→よろしければ二窓してBGMを流しながら読むのも一興……かも?
絶望がある。
脅威がある。
恐怖がある。
痺れがある。
冷汗がある。
暗闇がある。
悲劇がある。
破壊がある。
殺戮がある。
略奪がある。
滅びがある。
それは青く輝ける『一』。
門でありながら船。
船でありながら雲。
雲でありながら獣。
獣でありながら霧。
霧でありながら火。
火でありながら血。
血でありながら水。
水でありながら樹。
樹でありながら光。
光でありながら闇。
モンの如き、フネの如き、クモの如き、ケモノの如き、キリの如き、ヒの如き、チの如き、ミズの如き、キの如き、ヒカリの如き、ヤミの如き、恐ろしく悍ましい支配者。
それは造られた輪廻機構。
機構の中には無限のエネルギーがため込まれ、そのエネルギーを資源とするためにあらゆる命と文明を滅ぼす。
創造と破壊は表裏一体であり、だからこそその『一』は、文明を壊し命を殺し全てを奪う。
そこに世界の境界という概念はなく、故に世界を超越して全てを滅ぼし全てを生み出す。
かの魔物が言っていた『船』という性質は、その副産物に過ぎない。
マリオ達は知るよしのない、その正式名称は『グレート・ニュー・ワン』。
ただしその本質は『真のグレート・ニュー・ワン』を模して造られた欠陥作品。
無から有を生み出すものを目指した、有から有を生み出すニセモノ。
不運にも『真なるそれ』を観測してしまい、その存在をグレート・ニュー・ワンと名付け憧れた『何者か』の最高傑作。
本来は青いブラックホールの形で織りなす、異世界への門。
今回は、不可思議な縁も相まって『カゲ』の形を成しただけ。
それが『青き影の王』と呼ばれる怪物だった。
「っ──!」
「ク、ソ──!」
『輪廻機構』グレート・ニュー・ワン。
そんな名を持つ『青き影の王』の強さは圧倒的なものだ。
星石が七つ揃っていないことを差し引いても、化け物だ。
彼奴が繰り出した青い衝撃波。
全範囲を攻撃するその一撃だけで、その恐ろしさを突き付けられてしまった。
「ルイージ……大丈夫か?」
「魔力の方はまだまだ万全だ。……だが、体力の方は少し不味い」
「たった一撃。たった一回だけ、青い衝撃波を飛ばされてこれだもんな……!」
「これが青き影の王……いや、『異世界への門』か!」
動かないピーチ姫を中心とする、カゲの女王。
それと同じ姿、しかし青く輝いている怪物。
そんな脅威とまともに相対するこの状況は、とても苦しいものであった。
「く──ぅ?!」
「大丈夫か、ブラザー!」
「っ──最初の一撃で、何本か逝っちまった──!」
なんとか立ち上がろうと試み、しかし胸部に激しい痛みを覚えて呻いてしまう。
突き刺さるような痛みから察するに、骨に甚大なダメージが入っているらしい。
これでは動くものも動かない。
「っ──!」
「まずい……あいつが来る!」
「っ、っ!」
息をするだけでも痛くて、前を見るどころではない。
ただルイージの声だけが、敵の追撃を示唆していて。
けれども、それに対応する余裕などなかった。
「食らえ化け物ー!」
その刹那。
上から一人の剣士が飛び降りて来た。
剣士が振るう剣の行く末は、青き影の王の頭部だ。
「相変わらずの考えなし──けど、今回は私も付き合ってあげるわ!」
続いて魔法使いの少女も降りてきて、すぐさま杖から青白い槍の魔法を複数飛ばして敵を攻撃する。
「癒しの光よ!」
それとほぼ時を同じくして僧侶の少女も降りてきて、その場に治癒術を展開する。
その治癒術がルイージの体力を癒し、甚大なダメージを負っていたマリオの骨も元に戻す。
「あんたら……まさか」
「一番最初の時に出会った……冒険者?!」
「久しぶりだな。マリオさん、ルイージさん」
彼ら三人は、マリオとルイージが異世界トリップした直後に出会った冒険者だ。
当時彼らはドラゴンと戦い、けれども追い詰められていた。
そこをマリオ達が助け、その対価代わりに最初の街へと案内してもらった縁があったのだ。
「あの時は『ドラゴンハンター』の名折れそのものだった。貴方達二人がいなければ、間違いなく死んでいた」
「今更かもしれないけどね、貴方達は私達の恩人なの」
「だから、今度は私達が助けるのです!」
その縁が、今回はマリオとルイージを助けた。
情けは人の為ならず、とはよく言ったものだ。
「それと、これはあのトゲトゲした依頼主からの届け物だ」
「星石……!」
「ああ。僕達は偶然見つけたものだけど、君達には喉から手が出るほど必要なものだろ? 受け取ってくれ」
「あ、ああ。さっきの治癒術といい、ありがとな」
剣士から星石を受け取る。
彼らこそが、七つ目の星石を入手した現地の冒険者だ。
クッパが手紙越しにその星石を買い取り、故に彼らはここまで届けてくれたのだ。
『?!』
星石が七つ揃う。
スターピースが、七つの光を放つ。
それは青き影の王に突き刺さり、故に彼は声にならない悲鳴をあげる。
「早速あの化け物に効いてやがる!」
「これが七つ揃った星石の力か……!」
試すまでもなくマリオの直感が疼く。
今ならば、あの青き影の王に攻撃が効く。
それに先程の驚異的な攻撃力も、もう機能しないだろう。
七つの光を食らい弱体化した今なら、あの化け物を倒せる!
