ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~ 作:ノスフェラトゥ
「―――"ナラクヴェーラ"。神々の古代兵器ね」
蓮夜は那月から連絡がきて、教えられた。
黒死皇派の賛同者がカノウ・アルケミカル・インダストリー社開発部にいたらしく、古代遺跡から出土した石版の文字を解読していたらしい。
ほとんどが解読不可能だったが、僅かな単語は解読に成功していたらしく、その単語に"ナラクヴェーラ"の文字があったらしい。
「まさか、あんな物を持ち出してくるとはな。……絃神島大丈夫か?」
そんなことを考えながらマンションに帰ってくると蓮夜たちが住んでいる部屋のドアに一通の封筒が挟まっていた。古城と同じ封筒が。
「……やっぱり俺の所にもきていたか」
蓮夜は鍵を開け、自室に荷物を置き、差出人の名前を見ると、アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーと書かれていて、宛名に縫月蓮夜と書かれていた。
「ヴァトラー、か。まさか、住んでいる場所まで知っているとは……あの戦闘狂め」
蓮夜はため息を吐いて封筒を開け、中を読む。
簡単に言えば、豪華客船のパーティーの招待状だ。あと女性同伴と書かれている。
「女性同伴って……どうしようか。那月は仕事で忙しいし最近後見人として保護したアスタルテも今は那月と一緒で……あれ?いなくね?」
無理を行けば凪沙ともう一人の中等部の女子生徒が該当するが、いくら何でも此方の事情に巻き込むのは気が引ける。
前提条件から行くことが無理だと思った矢先に、備え付き電話が鳴り出した。
「……もしもし、縫月です」
『縫月蓮夜様ですか?私はアルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーの代理の者であります』
「そうか。用があるなら手短に言ってくれ」
『では、本日の夜にパーティーがあるのですが、女性の同伴を代役で私めが務めさせてもらいますがよろしいですか?』
「ああ、お願いしたい。あいつにも訊きたい事があるからな」
蓮夜はそう言うと電話越しの女性は21:00頃こちらに迎えに行くと言われたので久しぶりにスーツに着替えるか、と呟いてクローゼットからスーツを取り出した。
蓮夜は時間通りにマンションの前で待っていると、黒塗りのベンツが来て、目の前で止まった。
その ベンツに近付いていくと、ドアが開き、チャイナドレス風の衣装を着たポニテールの女性が出てきた。
「初めまして。アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーの監視役である獅子王機関"舞威媛"煌坂紗矢華と申します」
「知っているとは思うが、俺は縫月蓮夜だ」
「分かりました。では縫月様、どうぞこちらに」
そう言って紗矢華に促されたので蓮夜は車の中に入り、紗矢華も入ると発進した。
「はぁ……あの野郎。まさか俺の居場所がバレるとは……」
蓮夜の愚痴を隣で聞いていた紗矢華はヴァトラーとはそういう縁なのか訊くことにした。
「あの……アルデアル公とはどんな関係で?」
「簡単なことだ。ただ殺し合った仲というだけだよ」
「……は?」
紗矢華はあっけらかんとして言う蓮夜の言葉を疑った。そしてさらに疑う言葉が出てくることになる。
「200年くらい前に殺し合ってから随分と経つな」
「え?200年!?」
紗矢華はまたもや驚いて疑問に思う。彼はいったい何者なんだろう、と。蓮夜は喋り過ぎたかな?と思い話題を変えることにした。
「獅子王機関と言えば、学校の後輩に姫柊っていう剣巫がいるんだが―――」
「雪菜のことを知っているんですか!?」
「あ、ああ。一応後輩だし。姫柊とはどんな関係なんだ?」
あまり食い付きっぷりに蓮夜は若干引きながら訊いてみた。
「雪菜とは高神の杜ではルームメイトだったんです。性格はいいし、何よりあの素直さが可愛いんです。それに―――」
どうやらある意味の地雷だったようで、目的地に着くまで紗矢華から雪菜のいい所やら様々なことを教えてもらう羽目になった。匂いについても語られ、変態の領域に足を踏み入れている紗矢華に戦慄した蓮夜であった。
―○●―
「
「それについては激しく同意するわ。沈まなければいいけど……」
豪華客船の前まで来て。二人は話している。雪菜について語る紗矢華とはお互いに敬語は無しになった。紗矢華は男と話すのは嫌悪感を与えるが、何故か蓮夜は平気という紗矢華本人も首を傾げていた。
「そういや、もう古城だちは来ているのか?」
「……ええ、来ているわよ」
古城の名前を出した途端、苦虫を噛んだような顔になった。どうやら相当嫌われているらしい。まぁ、あそこまでの男嫌いなら判らなくもないが……。
「アルデアル公の場所まで案内するからついて来て」
