マリオファンタジー   作:上代わちき

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三章(ry

 

 

 

 

 

 

 

「もうじき、星石獣が現れる。百年に一度の、新たな星石を携えて──」

『────』

「ええ、ええ。今回は私が回収に赴きましょう。……この力の試運転も兼ねて、ね」

 

 

 

 

 

 

 夜の帳が下りた、ドワーフの穴蔵亭の一室。

 幻想的な月光が粒子となって差し込むこの部屋は、マリオとルイージがそこそこ長期的に借りている部屋だ。

 故にここは彼らの帰る場所として機能しており、星石についての情報収集と晩飯を済ませた二人は読書などをしてくつろいでいた。

 

「そういやルイージ。さっき『星石獣』って言ったよな?」

「ああ、一年に一度海からこの街に向けて現れるっていう超大型魔物だそうだ」

「……もしかしなくても、この星石が関わるよな」

 

 

 なんとなく月明かりの読書を終えて、なんとなく集めた情報を整理する。

 その一環として、マリオは懐から『星石』を取り出した。

 今マリオとルイージが、ピーチ姫やキノコ王国に帰る術を探すのに役に立つかもとして集めているものだ。

 色々あって、今は手元に二つある。

 

 

 

「『星石獣』は海の魔力を取り込み、水属性の魔力を宿す『魔石』を作る。だから冒険者はこぞって船に乗り込んではそこから星石獣に飛び乗り、その魔石を掘って稼ぐ」

「おお! ってことは、その魔石とやらが──!」

「ただし、その魔石は冒険者や街に莫大な利益こそもたらすが、だからって星石ってわけじゃない。そもそも星石獣は『滅多に星石を作らない』んだ」

「なんじゃそりゃ。…………ん、待てルイージ。『滅多に』って言ったか?」

「気づいたか。そうだ、実のところ星石獣は百年に一度は『星石を生み出す』。これこそが星石獣と呼ばれる所以だ」

「へぇ、面白そうな話じゃん」

「ついでに言うともうすぐ年に一度星石獣がやってくる時期で、今年はその百年に一度のタイミングだそうだ。参加しない手はないぜブラザー」

 

 

 この星石は、どういうわけか魔王軍とやらが狙っているらしい。

 今のところは一つたりとも彼らに奪われたりはしていないが、だからといって油断できない。

 故に今回もきちっと回収しなければならない。

 

 どうして回収しなければならないのか、なぜ魔王軍に持っていかれるとまずいのか、そこらへんは何一つはっきりしていないが。

 ただただ今まで数多くの冒険を経て得た第六感だけが、確信としてそれを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 翌日、ドワーフの穴蔵亭特性のパンと野菜のスープを堪能してから街に出た。

 もうすぐ街へ向けて接近してくる星石獣の脅威から避難する町民達の姿や、逆に星石獣がもたらす魔石の恩恵に与ろうと訪れる商人や冒険者の姿が見えた。

 広場の方を見やれば、訪れた冒険者達をターゲットとした露店がたくさん並んでいて、星石獣狩りの祭りで賑わう街の姿が確認できる。

 

「すっげぇ賑わい……多分これ他の街からも冒険者が来てるよな」

「星石獣から採れる魔石には水属性の青い魔力が宿ってるって昨日言ったよな。魔術の触媒にもよし、武器の強化素材にもよしってわけだ」

「なるほろねー。機会があったら俺のハンマーも水属性に換装してみよっかな……」

 

 

 

 そんな感じで、いつもより賑わっているギルド本部に到着する。

 ここではもうすでに星石獣狩りの船に乗り込むための手続きができるようになっており、早速マリオ達も手続きをすることにした。

 

 

 

「よくぞ来てくれた! マリオ殿、ルイージ殿」

「……えっと、一応聞くが、どちらさん?」

「おっと、この格好では気づかないか。ワシは『キノ康』! 以前はピーチ城の警護をしていたが、今はこっちの『ボム勝』と共に冒険者活動をさせてもらっているのだ!」

「いやキノピオなんかい! キノ村の時といいなんでみんなキノピオの帽子と服脱いでんだよ!」

「……いやそっちのボム兵には勢いよくツッコミしないの?」

「もうそっちは諦めた。なんなんだよ○ンダムみたいな鎧しやがって。なんで兜のところにボム兵の一頭身が詰まってんだ……」

『!!!!!』

 

