一つ目は「六章のシナリオ」。
二つ目は「ルドラという裏切りキャラ」。
上二つは「スーパーペーパーマリオ」の「ディメーン」を強く意識したものです。
上代わちきにとって「いつもとちょっと違うマリオ」の原点・象徴は、「スーパーペーパーマリオ」という作品であり「ディメーン」というキャラクターでした。
マリオファンタジーとは、いわば「ディメーン」の再構成を試みた作品です。
一方で、三つ目は「マリオとクッパの激突」です。
この展開は、マリオの二次創作だからできる展開です。
どうか最後まで楽しんでいってください。
「とにかく、あの炎の玉を凌がねぇと……!」
クッパの右腕から現れた分の炎の玉はハンマーで跳ね返す。
だが左腕分の炎の玉には対応しきれず、ハンマーを放棄するようにガードして何とか耐える。
「っ──後は、ポンプで!」
そして最後にやってくるクッパの炎は、ポンプの水で無理やり勢いを殺した。
「っ?!」
「ガハハ……これでハンマーは使えまい?」
だがクッパは炎の中から闇のオーラを纏うパンチで一気に肉薄してきて、マリオはその一撃をまともに食らってしまう。
その衝撃で一気に吹っ飛んでしまい、ガードで手放してしまったハンマーから離れた位置に着地させられる。
もうハンマーは回収できない。
「そしてそのまま、トゲトゲで潰してしまおうか!」
「くっ!」
おまけにクッパは闇のオーラを纏ったままトゲコウラに引きこもり、スパイクボール形態になって突撃してきた。
反射的にスーパーマントを取り出してその突撃の方向を反転させていなす。
「なっ──自力で、浮き上がった?!」
が、スパイクボールとなったクッパはさらに闇のオーラを纏いながら上へ浮き上がり、マリオの頭上を陣取ってまた突撃してくる。
何が何だがわけわからん。
ただまぁ、クッパの猛攻はまだ終わっていないことだけは分かった。
「こうなったらやけだ!」
そのスパイクボール攻撃に対し、マリオは拳を振り上げながら一気に大ジャンプする。
スマブラでも使った上必殺技のパンチだ。
「っ?!」
その勢いで運よくクッパのトゲの隙間にパンチが当たり、その攻撃の勢いを殺すことができる。
後はお互いに尻もち落下で、ふりだしになるだけだ。
「ぬぅ……小癪な奴だな。まさかあそこからふりだしまでもっていくとはな」
「ふりだし? 何言ってんだ。さっきの攻防でてめぇはどんだけ魔力を使ったよ。……もう殆ど魔力系の技は使えねぇだろ」
だがさっきと違い、マリオはハンマーを、クッパは魔力を消耗している。
ついでにいうと、クッパはパンチやスパイクボールの強化で闇の力も消費している様子だ。
ここからチャンスがあるというのなら、その違いにつけこむべきだ。
◆
「燃え尽きろ!」
「お断りだ!」
クッパがまた炎を吐く。
しかも、今までと違って火球タイプの炎だ。
この手の炎は跳ね返しができる。
だからセオリー通りスーパーマントで跳ね返す。
「ならば、パンチで吹き飛ばしてやろう!」
そうして跳ね返した火球を、クッパは涼しげに腕で弾く。
もとより跳ね返されるのをわかったうえで、牽制目的かなんかでわざと火球タイプの炎を放ったのだろう。
そしてそのまま一気に肉薄してくる。
「いい案だ。吹っ飛ばされるのはてめぇだがな!」
「ぬっ?!」
それに対し、こちらはあえて前方に跳躍。
跳ね返した火球の陰で拳を構え、そのままメテオナックル──スマブラでいうところの空中前攻撃──をクッパの頭部に叩きつける。
「っ! おのれ──!」
「そんでもって! 投げ飛ばす!」
その勢いでクッパの顎を地面に叩きつけ、そうして怯んだクッパの胸倉をつかんで後ろの方へフルスイングして吹っ飛ばす。
それから、クッパが復帰する前に玉ねぎスープを飲み干して体力を回復する。
これで一発ぐらいは耐えられるようになった。