紗矢華を先頭にオシアナス・グレイヴの中に入って行く。
流石は"旧き世代"の吸血鬼が来日した為か、この場にいる奴らは皆ニュースなどで見たことがある人物だ。大物政治家や経済界の重鎮、政府や絃神市の要人たちなどが居る。
「アイツは……アッパーデッキか」
「分かるの?そういうこと」
「一応俺は結構前の時期から生きている。魔力感知など造作も無い」
蓮夜たちはアッパーデッキに向かって歩き、目の前に古城と雪菜がいた。丁度二人は手を繋ごうとしている瞬間だ。
それを見た紗矢華は、テーブルにある銀色のフォークを殺気を放ちながら古城に向かって投げる。
「―――せいっ!」
「うおっ!?」
古城の頭があった場所をフォークが通過していく。その行動に呆れて見ている蓮夜。マジで殺そうとしている紗矢華は、別に何でもないように振舞っている。
「失礼。つい、手が滑ってしまったわ」
「どう手が滑ったら、フォークを他人に向かって投げつけるのか、ぜひ教えて欲しいんだが……てか、なんか今、掛け声っぽいものも叫んでいたよな!?」
「あなたが、下劣な性欲を剥き出しにした手で雪菜に触れようとするからよ、暁古城」
風向きが怪しくなってきたから蓮夜は紗矢華の後ろまで行き、頭をチョップした。
「あたっ!?」
「なにをやっている。相手は一応招待者だぞ」
魔力を乗せていたので、痛かったのだろう。紗矢華は涙目で蓮夜を睨む。涙目で睨まれても全然怖くは無い。寧ろそこら辺の変態なら、美少女、涙目、上目遣いはご褒美と感じるだろう。
「蓮夜!?お前も来ていたのか?」
「ああ、俺も招待されたよ……メンドクサイ」
本当に面倒だったのか、ため息を吐く。そんな蓮夜に古城は苦笑し、紗矢華は未だに古城を睨んでいる。カオスだ。
「―――紗矢華さん!?」
「雪菜!」
雪菜は呆然としながら紗矢華の名前を発し、紗矢華は満面の笑みで雪菜に抱きついた。本当に仲が良いんだなぁ、と思いながら蓮夜は二人を見る。
古城は二人が知り合いな事に驚いている。
「久しぶりね、雪菜。元気だった!?」
「は、はい」
突然の再開に雪菜が戸惑っていたが、そんなの関係無しに紗矢華は首筋にぐりぐり押し付け、若干危ない言葉を口走っていたから再び脳天にチョップをかました。
「あいたっ!?」
「少しは落ち着け、アホ。話が進まん」
「うぅ、縫月!もう少し優しくしてよ!それ以前に魔力を籠めた一撃痛いんだからね!」
古城は紗矢華が誰か雪菜に訊き、紗矢華が古城を罵倒する、そして古城もむきになる、という中々話が進まない展開になっている。紗矢華は雪菜が絡むと面倒になるのが分かった。
「もういいや。だったらさっさと案内しろよ」
「言われなくても連れて行ってあげるわよ。だからさっさと死んでちょうだい」
「死ぬかっ!」
「ああ、確かに第四真祖はほぼ死なないな」
「縫月先輩。そこは真面目に返さなくても……」
紗矢華と古城の口喧嘩を聞き、蓮夜は稀に起こる天然を発揮してしまった。横で雪菜が蓮夜に苦笑していたが。
そんな中、蓮夜は紗矢華に古城が雪菜の血を吸ったと伝えればどんなことになるのか知りたかった。絶対に紗矢華は古城を殺しに行きそうだな、と古城が聞いたら怒りそうなことを考えていた。
四人は上甲板に出る。広大なデッキに上には純白のコートを纏った金髪碧眼の青年が居た。青年は口角を上げると、同時に蓮夜と古城に向けて炎の蛇と冷気を纏った蛇、二体の眷獣を放つ。
「はぁ―――"
「ぐお……っ……!」
蓮夜は自身に迫ってきた青い蛇を"
「あっ……ぶねぇ!なんだこれっ!?」
「全く……手洗い歓迎だ」
主に古城の所為で焼け焦げた看板と青年を見ながら、蓮夜は眷獣を戻した。青年は蓮夜たちに防がれたことを喜んでいる。
「いやいや、お見事。この程度では傷つけることすら叶わないねェ」
青年は古城の目の前にきて片膝を付き、恭しい貴族の礼をとった。
「御身の武威を検するがごとき非礼な振る舞い、衷心よりお詫び申し奉る。我が名はディミトリエ・ヴァトラー、我らが真祖"
「あんたが、ディミトリエ・ヴァトラー……?俺を呼びつけた張本人?」
古城はヴァトラーにそう尋ねた。
「初めまして、と言っておこうか、暁古城。いや、"
「…………はぁ」
ヴァトラーは愛しげに見つめ、迎え入れんとするかのように両手を広げる。その行為に紗矢華は首を振り、雪菜は唖然とする。
蓮夜は、今日何度目か判らないため息を吐いている。蓮夜にとって苦労の耐えない日らしい。
「……はい?」
古城も雪菜と同様、唖然とする。
「ヴァトラー……古城の処理能力が追いついていない」
「ふふ、それもそうだネ」
ヴァトラーは今度はこちらに向かって古城の時と同様に片膝を付ける。
「先ほどの非礼をお詫び申し奉る。再びお目に掛かることが出来、光栄の極み―――"
ヴァトラーの言葉、"
蓮夜は自分御正体をあっさりとバラされ、頭を抱える。