→今回はなんとなく”とある作品”の影響・要素が強め。
・それとは別になんかブレワイの影響がめっさ強い。
→スマブラネタを多用しているし今更かな?
→実はシン・クッパ城でのマリオブラザーズの家も、ブレワイリンクの家をイメージして書いてたり……
「ここが、五つ目の星石があるっていう勇者の塔──」
「────そのふもとに広がる、キャンプ街か」
今回の星石がある勇者の塔。
そのふもとには、冒険者達が即興で築いたキャンプ街がある。
この勇者の塔には謎があり、そして攻略の難易度が高い。
だから冒険者ギルドは比較的大量の冒険者をここに派遣し、攻略のためのベースキャンプを築いた。
マリオ達がいる入り口から見れば、塔にまでまっすぐ伸びる大通りの両端に露店やらテントやらがずらりと並んでいる。
ところどころに焚火やら鍋やらがあって、それぞれの火のそばで旅人や冒険者達が談笑したり武器の手入れをしたり料理したりしている。
まさにファンタジーって感じの景色だ。
「ところで……あれ何かわかる?」
「俺にも見えるぜ……あれ魔物だ。魔物がキャンプ街にいやがる」
だが特筆すべき事柄は、そのベースキャンプになぜかゴブリンやコボルトといった魔物がいること。
冒険者に捕まった捕虜だとか、冒険者達と敵対しているとか、そういうわけではない。
さながら彼らと同じ釜の飯を食っているように、普通に共存しているのだ。
「あ」
「ウルフリック」
「──あの時ノ。ルドラ曰く、マリオとルイージだったカ」
何ならウルフリックもその場にいた。
その辺に武器を置いて、冒険者と一緒に腰掛けて談笑していた。
「あらあら、貴方達知り合いなの?」
「……そういうあんたは?」
「アタシは識せる貌のローランド。故郷じゃそれなりに顔が知れている冒険者よ。ここでは、このキャンプ街のリーダーをしているわ」
そしてウルフリックと談笑していた冒険者は、ローランドと名乗った。
ローランドっていう男のような名前の割りに女口調をしているのは……まぁ、そういうことだ。
「なぁ、ローランドさん。このキャンプ街に魔物がいるのは……」
「アタシが招いたわ」
「……なんで?」
ローランド曰くキャンプ街を築いている途中でウルフリックが魔物の軍勢を連れて現れた。
最初こそ臨戦態勢をとったローランド達だが、ウルフリックが「星石探索の邪魔をしなければ命は奪わない」と言った途端、敵ではないと察したようだ。
「要はアタシ達が星石とやらを見つけたら、彼らに譲る。その代わり彼らはこっちに危害を加えないし、何なら協力する」
「──という約束を強引に取り付けられてしまってナ。そのままなし崩し的に、ここの世話になってイル」
「やたら豪胆だなおい……」
「わかっていると思うけど、ここではウルフリック達はアタシの友よ。アタシの目が黒いうちは、荒事は許さないわ」
そういうわけで、この場においてウルフリック達と敵対することはなかった。
むしろ彼らと敵対するということは、このキャンプ街を追われることを意味する。
なんとしてでも勇者の塔から星石を奪取したいマリオブラザーズとしては、それを避けるしかないのである。
「だが、星石狙いなのはこっちも同じだ。最終的なところは相容れないぜ」
「わかってイル。だが塔内でも同士討ちはできないカラナ。……故ニ」
「どっちが先に星石を得るか、競争ってわけか」
つまりここでの勝利条件は、ウルフリック達と戦うことではなく。
ウルフリック達より先に星石を入手することだ。
「そういうことなら、こうしましょう。貴方達は揃って明日の朝に塔に入ればいい。その時はアタシ達も干渉しない──貴方達同士でやりあわない限りはね」
「なるほど、いいぜ。ちょうど情報を集めたいところでもあるし、俺達に異存はない」
「こちらもダ。明日に作戦の準備が整ウ。その提案を飲モウ」
「決まりだな」
そういうわけで、この場に限りウルフリック達と不戦協定を結ぶことにした。
なんともまぁ、不思議な縁である。
