ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~   作:ノスフェラトゥ

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episode:5

蓮夜は古城たちが出た後、紅茶を一杯飲んだら那月の執務室から出て行った。廊下を歩き、教室に向かっている時、魔力の反応を感知した。

 

「うん?……何が起こっている?」

 

突如、屋上の方から魔力が膨れ上がったのを感知した。この魔力は明らかに古城だ。だが、どんどん膨れ上がっていくのを感じる。この場でこの時間で魔力を使う理由など存在しない。

 

「……まさか、暴走か!?」

 

第四真祖になってから日が浅く、しかも眷獣をやっと一体従えたのはつい先日だ。しかも他の眷獣はまだ、古城に従っていない。だから敵対意思を持ち、古城を傷つければすぐに暴走してしまうのだ。

蓮夜はこりゃヤバイと思い、一部を霧にして外から屋上にへと急いだ。

 

「って、本当に危機一髪だな!?」

 

屋上では古城が眷獣を暴走させ紗矢華が古城の近くに居て、しかも浅葱が気絶している。

状況が全く分からな―――くもないこの状況にため息を吐きながらも屋上に降り立つ。

降り立ったのと同時に、左手を霧化させ、側で気絶している浅葱を霧の結界で包み込み、この衝撃波と瓦礫から身を守らせる。

 

「蓮夜!?」

 

「ああ、そうだよ!つーか、何でこんな所で眷獣を暴走させているんだよ!……まあ、大体分かるけど」

 

どうせ、紗矢華が雪菜の血を吸った古城が許せなくなり、あの銀の剣で殺そうとした時、眷獣が暴走した。その時に浅葱も巻き込まれたのだろう。紗矢華の雪菜に対するあまりの溺愛っぷりに蓮夜は額に手を当て、呆れている。

 

「そ、それは―――」

 

その刹那、キンッ、と金属が擦れ合うような甲高い音が鳴り響き、小柄な人影が古城の真上から舞い降りた。

 

「―――獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る!」

 

屋上に舞い降りたのは、雪霞狼を持った雪菜であった。彼女は槍を振りかぶると、崩壊する屋上へと穂先を突き立てた。

 

「雪霞の神狼、千剣破の響きをもって楯と成し、兇変災禍を祓い給え!」

 

ありとあらゆる結界を切り裂き。真祖の魔力をも無効化する獅子王機関の兵器、雪霞狼の輝きである。

それにより、古城の魔力の放出も収まり、覚醒間際の眷獣が引き起こした衝撃波や大気のうねりも消えた。

 

「二人共、こんなところで何をやっているんです?」

 

一際低い声で雪菜は古城と紗矢華の眼前に"雪霞狼(せっかろう)"を突き立てる。

 

「何があったのか、大体の事情は想像出来ますけど―――紗矢華さん」

 

「は、はい」

 

「第四真祖の監視は、私の任務です。それを妨害する事が紗矢華さんの望みですか?そんなにわたしが信用出来ませんか?」

 

紗矢華は怯えた小猫のように背中を震わせている。果たしてその震えは雪菜に嫌われるかもしれない恐怖からなのか、単純に雪菜が怖いだけなのか分からない。

 

「それと―――蓮夜さん、どうもありがとうございます。藍羽先輩を守ってくださって」

 

「当たり前のことだ。コイツは俺の友人だからほっとけるわけがない」

 

蓮夜は肩を竦めて言う。実際蓮夜が来ていなかったら浅葱は大変な目に合っていた可能性がある。

 

「雪菜ちゃん!なんか凄い勢いで飛び出していったけど大丈夫?」

 

聞き慣れた凪沙の声が屋上の扉から聞こえる。どうやら魔力を感知した雪菜を追ってきたようだ。

 

「なにがあったの。わっ、なにこれ。なんで屋上が壊れているの!?って浅葱ちゃん!?怪我してる!?どうしよう!?」

 

わたわたしている凪沙に蓮夜はため息を吐く。

 

「落ち着け、凪沙。深呼吸だ」

 

「う、うん。すぅー……はぁー……すぅー……はぁー、よし!」

 

蓮夜に促され、落ち着かせるように凪沙は深呼吸をした。

蓮夜や古城が浅葱を手当てするわけにはいかないから、凪沙と雪菜が連れていくことになった。

 

 

 

          ―○●―

 

 

 

古城と紗矢華は雪菜に反省するように言い渡され、屋上で座っている。蓮夜は、特にすることも無かったので、このまま教室に向かおうとするが、止めて校舎を歩き回る。サボリのような気もするが、先ほどの眷獣暴走の際に校舎が壊れ、授業は一時的に中止となっている。

あの二人は険悪の仲だが、流石にさっきのような事態には発展しないと思っている。次暴走したら、絶対に校舎が壊れると予想し、校舎が壊れた時の那月の怒りが頂点に達しそうだ。

その時、窓から一瞬強烈な閃光が輝いた。

 

「なんだ!?」

 

閃光の方角を見ると、まさにヘリが黒煙を上げて墜落している最中だ。ヘリが落ちる日常など、この島には存在しない。

 

「まさか……黒死皇派か!面倒な!」

 

ヘリの墜落を見ていたら、血の臭いが校舎に漂って蓮夜の所まできた。

 

「これは血の臭い……この臭いは、アスタルテか!?」

 

