ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~   作:ノスフェラトゥ

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episode:2

校門をくぐって、古城と蓮夜は雪菜と凪沙と別れた。中等部と高等部の校舎は離れているからだ。

 

「おはよ、古城に蓮夜。それに珍しいわね、古城が遅刻しないで来るなんて」

 

靴箱の前で浅葱が居た。なんか大きなスポーツバッグが側にある。

 

「浅葱?なんだ、その荷物?」

 

「随分と大きなバッグだな」

 

古城は何気なく訊いてみた。蓮夜も疑問に思い、古城と一緒に聞く。

浅葱はニヤリと笑い、

 

「ちょうどいいところに来てもらっちゃって、悪いわね。意外に重くて面倒だったのよ」

 

古城にバッグを渡し、靴を履き替える。古城がなにか言う前に浅葱が言葉を被せる。

 

「やー、ホント助かるわ。ロッカーの前に置いといてくれたらいいからさ」

 

一方的に指示を出した。浅葱に向かっての反抗は無理だと悟り、今度は蓮夜に矛先が向いた。

 

「蓮夜、お前も手伝ってくれ」

 

「いやいや、頼まれたのは古城だろ?俺は持たないぞ」

 

「そうよ、あんたが一人で教室まで運ぶの。蓮夜に手伝ってもらおうとしない」

 

蓮夜は断り、浅葱の言葉で撃沈した。蓮夜はそんな喜怒哀楽が激しい古城の顔を見て笑っている。

結局、古城一人で荷物を持ち、教室に向かって歩く。

 

「それでアンタ達は球技大会何に出んの?」

 

「さあな、築島にはなるべく楽な競技にしてくれって頼んである」

 

「俺はどうせサボるから不戦敗でいいものって言ってあるな」

 

「アンタら本当にやる気無いわね。古城みたいな体育会系はこういう時にしか存在価値無いのに、それに蓮夜なんてスポーツ万能だからなんでも出来るじゃない。前だって運動部からの勧誘が凄かったし」

 

「別に運動が好きってわけじゃないんだよなぁ……」

 

浅葱の言葉に蓮夜は反論する。

蓮夜は吸血鬼だから他の人間とは身体能力が違いすぎる。だからどうしても差が生まれてしまう。それに登録魔族(フリークス)ではないからバレたら那月にまで被害が及ぶ。

教室に入ると矢瀬と築島がこっちを見て微笑んでいる―――主に古城と浅葱を見て。

 

「このタイミングで一緒に登校とはやっぱり運命だったな」

 

「……なに言ってんの、あんた?年上の彼女に振られて錯乱した?」

 

「錯乱してねぇし、振られてもねぇよ、縁起でもねぇ!あれだ、あれ!」

 

そんな事を言っている矢瀬。黒板を見ると理由がわかった。そう思っていると浅葱が前に歩き出した。

 

「なんで私が古城と組まなきゃならないのよ?」

 

「今年からそういう規制になったの。シングルが廃止で、ミックスダブルスの選手ペアを増やすように。あ、現役のバド部の子は出場禁止ね」

 

「だからなんで私と古城のペア!?」

 

「浅葱、前から好きだって言ってたじゃない」

 

「は、はい!?あ、あ、あたしがいつそんなこと……!?」

 

「バドミントンの話よ」

 

「へ?」

 

「古城君も別にいいわよね?」

 

「まあ楽そうっちゃ楽そうな競技だしな」

 

古城が浅葱とペアを組んで出場することになった。

 

「俺は……バスケか。メンドイな」

 

「いいじゃねぇか。蓮夜はスポーツ万能だしよ」

 

蓮夜の呟きに矢瀬が反応する。確かに矢瀬の言う通りだが、基本人前で運動するのは好きじゃない。基本、戦闘しかやってこなかったためか、思考回路が時々おかしな方向に飛んでしまうから運動は控えている。

 

「まぁ、やれるだけ頑張るか」

 

内心ではサボる気満々だが、一応やる気があるように口には出しておく。

 

 

 

          ―○●―

 

 

 

「……メンドクサイな」

 

蓮夜の球技はバスケだ。結局やる気は無し。吸血鬼でも真祖に近い蓮夜の身体能力は、異常だからこの程度は遊びにしか見えない。一応ベンチに入っているが、サボる気は満々だ。

そんな時、呪力を感知した。

 

「……誰だ?こんな真昼間に学園内で呪力を使う輩は」

 

蓮夜は若干不機嫌になりながらも呪力を感知した場所に向かう。そこには数体の鋼鉄のライオンが古城を囲んでいた。

 

「古城、ピンチっぽいな」

 

蓮夜も一応駆け足で古城に向かう。

 

「―――先輩!伏せて!」

 

聞いた事ある少女の声が聞こえたと思ったら、一体のライオンが銀の槍により、貫かれる。

槍を投げて古城を救ったのは、いつもの中等部の制服ではなく、白地に青のラインが入ったチアの衣装を着た雪菜だ。

もう一体いたがそれは駆け寄ってきた蓮夜の魔力を纏った蹴りにより粉砕された。

 

「姫柊!?それに蓮夜まで!」

 

「無事ですか、先輩?」

 

「悪い、助かった。けど、姫柊に蓮夜はどうしてここに?」

 

古城は立ち上がって、訊いてくる。

 

「俺はこっちから呪力が感知されたから向かって来ただけ」

 

