ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~ 作:ノスフェラトゥ
古城と紗矢華は、
濡れている理由が、"
「……あなたは本当に無茶苦茶ね」
後ろに出来たクレーターを見て呆れた表情で紗矢華が嘆息する。
「俺じゃなく
紗矢華の血を霊媒として覚醒した新たな眷獣、第四真祖の九番目の眷獣"
古城はナラクヴェーラに"
そして、操縦者が乗っていないナラクヴェーラを緋色の双角獣が襲おうとするが、横から来た
「―――なんだ!?」
古城が声を上げ、"オシアナス・クレイヴ"の後部甲板を睨む。そこから巨大ななにかが出現する。
ナラクヴェーラと同じ装甲まとっているが、桁違いに大きい。八本の脚と、三つの頭。女王アリのように膨らんだ胴体。
そして、双角獣に向かって、無数の戦輪が一斉に撃ち放たれた。被害は増設人工島だけではなく、絃神島本体へと落下していき、市街地がら黒煙が上がる。
「ふゥん……これが本来のナラクヴェーラの力か。やってくれるじゃないか、ガルドシュ。こんな切り札を残していたとはね。どうする、古城?ボクが代わろうか?」
ヴァトラーは古城の近くまで歩み寄り、挑発的な笑みを浮かべる。
古城は苦々しげに舌打ちをし、攻撃的な顔で睨む。
「引っ込んでろって言ったはずだぜ、ヴァトラー……。どいつもこいつも好き勝手にしやがって、いい加減こっちも頭に来ているんだよ!」
古城の怒りが眠っていた闘争心に火がつき、真祖としての"血"を滾らせる。
「相手は
古城が纏っている覇気を、ヴァトラーが満足げに眺めて笑った。
なにも言わずに立ち上がった紗矢華が、剣を構えて隣に立つ。
そして古城の右隣には、小柄な影が歩み出た。
「―――いいえ、先輩。わたしたちの、です」
銀の槍を構えた制服の少女―――姫柊雪菜が、何故か拗ねたような瞳で古城を見上げていた。
「ひ……姫柊?」
古城は驚いて彼女の名を呼んだ。雪菜は無感情な冷たい瞳のまま、小首を傾げた。
「はい。なんですか?」
「え、と……どうしてここに?」
「監視役ですから。私が、先輩の」
雪菜はそのまま"
そして、古城の新しい眷獣、"
「新しい眷獣を掌握したんですね、先輩」
抑揚のない冷たい声で雪菜が古城に訊く。古城も雪菜のただならぬ雰囲気に唾を飲む。
「あ、ああ。何故か、色々あってこんなことに」
「そ、そう。不慮の事故というか、不可抗力的な何かがあって」
紗矢華が目を伏せて、着ている古城のパーカーの襟を引っ張った。
「そうですか」
雪菜は何か言いたげだったが、深いため息をつく。そして、銀の槍をナラクヴェーラに向けて構えなおす。
「では、その話はまた後で。ますは彼らを片付けましょう」
「あ、ああ」
雪菜は、もう一度短く息を吐き、地上に出てきた巨大な古代兵器を睨んで言った。
「先輩、クリストフ・ガルドシュはあの女王ナラクヴェーラの中です」
「女王……指揮官機ってことか?」
古城の言葉が終わる前に、女王が再び、戦輪の一斉砲撃を放った。双角獣の咆吼がそれを撃ち落とす。再び、爆炎に包まれる。
続けて四機の小型ナラクヴェーラが、真紅の閃光を乱射した。
灼熱の光線を紗矢華が必死に撃ち落す。
「ああくそ、どいつもこいつも無茶苦茶しやがって……!」
絶え間ない攻撃に古城が切れる。
「―――
雷光の獅子が、稲妻を撒き散らしながら敵陣へと踊りかかり、数体のナラクヴェーラを蹴散らす。
残りのナラクヴェーラを蹴散らそうとした刹那、
「―――顕現せよ、"
超膨大な熱量を含んだ灼熱の焔が一体のナラクヴェーラを呑み込み、溶解させた。
あまりの規格外の攻撃に、古城だけではなくクリストフ・ガルドシュまでもが動きを止める。
「一体目。後は……女王も入れて五体か」
声がする方向を見るとそこには黒髪の少年、縫月蓮夜が立っていて右手を前に突き出している。その周囲には、先ほどの紅蓮の焔が渦巻いている。
「……今の蓮夜の、か?」
古城は、冷や汗を垂らしながら蓮夜に訊く。
「ああ、さっきの焔なら俺の眷獣だ。だから気にするな、
「……今、不穏な発言を聞いたような気がするんだが……」
「さあ?俺に訊かれても」
古城は蓮夜を睨むが、どこか吹く風のように受け流す。
それにより、紗矢華と雪菜の緊張が解れ、ガルドシュもようやく正気に戻ったようで部下に命令を飛ばす。
「流石に古城たちでは、ナラクヴェーラを六体同時は無理があるだろうな。だから、二体ほど葬るから」