『っっっっっ??!!!!』
「あいつ、また手を大量に呼びやがった……!」
「ブラザー! 後ろにも回り込まれちまった。これじゃまともに戦えない!」
青き影の王が、青い手を大量に呼び出す。
その青い手の軍勢に背中を取られ、本体である青き影の王とまともに相対できなくなる。
「後ろの方は僕達に任せてくれ!」
「っ! いいのか?」
「ああ。……あれから修業を重ねて、何回も冒険を成功させて、力をつけてきた。今こそ、あの時とは違うってことを示して見せる!」
「なるほど、そりゃ頼もしい。……じゃあ、後ろは任せた!」
しかし、今回はドラゴンハンターの三人がいる。
彼らがマリオブラザーズの背を護ってくれる。
故に、遠慮なく青き影の王と正面衝突ができる。
「さて、と。……今度こそ、ケリをつけてやろうぜ!」
「そうだな。……思いっきり、やってやる!」
ここからが、本番だ。
◆
『────!!!!』
「また青い手を呼び出したか……」
「けど、今度の手はでかいぞ……!」
青き影の王が、また影の手を呼び出す。
呼び出した手の数は二つ。
それぞれが今までの比ではない大きさで、青き影の王の両隣を陣取る。
さながら青き影の王から伸びる腕のようだ。
「来るぜ、迎撃だ!」
「了解だ、ブラザー!」
その大きな手が、それぞれマリオとルイージを叩き潰そうと襲い掛かってくる。
それに対し、マリオは火属性ハンマーで、ルイージはサンダーハンドで跳ね返す。
『──!!!!』
その次の瞬間、青き影の王本体から恐ろしい雷が放たれ、マリオ達へ降り注いでくる。
「っと!」
「油断も隙もねぇなっと!」
その雷を、マリオ達はその場から横へ跳躍する形で回避する。
「合わせろルイージ!」
「おう!」
だがその雷の発射で息切れしたのか、青き影の王はそれ以上追撃することはない。
それを勝機と見たマリオは、すぐ懐からミドリコウラを取り出し蹴り飛ばす。
『??!!』
まず一発、勢いよくミドリコウラが青き影の王の頭部にぶち当たる。
「おらぁ!」
『???!!!』
戻ってきたミドリコウラをルイージが蹴り返し、再び青き影の王の頭部に衝突する。
「シメの三つぅ!」
『????!!!!』
そうしてまた戻ってきたミドリコウラを、マリオは火属性ハンマーでむんずと打ち返す。
ミドリコウラは炎を纏い、青き影の王の胸部をぶち壊す勢いで激突する。
これは中々いいダメージが入った。
『!!!!!!!!!!』
「うぉっ?!」
「声だけでコウラを吹っ飛ばしやがった……!」
次の刹那、青き影の王は逆上したかのように叫びあげる。
その音波でミドリコウラを明後日の方へ吹っ飛ばしたかと思うと、そのまま無数の青い手を呼び出した。
「この数……あいつに弾切れの概念はねぇのかよ!」
「あいつらは俺がやる。追撃は任せるぜブラザー!」
無数の青い手が、数に物を言わせてマリオ達を飲み込もうとしてくる。
それに対してルイージは両手にサンダーハンドを構え、その青い手の軍勢に電撃を飛ばす。
通常のサンダーハンドと違い広範囲を薙ぎ払うタイプの大技であり、スムーズにその数を減らすことができる。
「ぐっ?!」
「ルイージ!」
だがその隙を突くように、青き影の王の恐ろしい雷が降り注ぐ。
さっきと違って大技を制御するための無防備な瞬間を突かれたから、ルイージは対応できずにそれを食らってしまう。
「大丈夫か、ルイージ!」
「す、すまねぇブラザー」
すぐルイージのもとに駆け寄り、懐からポーションを取り出しルイージに渡しつつハンマーを構える。
ルイージに追撃を試みる青い手達を振り払い、あるいは牽制するためだ。
「回復は済ませた。俺も加勢するぜブラザー!」
「助かる。この数はやっぱりきついわ」
「大技で一気に薙ぎ払えるなら都合がよかったんだが、さっきのを食らっちまうことを考えるとな……」
すぐにルイージも復帰して、なんとか二人揃う状態に戻る。
が、状況は悪化していく。
何せ無数の青い手が行く手を阻んで、青き影の王を護っているのだ。
ハンマーや体術で対応しているが、それだけじゃ青い手達を倒しきれない。
しかし大技で薙ぎ払うには先のようなカウンターのリスクが伴う。
「ちくしょう……! 何か、何か手はないのか……!」
こんな時に限って、マリオの直感は冴えない。
どうにも自力ではどうにもならないような、そんな強い『流れ』を感じる。
このままじゃ、どうにもならない……!