 そのギルドにはやけに濃いキャラと名前をしたキノピオ「キノ康」とボム兵「ボム勝」がいた。

 

 

「ところでキノ康。あんたらがここにいるってことは──」

「もしかしなくても星石獣狩りが目的だ。ワシの相棒であるボム勝は大砲召喚の能力を持っているからうってつけでもあるし」

『!!!!!』

「な、なるほど」

「というか今回のボム兵は喋らないんだな……」

「いや、ボム勝もちゃんと喋るぞ? なぜかワシ以外には機械音でしか喋れないだけで」

「ほんとなんなんだよそれ……」

「ともあれ、当日ではよろしく頼むぞ。では!」

『!!!!!』

 

 そんな彼らの濃い出会いは、この辺りで一端割愛する。

 何故かボム勝の鉄の鎧に乗り込んで、そのままボム勝のジェット噴射でどこかに飛んでったキノ康の姿なんて見ていない。

 これ以上はこっちが疲れるのだ……。

 

 

 

「ともあれ、手続きは済ませた。後は俺達も星石獣狩りの船が出るのを待つだけだな」

「ああ。それまでは待機か」

 

 

 

 

 

 

「やあ、あの時ぶりだな! マリオ殿、ルイージ殿」

『!!!!』

「ああ、そっちもな……」

「どうしたんだ? やけに疲れているようだが……」

「いや、こっちの話だ。…………ちょっと顔を見るだけで疲れるのは、流石に失礼すぎるからな……」

 

 そういうわけで星石獣狩りの船に乗り込んだ当日、やはりというか空の上からキノ康とジョットを噴射するボム勝も乗り込んで来た。

 いやもうちょっと普通に乗り込みなよ……。

 

 

 

「というかもうすぐ星石獣が見えてくる頃だぞ」

「わかっている。ワシとボム勝は船からの後方支援に徹するから、魔石掘りはお二人や他の冒険者殿に────!」

 

 わちゃわちゃしているうちに、星石獣のすぐそばまで近づいていた。

 なんだか青い石がそのままクジラになったような形をした、よくわからんでかい魔物がそれだ。

 いよいよもって星石獣狩りの始まりだ。

 

 

 

「──早速来たか! ボム勝、拘束弾を放て!」

『!!!!!』

「みんな! あいつはワシらが引き付ける! 今のうちに乗り込んでくれ!」

「わお、遅れてきた身分で仕切るじゃねーのあいつ」

「だがそんだけの働きだ。俺達も乗り込んで魔石掘りと行こうぜ!」

 

 キノ康の指示を受けたボム勝と、彼の動きに呼応した船員達が一斉に拘束弾を放つ。

 強靭なロープと繋がったその弾はクジラのような姿をした星石獣の体に刺さり、そのロープをボム勝や船が引っ張ることで星石獣の動きを制限する。

 ピッケル片手に乗り込むチャンスだ。

 

 

 

「……っと。ここからは魔石狩りのターンだな。ピッケルと魔石を入れる袋はちゃんとあるよな、ルイージ?」

「もちろんだぜ。……とはいえ、普通に採掘はさせてもらえなさそうだがな」

 

 実際に星石獣に乗り込む。

 魔物とはいえある種生き物の上に乗っているわけだが、その割にちゃんと歩くスペースが広い。

 普通に立ててピッケルを構えられる程度には揺れがない辺り、星石獣を拘束するボム勝達の実力がわかる。

 

 だからといって、素直に採掘でお金稼ぎというわけにはいかない。

 星石獣の上に飛び乗ったとたん、あちらこちらから魔物が現れたのだ。

 

 

 

「星石獣の中に住んでいる魔物ってわけか」

「つまりこいつらを一蹴しつつ金になる魔石片っ端から集めて、さらにメインの星石を奪取しなきゃならないんだな。……割とハードだなおい」

 

 もうすでに他の冒険者達は魔物と戦闘をはじめ、早い奴は壁っぽいところにピッケルを振るって魔石を採りだしている。

 ぐずぐずしている暇はなさそうというものだった。

 

 

 

「俺達ならどうにでもなるだろ」

「まぁ、それもそうだな」

 

 

 

 

 

 

