たね」

「っ! 誰だ!」

 

 その瞬間、空間が揺れる。

 

 

 

「ボンジュール、ヒゲヒゲブラザーズ。ボクは、次元魔法使い「シオン」だ。ぜひお見知りおきを」

 

 さながら空間そのものに波紋が広がるように歪むと、そこから一人の魔法使いが現れた。

 

 

 

「……なんだこいつ?」

「なんか、ディメーンの奴を思い出すな。仮面とかまんまだし」

 

 ぶっちゃけ見た目はいつかの時にも戦ったディメーンそのものだ。

 道化師を思わせる仮面と、どこかうさんくさい雰囲気がそのまんまなのだ。

 

 

 

 

「赤いヒゲに、ミドリのオトコ……そして、その木箱から漂うただならぬ気配。やっぱり、ボクはサイコーにハッピーだ」

「こいつ、この木箱のことを……!」

「だからキミ達には、サイコーのおもてなしをしなくちゃね」

 

 どこかルイージを凝視するシオンが、両手を広げる。

 するとその両手に紫色っぽい電撃の弾が飛び出し、今にも敵を焼き尽くそうと輝いている。

 

 

 

 

「っ! 気をつけろルイージ。この敵意──早速来るぞ!」

「なるほどな、こいつも敵ってわけか!」

「それじゃあ、早速行くよー! イッツァ、ショ~~~タ~イム!」

 

 

 

 

 

 

 電撃弾を構えたまま、シオンはその場から浮き上がって一気に背後を陣取ってきた。

 残像すら見えるほどの、鮮やかで素早い立ち回りだった。

 

 

「よっと」

「っと。生憎木箱一つじゃハンデにならねぇよ。そんでもって食らえ、ファイアボール!」

 

 

 だがその一撃は二人して跳躍することで避け、そしてしれっとルイージがファイアボールを飛ばす。

 

 シオンはその一撃を避ける。

 だがその避けた先を予め読んでジャンプしていたマリオが、シオンの頭上を強く踏みつける。

 

 

 

「むっ?!」

「すり抜け──いや、これは?!」

 

 

 だがシオンに攻撃が当たらない。

 こちらの連携を読んでいたとでもいうのか、シオンはその場で空間をゆがませてマリオの攻撃を避けた。

 

 瞬間移動による回避だ。

 

 

 

 

「んっふっふ~! どれが本物かわかるかなー?」

「分身、か。どこまでもディメーンを思い出させる奴だな……!」

 

 

 その次の瞬間、シオンは三人に増えていた。

 

 そして、三人そろって電撃弾を構えだす。

 

 

 

 

「おいおい、あの弾幕はやべぇぞ」

「ルイージ、後ろに隠れてろ! 俺がなんとかする!」

 

 シオンが放つ大量の電撃弾。

 一人につき三発放ってきて、合計九発の電撃が一気に襲ってくる。

 

 

 

「おらぁ!」

 

 扇状に広がって降り注ぐそれのうち、どうしてもルイージに当たりそうな軌道のものだけをスーパーマントで跳ね返す。

 そしてしれっと軌道を微調整して、三人いるシオンのうち二人を打ち落とす。

 

 

 

 

 

 

「っ! ……うりゃ!」

「っ?! まさかこれまで読んでいたとは」

 

 するとなんか嫌な予感がして、マリオは本能的に背負っていたハンマーを振りぬく。

 それからすぐ、弾幕と分身の陰から一気に近づいてくるシオンの攻撃がハンマーと噛み合う。

 

 

 

 

 

「驚いたな。ディメーンの奴はこんな攻撃してなかったのに」

 

 

 シオンが仕掛けてきたのは、電撃でできた剣による接近戦だ。

 ディメーンは魔法を飛ばすか瞬間移動するか分身するか、って感じだったから驚きだ。

 

 なんとなくハンマーを振りぬいたからこうやって鍔迫り合いに持っていけているが、もしハンマーがなかったらやばかったかもしれない。

 

 

 

 

「そんな攻撃に軽々対応しておいて、何を言っているんだか……!」

 

 一方で、シオンの声はどこか苦しげだ。

 表情こそ仮面で隠れているが、しかしペースはこっちの方にあるのは間違いなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おい、ブラザー!」

「どうしたルイージ、今盛り上がっているとこ──あえ?」

「……よりにもよって、このタイミングか」

 

 

 鍔迫り合いを続けていると、上の方から轟音が鳴り響いてきた。

 音の方へ目を向ければ、とんでもないことが起きていた。

 

 

 雪なだれだ。

 

 

 

 

 

「っ!」

「んぎ?!」

 

 

 とりあえずシオンを無理やり吹き飛ばす。

 こうなったら、鍔迫り合いはおろか戦闘を続けているわけにもいかない。

 

 戦闘中断だ。

 

 

 

 

「ルイージ、俺に掴まれ! 上に思いっきり飛ぶぞ!」

「了解だ!」

 

 

 マリオはすぐハンマーで周りの地面を叩きつけ、そのまま広範囲を薙ぎ払う。

 すると地面の草むらが燃え上がり、そこから上昇気流が起きる。

 

 

 

「うぉっと?!」

「うへぇ、思ったより浮きやがる……!」

 

 そしてすぐスーパーマントをムササビのように展開し、その上昇気流を利用してルイージともども上空に飛んで雪なだれを回避した。

 

 

 

 

 

 

 

 実はマリオのハンマーは、クッパから支援の一環として貰った火属性魔石で再強化して火属性に換装している。

 

 せっかくもらったものだし、それに水浸しにするだけならポンプで十分なのだ。

 だから丁度良い機会としてハンマーを火属性にしたのだ。

 

 

 

「いやはや、ルイージからブレワイ借りてみてよかったわ。じゃなきゃ周りの雪を溶かしつつ草むらを燃やして上昇気流を起こすなんて発想は出ないわ」

「それでスーパーマントをパラセール代わりにして飛ぶと。もしかしてブラザー、ブレワイ世界にトリップしても生きていけるんじゃね?」

 

 

 そういうわけで、マリオブラザーズは安全にその場から離脱することができた。

 

 

 

 

 

「それにしても。さっきの奴、なんだったんだ?」

「あのディメーンもどき──確かシオンって言ったっけ──なんか俺が背負っている鍵に反応してたが、勇者の塔と因縁でもあんのかな?」

「うーん……考えても答えは出ないな」

 

 

 シオンがどうなったかはわからないが、まぁ生きているだろう。

 なんとなく、そんな感じがした。

 

 

 

 

 

「……とりあえず、このまま街の方に行こうぜ。またシオンと鉢合わせする前に。俺達の目的は、あくまで星石だ」

「だな」

 

 

 

 

 

 

 

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