「ワガハイを吹っ飛ばした隙に回復とは小賢しい!」
「また炎──今度のは跳ね返せねぇか!」
吹っ飛んだ先で素早く体勢を整えたクッパは、間髪入れずに炎を吐いてきた。
今度の炎は火炎放射タイプなので、こっちもスーパーマントではなくポンプに切り替えて対抗する。
「────っ?! 水が……!」
だが度重なる酷使のせいか、ポンプの水が切れる。
これではクッパの炎ブレスをかき消せない。
「ようやっと隙を晒したな?」
「っ! しまっ──?!」
それを好機と見たのだろう。
クッパは火炎放射を中断し、しかし素早くこちらの懐へ肉薄してきた。
「っ──!」
「ほう、ワガハイに相撲を仕掛けるつもりか」
「く──っ!」
とにかくクッパの突撃を両手で受け止めて、少しでもダメージを軽減する。
そうしたら、なぜかお互いにお互いの体を掴む相撲めいた状態になる。
こうなると不利なのはマリオの方だ。
そもそものパワーが違うというのもあるが、それ以上にクッパの口からは炎が出てくるというのがまずい。
「っらぁ!」
「甘いわ!」
だから反射的に頭突きを仕掛け、しかしクッパもわかっていたのか同じように頭突きを仕掛けてくる。
さながらクロスカウンターだ。
「今回はマジに気迫が違うじゃねぇか、クッパ……!」
「そういうキサマこそ中々にしぶといではないか、マリオ……!」
一瞬頭がぼうっとする。
だが怯むわけにはいかない。
まだ倒れるには早すぎるのだ。
「じゃあこういうのはどうだ!」
「ぬ──づぅ?!」
クッパの体を掴んだまま、両手にファイアボールを灯す。
ただし今回のファイアボールはいつもと違う。
ファイアボールの炎を極限まで圧縮することで、相手を焼くのではなく熱で焦がす攻防技にしたものだ。
その熱を以て、クッパを怯ませるのだ。
「おのれ、あのまま潰してしまおうかと思っておったのに──っ?!」
熱に耐えきれず後ろへ退いたクッパの顔面に、ミドリコウラを叩きつける。
ずっと前に入手したものの、最後の一個を取り出して蹴り飛ばしたのだ。
「好機──!」
よほどいいところにクリーンヒットしたのだろう。
ようやく。
ようやくクッパに大きな隙ができた。
「おらぁ!」
「っ?!」
魔力は残っていない。
ハンマーも手元にはない。
ポンプも使えない。
ミドリコウラもどっかにいった。
それでも、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
だから、気が付くとクッパをぶん殴っていた。
「おらおらおらおらおらぁ!」
「っ?! っ! っ?!」
もはや絵面を気にしている場合じゃない。
もはや拳が壊れるかどうかを気にしている場合じゃない。
今ここでクッパを止めなければ、逆に全部終わってしまう。
だからこそなんとしてでも、クッパを気絶にでもなんにでも追い込まなければならない。
今回のクッパは、いつも以上に止めなければならない。
ことはピーチ姫やキノコ王国に留まらない。
クッパはこの異世界をも征服する気で、けれども悲劇を知ったマリオはそれを認めるわけにはいかない。
だから、絶対にクッパをここで止めるのだ。
「ぐぁあああ!」
「っ???!!!」
しかし。
途中で我を取り戻したらしいクッパのパンチで、一気にペースを返された。
こっちは何度も何度もパンチを叩きつけたのに、クッパは一発だけでこっちを吹き飛ばしてしまった。
「ふぅ……ふぅぅぅうう……やって、くれたな!」
「っ──っ?!」
体が動かない。
今のパンチで、一気に限界まで体力を潰されてしまったらしい。
「さっきのお返しだ……存分に燃え尽きるがいい、マリオ!!!」
「っ!!!」
だというのに。
だからこそ。
クッパは容赦なく口に炎を溜めて、こちらへ吐きだそうとする。
この体では、その炎に対応できない────!