「よっと、また当たりだ!」

「いい調子だな、っと!」

「ブラザーの方もな、っと! また大物だ。もう袋がパンパンだぜ」

 

 ルイージがピッケルを振るい、その背を護るようにマリオが魔物をハンマーで吹っ飛ばす。

 そうやって発掘ポイントを漁っていけば、どんどん水色に輝く魔石が掘り取れる。

 その悉くが大物だったり輝きがさらに濃い良質な石だったりするものだから、もうウハウハだ。

 

 割と他と比べて遅れ気味に採掘を始めた割に、いい感じの稼ぎになった。

 

 

 

「どうするブラザー、これ以上は掘っても袋に入らねぇぜ」

「いったん船に戻って新しい袋でも貰うか? ……いやでもそこまでパンパンになってりゃ稼ぎとしては十分か」

「じゃあ、このまま頭部に行っちまうか。確か星石獣の核を取るまでが防衛作戦だったよな」

「そうしてはじめて街に向かう星石獣の進路を変えれる……だったか。ほんとハードな祭りだぜ」

 

 そんな採掘を尻目に、マリオブラザーズは星石獣の頭部へ向かうことにした。

 

 

「おっと、魔物が出てきてるぞ!」

「問題ねぇ、サンダーハンド!」

 

 その道中で魔物が道を阻んでくる。

 が、ルイージの専用技『サンダーハンド』でだいたい吹っ飛んでいく。

 

 

「重ねてハンマーホームラン!」

 

 その撃ち漏らしを、マリオがハンマーで吹っ飛ばす。

 中々気持ちよく飛んでいった。

 

 

 

「やれやれだ……もうそろそろ頭部かね?」

「多分な。この先からすげぇ力を感じる。……噂の核だろうよ」

 

 

 そうしているうちに、少しずつ目的地が遠くに見えてきた。

 

 遠目で見る限り、なんだか青い石でできた祭壇っぽいのがある。

 そのあたりは青い光の粒子が漂っていて、すごく神秘的だ。

 その粒子がこの道にも流れては舞っているのだから、そりゃファンタジーじてるなって感じになる。

 

 ……そしてその祭壇っぽいエリアの中心には、小さくも眩しく輝く石が一つある。

 きっと、あれこそが星石獣の核だ。

 

 

 

「なぁ、あれって星石獣の核だよな? ありゃ、どう見ても────」

「間違いねぇ、俺達が持ってるのと同じ星石だ。やっぱり、今回が百年に一度の星石が作られるタイミングってわけだ」

「じゃあこのままかっぱらっちまう」

 

 そして同時に、マリオブラザーズが集めている星石の一つでもあった。

 早速それを回収しようと、試みる。

 

 

 

「っ?!」

「うぉ? ……なんだ?!」

 

 そのタイミングだった。

 

 

 

 

 

『ゲゲッソー!(カンカンカンカンやかましいんじゃ! せっかくゆっくり昼寝しているとこやったのに! いてもうたる~~!)』

「だ、ダイオーゲッソー?!」

「こいつまで異世界トリップしてきやがったか!」

 

 海の中から、巨大な巨大なゲッソーが現れた。

 かつてノワール伯爵との闘いの途中でも相手した、ダイオーゲッソーだ。

 

 

 

『ゲッソー!(おらぁ!)』

「うぉ?!」

「つ──く、しょぉぉお?!」

 

 ダイオーゲッソーが星石獣に体当たりを仕掛け、その際の衝撃で星石獣の上から振り落とされる。

 このままでは、海にどぼんだ。

 

 

 

『!!!!!』

「おぅ?! ……ボム勝か」

「助かった。ありがとな」

『……!!!』

 

 だがその前にジェットを吹かすボム勝にキャッチされ、そのまま安全に船まで戻される。

 ひとまずは落ち着いた。

 

 ちなみに他の冒険者達はなすすべなく海に落ちてしまったが、実はそれぞれに船と繋がる命綱がある。

 だからそれを伝って自力で船に戻れるそうだ。

 なんだかたくましいな。

 

 

 

「無事だったか、マリオ殿、ルイージ殿!」

「ああ、おかげさんでな」

「ボム勝に感謝だな。……だが、問題はここからだ」

『ゲゲッソー!(おどれらやな! カンカンカンカン音を鳴らしおったのは!)』

 

 ダイオーゲッソーが船に近づいてくる。

 たくさんの触腕を海上に出して、その大きな質量を以て船を攻撃しようとしている!