「それじゃ、日が暮れないうちに聞き込みしますか」
「RPGの定番だな。ついでになんかいい武器か道具かがあれば、買ってくかー」
◆
その日の晩。
一つのテントの中で食卓を囲んだ。
ウルフリックと一緒に。
「なぜこうなった」
「まぁそういわないで。もしかしたら貴方達同士は不倶戴天の仇同士かもしれないけど、ここではやりあえないでしょう? ……アタシがいる限り」
「確かに、ここの雰囲気を壊す気にはなれないけどさ」
「それに、お互いよくわかってないこともアル。丁度いいから、この場で情報交換してみるのも一興と思ったわけダ」
「なるほどねぇ」
ローランドが場を仕切る。
つまりローランドを仲介人としつつ、ウルフリックと情報交換をするというわけだ。
「まず、俺達から。お前らはなぜ星石を狙う?」
「単純ダ。魔王様の命である」
「そこが解せん……なんとなくの直感だが、お前とその魔王はどうにも思想が違うように見える」
「……例えバ?」
「今までの言動を見る限り、お前は結構な穏健派だ。目的さえ達したら、命を奪うことを是としない」
「けど俺達がこの間会った魔王は、そんな感じがしない。目的の為なら相手を滅ぼすことを厭わない感じなのはともかく、何か暴走している感じがするんだ」
「…………」
「ウルフリック。あんたはなぜ魔王に与する?」
ウルフリックに問う。
所詮は直感なのだが、どうにも気になって仕方ないのだ。
「かつて、魔王様に拾われた恩があるかラ」
「拾われた?」
「オレは、ゴブリン一族の中では『臆病者』とされた。……いたずらに相手を殺す一族のやり方が、オレには苛烈すぎるものに思えたからダ」
「──」
「そしてそういう手合いはゴブリン一族の内外問わず一定数いた……だが魔界では、そういう考え方は弱者のそれと一蹴されてしまってな。あまり居場所がなかっタ」
「魔王は、その考え方を一蹴しなかったと?」
マリオの解釈に対し、ウルフリックはうなづく。
「魔王様は、壊し、殺し、奪うしかない魔の在り方を憐れんでいらっしゃっタ。故に、その在り方から外れたオレや他の『臆病者』の存在に希望を見出しておられル」
「っ! それは──」
「今やオレは魔王軍幹部の一にして、所謂『臆病者』を纏める『ウルフリック隊』の隊長ダ。……ここまで優遇してもらったのダ。恩の一つは返さねばならぬダロウ」
「──だがその当の魔王は、火山で……」
「壊し、殺し、奪う。魔王様もまた、その本能から逃れられヌ。……そこに思うところがないとはいわン。それでも…………それでも、なのダ」
魔王は、超えてはいけないラインを越えた。
ウルフリックも、そこを意識している。
だからこそ彼はマリオ達と敵対するのだと、その目が物語っていた。
「なるほど……こりゃ難敵だな」
◆
『──で、そのまま仲良く食事を楽しんできたというわけか』
「おう、思ったより楽しかったぜ。機会があればお前もどうだ、クッパ?」
『遠慮しておく』
ウルフリックの話を聞いた後、こちらの情報を探り探り渡したり、ローランドが作った山菜スープを一緒に楽しんだりしてから、何事もなく別れた。
そして、なぜかカメックに改造されたスイッチを介してクッパとこうして連絡をとっている。
『ところで、それ以外に何かあるか?』
「うーん……例の塔、入り口がいくつかあるってことと、中に入ると割とランダムな構造だったり罠があったりする不思議のダンジョン仕様ってことぐらいかなぁ」
「魔王関連はあれ以上聞ける雰囲気じゃなかったし、残りは他の冒険者に聞き込みして得た情報ぐらいだ。ぶっちゃけ大したもんはない」
『なるほどな』
しいて言うならウルフリックの本名は別にあって「ウルフリック」とはコボルト一族のごく一部に認められて得た称号のようなもの、といった具合だ。
マリオ達としては興味がないこともないが、はっきりいって今後に関係する話じゃないので詳細は割愛する。
