紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ 廃屋敷の特別なメイドたち:ビビオンの場合

side:ビビオン

 

当機(わたし)は、紅魔館(こうまかん)は地下図書館……ヴワル魔法図書館で司書の仕事を、そして緊急時に非戦闘員の避難所となるヴワル魔法図書館の防衛を担当しています。

それも、当機(わたし)の戦闘能力は、メイド隊の中で、母数の関係だとしても上から数えた方が早いほどの戦闘能力を持ち合わせています。

 

さらに言えば、とある日をきっかけに当機(わたし)は、上司であるパチュリー・ノーレッジ様に、改良を施されており、元の当機(わたし)とは比べ物にならないほど強くなりました。まあ、当機(わたし)のダメなところである極度の方向音痴は治りませんでしたが……コホン。

 

改良前まで、喋れなかった当機(わたし)に発声機能が付き、フレームに内蔵されていた武装は手持ち武器となり、外装の材質を変えたことで耐久力もパワーも段違いです。

……ですが、その自動人形(オートマタ)のパワーをもってしても、当機(わたし)を閉じ込めている扉はびくともしません。

 

「……困りましたね。」

 

体内に存在する発声装置から、当機(わたし)自身の心の声が漏れてしまう。ときどきこういう不具合もあるから、ちょっと困りものだ。あとでパチュリー・ノーレッジ様に見てもらいましょう。

 

とにかく、庭園迷宮第2階層”旧紅魔館(こうまかん)”3階の一室に閉じ込められてから早1日。

メンテナンスはもうちょっと先だったのですが、この部屋は埃っぽいこともあり、体の隙間から体内に埃が入り、当機(わたし)の内部機構にどんどんたまり始めているのです。今のところ、動作に支障はありませんが、「塵も積もれば山となる」とメイド長である十六夜(いざよい)マリア様が仰っていたように、この埃たちも時間が経てば、当機(わたし)の動作に支障をきたすほどになるでしょう。

 

……思えば、ヴワル魔法図書館もかつては埃っぽい所だったと、当機(わたし)も記録していますが…………随分とまた、懐かしい記録を思い出したものです。

そんな風に、当機(わたし)が過去を振り返っていると、室内に設置されていたボロボロの蓄音機が動き出しました。

 

『……自動人形?あの子もまた、珍しい物を拾ったものね。』

(……なんとなく、黙っておきましょう。)

 

物珍しい物を見ているといったような声が、蓄音機の金属ホーンから聞こえてきます。当機(わたし)の記録に、その声の主は心当たりはありませんでしたが、同僚や仲間たちの間で、話題が持ちきりだった、レミリア・スカーレットお嬢様と、フランドール・スカーレットお嬢様の母君であらせられる亡くなったパメラ・スカーレット奥方様だという事は、容易に予想する事ができました。

 

『結構手が加えらえてるみたいだけれど……どんなふうに動作するのか一度分解してみてみたいわね……。』

 

金属ホーンから聞こえてくる声は、レミリア・スカーレットお嬢様と似たような声であり、しかしレミリア・スカーレットお嬢様とフランドール・スカーレットお嬢様のお二方の母親と言う割には、蓄音機の金属ホーンから聞こえてくる声色に、心が入っているようには聞こえない。

……私は自動人形(オートマタ)だ。自分で思考し、選択し、決定する事ができても、結局のところ私は、魂と心を持った物体なのだ。

しかし、紅魔館(こうまかん)に暮らす皆様や、同僚や仲間は、私を一人の”生き物”として取り扱ってくださっている。ダメージを受ければ、怪我をしたよう時のように心配してくださり、働いた後は疲れてないかのお声がけを頂き、休息時には一緒に過ごしたりなど……当機(わたし)に、心を込めて接し、言葉をかけている。

 

だからこそ―――そんな当機(わたし)だからこそ分かる。

 

(この吸血鬼は、心がない。)

 

言葉が―――ひどく冷たい物であることに気付いた。

生き物であるはずなのに、まるで発声器官を取り付けたばかりの頃の当機(わたし)のように、声が平坦で機械的だ。

……これはあくまで当機(わたし)が感じた事だ。だから、当機(わたし)以外のメイドや、警備隊の警備兵の皆様がたと、言っていることが食い違っているかもしれないが……今日、初めて聞いたパメラ・スカーレットの声に対して、当機(わたし)は、そう捉えたのである。

 

『……まあ、いいわ。さっさと壊してしまいましょう。』

 

蓄音機の金属ホーンを通じて、パメラ・スカーレットの声が宣言する。

その途端、蓄音機の前の床が光りだし、魔術陣が起動する。魔術陣が、回転し、視界を光で追おうと、魔術陣の中心には、金属製のゴーレムが召喚されていた。

直後、蓄音機の魔力反応が無くなり、蓄音機からパメラ・スカーレットの声は聞こえなくなった。

 

「……相手を倒したことも確認せずに行くとは不用心ですね。」

 

持っていたトランクから、二本の大きめのトマホークを取り出す。

このトマホークは、近接武器が、右手の手刀しかない当機(わたし)を見て、レミリア・スカーレットお嬢様が、「両手にトマホークとか持ってみたらいいんじゃないかしら?」と言い、持ってみたらしっくり来たので使っている。

 

トマホークを構えて、金属製のゴーレムを警戒していると……金属製のゴーレムは、腕を振り上げて、当機(わたし)に向けて振り下ろしてくる。

けれど、大振りで見やすい攻撃だったので、ステップを踏んで回避する。ゆっくりと、右の拳を再び振り上げようとする金属製のゴーレムに、右手で持つトマホークをゴーレムの右腕の関節に向けて振り下ろすと、バターナイフでバターを裂くように、スパンと切り落とすことに成功する。

 

「なんだ……安いゴーレムでしたか。」

 

動きが随分と悪い。腕のいい人形魔術師が作ったゴーレムであればこうはならなかっただろう。腕の悪い人形魔術師から買い取ったか、それともパメラ・スカーレットが自分で作ったか……まあ、結局どちらでも構いません。

 

「魔術制御のゴーレムの動きは、飽きるほど見ていますから。」

 

そう言いながら当機(わたし)は、斬り落としたゴーレムの右腕を足場にして飛び上がり、金属製のゴーレムの頭に左手で持つトマホークを投擲した。

投擲したトマホークは、回転しながら素早く飛んで行き、金属製のゴーレムの頭を粉砕しました。そして、突き刺さったトマホークは、刻まれた魔術陣が起動し、金属製のゴーレムを巻き込む形で爆発し、金属製のゴーレムを木っ端みじんに爆砕しました。

 

「さしずめ、トマホーク〇ーメラン……でしょうか?」

 

スタッと着地し、残ったトマホークをトランクにしまい込みます。

……それにしても、この程度のゴーレムで当機(わたし)を倒せると思われていたこと、非常に不愉快ですね。これが、”怒り”という感情なのでしょうか?

そんな事を考えつつ当機(わたし)は、脱出できない室内で待機を続けるのでした。

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