ストライク・ザ・ブラッド~不死王の物語~ 作:ノスフェラトゥ
蓮夜たち三人はハンバーガーショップに居た。帰ろうかと思ったが古城に止められ、雪菜も蓮夜になにか聞きたそうにしていたから一緒に行くことになった。ついでにここに来る際に自己紹介を済ませた。
「へぇ、、姫柊もハンバーガーとかを食べるんだな。あまりそういうイメージが無いな」
「高神の杜がある街は都会じゃないですけど、ハンバーガーくらいは売ってますよ。よく食べには行きませんけど、偶に同僚と行きます」
蓮夜の素朴な問いに若干拗ねながら反論する。
「……高神の杜?姫柊が前に居た学校か?」
「はい。表向きは神道系の女子高ということになっています」
「表向きってことは裏もあるのか?」
「……獅子王機関の養成所です。獅子王機関のことは知ってますよね?」
「いや知らんが」
古城の言葉に蓮夜は呆れて、雪菜も知らないことに驚いていた。
「はあ……獅子王機関というのは国家公安委員会で設置されている特務機関だ。情報収集や謀略工作を行う機関ということ」
蓮夜は簡単に古城に教えた。
「縫月先輩の言う通りの組織です。もともとは平安時代に宮中を怨霊や妖の類から護っていた滝口武者がルーツなので、今の日本政府より古い組織なんです」
「要するに公安警察みたいなものか」
「そういう認識で構わないだろ」
古城は一応理解したようだ。すると古城は何気なく雪菜に聞いた。
「だったら姫柊が俺を尾けてたのはどうしてだ?魔導災害やテロの対策なら俺とは関係ないだろ?」
「あの、暁……先輩? ひょっとしてご存じないんですか?」
「なにをだ?」
そこで、蓮夜が思い出したかのように古城に教える。
「そういや、言ってなかったな。真祖の力は一国の軍隊と同格だから個人だけでテロや災害に近い対応がされるんだよ」
「人間扱いどころか生物扱いすらしてもらえないって……っていうかもう少し早く言ってくれよ」
「済まんな。完全に忘れてた」
古城には心の籠もってない謝罪をし、恨めしそうに見ているが無視を決め込む。
(それ以前に俺の存在は真祖以上に危険かもしれないな。今真祖と戦ったら絶対に死ぬ)
蓮夜は今真祖の奴らと出会ったら、勝てる可能性がゼロに等しいことが分かっている為、大人しくすることにした。全快になっても騒ぎは起こさないように心がけるが。
古城はため息を吐いて、雪菜に言う。
「他の真祖はともかく、俺は何もしてねえぞ。するつもりもねーし、支配するような帝国なんてどこにもねーし」
「そうですね、わたしもそれを訊きたいと思ってました。先輩はここで何をするつもりですか?」
「何をする……って、なんだ?」
「正体を隠して魔族特区に潜伏しているのは目的があるんじゃないですか?絃神島を影から支配して登録魔族を自分たちの軍隊に加えようとしているとか。あるいは自分の快楽のために彼らを虐殺しようとしているとか……なんて恐ろしい!」
どこか暴走しているような雪菜がヘンなことを口走っている。古城はため息を吐いて蓮夜は暴走の仕方が面白くて笑っている。
「いや、だから待ってくれ。姫柊はなにか誤解してないか?」
「誤解?」
「潜伏するもなにも、俺は吸血鬼になる前からこの街に住んでいるわけなんだが」
「……吸血鬼になる前から……ですか?」
姫柊は信じられないような顔をで古城を見る。
「そんなはずはありません。第四真祖が人間だったなんて」
「え?いや、そんなこと言われても実際そうなんだし」
「普通の人間が、途中で吸血鬼に変わることなどあり得ません。例え吸血鬼に血を吸われて感染したとしても、それは単なる"血の従者"―――擬似吸血鬼です」
「いや、こいつは正真正銘の第四真祖だぞ?」
「本当なんですか?」と蓮夜の言葉に雪菜は反応する。
