紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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本編の筆があまり進まないことを加味し、皆さんが気になっているであろう庭園迷宮第1層”庭園”の奥地部分の調査に向かうことになった小悪魔ちゃんのお話をしてみます。
なおサイドストーリーは一話完結型にするため、続きません。




□ (サイドストーリー)小悪魔ちゃんの庭園奥地調査

side:小悪魔

 

私は、種族が”(悪魔の)グレムリン”な普通の下級悪魔だ。

72柱の悪魔貴族の誰かや、悪魔の王や魔界創造の女王の直系でもなければ、魔界の創生に関わった悪魔と言うわけでもない。気付いたら魔界に生まれて、魔界の悪魔社会に揉まれながらも懸命に殺されないように生き、ついに安全な職場(ヴワル魔法図書館)を手に入れた幸運なただの木端悪魔だ。

 

しかし、自分の召喚主であるパチュリー様は私に対して無茶振りの指令を出すことがある。それこそ好き勝手に場所を移動する魔本を移動している最中に捕まえるように言われたり、ユーリ君やロン君、エメナスとローウェル、ユグ君の機嫌が悪い日に限って彼らの鱗や鬣、葉っぱを取ってくるようにいったり、パチュリー様が実験を失敗させて爆破した魔法工房の修理を私一人でするように命令したりと……ともかく理不尽だったり、難しかったり、面倒事を押し付けられただけだったりする命令をすることが多い……でもそんなこんなでも私は今までこなしてきたのだ。魔界で悪魔社会に揉まれていたあの時よりかは、命の危険を感じなかったからだ。

 

 

けれど……

 

「さ、さすがに一人で庭園迷宮の奥地調査は死んじゃいますって……っ!」

 

警備隊に支給されている槍と軽装鎧を見にまといながら、草むらに隠れて小声でそう叫ぶ。

その草むらから少し顔をだしあたりを見渡すと……幸いなことに魔物はいないが、それにも関わらずに色濃い殺気が、この迷宮全体を包んでいる。絶対これ、私だと手も足も出ない場所だと、直感と本能で理解していた。

 

『小悪魔、この声は聞こえてる?』

「しぃーっ!パチュリー様、こごえっ、小声でお願いしますッ!!」

『大丈夫よ、この声は魔術陣が刻まれた腕輪をしているモノにしか聞こえないわ。』

「ほっ……それなら、大丈夫そうですね。」

 

いきなり、パチュリー様の通信が来て、目玉が飛び出そうになるぐらい驚いた。

今私が隠れている場所に魔物がいないとはいえ、この奥地の迷宮の全体を包んでいる殺気が今にも私に向きそうでただでさえ怖いのだ。

 

『庭園迷宮の奥地……警備隊が出現する魔物以外の調査が難しいと言い切るほどの場所、レミィたちが休んでいる今調べておかないと、庭園迷宮の完全攻略戦の障害となるかどうかわからないわね。』

「だからってどうして私を行かせるんですか?私の戦闘力が低いのはパチュリー様もご存じでしょうっ!?」

『何も全部調査完了するまで帰ってくるなとは言わないわ、ある程度魔物の知識と迷宮に対する理解があり、なおかつ逃げ足も速い。これの三つが揃っているのは小悪魔以外に居ないのよ。少しでも調査してくれれば、小悪魔との契約を永続契約に変更するから頑張って。』

「うっ……分かりましたよぉ、やりますよやればいいんですねぇ……うぅ。」

 

悪魔……というより、私個人にとってとっても魅力的な提案をされ引くに引けなくなる。これまでは500年の超長期雇用契約からパチュリー様が亡くなったあとでも効果が発揮する永続契約に変更してくれる。つまり、あの弱肉強食の悪魔社会に帰らなくてすむということだ。

