紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
side:カート
「セリャっ!とぁりゃーーーーーっ!にゃーっ!!
ぜぇ……ぜぇ……び、ビクともしない。」
呼吸を整えながら、その場にへなへなと座り込む。
ナイフを振り回したり、大きな猫になって扉に突進したり、爪でひっかいたり、いろいろ試したものの……扉は一向に壊れていない。
(それに、昨日から何も食べていないせいでちょっとだけお腹が空いたなぁ……。)
ぐぅ~となるお腹を抑えながら、立ち上がりメイド服の埃をはらう。
メイド服のポケットに何かないかガサゴソと弄ってみると……ポケットの一つから、クッキー入りの袋が出て来た。
確かこれは、いいことをした時や頑張った時ににもらえるメイド長さんが焼いたクッキー!!大切に食べようと思って、ずっと忘れてたんだ!!……カビとかは、うん。生えてないにゃ。
「過去の私っ、よくやったニャー!いっただきまーす!!」
袋からクッキーを取り出して、サクリ。
一口で頬張ったクッキーを咀嚼すると、バターの香りと控えめな砂糖の甘さが口の中に広がって、サクサクとした感触が幸せな気分を読んでくれる。
流石、メイド長さんが作ったクッキー。一口食べるだけでこんなに幸せになれるだなんて……どれだけの愛情をこめて作ったのか気になるのにゃ。
「うみゃぁ…………もったいないけれど、一枚だけにしておこう。」
いつ救助が来るかわからないこの状況、今このクッキーを食べつくしてしまうと、後が怖そうだと考えて、再び袋を閉じてメイド服のポケットにしまい込む。雨風をしのげる室内だというのに、気分はまるで遭難した気分だ。
隙間風が入ってこなくて本当によかったにゃ……。
そう言えば、扉は無理でも窓から逃げ出すのはいいかもしれない。そう考え、窓に手をかけようとしたとき、壁際においてあった蓄音機から声が聞こえて来た。
『……黒き妖精、
「……パメラ・スカーレットッ」
私は、あの時……庭園迷宮前の付いていくメイドたちの中に居たから、その声には聞き覚えがあった。
あまつさえ、メイド長さんを傷つけ、私たちをこうして閉じ込めている元凶……随分と余裕そうなその声色は、レミリアお嬢様に対する呆れのようなものだった。
『アナタ、随分と珍しいワーキャットね。捕まえて調べてみたいぐらいだわ。』
「チッ……お前に触られるなら、その手首と首を血に染めてやるッ。」
『凶暴ねぇ……躾のなっていない凶暴な犬や猫はどうなるのか……それを知らずのその行動かしら?いいわ、お望み通り、処分してあげる。』
蓄音機からパメラ・スカーレットの声が聞こえなくなると、足元に魔術陣が浮かんでくる。
その魔術陣が光りだしたと思うと、その中から合われてきたのは、随分大きなネズミ……ネズミ?
おかしいなと思い、よく観察していると……首元に、猫の生首をネックレスのように縛り付けているネズミだった。……そう言えば、噂で聞いたことがあるな~。猫を殺す大きなネズミがこの世界には存在するって……。それが、コイツなのかな?
まあ、どうでもいいやと考えて、私自身の気配を薄くする。
私の戦い方は、この人間の時の姿のなら暗殺者のように息を潜めて急所を突いて仕留めるスタイルだ。能力で猫に変身したときは、体の大きさに合わせた戦い方をするけれど……この程度の相手なら人間の時の姿で十分だし、第一この狭い室内だと大きさも限りがある。
だからこそ、静かにその大きなネズミに近寄り……脳天に向けてナイフを振り下ろした。
グサリと、ナイフが突き刺さり、大きなネズミは倒れて動かなくなる。……随分と大きな死体だ。正直に言って邪魔くさい。これだけ大きいネズミと、歳も取っているだろうし、私の知らない病気を持っているのかもしれないので、さすがに私でも食べるのには嫌悪感を持ってしまう。
「はぁ……早く助けが来ないかニャー?」
ボロボロのベットの淵に座って、窓から見える曇り空を見上げてみた。
……あれ、ちょっとだけ晴れてきているような気がするにゃ~。