「ガッハハハハハハハハハハハ!」
ふいに、上からその笑い声が降り注ぐ。
「っ! この声、上から来る……」
「……まさか、クッパの野郎か!」
ほぼ時を置かず、その巨体が下りてくる。
巨体の正体は、いうまでもなくクッパだ。
「食らえ、『クッパドロップ』!!!」
『???!!!』
クッパの容赦ないヒップドロップが、青き影の王の頭部を襲う。
さらにその余波で、近くにいた青い手の軍勢の一部を吹っ飛ばしていく。
「待たせたな、貴様ら!」
「今更出てきて主役気取りか、クッパ」
「うむ! ワガハイが来たからにはもう安心!」
そのままマリオ達の近くに着地し、そのまましれっとマリオ達を囲んでいた青い手もパンチで消し飛ばす。
こうなると心強いのが、妙に悔しい。
後、パンチしたその腕でガッツポーズしなくていいから。
「こんな時でもふざけるとかずいぶん余裕だなおい」
「そういう貴様らこそ、ふつーにピンピンしておるではないか。てっきりこの化け物にやられていたかと思ったわ」
「ほざきやがれ」
そんなクッパに負けじと、マリオとルイージもそれぞれの武器と体術で周りの青い手を吹っ飛ばす。
とりあえずそうして、自分達の安全圏を確保する。
「というか、上はいいのかよ? こっち側の指揮官はお前だろうに」
「生憎、防衛作戦はほとんど終わっているぞ。この青い化け物が、魔物をほぼ全部飲み込んでしまったからな」
「あぁ……つまり、こいつさえ何とかすりゃ終わるわけか」
補足すると、無数に蠢く青い手は殆ど地上に残っていない。
この青い手は、青き影の王本体の近くでしか召喚されない仕様らしい。
これも七つの星石が揃ったが故の弱体化なのか否かはわからないが、どちらにせよ状況はひっくり返った。
『──!!!!』
「いい加減くどいわ!」
青き影の王が、また無数の青い手を呼び出す。
が、すぐにクッパのパンチでほぼすべて吹っ飛んでいく。
クッパがいる今、もはや青い手は脅威じゃない。
「そんでもって、こいつを食らうがいい!」
『???!!!』
クッパがブレスを吐き、青き影の王を燃やし尽くす。
『────!!!!!』
「ガッハッハ! ワガハイに体当たりしてくるとは愚かだな!」
青き影の王はそれをまともに食らって苦しみ、しかし逆上して突撃してくる。
それを、クッパは涼しい顔で受け止めて青き影の王の動きを止める。
「あいつの突撃を、受け止めたぁ?!」
「おいおい、相変わらず化け物してんなクッパ……」
『!!! ──!』
青き影の王が激しく身じろぎする。
が、クッパの巨体はびくともしない。
流石はクッパである。
「無駄口を叩いておる場合か! やるなら今がチャンスだぞ、貴様ら!」
「へっ。んなもん、わかってるよ!」
「合わせるぞ、ブラザー!」
クッパが青き影の王を抑えているうちに、マリオ達もすぐ肉薄する。
「俺は頭を叩く! 下は任せた」
「オーケー、思いっきり突き上げてやる!」
マリオが大きくジャンプし、そしてルイージはクッパの真下を潜り抜けるようにして敵の真下を陣取る。
「テリー、スマブラで使ってたあんたの技を借りるぜ。……『ファイアパワーダンク』!!!」
『──????!!』
まず頭部に、マリオのファイアハンドを叩きこむ。
いつかどこかで見た技をそのまま借りて、思いっきり斜め下方向へ炎を纏うパンチをぶちかますのだ。
その衝撃で青き影の王の頭部から、ヒビのような亀裂が走る。
「そんでもってぇ……ファイア昇竜拳!!!」
『??????!!!!!!』
そのヒビへ追撃するように、ルイージのファイア昇竜拳が青き影の王を貫く。
いつもと同じ技であり、信頼性も高ければ純粋な火力も高いその技が、青き影の王を砕く決定打となる。
『──、???、!!!』
ファイア昇竜拳の勢いで宙を舞う青き影の王。
そのまま亀裂から光が放たれ、さらにまたヒビのような亀裂が次々と走る。
『????????????!!!!!!!!!!!!!!!』
亀裂が増えていったその末に、青き影の王が爆発する。
爆発は爆風を伴い、マリオ達を強く叩きつつも、しかし青き影の王の命を燃やし尽くす。