蓮夜は簡単に説明する。実際そうだったし、こことバスケ場までは近かったから案外早く辿り着いた。

 

「先輩を監視していた私の式神が、攻撃的な呪力の存在を知らせて来たので、気になって来てみたのですが……」

 

「は?監視?式神ってなんだそれ?」

 

古城から視線を逸らし、雪菜がぎく、ぎく、と肩を震わせていた。

俯く彼女の横顔を古城が無言でじっと見つめると、わざと咳払いをし、開き直ったように胸を張る。

 

「―――任務ですから!」

 

「ちょっと待てェ!監視ってなんだ監視って!?」

 

古城は今までもずっと監視されていた事実に頭をかきむしりながら怒鳴る。蓮夜はただ苦笑するだけ。

 

「先輩を襲った式神は先輩を狙っていたというよりも……」

 

雪菜は呟きながらさっき撃退した式神の欠片を拾い、古城と蓮夜の前まで持ってくる。

 

「アルミ箔か。さっきの式神の正体というわけか」

 

蓮夜の言葉に雪菜が頷いた。

 

「この式神は本来、遠方にいる相手に書状などを送り届けるためのもので、こんなに攻撃的な術では無いはずですが……」

 

「そうか」

 

古城はどうやら詳しい理屈は分からなかったらしく、投げやりに頷いた。その時、下校中とおぼしき女子生徒がこっちを見ている。

 

「すみません、先輩。雪霞狼(せっかろう)を見られました。すぐに捕まえて記憶消去の処置を―――」

 

「いやいや、そんなことをしなくても大丈夫だから!心配要らないって!」

 

「どうしてそんなことが言い切れるんです!?」

 

雪菜は余裕の無い表情で言う。どうやら相当取り乱しているようだから蓮夜が口を挟む。

 

「古城の言う通りだ。今の姫柊はチアの服でそんな槍を振り回していたら、ただの痛いコスプレ趣味の女子だと思われているだけだ」

 

「う……ぐ……」

 

雪菜は自分の服装を見て、反論出来ずに呻いている。

 

「なあ。姫柊の衣装ってもしかして―――」

 

「衣装合わせの途中で抜けてきたんです。あんまりじろじろ見ないでください」

 

プリーツスカートの裾を押さえながら雪菜は、上目遣いで古城を睨む。

 

「いやでもスパッツ穿いてんじゃん」

 

「それでも先輩は見ては駄目です。目つきがいやらしいです」

 

「失礼だな、おい」

 

「なに馬鹿なことをやっている……」

 

蓮夜が古城と雪菜のやり取りに呆れて言う。

その時、古城がなんか見つけたようで、破壊されたベンチの残骸から拾い上げた。

 

「さっきの式神が手紙を届ける術なら、こいつは俺宛ってことでいいのかな」

 

古城が拾ったのは一通の手紙だった。金色の箔押しが施された豪華な封筒を、銀色の封蝋が閉じている。

そこに刻まれたスタンプを見て、雪菜が表情を強張らせ、蓮夜は凝視していた。

 

「この刻印……まさか……」

 

「姫柊?」

 

動揺している雪菜とその刻印を見て額に手を当てている蓮夜が居た。

蓮夜はこの刻印を知っている。出来れば関わりたくはないが、古城の事を知っているってことは恐らく自分の居場所も知っているだろう、と思った。

 

「―――古城?」

 

その時、誰かの声が蓮夜たちの後ろで聞こえた。

 

「こんなところでなに騒いでんのよ。あんたが何時までも練習に来ないから、捜しに来てやったのよまったくあたしをあんなカップル時空に置き去りにするとはいい度胸……」

 

「あ、浅葱?」

 

浅葱がバドミントンのユニフォームを着て無表情のまま、立ち尽くして古城とyyキナを眺めている。

 

「……その手紙、なに?」

 

「え?」

 

彼女に訊かれて蓮夜この状況に気付いた。

放課後の体育館裏に男子二人に女子一人。古城の手に手紙があり、正面には雪菜。蓮夜はその光景を少し離れた所で立っている。

丸で雪菜が古城にラブレターを渡す為に、蓮夜がこの場をセッティングしたように見える。

 

―――明らかに告白の場面だ。

 

「もしかして、邪魔しちゃった?」

 

浅葱はぎこちない笑みを浮かべ訊く。蓮夜は浅葱が古城に気があるのが知っているからこの場面は衝撃だろうな、と軽く現実逃避していた。

 

「いや、違う。俺が姫柊とここで会ったのは予期せぬ事故というか緊急事態というか、決してこの手紙を俺たちが渡したり受け取ったりしてたわけじゃなくて―――」

 

古城と姫柊が一生懸命説得しようとするが、逆にあの二人の息が合い過ぎて説得力が皆無で、言い訳をしているように見えた。っていうか何故口合わせもしていないのに、ああも見事に息が合うんだろうか。

 

「別になんでもいいわよ。あたしには関係ないことだしさ」

 

そう言って古城ににこやかに笑ったが、浅葱らしくない笑みだった。恐らく古城も分かっているだろうが、明らかにショックを受けていた。

浅葱はそのまま背中を向けた。

 

「あたし、帰る」

 

「あ、おい、浅葱……」

 

古城の制止の言葉をかけるが、浅葱はそのままこの場を去った。

 

「はぁ……やってしまったな」

 

蓮夜は天を仰ぎ、そう呟いた。

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