「どうしたの? 街を見下ろして」
「おぬしは、わらわが恐ろしくないのか? 人の如き姿こそしているが、人間ではないのじゃぞ?」
「確かに人間じゃなさそうだけど……でもコウモリ族のアナスタシアやマネー族のミミもいるし。それに今はこの城にいないけど、シオンちゃんに至っては異世界人の末裔よ」
「────」
けがは治り、しかし六つ目の星石の捜索は捗らない日々。
それでも人間は城に泊めてくれていて、しかし疑問は尽きなかった。
「それに、私の夫も光の一族よ。今更だわ」
「わらわが、魔物だったとしても?」
絶対に口にしないが、正直に言うと少し怖かった。
だから、こんなことを口にしてしまった。
「関係ないわ。この街に、余所者を排斥するような冷たい人はいない。……それに、貴方いい子じゃない」
「──ふん」
だが、意外な反応を貰ってしまった。
心のどこかでは、そんな反応を期待していたかもしれない。
だが、実際にそんな反応がくるとは思っていなかった。
受け入れてもらったとしても、きっと壊してしまうから。
「だとしても、わらわは──」
魔の本能は、まだ治まっている。
あの恐ろしい怪物の側面は、しかし魔王の術によって封印されている。
だが、いつまでも続くものではない。
魔物とは、そういう生き物なのだから。
────
翌朝、ルミエール伯爵に別れを告げて街を出た。
もちろん、目指すは六つ目の星石がある遺跡だ。
その道中は、案の定雪なだれでふさがっていた。
が、ルミエール伯爵が言っていた「将軍」が駆けつけてくれて「いっくドーーーーーン!」という掛け声で突撃して道を開けてくれた。
やっぱりドドンタス似だった。
そうしてひとまず道は開いたが、話はそれで終わらない。
また雪なだれに襲われたり、白熊の魔物が現れたり、あのフリーザーに地面を凍らされたり。
やっぱり色々あった。
というかなんでフリーザーまで異世界トリップしてんのさ。
懐かしすぎだろ。
「っと、見えて来たぜ」
「砂漠荒野の時と同じ、星石が眠ってる遺跡!」
そんな感じで、雪山地帯の一際高い丘にたどり着いた。
そこにはなんだかピラミッドのようで絶妙にピラミッドじゃない遺跡があった。
今までのことを考えると、あの勇者の塔にどことなく似ていると評するべきか。
「早速開けようぜ。まだ半月ほどタイムリミットが残っているとはいえ、あんまりのんびりしてらんねぇ」
「だな。さっさと六つ目の星石を持ち帰ってしまおう」
とりあえず考えるよりも先に、遺跡に入ることにする。
そのための鍵を、ルイージが背負っている。
「んっふっふ~。やっぱりここに来たね~」
「ディメーンもどきの──」
「────シオンか」
「ボンボヤージュ、ヒゲヒゲブラザーズ。昨日の雪なだれ以来だね」
と、見せかけて振り返る。
するとやはり案の定シオンの奴がいて、あきらめたように挨拶してきた。
油断していたら背中を不意打ちされていただろう。
「時にキミたち……『勇者』って、どういう存在だと思う?」
「あ? いきなりなぞなぞかよ」
「いいから。……答えなよ」
勇者というと、真っ先に思い浮かぶのは文字通り勇気ある者……とかだろうか。
他にも所謂魔王を打ち倒す者とか、ヨゲンを覆す者とか、色々ある。
「なんかよくわからん奴の、おもちゃ……とか?」
だが、最終的に思い浮かんだのは。
ウルフリックを洗脳した、あの勇者の塔の歪んだ在り方だった。
「へぇ、そんな答えが出るんだ。……その割に、その鍵は背負ったままなんだね」
「何言ってんだ……?」
「っ! 気をつけろブラザー!」
だがそれが何の関係があるのか。
そう問うよりも先に、シオンは電撃の刃を展開してきた。
「……ボクには、やっぱりわからないや」
◆
とっさにハンマーを振りぬく。
ルイージはまだ鍵入りの木箱を背負っている。
正面切って戦うのは、ハンマーも持っているマリオの方がいい。
「──っと! キミよりも、ミドリの方の相手をしたいんだけどね!」
「生憎だが、そうはさせねぇよ!」
ルイージの方をめがけて接近してくるシオンの刃を、そのハンマーで受け止めて鍔迫り合いの状態に持ち込む。
こうすれば、相手の動きを止められる。
「どうしてもってんなら、こういうのはどうだ!」
その隙を、ルイージの強烈な地獄突きが突く。
なんだかんだで超久々な、魔力を消費しない強攻撃だ。
スマブラ的には横スマッシュというべきか。
「受けてあげたいのはやまやまだけどね、そういうわけにも行かないんだ」
「っ! 避けやがったか」
「しかも分身もしてやがる……!」
「さぁ、弾幕の時間だよ!」
だがその攻撃を避けて分身して見せたシオンは、いつかの時と同じように電撃弾の弾幕を仕掛けてきた。
むろんその弾幕が向かう先は、木箱を背負うルイージだ。
「スーパーマント!」
いつかと同じようにルイージを護るように陣取り、どうしても当たってしまいそうな電撃だけスーパーマントで跳ね返す。
もちろん跳ね返した電撃をシオンの分身にぶつけることも忘れない。
「同じ手は食わないよ!」
だがしかし、シオンは電撃のバリアを展開して攻撃を防ぐ。
そのせいで分身を消すことはかなわなかった。
「んっふっふ、」
「そんでもって、波状攻撃だ!」
「ボクたちの刃を、受け止めきれるかな?」
「っ!」
さらに、分身状態を維持するシオンは、それぞれが電撃の刃を構える連続攻撃を仕掛けてくる。
右から、左から、上から。
様々な方向から降り注ぐ電撃の刃を、マリオはハンマーを盾のように構えて受け止め続ける。
「んっふっふ~」
「中々しぶといね~」
「でも、いつまでもつかな~?」
「っ! 好き勝手言いやがる……!」
状況は刻一刻と、確かに悪くなっていく。
今は何とか攻撃を受け止めて、ルイージと木箱にダメージが行くことはない。
だが、このまま攻撃を受け続けるといずれスタミナが尽きてやられてしまう。
「ブラザー」
「大丈夫だ、落ち着けルイージ」
(そうだ。落ち着くんだ俺。何とかなる方法が必ずあるはずだ……!)