その風が消える頃には、青き影の王はもう消滅していた。
勝負ありだ。
◆
「はぁ……はぁ。やっと、消えやがったか……!」
「もうこいつがラスボスでいいだろもう……」
青き影の王は消えた。
すると、疲れがどっと出てきて力が抜けそうになる。
後ろを見やれば、ドラゴンハンターの三人も同じように疲れ果てている。
彼らには助けられた。
後で改めて礼を言っておかねばなるまい。
「とりあえず今は……」
「ああ。……大丈夫か。ピーチ姫!」
だが今は、青き影の王から解放されたピーチ姫を保護しなければならない。
すぐに、マリオが宙を舞うピーチ姫を受け止めようと構える。
「っ! 違う! マリオ、避けるのだ!」
「っ?!」
その瞬間、クッパの警告が飛ぶ。
それに反応したマリオは、ピーチ姫の体から飛び出してきた影の攻撃を避ける。
間一髪だった。
「な、なんだ……?」
「ありゃ、偽物か?」
ピーチ姫の姿が変わり果てる。
美しいその姿が、真っ黒な影へと変わり、だがすぐチリと化して霧散していく。
「ご安心くだされ。彼女は、私が生み出した影。本物の姫君は無事ですよ」
「ルドラ……!」
入れ替わるように現れたのは、魔王軍幹部が一。
ルドラである。
星石獣の一件からしばらく全然姿を見なかったが、流石にこの場面では出てくるか。
『──』
「ぬぅ、魔王の奴もおるか……!」
なんなら火山の一件からずっと姿を見せなかった魔王もいやがる。
青き影の王との戦いで消耗しているこの状態で、この布陣は厄介すぎる。
『────!』
「魔王様、お戯れもそこそこに。我らの目的はもうすでに達しました。……姫から採取した力は本物。それを、確と目にしたでしょう?」
『────』
「確かに彼らは我々の脅威です。が、直接滅するのであればそれなりの機というものがございます。……今はその機ではございません」
だが、ルドラが魔王を止める。
どうにも魔王の方は好戦的な雰囲気なのだが、しかしルドラの方に戦意はない。
「やいルドラ! まさか事ここに至って俺達のことが怖いのかよ?」
「いいえ。……魔王様にも申し上げましたが、今は趨勢を決する時ではないのです」
魔王の戦意も消えて、上の方へ消えていく。
「趨勢を決する……どういう意味だ?」
「もちろん、我々魔物の未来を決めるということですよ。……それが気に入らないというのであれば、あの火山の城にお越しくだされ」
「……最初の、クッパ城のことか」
ただルドラだけが、マリオ達を最初のクッパ城へ招く。
そここそが、すべての始まりの場所なのだ。
「ええ。そちらの姫君と共に、お待ちしておりますよ。その時こそ、我らか貴方達か、どちらかの物語が幕を閉じます」
「────」
「さてはて、どうなることやら。……いずれにしろ──ご迷惑とは百も承知ですが──どうか最後までお付き合いくださいませ」
「っ! お前──」
ルドラが頭を下げる。
どこか誠意を──ともすれば罪悪感にも似た何かを──感じてしまい、一瞬だけ凍ってしまう。
「それでは、失礼いたします」
その隙に、ルドラの姿も消えてしまう。
そして残るは沈黙のみ。
「……何はともあれ、城は護り切り、スターピースも七つ揃い、門への対抗手段も得た」
「そう、だな。何が何だかわからんが……今度はこっちが打って出る番だ。もうこんな出鱈目なのも、次で終わらせる」
「いよいよ、次が最後なんだな……」
その沈黙を以て、宣戦布告は完遂される。
次こそが、魔王軍との最終決戦になる。
なおここ以外にもイメージBGMはあります。
・例えば三章のルドラ戦は「ポケモンSV」のラスボス戦BGMのイメージ。
→潮風が強く吹く海の上で……っていうシチュでもあのBGMは似合うとわっちは思うの。
・六章は「6-4」以外は「スーパーペーパーマリオ」のBGMが流れまくるイメージ。
→ちなみに「6-4」のバトルは、マリオシリーズとはちょっと違う雰囲気ということでKHイメージで書きました。
・番外編は言うまでもなく「エルデンリング」のBGMが流れるイメージ。
→イメージの濃さだけなら多分番外編がピカイチ。