「本当なんだが……悪いけど詳しいことは俺にも説明出来ないんだ。俺はただこの厄介な体質をあの馬鹿に押し付けられただけだからさ」
「押し付けられた?……それにあの馬鹿というのは誰ですか?」
「第四真祖だよ。先代の」
「先代の第四真祖……!?」
雪菜が愕然として息を飲む。
「まさか、本物の"
「いや、それは……」
「まずいっ、古城思い出そうとするな!」
古城がなにかを思い出そうとすると急に顔を顰め、激しい頭痛によりテーブルに顔を伏せている。
「せ、先輩?……縫月先輩、これはどういう?」
突然苦しみ出す古城を見て雪菜は狼狽える。蓮夜はそんな古城を見ながら答えた。
「古城はあいつから引き継いだ時の記憶が無いんだよ。無理に思い出そうとすればこうなる」
「……縫月先輩は何か知っているんですか?」
雪菜の問いは古城にも聞かれたことがある問いだ。だから雪菜にもかつて古城に言ったときと同じ言葉を言う。
「知っているが言う事は出来ない。これは古城の問題だからな」
蓮夜はそう言って肩をすくめた。雪菜は何か言いたそうにしていたが結局なにも言わなかった。それからしばらくして、古城が落ち着いてから話を始めた。
「私、獅子王機関から先輩のことを監視するように命令されてたんですけど……それから、先輩がもし危険な存在なら抹殺するようにとも」
「ま……抹殺?」
「あー……なるほど、ね。姫柊から見た古城はどう見える?」
「そうですね。先輩は真祖という自覚が足りません。とても危うい感じがします」
数ヶ月前に真祖になったばかりだからそれも仕方がない。本来、真祖になるなんてあり得ない。だから自分の特別性が分からないのは無理も無い。
「ですから、今日から先輩のことは私が監視しますから、くれぐれも変なことはしないでくださいね。まだ先輩のことを全面的に信用したわけじゃないですから」
古城は監視という言葉に困ったが、別に監視され困る事はないからいいか。という結論付けた。
それから今度は蓮夜の方を見て言う。
「あと、縫月先輩も何者なんですか?昨日の眷獣を吹き飛ばした蹴力は人間じゃないと思います。魔力を纏っていましたし」
「そうか、古城しか知らなかったな。俺は吸血鬼だ。"
蓮夜はその契約内容は言わないが、雪菜はその契約相手に驚く。
「南宮那月……そうですか。あの人が側にいるのですか。ですが、縫月先輩もただの吸血鬼ではなさそうなので変なことはしないでくださいね」
どうやらD種の眷獣を蹴り飛ばしてから、古城と同じく一応学校では監視するらしい。優先順位は古城が上らしいが。
―○●―
「は?襲撃?昨夜に吸血鬼と獣人が?」
「そうだ。昨夜L種の獣人とD種の吸血鬼が重傷を負って見つかったらしい」
翌日の朝。
蓮夜と那月は朝食を食べながら、事件についての話をしている。食事中にする話しではない。
どうやら、アイランド・ウェストにある海を見下ろせる展望通路付近で戦闘があったらしい。
「しかも"古き世代"が重傷を負ったんだ。犯人はかなりの使い手を見ても良いだろうな」
「"古き世代"をね……俺の助けは必要か?」
那月には要らない提案だが、取り敢えず蓮夜は訊いておくことにする。
「要らん。が、もしかすると必要になるかもしれん。ここ二ヶ月ばかりで七件もの被害が出ている。これ以上酷くなれば私から頼む」
那月は食後の紅茶を飲みながら言う。黒いゴスロリ服を着た幼女が偉そうに紅茶を飲む絵柄は、なんとも言えない光景だ。
「じゃあ俺はいつも通りに日常を満喫すればいいのか?」
「そうだ。だが、この無差別の魔族狩りでお前に狙われるかもしれないから、警戒をしておけ―――必要ないと思うが」
最後に那月はそう付け足した。事実、そこら辺の奴らじゃ蓮夜には太刀打ちはおろか、触れることすら敵わないからだ。
蓮夜自身、警戒するに値しないと結論付け、いつも通りの生活を送ることにした。