・今回の話以降、ちょっと世界観が揺らぐ描写が出てくるようになります。
「やっとだな、ブラザー」
「ああ。ついに────────ついに、俺達の家が完成したぞ!」
魔王が呼び出した異世界への門から、クッパの戦艦で逃げた後。
クッパは適当なところに戦艦を停めて、そこに新たな拠点として城塞都市を築く方針を打ち出した。
戦艦はいつまでも飛べない。
だからクッパ達は補給拠点を必要とし、その結果として火山と草原地帯の境目辺りに城と街を築くことにしたのだ。
「なんか長かったなぁ。ここまでいくのに一か月ぐらいかかったような気がする」
「実際は三日ぐらいだけどな」
そういうわけで、停泊している戦艦を中心に街を築いた。
なんせすぐそばに滅んだ街があって、そこの建物やら防壁やらを修復して築いたのだ。
それを差し引いても三日でいい感じの街になる辺り、流石はクッパ軍というほかない。
もちろん、クッパと共闘することにしたマリオブラザーズもその作業を手伝った。
クッパ軍団達の寮の建設や防壁の修復、ミルク・卵などの食べ物を生み出す牛の牧場やこの世界特有の食料『三日麦』の畑の整備など、だ。
他にもクッパ軍の遠征組と一緒に街の外に出て食べ物になる魔物を狩ったり、工事に使える木材や石材を集めたりもした。
その片手間にマリオブラザーズ専用の家も建設し、ついに完成したというわけだ。
「うおー……」
「改めて入ると、すっごい新鮮」
小さな草原が広がる丘の上に建つ、煙突が特徴的な石造りの小屋。
だがその扉から入れば、ちょっと高級感がある深紅の絨毯がお出迎えしてくれる。
絨毯の上には食事ができる食卓と椅子があり、その周りにはちょっとした料理もできる暖炉・今までの冒険で得た書物などを収めた本棚がある。
一方で玄関から入って右側の階段を上った先には、二人分のベッドと文机がある寝室が広がる。
階段横にはハンマーやスーパーマントなどのアイテムの手入れができるスペースがあったり。
状況に対して結構とんでもない贅沢な家なのだが、建設に熱がこもってしまったから仕方ない。
建物自体は比較的綺麗な状態で残されていたから、超スピード勝負でドアやら窓やら壁やらを修繕した。
クッパ軍に分けてもらった家具用木材の加工も滅茶苦茶凝ったし、絨毯やベッドに敷く毛布などは冒険者ギルドで稼いだ金に物を言わせて無理やり良いものを取り寄せた。
だが、この家ができるまで適当なテントで雑魚寝するしかなかったわけだから、その反動で家が贅沢仕様になるのは仕方ないとマリオ達は思うのだ。
「やりすぎだバカども!」
「あれ、クッパ? なんでここに?」
「なんでも何も! ここの領主たるワガハイの部屋より豪華な家があったら文句の一つも出るわ!」
「そういうお前はお前で何スイッチやってんだ」
そうしているとクッパが文句を言いに入ってくる。
……のはいいのだが、いきなり暖炉前に腰掛けてスイッチ片手にくつろぎだすのはどうかと思う。
お前四章で俺達と敵対した時は滅茶苦茶シリアスな雰囲気だったのにいきなりギャグすんな。
ってツッコミしかけたのはマリオブラザーズ内だけの秘密だ。
「仕方なかろう! ○ケモンの新作を買った直後に異世界トリップしてしまったからプレイする機会がなかなかないのだ!」
「あ、ずるいぞお前! 俺達はピーチ姫を助けるまで我慢してたのに!」
「ニャオ○今頃立ってんだろうなぁ……」
「そのくせキサマらも揃ってスイッチを持参しておるではないか」
「俺のは○ービィだけどな!」
「俺のはゼル○だけどな!」
「そこは揃わんのかキサマら……」
なんか腹立つので二人してスイッチを取り出して対抗する。
異世界感が台無しになるから今までずっと黙っていたが、実は異世界トリップする時点で懐にスイッチを隠し持っていた。
だからそのまま異世界にスイッチを持ち込むことができて、ネットも何もない異世界における貴重な娯楽品として時々ゲームを堪能していたのだ。
「というかスイッチの充電はどうしてんの? 俺達はルイージのサンダーハンドでなんとかしてっけど」
