マリオファンタジー   作:上代わちき

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四章中編

 

 

 

 

 

 

 

 クッパが炎を吐く。

 人一人は飲み込んでしまいそうなほどに大きい、恐ろしい火球だ。

 

 

 

 

「こんなこともあろうかとってな!」

「ヌゥ?!」

 

 その火球を、マリオがマントを取り出して跳ね返す。

 所謂スマブラの横必殺技であるスーパーマントであり、なぜか最初の街の市で売っていたのを星石獣狩りの稼ぎの一部で買ったのだ。

 ……たぶんこれもトリップしてきたものだと思われる。

 

 

 

 

「チャンスだルイージ!」

「おう!」

 

 ともあれ、クッパは撃ち返された炎を食らい、その隙にルイージが肉薄する。

 

 

 

 

「舐める、なぁ!」

「何っ?!」

 

 が、クッパはその場でコウラに引きこもって高速回転し、その勢いと棘でルイージを一蹴する。

 

 

 

「ルイージ!」

「ふん。スマブラの時みたいに昇竜拳もどきで仕留めるつもりだっただろうが、そうとわかっている手札などワガハイには効かぬ!」

「くっそ、SPで上B即死コンボをこすってたのが仇になったか──!」

 

 

 幸いにしてルイージが食らったダメージは軽微で済んだ。

 が、状況は振出しに戻ってしまった。

 

 よほどスマブラの上必殺技が頭に来ているのか、今回のクッパはやたらルイージを警戒しているらしい。

 どうにも例のファイア昇竜拳を当てられる隙を見出すことができない。

 

 

 

 

「ならこいつはどうだ!」

 

 それならばと、次の刹那マリオのハンマーホームランがクッパを襲う。

 

 

 

「ふん」

 

 が、クッパはその一撃を丸太のような剛腕で受け止めて見せた。

 そこに堪えたような様子は見受けられない。

 

 

 

 

「おいおい、せっかく強化したハンマーなんだぜ……!」

「だからなんだ? 少々濡れてしまってひんやりとするのが気になるが、問題ない!」

 

 そしてそのままクッパはハンマーを弾き飛ばし、その余波でマリオの体勢が崩れる。

 

 

 

 

「うっ?! お、あ、う──?!」

「食らえマリオ……『ダイビングプレス』!」

 

 

 その隙を突いてマリオの体を掴んだクッパは、マリオごと大きく跳躍し、回転するようにしてマリオの上を陣取る。

 そしてそのまま落下し、マリオを地面と巨体で押しつぶそうとしてきた。

 

 所謂スマブラでクッパが使ってきた横必殺技だ。

 

 

 

 

 

「させねぇよ!」

「グ──?!」

「──っと、助かったぜルイージ」

 

 

 だがそこにルイージのファイアボールが激突し、クッパが怯む。

 その隙に乗じてマリオはクッパの拘束を剥がし、そのまま安全地帯に着地する。

 

 これで、なんとか振り出しには戻れた。

 

 

 

 

 

「厄介だな。……ファイア昇竜拳も通じないし、ハンマーはハンマーで強烈なカウンターが来るし」

「これだよな、クッパの厄介なとこ。一撃一撃が重いパワータイプの癖に、変なところで素早くて切れ者なんだよこいつ」

「ククク、ほめたところで何も出ないぞ?」

 

 

 だが状況は苦しい。

 

 

 基本的にクッパとの戦いは奴自身のコンディションや周りの状況で難易度が変わるのだが、なんというか今回のクッパはやたら面倒くさい。

 いつもだったら割とあっさり倒せたりするものだが、今回ばかりは何故か気迫が違う。

 

 これを倒すのは、一筋縄ではいかないだろう。

 

 

 

 

 

「……ルイージ、少し俺を信じてくれないか?」

「ブラザー?」

「一対一の時が多いスマブラと違って、今回は二体一。……そこが勝機だ」

 

 

 

 

 

 

「ルイージ!」

「おう!」

「今度は二人がかりか! 生憎だが惑わされんぞ!」

「っ──!」

 

 

 二人してクッパの懐へ肉薄する。

 が、クッパはルイージのみを正確にパンチして吹っ飛ばす。

 

 やはりファイア昇竜拳を警戒しての迎撃だろう。

 

 

 

「食らえ!」

「ヌゥっ!」

 

 だがおかげでマリオはノーマークのまま、水属性ハンマーを大きく振りかぶってクッパの巨体にぶつけることができた。

 

 

 

「つぅ──水浸しで鬱陶しいわ!」

「うぉっと」

 

 水属性ハンマーを食らったクッパは、文字通り水浸しになりつつもすぐ反撃を試みる。

 スピニングシェルだ。

 

 が、マリオはすぐ後退して直撃を避ける。

 

 

 

「大丈夫かルイージ」

「ポーションのおかげでな。まじで効くわこれ」

 

 一方でルイージはまともに食らったパンチのダメージを、事前に準備していたポーションで回復して戦線復帰した。

 かさばりなどの関係でそれぞれ三つしか持ってきてないが、効果は絶大だ。

 

 

 

 

「さて、と」

「ここからだな」

「────」

 

 再びマリオブラザーズとクッパがにらみ合う。

 

 状況はまだ変わらない。

 

 

 

「っ!」

「今度はキサマだけか、マリオ。……舐めてくれたものだ!」

「っ?!」

 