「ていうかクッパ、ウルフリック達が冒険者と共存してるなんて話なかったぞ? 偵察部隊とやらは何を見てたんだ」
『ワガハイも初耳だ。……とはいえ、奴らには無理をさせているからな。情報を抜いたらかなり前もって退くように命令しておいた』
「だから情報が断片的なのね……まぁ、無理をさせているってんならそれ以上は言わんわ」
画面越しにクッパが腕を組む。
『話を聞く限り、援軍は不要だな』
「ああ、軍団の奴らは休ませといてやれ。こっちはこっちだけで何とかなる」
『ふん、ならばさっさとスターピースを奪取して戻って来い。その頃には、別動隊が六つ目の情報を集めるだろうからな』
「おーらい」
そうしてクッパとの連絡が途絶える。
特にこれ以上共有すべき情報なんてないから、気にせず○ービィの続きをやる。
「さて、クッパの前ではああいったけど、なんとかなるかね」
「明日には明日の風が吹くさ」
「それ○ービィの座右の銘。……まぁ、そんなもんだろうけどさ」
なんとなくテントになぜかついている窓から、夜闇に染まる塔を見やる。
なぜか話に聞いていた以上の不気味さを、そこから覚えた。
◆
コケコッコー。
そんな鶏の鳴き声と共に、キャンプ街の朝が始まる。
冒険者達は一斉にテントから出てきて、それぞれの朝飯を用意し始める。
マリオ達も同様だ。
今日は、ウルフリック達との競争があるのだ。
しっかり食わねばならん。
「ここが俺達の入り口か」
「ウルフリック達はここの反対側から入る──あんまり鉢合わせしないようにっていう措置だと。もし途中で鉢合わせしても戦えないけどね」
「とにかく競争に集中しろってことね、上等だ」
食事を終えたら、塔に突撃だ。
早速入り口に赴き、その扉を開いて中に入る。
「うぉっ?!」
「扉が、閉まった……?」
「後戻りはできねぇってわけか」
その瞬間、扉が勢いよく閉まる。
昨日の聞き込みで色々聞いていたが、まさかここで入ることしかできない一方通行の扉に当たるとは思わなかった。
撤退する時や帰る時は別の出入り口を探すしかない。
「……なぁ、ブラザー。なんか嫌な予感がする」
「……奇遇だな、俺もだ」
かと思えば、突然周りの壁が動き出した。
動いた壁の中には、おびただしい数の人骨が飛び出してくる。
所謂スケルトンだ。
「スケルトンか。ジャンプやファイアボールとかは効かなさそうだ」
「ハンマーならワンチャンあるかもだが、こんな数は相手してらんねぇ。逃げるぞ!」
「おう!」
とりあえず飛び上がるようにその場から逃げ出す。
すると後ろにどんどんスケルトンの大群が追いかけてくるのがびりびりと伝わってくる。
『────』
「げぇ?! こいつ砂漠荒野の奴と同じ鎧野郎?!」
「この状況でボス戦はごめんだ! あっちの方へ逃げるぞ!」
今度は鎧姿のゴーレムが出現した。
いつかの個体と同じように大剣を振るってきて、とてもおっかない。
だから足をぐるぐる回して逃げ回る。
「うぎゃー?! これ、ドッスンだー?!」
「一体や二体どころじゃねぇ……真下を一気に駆け抜けるしかねぇか!」
するや否や、次はドッスン軍団が現れた。
本来はクッパ軍の一員である彼らがなぜここにいてマリオ達と敵対しているかはわからんが、四の五の言ってられない。
すぐさま真下を駆け抜けて、どんどん押しつぶそうと降りてくるドッスン軍団から逃げていく。
「くそ、しつこい奴らだ……!」
「スケルトン連中はドッスン軍団に潰されてんのに、鎧野郎はどこまでも来るもんな…………ん?!」
「っ! まずい、罠だ────っ?!」
そうして逃げた先で、トラップに引っ掛かる。
トラップを踏んだ瞬間その場の地面が一気に押し上がり、マリオブラザーズはかなり上の方にまで飛び上がってしまった。
「やべぇ、このままじゃ地面にぶつかってぺしゃんこだ……!」
「ルイージ、俺に掴まれ!」
だがそこでマリオが機転を利かし、懐からスーパーマントを取り出してムササビのように展開。
すると落下速度が目に見えて軽減され、安全に横にあった地面に着地することができた。
