紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
side:クルム
わたしは、おくびょうだ。
おくびょうで、気弱で、どんどん成長していくみんなとくらべて、わたしはぜんぜん、成長してない。
人と喋る時は、言葉がつまったり、どうやって伝えようか「あの」とか「その」と、つけてしまう。敬語もにがてで、メイド長さんや、オリビア先生に教えてもらって、やっと「です」をつけれるようになったぐらいだ。
おしごとだって、マルガさんみたいに本の位置を覚えられてないし、ビビオンさんのように棚をもちあげる力はない……できることと言えば、場所を入れ替えたり、迷惑をかけてばかりだ。
でも今は、わたしの得意技でもある”場所の入れ替え”もうまくてきない。
「ぐすっ……らいお姉ちゃん、助けてぇ……。」
わたしは泣きながら、お姉ちゃんに助けてもらいたくてそんな言葉をいう。
けれど、わたしもわかってる。ライラックお姉ちゃんだって、このめいきゅうのどこかに閉じ込められてるから、わたしを助けるよゆうはないって……でも、わたしはなにもできなくて、なくしかできなくて……
『ふふっ、あはははははっ。泣くことしか出来ない妖精メイド……こんなガキまで雇うとは、あの女も愚かなものねぇ。』
「ひぃぅっ!?」
ちかくにあった、機械がうごきだして、そこから怖い声が聞こえてくる。
ボロボロのソファーのうしろにかくれて、声のした機械を見てみる。
『けれど、あなたには苦労させられたわ?泣き虫な妖精メイドさん……あなたのその能力、”場所を入れ替える程度の能力”かしら?それのせいで、あなたを閉じ込めるのには大掛かりな魔術陣が必要だったのよ?』
怖い声のする機械からそんな言葉が聞こえてくる。
『だから、せめてあなたの死に様だけは立派なものにしてあげる。あれだけ大掛かりな準備をしたのだから、幕引きも盛大に……ね?』
そんな声が聞こえたあと、床が光って、眩しくて目を手で隠す。
どすん!と大きな音が聞こえて、光らなくなったから、目を開けると……そこに居たのは、とっても大きなヘビ。
口を開ければ、わたしをひと口で飲み込みそうなほどの、大きな大きなヘビが、大きく広がった部屋の中にいた。
「ぴゃぁっ!」
『ふふっ、大蛇に飲まれて泣き叫ぶあなたを見届けたいけれど……私には時間が無いの。ひとり寂しく、死んでゆきなさい。』
その声が聞こえたあと、機械は大きなヘビがしっぽで叩き壊してしまう。
息を潜めて隠れようとするけれど、大きなヘビはわたしを睨んでいて、怖くてあしがうごかない。
ズリズリと大きなヘビがわたしの方にちかづいてくる。
「やぁ……みないで……こないでぇっ!!」
逃げようとするけれど、後ずさりしかできなくて……怖くてブルブル震えるしか、わたしはできなかった。
その時、ポケットから1枚のカードが落ちた。
「ふ、フランさまから貰ったおまもりがっ!」
落としたのはフランさまからお手伝いのお礼としてもらった、トランプに似た不思議な模様のカード。たいせつなわたしの宝物の1つ。
そのカードに手を伸ばそうとして、ヘビに吠えられ体がすくむ。
体がこわくて、ゆうことを聞かない……死にたくない、助けてっ
「たすけて、ふらんさまぁっ!」
わたしがそう叫んでも、もうおそくて……
大きな蛇の大きく開いた口が、私にちかづいていた。
~~~~~
「キヒッ」
……笑い声が、聞こえた。
恐る恐る、わたしはめを開く……そこにはフランさまが…………ちがう……これは、
どうしよう、わたしは、わたしはとんでもないことをしてしまったのかもしれない。
「ケヒッ……ヒヒヒッ……アハハハハハハハハッ!!あーア、まさカ……コんなかタチで、出らレるだなんテ……アー、でも一時的ナ召喚?ちぇー、時間制限付きの使イ魔魔術デの呼び出シかー……正気の私め、ああ成っテから用心深クなったジャないか。」
ダメな方のフランさまは、目の前の大きなへびなんて気にせず、ずっと独り言を言っている。
大きいへびは、ダメな方のフランさまに驚いているみたいで、大きな口を開けたまま固まっている。
「ンデ、お前がマスターってワケ?って、お前、正気の私のお気ニ入りノ
ダメな方のフランさまがわたしの方を振り向いて、顔を近づけてくる。
いい方のフランさまと違って、黒い目に赤黒い瞳が光っていて、目に光が無くて……口は笑っているのに、全然そんな感じはしなくて……こわい、こわいっ、こわいっ!
「あんなへびを壊すヨり、お前ヲ壊してアイツの目ノ前に投げ捨テ……チッ、攻撃も能力モ使えナいッ!ガッチガチに契約ヲ魔術式に盛リ込んデいたテタの!?」
ダメな方のフランさまが爪を伸ばして、わたしの目を傷つけようとしたけれど‥‥‥手を向けようとしたときには、ダメな方のフランさまは怒りだした。
「腹立ツ腹立つ腹立ツ~ッ!何モかも、フランの思イ通りになラナい~ッ!!」
ブンブンと腕を振り回して暴れるダメな方のフランさま……なんだかとっても、いやな予感がする。
「フランは強いンだぞーッ!フランは偉いんダぞーッ!!フランは怖イんだゾーッ!!!フランに怯エて、這いツクばって、顔色伺っテ、フランに気まマにおもちゃみタいに壊さレて、どうシてコンな目にって表情ガ見たイのにーッ!!
正気のアイツも、姉気取りのザコも、アイツの正気を保たセたあのクソメイドも!!嫌い、嫌イ……だぁーいきらぁーい!!ミンな、みんナ死んジャえバいいのにぃ―ッ!!」
ダメな方のフランさまが、そう叫ぶとキュッと可愛らしい音が聞こえてくる。
ダメな方のフランさまが、拳を握った音が……あっ!
「きゅっトしテ……ドッカーーーンッ!!」
私はメイド服のポケットから傘を取り出して、体をできるだけ小さくする。
そのあとすぐに、大きなへびの苦しそうな声が聞こえたかと思うと、パーンと風船が割れたような音が聞こえた。
そして、部屋の中なのに、雨が降ってきました……。
恐る恐る、傘を持ち上げてあたりを見渡してみると……あの大きなへびがダメな方のフランさまの能力ではかいされて、大量の血が雨みたいに降っていました。
鉄臭いにおい自体は、なれていたけれど……大きなへびだった肉片がそこらへんに転がっていて……いい方のフランさまが、いろいろやっていないと、自分がああなっていたのかと、想像しちゃった。
「うっ……」
吐きそうになったけれど、グッとこらえてダメな方のフランさまを見る。
「ワーい、わーい!あぁー、血の雨っテ最高~っ!」
そこにいたのは、まるで雨の中で遊んでる子供のように喜んでいるダメな方のフランさま……へびの血の雨のせいで、全身が真っ赤に染まっていて……とってもこわい。
……遊んでいる最中のダメな方のフランさまが、スゥーと体がうすくなって消えていき……あとには、わたしととても見ていられない部屋がのこりました……。
さっきまで、わたしはおくびょうだと思っていたけれど……そんなことがどうでもよくなるぐらい、今この場所は、ひどいことになっていた。
「うぅ~……誰でもいいから、みんなに会いたい…………。」
また大粒の涙がこぼれそうになっていた。