 マリオが突貫し、クッパに肉薄する。

 が、クッパのパンチで吹っ飛ばされる。

 

 

 

 

「っ──今だ、ルイージ!」

「ああ。サンダーハンド!」

「何っ?!」

 

 

 そのタイミングで合図を出し、離れた位置のルイージがサンダーハンドを仕掛ける。

 

 ただしルイージ自身はクッパに近づかない。

 ルイージの接近を警戒しているクッパに反撃されるからだ。

 

 

 

 だからルイージはいつぞやと同じようにサンダーハンドを地面に流した。

 距離を保ったまま、地面伝いに電撃だけをクッパにぶち当てる。

 

 

 

 

 

「グ、ガァ?!」

 

 

 その効果は抜群だ。

 なんせマリオの水属性ハンマーで水浸しになっているのだ。

 今のクッパは、電撃がよく通るというものだ。

 

 

 

「そんで、もひとつおまけだ! ファイア掌底!」

「ヌ、グゥ……?!」

 

 感電するクッパへ、おいうちをかけるようにマリオのファイア掌底が突き刺さる。

 その鋭く強烈な一撃で、クッパは後方へと飛んでいく。

 

 

 

 

「ゥ……ガ、ァ」

 

 手応えあった。

 

 後方で転げ落ちたクッパは、なおも立ち上がろうとする。

 が、息も絶え絶えでダメージが残っている様子だ。

 

 

 

 ようやっと、状況が一つ変わった。

 

 

 

 

 

 

「きゃあ!」

「っ!」

「っ!」

「ヌ、ゥ──!」

 

 その次の瞬間、カゴに囚われたピーチ姫がその場に現れる。

 

 

 

「ピーチ姫?! やっぱりクッパに捕まっていたのか!」

「待てブラザー! 何かがおかしいぞ──!」

 

 

 そのピーチ姫と同時に、一つの存在が現れる。

 

 

 

 

『────』

「ブラザー……」

「ああ。こいつは、最高にやばい」

「俺達がクッパを吹っ飛ばしたのを勝機と見て来たんだろうが……最悪だな」

 

 

 その闇に包まれた姿を一目見ただけでわかった。

 こいつこそが、『魔王』だ。

 

 

 

 

 

『────』

「ぐっ?!」

「ルイージ! ──くそ!」

 

 

 魔王は闇の力を振るい、ルイージを一蹴する。

 円状に広がるその闇は、同時にマリオの方にも襲い掛かり、マリオはその回避に集中せざるを得なかった。

 

 やはりというか、魔王は今までのどの敵よりも強大な力を持っていた。

 これに打ち勝つのは、簡単ではない。

 

 

 

 

「グォオオオオ!」

『────』

「グ、ヌゥウ?!」

 

 

 

 クッパが炎ブレスを吐きだし、魔王にぶち当てる。

 だがそれでも、魔王はびくともしない。

 

 逆に、魔王が放つ闇のオーラでクッパを吹き飛ばしてしまう。

 

 

 

 

「ちくしょう──!」

「ム」

 

 とっさに、両手からあふれ出る炎の力をクッパの背中のコウラにぶち当てて、クッパの吹き飛ぶ勢いを減衰させる。

 するとクッパはそのまま機転を利かして、隙を晒すことなくスマートに着地してみせた。

 

 

 

 

 

「マリオ、今のは……」

「勘違いするなよクッパ。今はお前より、アイツの方が厄介ってだけだ」

「……ふん。その言葉、そっくりそのままキサマに返してやる」

 

 マリオとクッパ。

 普段なら絶対に相容れない存在が、ここに足並みを揃える。

 

 

 

 

「まさかまさかの共闘ってわけか」

「ルイージ」

 

 

 魔王に吹っ飛ばされたルイージの方を見やると、親指を立てるサムズアップを返してきた。

 後ろに転がっている回復ポーションの空瓶を見る限り、彼も大丈夫そうだ。

 

 

 

 これで、マリオブラザーズとクッパの共闘体制ができあがった。

 

 

 

 

 

 

 

『────』

 

 魔王はカゴに閉じ込められているピーチ姫を持ち上げ、そして同時にいつか見た青いブラックホールを作り出した。

 異世界への門だ。

 

 

 

「あいつ、何をする気だ?」

「ピーチ姫はその身に特別な魔力を持っておる。恐らく奴の狙いはそれだ」

「ん? クッパ、お前知っているのか」

「ピーチ姫本人がそう言っていた。……そもそも奴がピーチ姫をこの世界に引きずり込んだ、ともな。ワガハイ達はそれに巻き込まれただけだ」

 

 

 

 魔王が作り出した異世界への門は最初の時とは比べ物にならないほど大きくなり、クッパ城の天井をぶち破る。

 最終的に、この異世界の空そのものを覆いつくすまでに至る。

 

 いよいよもって、キノコ王国に帰るとか、ピーチ姫を助け出すとかじゃ済まない規模の話になってきた。

 あれは、あの魔王は、なんとしてでも倒さなければならない。

 でなければ、世界が滅びる。

 

 

 

 

「ワガハイを差し置いてピーチ姫を狙う者を許すわけにいかぬ。業腹だが、手を貸してもらうぞ。マリオ、ルイージ!」

「クッパにしてはいい言葉だ。さっさとあいつを倒してしまおう」

「ピーチ姫を助けたらさっきの続きだがな」

「上等だ」

 

 

 

 

 

 

 

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