 

 

「まずい……! あんな数の触腕を食らったら、船が──!」

「キノ康、確かボム勝には大砲を召喚できるっていったよな?」

「あ、ああそうだ」

「ならあそこの角度に出してくれ! 船の備え付け大砲じゃ届かない死角に奴の弱点がある!」

 

 だがその触腕の一つに、赤い吸盤がついているものがある。

 以前ダイオーゲッソーと戦ったことがあるマリオは、それが弱点だと知っている。

 

 なら、その赤い吸盤の触腕を攻撃しない手はないというものだった。

 

 

 

「聞いたなボム勝。撃てー!」

『!!!!!』

『ゲ! ゲゲッソー?!(あ、あかん! ソ、ソコはカンニンや~~!)』

 

 キノ康の指示でボム勝は大砲を虚空に召喚し、その大砲がダイオーゲッソーの弱点を攻撃する。

 するとダイオーゲッソーはその攻撃に耐えきれず、海の中に沈んでいく。

 

 

 

「よし! なんとかなった!」

「ひとまず、これで船はいったん大丈夫か」

 

 そうしてようやく、状況を確認するだけの時間を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずいな、こりゃ……」

 

 星石獣の方を見やる。

 

 先程ボム勝達が放った拘束弾は、ダイオーゲッソーの乱入のせいで壊れてしまった。

 故に、彼奴は悠々自適に海を泳いでいた。

 

 

 

「しまった! ダイオーゲッソーとやらのせいで星石獣が……」

「あのままじゃ、街に乗り込んでしまうぞ!」

「でもあんなに離れたら、拘束弾も大砲も届かない……!」

 

 命綱で船に戻ってきた冒険者達がみんな顔を青くする。

 それもそのはずで、ダイオーゲッソーの相手をしている間に星石獣は街の方へどんどん進んでいき、船から離れてしまった。

 

 海を泳ぐ星石獣は、しかしどういうわけか平然と陸に乗り上げてしまう習性の持ち主らしく、そのまま街に突撃するつもりらしい。

 

 

 

「してやられたな……! 本来なら核となる石を採ることで無理やり星石獣の進路を変える段取りの筈だったが──」

「何か、手はないのか」

「──いや、まだ手はあるぞ」

『!!!!!』

 

 その状況を変えようと声を上げたのは、キノ康とボム勝だった。

 

 

 

「他の冒険者には使えない手だが、ここにマリオ殿とルイージ殿がいてくれて助かった!」

「どういうことだ?」

「簡単だ。ボム勝の大砲を使い、星石獣の上に飛び乗る。……それができるのは、強靭な体を持つマリオ殿とルイージ殿のみだ!」

 

 

 補足すると、ダイオーゲッソーはまだ船を襲おうと追いかけてきている。

 まだ弱点を一回攻撃して何とか状況整理するだけの時間を得ただけで、完全にダイオーゲッソーを撃退するにはあと二回は弱点に攻撃しなければならないのだ。

 

 そんなダイオーゲッソーから船を護るためにボム勝はしばらく船から離れられず、故にジェットで飛んでマリオ達を星石獣まで送ることができないのである。

 

 

 だからといってダイオーゲッソーを悠長に相手していられる時間もない。

 今すぐにでも星石獣の上に向かわなければならないのだ。

 

 

 

『ゲゲッソ~~!(ワイの大切な足を撃ちおって……ゼッタイに許さんからな~~!)』

「お二人が船に戻るときには、なんとかこのゲッソーを撃退してボム勝を送れるようにする! だから、一刻も早く星石獣の核を──」

「了解! なんとしてでも星石獣を止めて見せる! 行くぞルイージ!」

「おうさ!」

 

 

 

 

 

 

「おーおー。こっちらへんはまだ魔石が残ってら」

「採掘している暇はないぜブラザー」

「わぁってるよ。……とはいえ、こりゃ一筋縄ではいかなさそうだ」

 

 

再び星石獣の上に飛び乗る。

先と違う場所に着地したせいか、どんどん魔物が出てくる。

 

 

「行くぞ!」

「ああ!」

 

 無論、数の暴力で屈するマリオブラザーズではない。

 すぐさま頭部への道へ突き進んでいく。

 