防御態勢を維持したまま、少しだけ息を整える。
(分身は三体。そのうちのどれかが本物……そこを叩けば何とかなる!)
襲い掛かってくるシオン達を、しっかり見やる。
そこに、この状況を打破するヒントがある。
(多分チャンスは一度切り。だが俺に本物を見分ける目はない──だが、直感と流れは見える! ────ここだ!!!)
「っ?!」
マリオが頼ったのは、風だ。
分身たちの攻撃を防ぐうちに、風が違うことに気づいた。
故に、その風が最も異なるものに向けて頭突きを叩きつけた。
「見つけたぜ、お前を!」
「っ──! ま、ず……?!」
「ハンマー、ホームラァン!」
そうしてようやくあぶり出した本体に対し、渾身のハンマーホームランを叩きつける。
「ぐえぇぇええええ?!」
勝負ありだ。
◆
シオンの体が勢いよく吹っ飛んでいく。
完全に倒したわけではないが、これで戦闘は終わりと見ていいだろう。
「ありゃあ……街の方に飛んでったか」
「なら、誰かが助けるだろ。それよりも、俺達は──」
「──星石の入手、だな」
今度こそ、ルイージが木箱を下ろして中の鍵を取り出す。
その鍵を入り口のカギ穴に差し込んで、扉を開く。
「うおぉ……」
「二回目だが、なんだか慣れないな」
「あぁ。……雪の街とは違う意味で、綺麗だ」
雪埃をまき散らしながら開いた扉の中に入れば、そこは青い世界が広がっていた。
砂漠荒野の時はあんまりリアクションしなかったが、遺跡の中はとても幻想的な世界が広がっている。
中心には大きな青いクリスタルが浮かび上がり、青い粒子を遺跡中にまき散らして青く照らしている。
天井を見やればその粒子が夜空に浮かぶ無数の星のように舞い散り、不思議な景色を形成する。
こういうのもまた、ファンタジーって感じがする。
「おい、ブラザー。これ……」
「砂漠荒野や勇者の塔でも出てきた鎧野郎か」
「流石に、もう動いてないんだろうが……」
そんな遺跡の隅に、鎧のゴーレムが倒れていた。
勇者の塔が崩れ、その思念が消滅してしまった影響だろう。
やはり砂漠荒野の時とは異なり、こちらに襲い掛かってくることはなかった。
「けど、武器だけは手放していない」
「もとは戦士だったんだろうなぁ。……あんなよくわからん塔に操られてなかったら、きっと英雄って奴になってたろうよ」
「なんともいえねぇな……」
ウルフリックの時を思い出すと──砂漠荒野や勇者の塔の個体も勿論──この倒れている個体もまた、元の人生というのがあったのだろうと推察できる。
それを手前勝手に台無しにして物言わぬゴーレムに仕立て上げていたことを考えると──少なくとも勇者の塔が定義していた──「勇者」というのは碌なものではない。
そう思えて仕方なかった。
「さっきシオンが問うてきたのも、こういうことなのかなぁ……?」
「さぁな……っと、星石だ」
「考えても仕方なし、か──ともあれ、六つ目ゲットだ」
それはそれとして、奥の台座に安置されていた六つ目の星石を入手。
これで、今回の目的は達成だ。
あとは、これを持ち帰るのみ。
「星石集めは順調そうじゃな。……のう、マリオブラザーズとやら」
「っ! お前、砂漠荒野の時の」
「なるほど。……ここで来たか、魔王軍!」
「うむ! 魔王軍幹部が一、ハク。……ここに参ったぞ!」