面倒事などんどん舞い降りてくるのに嫌気を差しながら、蓮夜は急いで階段を駆け降り保健室のドアを開けた。

そこには、エプロンドレスを鮮血で濡らして横たわっているアスタルテが居た。

 

「アスタルテ!大丈夫か!?」

 

蓮夜はアスタルテを抱き起こす。身体には銃痕が残っており、凄惨な傷跡だった。そこで、異常を察知したのか紗矢華と古城も保健室にやってきた。

紗矢華は蓮夜が抱いているアスタルテの所まで寄ってきた。

 

「この傷……銃創!?一体何があったの!?」

 

「知らん。俺が来たときには既にこの状況だった」

 

アスタルテは、かろうじて意識があったらしく、弱々しく口を開いた。

 

「―――報告します、マスター。現在時刻から二十五分十三秒前、クリストフ・ガルドシュと名乗る人物が本校内に出現。藍羽浅葱、暁凪沙、姫柊雪菜の三名を連れ去りました」

 

「な……!?」

 

アスタルテの報告に古城は絶句し、蓮夜は眉を顰める。

 

「彼らの行き先は不明。謝罪します……私は彼女たちを守れなか……った……」

 

その言葉を最後に、彼女の喉から、ごぼ、と大量の血塊がこぼれ、気を失った。

 

「煌坂、アスタルテの止血をお願いできるか?」

 

「ええ、任せておきなさい」

 

蓮夜はアスタルテを無事なベッドの上に寝かせて紗矢華が止血を始めた。

その間に何故浅葱たちを連れていったのか思考を巡らせる。凪沙は接点が完全に無いから除外。雪菜に関しても凪沙と同じく接点が無い。なら標的は自然と浅葱となる。

 

「古城、浅葱は"ナラクヴェーラ"、"黒死皇派"、"クリストフ・ガルドシュ"のどれかを知っていたか?」

 

「浅葱が、そんなはず―――いや、確か"ナラクヴェーラ"という単語に反応していたような」

 

「……なるほどな」

 

浅葱は蓮夜も良く知っている。ハッキングやソフト関係では天才だ。そして、彼女の暗号破り(パスワード・クラック)は古城もその実力を知っている。もし、その能力を使って石版を解読してナラクヴェーラを起動させるとしたら―――

 

「……最悪だな」

 

ナラクヴェーラが起動して、絃神島が沈むイメージをしてしまい、蓮夜は出来る限りの事をしようと決心した。

 

 

 

          ―○●―

 

 

 

絃神島を構成している東西南北、四基の超大型浮体式構造物(ギガフロート)だが、島の周囲にはその他にも細々とした拡張ユニットが多く存在している。そして今、蓮夜たちは絃神島十三号増設人工島(サブフロート)に訪れてきた。

アスタルテの治療が終わり、その途中でも一時的に意識が戻り、浅葱がちが居るであろう場所のヒントを教えてくれた。

近くに寄れば、断続的に爆発音が聞こえ、銃撃戦も続いている。

 

「で、どうやって行くんだ古城。此処まできたのはいいが、正面は普通に特区警備隊(アイランド・ガード)が居て行けないぞ」

 

「じゃあ、あそこからはどうだ」

 

古城が指を差した先にあるのは、絃神島と増設施設との間―――目測で約八メートルほど―――を差していた。どうやら飛び越えるようだ。

 

「はぁ!?あんなところ無理よ!真祖ならもっとマシな方法は無いの!?」

 

「俺は真祖になったばっかだし……」

 

「俺の眷獣は殆どが破壊に適している、とだけ言っておく」

 

霧の異空間に入り込み、蓮夜が渡った時に開放すれば問題ないが蓮夜はやりたくないので却下。

 

「なによ……それ」

 

紗矢華は呆れて落ち込んでいる。別にない訳ではないが、大きいから的になってしまう。

古城は蓮夜に目配せをし、蓮夜もそれに頷く。

 

「悪いな、ちょっと動くなよ」

 

「え、ちょっと……ひゃっ!?」

 

古城にお姫さま抱っこされた紗矢華は可愛らしい悲鳴を上げ、全身を硬直させた。

蓮夜は吸血鬼の力を解放し、跳び乗る。古城も同じく跳んで来たが紗矢華が抱えている為かなりギリギリになってしまった。

 

「な、な、な……なんてことしてくれるのよ!」

 

見事渡った事にほっ、とした古城だが、突然古城の中で紗矢華が暴れ出した。

 

「渡れたんなら文句ねーだろ」

 

「ノーカウント!こんなのノーカウントだからね!?」

 

訳の分からないことを口走りながら古城を殴る。しまいには剣を振り回して危なっかしいことこの上ない。

蓮夜一人ならこんな風にこっそりと侵入するのではなく、正面から堂々と侵入し、歯向かってくる者は殺し、自分の"軍勢(レギオン)"に加える。そんな非情なことをやろうとしたが、二人がいるので自重した。

別に今血を吸わなくてもいいが、未だに本調子ではないから手っ取り早く全快にしたかった。蓮夜が未だに手負いだっていうのはどうやら獅子王機関にも真祖たちにも気付かれてはいないようだ。

 

―――その後、古城のバランスが崩れ、紗矢華を押し倒すような格好になった。しかも若干涙目になっている紗矢華の両腕を押さえつけているから、どこからどう見ても犯罪者にしか見えない。

そんな友人に蓮夜はゴミを見るような視線を送る。

 

……前途多難だ。

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