 

 

「当然、襲ってきやがるよな……!」

「だからって全部は相手してらんねぇぞ……まだ大技は温存しておきてぇし、それに奴らはどんどん出てきやがる」

「ならやることは一つ! とにかく避けれる奴は避けまくって、どうしても避けきれないところにいるやつを────」

「────叩く!」

 

 目の前の魔物にパンチを繰り出すと、その魔物が吹き飛ぶ。

 すると吹き飛んだ魔物の体に激突した、他の魔物も吹っ飛んでいく。

 

 そうしてできた道を、とにかく急いで通り抜けて星石獣の核がある頭部へ向かっていく。

 

 

 

 

 

「──なんとなく見覚えがある道だ」

「こんだけ走ってりゃあな。そろそろ頭部ってわけだ」

「なら、切り札の切り時だな」

「おう!」

 

 一度目の時も通った、頭部への道。

 そこに差し掛かると同時に、二人そろって後ろへ振り替える。

 

 さすれば、そこには軍勢と化した魔物の集団がすぐそこまで迫ってきていた。

 

 

 

「思いっきりだ!」

「ああ、やってやる!」

 

 そこへ向けて、マリオは両手に炎の力を灯し、ルイージは雷の魔法を灯す。

 

 

 

「ビッグファイアハンド!!!」

「ビッグサンダーハンド!!!」

 

 それぞれ炎の竜と雷の竜が放たれ、さながら螺旋を描くような軌道で魔物の軍勢に突っ込んでいく。

 さすれば、魔物達はひとたまりもなくマリオブラザーズの大技で吹き飛んでいく。

 

 それぞれ炎の力と雷の魔法の効果が消えるころには、もうそこにはぺんぺん草も残らないような有り様だった。

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい。惚れ惚れするお力ですねぇ」

 

 静かになったその場に、パチパチパチと拍手する音が響く。

 

 音がする方へ振り替えれば、一人の男がいた。

 なんかインド辺りのローブっぽいのを着ていて、けど黒の長髪を流している青年の姿をしている。

 

 

 

「……案の定、来やがったか」

「おや、私達は初対面の筈ですが?」

「けどお前らが星石を狙ってんのは分かってんだよ、魔王軍さんよ」

 

 

 

 

 

 

「そこを退け。俺達は急いでいる」

「まぁまぁ、そう焦らず。少しは私の話を聞いていきませんか。私、恐れ多くも『ルドラ』という名を名乗っておりますが──」

「そういうわけにはいかねぇ! 一刻も早く星石獣の核である星石を採らねぇと────」

「──星石獣の核、星石なら私が採りました」

 

 

 二人して目が点となる。

 

 目の前に現れた『ルドラ』と名乗る男は、見せつけるように星石を取り出して見せた。

 

 

 

「──ってことは」

「ええ、ええ。星石獣の進路は変更されました。もう、街が破壊されることはありませんよ」

 

 それと同時に、足場が大きく揺れる。

 星石獣が、街とは違う方向へ進路変更したが故の揺れであった。

 

 

「そういうわけで、もう事は終わっておりまする。街の危機は解決され、私も目的の物を得ました。なのでそこを通していただきたいのですが──」

「……悪いな。そういうわけにもいかねぇ」

「はて……何のおつもりでしょうか?」

 

 

 ルドラの行く手を阻むマリオブラザーズ。

 

 当然だ。

 このまま行かせるわけにはいかない。

 

 

 

「これは念のための確認なんだが……ルドラさんよ、あんた魔王軍だろ」

「ええ、まあ。否定は致しません。色々ありまして、幹部ということになっておりまする」

「なら、このまま行かせるわけにはいかねぇ。たとえあんたが、街を救った英雄でもな」

「……ほう」

 

 ルドラの手には、星石があるままだ。

 これがいけない。

 

 

「貴方達は、この石が如何なるものかご存じと?」

「いや、全然わからん。どう使うもんかも、そもそもどういったシロモノかもさっぱりだ」

「なら──」

「でもな、俺のカンが疼くんだよ。……魔王軍には、絶対に渡してはいけねぇってな」

 

 

 刹那、その場に沈黙が下りる。

 聞こえるのは、星石獣そのものが揺れる音と服を大きく揺らす強風の音のみ。

 

