ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~   作:ノスフェラトゥ

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episode:6

古城と紗矢華がイチャイチャしているのを蓮夜が軽蔑の眼差しで見ている時、

 

「……何をやっているんだ、お前たちは」

 

空間転移で現れた那月が古城の近くにいた。

 

「那月ちゃん?テロリストの相手をしていたんじゃなかったのか?」

 

「偶には特区警備隊(アイランド・ガード)の連中にも花を持たせてやらなければな。突入部隊が黒死皇派を圧倒しているから私の出番はないだろう」

 

どうやら蓮夜たちが思っていた通り、ここに黒死皇派が立てこもっているらしい。

 

「それで、私のことを那月ちゃんと呼ぶのはこの口か?」

 

「痛て痛て痛て、やめて……」

 

古城の頬を、那月が黒い日傘でぐりぐりと捩じ上げる、しかも古城は両手で紗矢華を押さえているため、成されるがままである。

古城が那月に何か言おうとしていたが、蓮夜は激しかった銃撃戦が急に途絶えた事に疑問に思っていた。どうやら古城たちも気付いたようだ。

 

ゴオオオオォォォォォン―――

 

爆撃にも似た轟音が、鳴り響いてこの増設人工島(サブフロート)が地震のように揺れた。

その時、蓮夜は巨大な魔力を感知した。

 

「なに……この気配……!?」

 

どうやら紗矢華も気付いたようだ。爆発して倒壊した監視塔かた大量の瓦礫を押しのけて何かが地上に出てこようとしている。

蓮夜はこの気配を知っている。禍々しく何処か人工的な異様な気配だ。

 

「ふゥん、よく分からないけどサ、まずいんじゃないかなァ。これは」

 

声がした方向を見ると、其処にはディミトリエ・ヴァトラーがいた。

 

「ヴァトラー!?なんでお前まで!?」

 

「どうして貴方がここに!?」

 

ヴァトラーの出現に古城と紗矢華が同時に呻いた。那月も不機嫌そうに眉を顰める。

 

「何の用だ、蛇遣い?」

 

「まぁまぁ。積もる話はあとにして、君たちの部隊を撤退させた方がいいんじゃないかなァ。どうせここに残っている連中は、ただの囮サ」

 

ヴァトラーは悪戯っぽく笑った。

 

「囮だと? こんなところに特区警備隊を集めてなんの得がある?」

 

「それはもちろん標的が必要だからだよ。新しく手に入れた兵器のテストにはサ。君たちも、黒死皇派がこの島になにを運び込んだのか、忘れたわけじゃないンだろ」

 

「ヴァトラー、まさかとは思うが……起動したのか?」

 

「フフフ、流石は不死王(ノーライフキング)。やっぱり分かってしまうかァ」

 

蓮夜とのやり取りに古城は首を傾げていたが、それとは反対に那月の表情は凍りつく。

そう、黒死皇派の目的が、特区警備隊の機動隊員を集めて殲滅させるようなことだったとしたら。

そして、この増設施設の地下に隠されているのは―――

 

「まさか……ナラクヴェーラか!?」

 

古城の叫びに呼応するように、瓦礫を撒き散らして巨大な影が出現する。

その影は真紅の閃光を放ち、地上を薙ぎ払う。

 

「あれがナラクヴェーラの"火を噴く槍"か。まあまあ、良い感じの威力じゃないか」

 

「っていうか、ヴァトラー。お前、あの船はどうした?」

 

「ああ。実は"オシアナス・グレイヴ"を乗っ取られてしまってねェ」

 

絶対にウソだ、と蓮夜と古城は思った。ヴァトラーはテロリスト程度なら瞬殺で終わらせる事が出来る。それは以前戦った蓮夜だから分かる。

同じ真祖に近い吸血鬼だから考えている事も分かる。娯楽が欲しかったんだろう。だから黒死皇派の船を嬉々として譲ったのだ。

 

「いやァ、ホント。驚いたよ。まさかボクの船の船員にテロリストが紛れ込んでいたなんて」

 

「白々しいな。だが、お前はそういう奴だったな」

 

蓮夜は呆れながらため息を吐き、ヴァトラーは「すまないネ」と微笑して、何か思い出したかのような仕草をする。

 

「ああ、そう言えば逃げてくる途中でこんなのを拾ったのだが」

 

足元に転がっていた人をひょい、と前に放った。

 

ぐしゅ、と湿った音を立てながら転がったのは、高校の制服を着た男子生徒。

ツンツンに逆立てた短い髪と、首にぶら下がっているヘッドフォンに見覚えがあった。

 

「矢瀬!?」

 

「あれ、もしかして知り合いだった?」

 

ぎょっとする古城の反応を眺めて、ヴァトラーは愉快そうに笑う。

古城は知らないようだが、蓮夜は何故矢瀬がこんなことになっているのか分かったため、ため息を吐く。友人がやられたのに落ち着いている自分を若干嫌悪した。

 

「取り敢えず、ナラクヴェーラをどうにかするか。―――全て焼き尽くしてやる」

 

蓮夜は幾つもあるコンテナの内一つに飛び乗り、眷獣を解き放つ為に魔力を放出させる。

 

