「この階段……かしら?」
「ムッシュ・トゲトゲからもらった地図じゃ、この先が地下牢だってさ。この城を作った当人曰く、雰囲気が大事だからって作ってたらしい」
「それでいいのかしら……」
識せる貌のローランド。
次元魔法使いシオン。
それぞれ独自の目的を持ち、故にマリオ達やクッパ軍団達とは別に二人で行動していた。
向かう先は地下牢だ。
「おや、これは意外なお二人。……まぁ、必然ではありましょうが」
「貴方は……」
「……ルイージから聞いているよ。魔王軍幹部のルドラだね」
地下牢へ続く通路には、一体の魔物がいた。
魔王軍幹部が一、ルドラ。
マリオ達と戦い、しかし途中でウルフリックとハクを裏切り、しかし戦艦はちゃっかり落としたトリックスター。
その思惑は、どうにも読めたものではない。
「おや、わざわざご丁寧に。……それと、そちらは識せる貌ですか」
「あら、私のことを知ってるのね。なかなかよくできた子じゃない」
「ウルフリックから聞きました。人の身にしてはとても賢しく見どころがあると、ずいぶん褒めておりましたねぇ」
「へぇ。あの子が、ねぇ。……それは嬉しいわぁ」
ぬっと二人の方へ近づくルドラ。
その目はさながら蛇のように冷たく、口は刃のように鋭く不気味な笑みを浮かべている。
シオンとしては内心冷や汗をかいているが、一方でローランドの方は余裕たっぷりにルドラと対峙している。
「貴方達二人の目的は、ウルフリック隊──それとハクですか」
「だったらなんだっていうんだい? ……戦うつもりなら、ボクが相手してあげるけど」
「これはこれは可愛らしいメイドのお嬢さん。その凛々しい顔も絵になる美少女ですねぇ? ……全部ぶち壊してしまいたくなるほどに!」
シオンは両手に雷撃の刃を構えながら、ルドラの前に立つ。
それに対して、ルドラは微動だにせずシオンと目を合わすだけだ。
「いいえ。貴方、そんなつもりはないのでしょう?」
「……ローランドさん?」
「流石に鋭い。……ええ、その通り。私は貴方達と戦うつもりはございません」
「じゃあ、なんだってボク達の前に現れた? 戦うつもりはなくとも、ボク達と君は敵同士だろ」
ルドラに敵意はなくとも、シオンは警戒を解くことはない。
立場上シオンとローランドはクッパ軍団の客将のようなものであり、クッパ軍団と敵対する魔王軍とは自動的に敵対関係にある。
ましてやルドラはルイージ達からこれでもかと注意するようにと言われた、得体の知れない危険人物なのだ。
馴れ合うことはない。
「簡単な話ですよ。私は、貴方達に申し上げたいことがあるのです」
「申し上げたいこと? 何か取引でもしようってのかい?」
「少々手短に申しますがねぇ。…………重要な仕事が一つ、残っておりますので」
◆
「っ──」
「──ふぅ。魔王が呼び出したあの怪物、ずいぶん厄介じゃねぇか……!」
魔王が呼び出した、黒いカイブツ。
それが繰り出す、隕石のような迫力の拳が実に驚異的だ。
その拳が振り下ろされるたびに地面が割れて、毎回毎回生きた心地がしない。
「ぐ、ぬぅぅぅううううう!」
かろうじて、クッパが全身全霊で受け止めてようやくカイブツの腕を止められる程度。
ぶっちゃけこのカイブツに対する決定打はない。
『──』
「うぉっ?!」
「そのくせ、こっちはこっちで独立して動いてきやがるか……!」
カイブツの腕でクッパの動きを制限したところを、魔王自身が空中から大剣を振り下ろしてくる。
幸い大剣の振るう先は動けないクッパではなくマリオブラザーズの方だが、見方を変えるとこっちの味方を一人潰された形で魔王と戦わなければならない。
何にせよ、とても面倒だ。
『──』
「づっ?!」
「ルイージ!」
魔王が繰り出す兜割り。
それを二人して避けて、かつ息を合わせて挟撃する。
が、魔王は大剣を手放すようにして強烈なパンチを繰り出した。
魔王のパンチは正確にルイージの腹にぶちこまれ、それをまともに食らったルイージは一気に吹っ飛んでいく。
「くっ──!」
苦し紛れにファイアボールを放つ。
吹っ飛んだルイージへの追撃を防ぐためだ。
『──』
だが魔王は左手でばしっとファイアボールを弾く。
いっそ清々しいほどにあっさりとファイアボールはかき消され、代わりに魔王の左手に黒い炎が灯されそれを投げてくる。
お返しのつもりか。
「っ──!」
反射的に心の中の横Bを押してスーパーマントを振るう。