◆
「ぬっぐぁ────?????!!!」
「え」
クッパの炎が爆発する。
暴発だ。
クッパは口の中に炎を溜め込んだまま、しかし炎が爆発したことで煙を吐きながらその場に倒れ込んだ。
クッパもまた、さっきのパンチラッシュで限界を迎えていたということだろうか。
「ガハハ……ワガハイながら、情けない。このような終わりとはな」
「クッパ……」
倒れ伏したクッパに、もう敵意はない。
釈然としないが、これで勝負ありということだろう。
「なんとなくはわかっておった。今回のワガハイの野望は、難しいものがあるとな」
「あ?」
「此度の難民受け入れ。……その目的は、いずれ征服するこの世界をより深く知ることだ。だが、あんなにも違う世界の住民であることが重荷であるとは思わなかった」
どうやら、今回のクッパには野望と同時に何か悩みがあったらしい。
それがどんなものかはわからないが、しかしどことなく言いたいことは分かった。
「っ! まさかこのタイミングで俺に喧嘩を売ったのは、てめぇ自身を納得させるためとか言わねぇだろうな……!」
「たわけ。ただ単にキサマの顔が気に入らないからにすぎぬわ…………だが、そうだな。少しは足元を見直すべきかもしれん、というのはわかった」
「クッパ……」
思えば、難民の中にはクッパ軍団と相いれないものが少なからずいた。
特に大人達は、今もクッパ達に心を開き切れずにいるのだ。
その原因は、おそらくシンプルなものではない。
異世界の者同士がわかりあうのは、きっと想像が及ばないほどの苦痛が伴うものなのだろう。
「勘違いするな。ワガハイは何度でも立ち上がる……此度はダメでも、次にピーチ姫を攫い手中に収めた時。足元を固めなおして、ピーチ姫の魔法でもう一度この世界に赴いて征服してやろうぞ」
だがそれでも、クッパはその野望に背を向けようとしない。
マリオとしてはあまり受け入れたくないが、異文化同士がわかりあうのはきっとこういう姿勢が必要なのだろう。
「だが今回だけは、負けを認めてやる。一度キノコ王国に帰るまでは、キサマらの方針に従ってやろう。マリオ」
「……お前にしちゃ、上等な答えだ。クッパ」
とはいえ、今回ばかりは縁がないというものだ。
それをわかってくれたとは言わないが、しかしクッパはようやく負けを認めてくれた。
強情なこいつにしては珍しいぐらいしおらしい対応だが、逆に言うとそのぐらいには思うところがあったということだろう。
「クッパ」
「……ピーチ姫」
お互い、その場に座りなおした瞬間。
ピーチ姫の声が響いた。
どうやら、さっきの戦いの途中で目が覚めたらしい。
「ルイージから聞いたわ。貴方、みんなのためにたくさん頑張ったのね」
「……ワガハイは、ワガハイの野望のために突き進んだだけだ。マリオ達を助けたのは成り行きで、けれどもそのマリオに勝てずに終わったがな」
ピーチ姫が、クッパのもとに駆け寄る。
いつもなら信じられない行動だ。
「それでも貴方が頑張ったからみんなここに立っているのよ。……ありがとうね、クッパ」
「っ?!」
流石のクッパも、顔を赤くしている。
なんともまぁ、嬉しそうな様子だ。
「ずりーなクッパの奴。負けを認めさせたはずなのに、別のところで負けちまったキブン」
「そういうなブラザー。最後の最後はともかく、魔王軍に関してはあいつなしで勝てる相手じゃなかった。このぐらいのご褒美があったって罰は当たらねぇだろ」
「まぁそれは……確かに、その通りだな」
ともあれ、これで今度こそ終わりだ。
ようやっと、すべての戦いに決着がついた。
ここまで、ずいぶん長かったというものだ。
「それじゃあ、帰るか。みんなで」
「だな」
本作の「クッパ」は、シビアなリアリストの側面を持つ王と定義しています。
必要なら平気でマリオとどこまでも仲良くして強敵に備えますし、そもそも野望さえなければ基本的にクッパは言うほどマリオを悪く思っていないと解釈しています。
ただ、野望のためなら今まで築いた友情を割り切って敵対することもできるというだけで。
しかし、だからこそ今回の野望が少々苦しいものであることも無意識に察知していました。
よりそれっぽく言うなら、今回は「流れ」がないことがわかっていたのです。
だからこそクッパはあえてこのタイミングでマリオと敵対しました。
今回がだめなら、次に託すまで。
一度キノコ王国に帰り、マリオとピーチ姫に対する関係性を一旦リセットすることが巡り巡って『次』の勝ちの目を増やす効率的な策と確信したのでしょう。
それはそれとして、マリオ達に素直に従うのが癪だったというのもありますが……