「ナラクヴェーラはボクが責任を持って破壊するから、不死王(ノーライフキング)であるあなたが手を出すまでもないよ」

 

蓮夜の隣にまで来たヴァトラーが手で制する。蓮夜はそんなヴァトラーを見て舌打ちをする。ヴァトラーの意図が分かったからだ。

 

「……やはりか。最初からコイツと戦うのが目的か。真祖を殺すことが出来るかもしれないこの兵器を戦うのが」

 

フフフ、と微笑を浮かべて何も答えない。蓮夜は何度目か分からないため息を吐く。

 

「本当はあなたと戦ってもいいけど、第一真祖(爺さん)と肩を並べてるンだから、今のボクじゃまだ勝てない。リベンジは当分先サ」

 

今の(・・)……ね。前は勝てないと知っていたのに挑んでくる意気は良かったが、まだ俺に挑むのか?」

 

200年前。蓮夜がまだ力を回復させている時、蓮夜が吸血鬼であることがバレて殺し合いに発展した。その際に圧倒的な差を見せたが、未だに諦めていないらしい。

 

「まぁいい。ここので暴れられて絃神島に影響が出ても困る。早々に破壊しようか」

 

ゴォ!と蓮夜を中心に熱気を発せられ、ヴァトラーを無視して眷獣を顕現させようとするが、古城が前に出てきた。

古城の顔を見てどうやら何か策がありそうなので、第四真祖である古城の戦いを見ようと思い、しばらく傍観することにした。

 

「他人の得物を横取りするのは、礼儀としてはどうかと思うな、暁古城」

 

格上である蓮夜のことは何も言わずに、ヴァトラーは古城の介入をやんわりと抗議する。しかし古城はそれに取り合わず、

 

「それを言うなら、他人の縄張りに入り込んで好き勝手しているあんたの方が礼儀知らずだろ。俺がくだばるなでは引っ込んでろ、ディミトリエ・ヴァトラー」

 

「ふゥむ、そう言われると返す言葉もないな」

 

ヴァトラーは意外にもあっさりと引き下がった。蓮夜にとっては疑問に思うが、これで一応絃神島は沈まずに済む。

 

「それでは領主たる君に敬意を表して、手土産の一つ献上しよう―――"摩那斯(マナシ)!、"優針羅(ウハツラ)!」

 

「なっ!?」

 

ヴァトラーが解き放つ膨大な魔力の波動に、古城は言葉を失っているようだ。

全長数十メートルにも達する二匹の蛇―――眷獣だ。荒ぶる海のような黒蛇と凍りついた水面のような蒼い蛇。蛇遣いの異名に相応しい眷獣だ。しかも二体の眷獣は空中で絡み合い、一体の巨大な龍の姿へと変わる。

 

「眷獣の融合か……相変わらず出鱈目な特殊能力だ」

 

「あなたに言われたくはないね。この眷獣を一刀両断されたんだから」

 

そう、蓮夜の持つ眷獣"龍殺しの魔剣(グラム)"は文字通り、龍殺しの特性が付与されている。故に"龍殺しの魔剣(グラム)とヴァトラーの相性は、ヴァトラーにとって最悪に近い。天敵とも言える。

そして、合成した眷獣でヴァトラーはこの十三号増設人工島(サブフロート)と、絃神島本体を連結するアンカーを破壊し、切り離した。

 

「これで市街地への被害を気にせず、思うさま力が使えるだろう。せいぜいボクを愉しませてくれたまえ」

 

「あ、ああ……」

 

古城は生返事をした直後、紗矢華が古城に向かって叫んだ。

 

「ナラクヴェーラが動き出したわ、暁古城!」

 

紗矢華の向いている方向を見ればそこにはおよそ七、八メートルほどの大きさに、六本の脚を持った戦車である。見た目は蜘蛛に近い。

蓮夜が眷獣を解き放ち、破壊してもいいが、その時は絶対にヴァトラーに邪魔される。それに第四真祖である古城には経験を積んで欲しいから此処は任せる事にする。

本当は古城の戦いを見ていたかったが、どうにも"オシアナス・グレイヴ"にいる雪菜たちが気になってしまう。

 

「おい、古城」

 

「どうした、蓮夜?」

 

いつの間にか隣にいた蓮夜に古城は驚きつつも、口を開けた。

 

「いやなに。暇だから俺は凪沙たちを助け出す事にする」

 

「……頼んで良いか?」

 

古城の言葉に蓮夜は口角を上げて答えた。

 

「愚問だな。この程度相手に救出するのは簡単だ」

 

蓮夜は真祖と張り合うほどの実力者。この場で蓮夜を止めるたいのなら真祖に近い吸血鬼をぶつけるしかない。テロリストの獣人相手に遅れを取る事は決してない。

古城は、その答えに満足したのか笑みを浮かべている。古城は蓮夜のことを信頼しているようだ。

 

「そっちはお前に任せるとする。まぁ、死なないように頑張れ」

 

「縁起でもねぇことを言うな!だが、まぁ……こっちは任せろ。その代わり姫柊たちを頼む」

 

「りょーかいっと」

 

蓮夜は古城の心配性に苦笑しつつも、そのまま、"オシアナス・グレイヴ"へと駆けて行く。

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