飛び道具なら、問答無用で反射できる。
『────』
「え」
だがスーパーマントで反転するよりも先に、黒い炎はその場でどす黒く光り始める。
「なに、が────?」
そして次の瞬間には。
マリオはその場から離れたところの地に、伏していた。
◆
「っ──!」
なんとか起きる。
どうやら、さっきの黒い炎は爆弾の類だったらしい。
その禍々しくおそろしい爆炎と爆風でここまで吹っ飛ばされたのだろう。
だがそのわりに、マリオの肉体に入ったダメージは少ない。
「ぅぅ……」
「ル、ルイージ?! まさかお前、俺をかばって……!」
あの時、ルイージがマリオと黒い炎の合間に割り込んでマリオの身代わりになったためだ。
黒い爆弾のダメージはルイージが丸々受け止め、故にマリオはまだ動けるのである。
『────』
「っ!」
魔王がマリオ達へ肉薄する。
本能的にマリオが前に出て、魔王と対峙する。
瀕死のルイージを助けるのは、とりあえず後だ。
「おらぁ!」
『──』
ハンマーを振るい、肉薄してくる魔王の横っ面に叩きつける。
だが魔王は堪える様子はなく、ハンマーを左手だけで受け止めていた。
『──』
「ぐ、がぁぁああああ?!」
「ク、クッパ?!」
そして残る右手をカイブツの方へ伸ばすと、そのカイブツは下のクッパに強い圧をかけはじめる。
するとカイブツの腕と張り合っていたクッパの体が、めきめきと嫌な悲鳴を上げ始める。
あのまま叩き潰すつもりだろう。
『────』
「っ! こいつ、さっき手放した大剣を──?!」
かと思えば、魔王は右手におぞましい闇を呼び出して、そこからさっきの大剣を引き抜いた。
そのままマリオの頭上に構え、振り下ろそうとしてくる。
「っ!」
魔王が大剣を振り下ろす。
それよりも前にマリオはハンマーに炎を灯して無理やり魔王の左手を弾く。
それからすぐ横へ転がるように跳躍し、そうしてようやくなんとか魔王の大剣から逃れることができた。
『──』
だが魔王は間髪入れず、空手の左手を構えてまた黒い炎を投げ飛ばしてくる。
「──っ!」
スーパーマントでの反転は試みることはできない。
だから破れかぶれでハンマーを盾のように構え、魔王が繰り出す黒い爆弾の威力を受け止める。
「づぁ──?!」
その次の瞬間。
マリオは壁に叩きつけられていた。
「あ……ぅ……あ……?!」
黒い爆弾の威力を受け止めきれなかったのだろう。
叩きつけられた壁から地面へ沈むと、そこから体が動かなくなった。
今ので、一気に体の限界が来たらしい。
『────』
「く、そ……!」
大剣を構える魔王が、マリオの前にまで歩いてくる。
瀕死のルイージの方へ行かないのは有り難い限りだが、しかしマリオも動くことができない。
ただ、どしんどしんと鎧越しに地面を踏みしめる魔王の足音を聞き続ける以外にできることがない。
このままでは、魔王を倒すどころかこちらがやられてしまう。
「おやおやおやぁ。マリオブラザーズともあろう方々が、クッパ大魔王という助っ人がありながら大苦戦ですかぁ?」
ふいに、その場に声が響き渡る。
マリオのものでもルイージのものでも、クッパのものでもない。
もちろん、魔王の声でもない。
「っ──。てめぇ、ルドラか……!」
魔王軍幹部が一、ルドラ。
彼もまた、この場に現れたのだ。
ゲームセットです。
ルドラが魔王の間にたどり着いたことで、ルドラ目的達成ルートが確定しました。
実はルドラ目的達成ルートは
・星石を自力で七つ揃えた状態で、魔王に突撃すること
・星石を七つ揃えた時点から魔王突撃の間、ルドラに自由行動を許してしまうこと
・同上の条件で「ウルフリック」「ハク」「ウルフリック隊所属の魔物達」のいずれか一名以上の地下牢転移を許してしまうこと
・上三つの条件を揃えた上で、さらにルドラと七つの星石の接近を許してしまうこと
という条件を満たすことで確定します。
七章で被害を被ったシン・クッパ城を復興している間に、ルドラは決定的な『自由行動』を遂行してしまいました。
その状態で8-1の頂上決戦時、ルドラは「ウルフリック」「ハク」「ウルフリック隊所属の魔物達」をまるっと地下牢へ転移することに成功。
そうしてすべての状況を揃え、最後の最後に「ローランド」「シオン」と会話した後、改めて「七つの星石」を持つマリオ達のもとに接近してしまいました。
以上を以て、ルドラの勝ちが確定したのです。
次回、ルドラ目的達成エンドです。