こうなったら意地でも調査をして、ちょっとでも庭園奥地の情報を集めてやりますよぉ!そういうふうに意気込み、隠れている草むらか勇気を出して出てみる。庭園奥地を包んでいる異様な雰囲気は変わらないけれど、進まなければならない。いざと言うときは、パチュリー様も転移の魔術で私を回収してくれるだろう。そう期待して、庭園奥地を進んでみる。

 

~~~~~

 

パメラ・スカーレット(悪魔から見ても邪悪な存在)により荒れている”庭園”に対して、私が歩いている庭園奥地はさっきから言っている”異様な雰囲気”以外は平和そのものだ。ときおり魔物も見かけるが……運よく温厚な魔物と遭遇したのか、それとも私程度はいつでも殺せるからか、見つかっても襲い掛かられなかった……見つかった魔物が庭園の中でも凶暴な”ワイバーンもどき”であるにもかかわらず、だ。パチュリー様はそれを見て、ワイバーンもどきの研究を進めたがっていたけれど、今は私の指示出しに集中してくれているみたい……そこらへんはやっぱり、いい上司なんだよなぁ。

 

『……小悪魔、気分は大丈夫かしら?』

「はい……相変わらず、怖いのは怖いですけれど、ちょっと慣れました。」

『そう……少しでも危険を感じたらすぐに逃げなさい。いいわね?』

「任せてください、パチュリー様!これでも私は逃げ足だけは早いので!!」

 

魔界じゃ自慢できることではなかったけれど、今は自慢できることだ。

パチュリー様と通信魔術越しに会話しつつ、庭園奥地を進んでいると……ふと、人影が見えたような気がする。

 

「パチュリー様……私以外に庭園奥地に入った人って、いないですよね?」

『ええ……美鈴(メイリン)に聞いた話では、庭園奥地に調査に行った警備隊の狼女たちも全員撤収……パメラ・スカーレットの手によって、それぞれの階層に転移させられているわ。』

 

じゃあ、あの人影は一体?そう考え、人影が消えた方向に向かってみる。こっそりと、息を潜めて生垣から顔を少しだけのぞかせて、人影を見つめる。

人影は残念ながら、すぐに突き当りの角を曲がってしまったけれど……けれど間違いなく、タダモノではないことは感知。一瞬だけ、背筋がゾワッとしたのだ。

たぶん、あれは追ったら私が死ぬ。逃げれるかどうかも怪しいかもしれない。最悪、私が瞬きをした瞬間、首が体から跳ね飛ばされている可能性だってある。

 

「パチュリー様、怪しい人影から嫌な予感を感じたのですが……」

『……小悪魔を失うわけにはいかないわ。調査を切り上げて戻ってきなさい。』

「分かりました……あの人影に気付かれないように、脱出しますね。」

 

静かに、ゆっくりと足元に落ちている枝を踏まないようにしつつ、その場を離れる。

慎重すぎるぐらいにゆっくりとした脱出だったけれど、私が少しの間、庭園奥地に居たことでパチュリー様の探知魔術のおかげで基本的な情報収集はできたみたいだ。

そんなパチュリー様のお話では、庭園奥地はパメラ・スカーレットの工作を受けてはいるが、迷宮自体がその工作をなかったことにしているため、今後の完全攻略戦には影響が出ないと結論だった。

 

私の活躍により、庭園奥地のある程度の情報を得たことで、パチュリー様から永続契約だけでなく専属契約までも結ぶことができ、私はこれで名実ともに”パチュリー・ノーレッジの使い魔”という立場を手に入れたのだ。

仮にこれで何かしらの用事で魔界に行くことがあっても、永続契約と専属契約を結んだ私はなめられることはないだろう。悪魔は契約を重んじ、立場を遵守する生き物だからだ。

 

……でも、あの人影、どこかで見たことがあるんだよなぁ。それも、つい最近……

でも、似ても似つかないんだよなぁ……。なんなんだろう、この既視感。

 

 





小悪魔ちゃんって可愛いですよね。

サイドストーリーは好評であればちょくちょく続けたいと思います。
その内、本筋と関係ない過去だったりちょっとした未来のお話も書くかも……?
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