 

 

 なのに、何か怒らせてはいけない何かを怒らせたような、そんな緊張感が無音のまま張り詰めていく。

 

 

 

 

「実に。……実に、良いカンをしております。────ヘドが出てしまいそうなほどに、ねぇ!」

 

 

 

 

 

 

「これはいかがでしょう?」

 

 最初に仕掛けてきたのはルドラだ。

 ぬるりと不気味に肉薄してきたかと思えば、右手から青白い電撃を繰り出してきた。

 

 

「っと!」

「いきなりあぶないなぁ」

「ふむ。あっさり凌ぎましたね。流石はマリオブラザーズ」

 

 それに対してマリオブラザーズは、その場から大きく跳躍することでひらーりとかわした。

 ……のはいいが。

 

 

「野郎、いつの間に俺達のことを……」

「まぁ隠していてもいずれは探られるわな。割と有名人だし俺ら。──そんなことよりも」

「さっきの電撃の感じ……。属性こそ雷だったが、まさかウルフリックの時と同じ……!」

「その通り。素の力ではお二人に敵うべくもない故、外付けの力に頼りました。……存外に、便利なものです」

 

 この男、何かが違う。

 

 

 

 

「こいつぁさっさと仕留めた方がよさそうだ。ブラザー、サンダーブロスだ!」

「おう!」

「──ほう」

 

 何故か様子見に徹しているルドラを尻目に、ルイージはサンダーハンドを構えながら跳躍する。

 その着地地点にいるマリオを踏み台にしてさらに大きくジャンプすると、ルイージは上から大きな雷撃を繰り出した。

 

 

 

「実に見事な連携。──だが甘い!」

 

 その雷撃に対してルドラは上方向へ向けて雷撃を繰り出して、ルイージの雷撃と相殺させる。

 

 

 

「だろうと思ったぜ! ハンマーホームラン!」

「っ?!」

 

 その隙を突き、マリオが背負っていたハンマーを振りぬいてルドラの横っ面に叩きつける。

 

 

 

 

 

「──なっ?!」

「ぐっ──?!」

 

 だがそのルドラは、影でできた偽物だった。

 

 ハンマーを叩きつけた途端、そのルドラは黒い影となって消えていき、代わりに地面の影から本物のルドラが雷撃と共に飛び出してきた。

 その雷撃で、マリオとルイージは一気に吹っ飛ばされてしまう。

 かろうじて星石獣の上から落ちなかったのがせめてもの救いか。

 

 

 

 

 

「フフフ、苦しそうですねぇ。ここからどういたします、マリオブラザーズ殿?」

 

 なんとか立ち上がると、ルドラは余裕たっぷりな笑顔でその場に立っていた。

 こちらを舐めているのか、そこから攻撃態勢に移る様子はない。

 

 

 

「ふざけやがって……ならこいつを食らいな!」

「また雷撃ですか。どこに放とうと、私には当たりませんよ?」

「そいつはどうかな!」

 

 それに対し、ルイージは再びサンダーハンドを構える。

 ルドラはその雷撃を目で警戒するが、ルイージはサンダーハンドを地面に流す。

 

 

「地面に──? っ?!」

「以前のサンダーハンドが使えてた頃に色々検証しててな。おかげで、地面に流して遠くに当てるぐらいはできるんだよ! ──ブラザー、今だ!」

「おう!」

 

 流石に雷撃を地面に流して攻撃を当てることは予想外らしく、ようやくルドラに隙が生じた。

 

 そこへマリオは、懐からミドリコウラを取り出してすぐ蹴り飛ばした。

 なんか街の市で売っていたから、飛び道具とかブラザーアタックの種になるかと思ってコウラをいくつか買っておいたのだ。

 

 

 

「ヌ──?!」

 

 まず一発、電撃でひるんでいたルドラの腹にぶち当たる。

 

 

「おら!」

「ガッ──?!」

 

 そこから戻ってきたミドリコウラを、今度はルイージがより強く蹴り飛ばす。

 

 

 

「もうひとつおまけだ、食らいやがれ!!!」

 

 そのままルドラに命中して再び戻ってきたミドリコウラを、マリオが渾身の力を込めたキックでさらに勢いよく蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

「ざぁんねん」

「何?!」

 