「どうせやってくれるなら、全部にして欲しいんだけど」
紗矢華が蓮夜にそう愚痴り、隣では雪菜も頷いている。その二人を呆れながら見て、蓮夜は口を開く。
「お前ら、俺がどういう存在か完全に忘れているだろうな?」
「「―――あ」」
雪菜と紗矢華は同時に声を漏らした。
そう、蓮夜は世間では存在しない者。そして、その力は真祖と同等と言われている吸血鬼。あまり表に出てはダメな存在なのだ(実際は、結構知れ渡っているか、今回のようなテロリストや真祖、"旧き世代"くらい)。
蓮夜の存在が知られれば那月にも迷惑が掛かるし、下手をすれば世界規模で人が動くとこになりかねない。
古城は未だに首を傾げているが、二人は理解できたようで渋々といった感じで引き下がった。
「ったく只でさえ手を出したくないのに……ということで三人共頑張れよ。俺はナラクヴェーラを破壊したら、高みの見物を決め込むから」
蓮夜は軽い調子でそう言い、未だに動いている一体に向かって突貫した。走りながら手元に"
「よっ!と」
軽い調子でナラクヴェーラの足を二本斬り裂き、体勢を崩した。その隙を突いてナラクヴェーラを真っ二つにしようと跳んでから振り下ろすが、ナラクヴェーラの当たる寸前に見えないなにかに弾かれる。
それに驚いた蓮夜だが弾かれた瞬間、青白い火花のようなものを見た。
「う~ん……斥力フィールドか?触れたら斬れるから、触れさせないか。……機械の癖に学習能力は健在だなぁ」
そんな軽口を叩いている間に、"
その間にも蓮夜が相手しているナラクヴェーラも自己修復を終えている。
「はぁ、メンドクサイな……古城たちに言った手前、片付けないとな」
蓮夜は"
蓮夜の"
ナラクヴェーラは丸腰になった蓮夜に"火を噴く槍"であるレーザーを放ち頭に直撃するが、またもや霧となってダメージなど負わなかった。吹き飛ばされた霧は頭部に収束され、蓮夜の頭に形成された。見事な規格外っぷりである。
「そうだ!倒せないのなら異空間に封印すればいいか」
名案だ、と言わんばかりにポン、と手を叩き早速実行に移すことにした。
「悪く思うなよ、中にいる獣人。―――"
ドァ!と蓮夜の下半身を中心に一気に霧となり、ナラクヴェーラの退路を断つようにして霧を展開し、その巨体を呑み込む。そして、霧が蓮夜に戻った時にはナラクヴェーラの姿は何処にも無かった。
これが蓮夜の持つ眷獣、"
身体を霧化して攻撃を回避することも可能。霧に触れた対象物を、蓮夜の意思により消滅させたりすることも、全て"
現在、ナラクヴェーラは霧化した蓮夜の体内に展開した異空間に取り込まれ、封印されている。自力での脱出は不可能に等しい。
「さて、こっちは終わり。古城たちは―――」
「―――妖霊冥鬼を射貫く者なり―――!」
紗矢華の持つ武器、"
上空に巨大な魔法陣が展開され、生み出された膨大な"瘴気"が古代兵器に降り注がれる。それにより、ナラクヴェーラの機能を阻害する。
「もう終りが近いか……」
もう、その先の結末が見えてきたので傍観することにした。
機能を阻害されている"
"女王"から出てきたガルドシュが笑いながら左手でナイフを引き抜いた。
ナイフを雪菜に向かって振るうが、槍を構えずに身体をずらして避けるだけだ。そこで、飛来してきた矢がガルドシュの左肩を貫き、ナイフを落としてしまった。
放ったのは、遠方にいる紗矢華だ。それだけで彼女の弓の腕が分かる。そして、
「―――終わりだ、オッサン!」
先日戦った殲教師を倒した時と同じ言葉を言い放ち、ガルドシュの顎に目掛けて渾身のアッパー食らわせた。
完全に力尽きたガルドシュを放って、雪菜は"女王"の操縦席に乗り込み携帯を操作して音声ファイルを再生した。すると、"女王"含めた全てのナラクヴェーラは朽ち木のように地面に転がり、石化して崩れ去る。
神々の古代兵器の最後しては呆気ない幕引きだ。
「これで終わりか……これでしばらくはゆっくり出来る。だからあまり厄介事を持ち込まないで欲しい―――ヴァトラー」
「さァ、それは分からないヨ?」
蓮夜の隣に来たヴァトラーは古城たちを見て満足気に笑っている。
「退屈凌ぎには、なったらしいな」
「ああ、もちろんですとも。堪能させてもらったヨ。それに、久し振りに"
ヴァトラーたちの前で"
「それと、
「は……?いや、ちょっと待て―――」
何か不穏な言葉を言葉を残して、この場を去ったヴァトラーに頭を抱えた。
―――あれ?これって厄介事に巻き込まれていないか?
意外にも苦労が絶えない、災厄の吸血鬼"