ピンチから一転、一気に塔の上層まで登ることができたわけだ。
「やれやれ、助かったぜブラザー」
「構わんさ。むしろトラップサマサマだ。これでウルフリック達より先に──」
「ム」
「──いやいんのかよ!」
かと思えば、その場にウルフリックが現れた。
「うームゥ。部下達に肩車させて上層までの梯子を作り、一気に登る作戦だったのだガ……まさか先を越されるトハ」
「いやずりーなおい!」
「つーか滅茶苦茶過ぎんぞその作戦……」
「一応下の方には力自慢の種族にやらせていル。梯子の重みで部下がつぶれてしまうようなヘマなどセン」
「いやそういう問題じゃなくてだな……」
ともかく、ここから星石があるだろう頂上まであと少し。
この状況なら、単純なかけっこをするしかない。
「ともあれ、急グ!」
「悪いな、俺達も譲れねぇんだ! 走るぞルイージ!」
「おうさ!」
三人そろって、弾かれたかのようにその場から駆け出す。
「あれハ……」
「またスケルトンかよ……!」
「仕方ねぇ、そっちの方面は任せた!」
「いいダロウ……だからといってお前ラを待ちはしないガナ!」
その道中でスケルトンが出現し、素早くその場で共闘する。
向かって右方向に出たスケルトンを、ウルフリックの炎の斧が薙ぎ払い。
向かって左方向に出たスケルトンは、マリオの水属性ハンマーが薙ぎ払う。
ルイージは念のため魔力温存だ。
「っと、こんなもんか」
「っ! まずい、ウルフリックに先を越された!」
「何?! あいつちゃっかり……!」
「ククク、すまんナ!」
そうして周りのスケルトンを吹っ飛ばした後。
ウルフリックはしれっと抜け駆けしてやがった。
確かに「お前らを待ちはしない」とは言っていたが、これはまずい。
「ブラザー! スイングブロスだ!」
「っ! おう!」
そこで機転を利かしたのはルイージだ。
スイングブロスとは、本来マリオがルイージを振り回し、その遠心力を利用して一気にルイージを突撃させるブラザーアタックだ。
だが今回はルイージがマリオを振り回し、その勢いで一気にマリオを前方に飛ばす。
「お先に!」
「ナニ?!」
ルイージに飛ばしてもらったマリオは、駆けていたウルフリックを軽々抜き去り、そのまま前方にある扉にライダーキックをかます。
すると扉は勢いで吹っ飛び、そのままマリオは扉の向こうにあった星石をしっかり手に取ってから着地。
五つ目の星石だ。
「いよっしゃ! 星石ゲットだぜ!」
「ふぅ、本当にあったとはな。……ともあれひと段落だ」
「……ヌゥ」
星石を入手すると同時にウルフリックはその場で呆然とし、代わりにルイージが部屋に入ってきてしれっとハイタッチする。
それから、ショックから立ち直ったウルフリックが遅れて部屋に入ってきて、けれども名残惜しそうに星石を睨んでくる。
「さて、どうする? 星石はこの手にあるわけだが」
「業腹だが、仕方ナイ。オレはここから手を引ク」
が、すぐにウルフリックは負けを宣言した。
「おろ? てっきり奪いに来るかと思ったのに……」
「ローランドとの約束を破るつもりはナイ。それに、これは同条件のフェアな勝負だっタ。それに負けたオレが悪イ」
「そ、そっか。そりゃよかった」
ちょっと拍子抜けするところはあるが、これで話は進んだ。
ウルフリックの律義さに感心しつつ、帰路に向かう。
『素晴らしい』
そこに、第三者の声が響くまでは。
「誰だ!」
『君は素晴らしい戦士だよ、新しい『勇者』に相応しい』
「んあ? この声どっから来てるんだ?」
周りを見渡す。
これは明らかにウルフリックとは別の声だ。
だが、どれだけ周りを見てもウルフリック以外の人物は見当たらない。
『勇者だよ。この世界には勇者が要る。……魔王を倒すための、ね?』
「この声、まさか塔そのものが話しかけてるのか……?」
ならば、考えられるのはただの一つに絞られる。
先出しの悪。
後出しの善。
それは、いつかどこかで否定されたもの。