「カメックの魔法で賄っている」
「カメック便利すぎね?」
「自力でやってるキサマらが言うな」
◆
翌日。
マリオ達は、この新たな拠点の中心にある『シン・クッパ城』に向かった。
そこが今のクッパ城なのだが、急ごしらえなせいで絨毯の一つもない冷たく貧相な石の砦という有り様であった。
「さて──ワガハイ直々にキサマらをここに呼んだのは、状況を再確認するためだ」
「いや『ワガハイ直々に呼んだ』って、俺達の家で一晩中スイッチでレースしてただけだろ…………悪ノリで一緒にレースした俺達が言うのもあれだけどさ」
「と、に、か、く! このシン・クッパ城と城下町の状況はかなり厳しいものがある! ……何せ、ここは『難民』を受け入れておるからな」
このシン・クッパ城の最大の特徴は、マリオブラザーズ以外にも部外者がいるという点だ。
というのも件の魔王が呼び出した異世界への門の影響で、周辺の村や街が滅んでしまったのだ。
領主が治める小国そのものが吹き飛んだケースもいくつかある。
彼らは着の身着のまま逃げ出し、故に行く宛がない。
だからこそ、クッパが彼ら難民を受け入れたのだ。
……三人でレースゲームやっといて言えるセリフではないが、これはそれほどまでの緊急事態なのである。
なんとしてでも、あの魔王を倒さねばならない。
「まずクッパ軍とキサマら二人は共にピーチ姫の保護を目的としている。……その最大の障害がピーチ姫を攫った『魔王』であり、我らはこうして共闘しておる」
「で、魔王は『異世界への門』を展開しやがって、俺達は奴に近づくことができない」
「その異世界への門に対抗するには、クッパ曰く『スターピース』である『星石』を七つ集めないといけない」
「現状は合計四つのスターピースが手元にある。……だから何としてでも残り『三つ』を集めなければならないわけだが、問題がある」
ここで何が問題なのかっていうと『タイムリミット』があるという点だ。
「なぁクッパ。その三つを集める時間──どんだけ残ってるよ?」
「無論、あの異世界への門が広がり始めるまで。カメック達が言うには『一か月』程度はあのままの見込みだ」
「つまり一か月の内に、星石を三つ集めないとってわけか」
「キサマらなら容易だろう?」
「当然だ。誰に物を言ってやがる」
残り三つの星石の捜索だが、基本は今まで通りマリオブラザーズ二人だけで行う。
なぜならクッパ軍はこのシン・クッパ城を発展・成長させなければならず、さらには受け入れた難民の世話もしなければならないからだ。
当然クッパは領主としてシン・クッパ城に常駐することとなる。
「とはいえ、だ。ワガハイの方からもできる限り支援はする……差し当たって、この資料をキサマらに提供してやる。感謝しろ」
「何々……『勇者の塔』?」
「ここ最近唐突に現れたとかいう塔だ。どうやら、かの魔王に対抗するための力が秘宝として眠っているらしい」
「魔王に対抗するための力……星石か?」
「その可能性は極めて高い。……クッパ軍の偵察部隊が、塔周辺に魔王軍が徘徊しているところを確認した」
魔王軍。
読んで字の通り魔王が率いる軍であり、要するに今回の敵だ。
今までマリオブラザーズは『ウルフリック』『ハク』『ルドラ』と三人の魔王軍幹部格と遭遇しており、故に星石捜索の障害になると確信していた。
クッパからの資料に曰く、今回はウルフリックが出張ってきているらしい。
「業腹だがワガハイの軍からは偵察部隊以上の戦力は出せん。忌々しいが、キサマらに頼るほかない……頼んだぞ」
「つまりいつも通り二人で星石をかっぱらえばいいってわけだ」
「クッパ達に気を使わなくていい分、むしろそっちの方が気軽でいいや」
「言っていろ」
そういうわけで、二人して勇者の塔へ出かけることにした。
そこが、今回の戦いの舞台だ。
→というのもいきなりクッパ様がスイッチやりだした上に、マリオブラザーズも実は持ってたってことになったためです。
(・x・)書いててマジでびっくりした。