 だがしかし、その渾身の力を込めたミドリコウラは影の中に消えていった。

 本物かと思ったルドラは、しかしまた影でできた偽物だった。

 

 

 

 

 

 

「またか……!」

「結局振り出しってわけか……」

「いえ、そうとも限りませんよ?」

 

 また現れた、本物か影でできた偽物かもわからないルドラは、どういうわけか手元の星石をマリオへ向けて投げた。

 

 

 

「うぉっ?!」

 

 思わず目を丸くし、綺麗な弧を描きながら迫ってくる星石をおっかなびっくり落としそうになる。

 が、なんとかうまくキャッチできた。

 

 これで、三つ目の星石ゲットだ。

 

 

 

 

 

「何のつもりだ。これ、お前らにとっちゃ集めなきゃいけねぇもんじゃねぇのか?」

「ええ。確かに魔王軍としては他者に渡せない危険物です」

「ならなんで──」

「ですが、私個人としてはどうでもいいんですよねぇ」

「──何?」

 

 ルドラは飄々とした態度で、マリオの懐にしまわれる星石を見送る。

 どうにも他の魔王軍幹部と違って、星石への執着そのものが見受けられない。

 

 

 

「ですので、今回はお譲りします。貴方達の健闘に免じて、ね」

 

 それどころか、いっそ不気味な程に清々しい笑顔を浮かべたまま、どこかへと消えてしまった。

 魔術か何かを使ったのか、一瞬だけ空間に波紋が広がるのが印象的だった。

 

 

 

「っ?! あいつ逃げやがったか……!」

 

 さっきは「そこを通していただきたい」とかなんとか言っていた割に、帰ろうと思えばすぐ帰れたらしい。

 なのにすぐ帰らず、あまつさえ星石をこちらに渡してしまうあたりに、得体のしれない不気味さを感じる。

 

 どうにも、今回ばかりは謀られた感がある。

 

 

 

 

「ブラザー、俺達も脱出しないとそろそろまずい。船が遠のいちまう」

「そうだな……どのみち、星石は確保できたんだ。それでよしとしよう」

 

 とはいえ、思考を巡らせる暇もない。

 丁度良くボム勝が迎えに来てくれたから、彼にかついでもらって星石獣の上から脱出することにした。

 

 

 

 

 

「星石、か。これで三つ集まったってのに、わかっていることは何にもないんだよなぁ」

 

 

 

 街の危機は脱した。

 目的の星石も入手した。

 これで、一区切りの筈だ。

 

 なのに、一区切りついたような気が全くしない。

 

 

 

「────」

「────」

 

 むしろ「ここからが本番だ」と言われたかのような、そんな感覚が全身を走っている。

 一応は決着がついた筈なのに、どうにもそんな気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

「ん、ぐっ──?! やはり、慣れないことはするものではありませんねぇ。……とはいえ、出張った甲斐はありました」

 

 

 そして、物語は加速する。

 

 

 

「マリオブラザーズ。やはり貴方達こそが、我が計画の要です──!」

 

 

 

 

 

 

 




これにて序盤三章こと「冒険者ギルド編」は完結です。
次章から物語は新たな段階に移ることとなります。

Q つまり?
A 次はクッパ様と対決だ!







以下2023/05/08にて追記。
※2023/05/09にて一部表現を刷新。なんならさらに文も追加。


一章の「真田キノ村」と今回の「キノ康」「ボム勝」について

・こやつら(=戦国武将化キノピオ+α)を書こうと思ったきっかけは、本作のマリオとルイージの口調の元ネタにもなった『とある作品』です。
→こちらの作品様においても戦国武将化キノピオが登場しており、本作のこやつらはその流れを汲んだものになります。
→ようするに『とある作品』様に対するリスペクト・オマージュです。

・ただしなんかカプコ○化してるのはわちきのアドリブです。
→『とある作品』様は漫画であるのに対し、こちらは文字だけで勝負する小説です。
→そのため口調だけでもキャラが立つようにしないとなーっと考えた結果、なぜかクロスオーバー気味なキャラになっちまいました。
→実際、真田キノ村が出てきた時のインパクトはちゃんとあったとわちきは思ってます。
→あと三章の展開の都合で飛行ユニットが欲しかったのもある。



以上、上代わちきのいいわけでした。


(・x・)やりたい放題でごめんね
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