紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
いっぱい現れたフランの偽物とその中に混じっている本物のフランは、中々耳にしない罵倒をぶつけ合っていた。
普段は丁寧で優しい口調のフランが、あれだけ罵倒しているのを見ると……それぐらい、自分の姿になってるのが腹が立っていたんだろうなぁ。と、目の前の現実から目を逸らすような思考になる。
「この〇〇〇〇ッ!私の姿を真似してるんじゃないわよ!!」
「うるさいこの〇〇〇〇!あなたこそ真似してないでよ!!」
「アンタバカぁ?アタシこそ本物なのよ!偽物はとっとと消えなさいよ!!」
「私が本物だけど!?アンタのその○○〇〇ねじり切ってやる!!」
「まあまあ、野蛮なことね。さすがは偽物の私(わたくし)、品がないですわ~!」
「も~、やんなっちゃう!レーヴァテイン・レプリカがあればアンタらなんていちころなのに~!」
「うぅ、早く偽物を倒してお部屋に引きこもりたい……。」
「どうしよう……これ。」
わあわあ、きゃあきゃあ……普段のフランを見ているからこその、この姦しさは何というか……。
姉としては嬉しい反面、でもほとんど偽物なのよね。と言うちょっとした残念な気持ちが……。
「レミリアお嬢様、そろそろ現実逃避から戻ってきてください。」
「アイターっ!!?」
べしりと
まあ、細かいことは置いといて、
この廃屋敷のフロアボスとして召喚されたであろうドッペルゲンガーは、よりにもよってフランの姿を真似、しかもパメラ・スカーレットの手によって、レーヴァテイン・レプリカとパチュリーの通信魔術の妨害がされ、どれが本物かの判別を、今ここにいる私と、
ドッペルゲンガーの見分け方と言えば、完璧に姿や記憶をコピーしたわけではないので、本人にしかわからない質問をする事、と言うのが唯一の手段だと、昔読んだ本で書いてあった気がする。
二人にもドッペルゲンガーについて説明した……。
「フランお嬢様にしかわからない質問……ですか?」
「うーん、一応、何個かありますけれど……まずはフランお嬢様たちがこっちの声を聞かせるように落ち着かせないとダメそうですよ?」
「……それもそうね。」
パンパン!と、力強く手を叩いて気を引く。幸い、フランとフランの偽物たちは、その音に気付いたおかげで、私たちの話を聞いてくれるようになった。
「これから、アナタたちに本人しかわからない質問をするわ……私こそ本物だというのなら、答えて頂戴?」
「そんなことしなくても、私(わたくし)が本物ですわ、おねえさ―――」
私の言葉を無視した言葉遣いが丁寧なフランドールをグングニル・レプリカを投げつけて殺した。
そのフランドールは、言葉をつづける前に喉を穿たれ、ボトリと頭を落としながら、白い煙を巻いて、気持ちの悪い姿に変わった。
「もし、拒否したのなら……そいつみたいになるわよ。これは、お願いじゃないの……強制よ。」
「「「「「「「はぃっ!」」」」」」」
びしりとフランと偽物のフランが背筋を正して整列する。
この中に本物のフランも混ざっているはずだけれど、心なしかフランたちの視線が私を恐れているように感じた。
あとでお茶会で機嫌を取らないと……なんて考えながら3本目のグングニル・レプリカを創り出し、ついでに
「さて、じゃあ……最初の質問は
「はい!?いきなり過ぎませんかレミリア様ぁ?!」
「えーだって、いきなり私からじゃぁ面白みがないじゃない。」
「面白みがないっ!?レミリアお嬢様、一応、今は緊急事態ですよね!?急いでみんな助けなきゃいけないのに急に面白みを求めてどうしたん―――」
「―――やれ。」
「よろこんでやらせていただきまぁす!」
「うーん、うーん……えーっと、あっ、質問です!
「「「「「「豚肉」」」」」」
「人間……あっ!?」
ちなみに、ユグ君は豚肉が好きだが、そのままガツガツと食いつく訳ではなく、丁寧に解体したお肉をじっくりと味わうタイプだったりする。そう言えば、ユグ君も見ていないけれど、今頃どこにいるのかしら?
「見事よ
「お褒めにあずかり、光栄の極み。」
ドヤッとして胸を張る
「さて、
「は、はいっ!えーっとえーっとじゃあ……農園で育ている果物の中で特に多く育てているものは何ですか?」
「「「「「メイド長の好物のりんご!」」」」」
「ざ、ザクロ?えっ……?」
陰気なフランドールが、自分の答えが外れだったことに気付き表情が崩れて、命乞いしようとした途端、ざっくりと袈裟切りされ、ブシャァと血が飛び散った。化け物の癖に「しにたくない」と最期までフランっぽく演じていたのは敵ながら天晴ではあるが、白い煙と共に元に戻れば、ただの醜い存在である。
ちなみに、メイド長の好物が”りんご”であることは私や本物のフラン、そして古参メイドたちしか知らない情報だ。本人も無自覚だろうが、りんごを食べる時だけアホ毛が嬉しそうに動いているのだ。あと、普通に妖精メイドたちがりんご好きが多いっていうのもある。
「その調子よ
「すみませんレミリアお嬢様……私はもう、これ以上質問はないです~!」
しくしくと擬音が付きそうなぐらい涙を流し許しを請う
まあ、普段から頑張ってくれていることは知っているし、イジるのもこの辺にしておこう。そろそろ
「ふふっ、大丈夫よ
「もちろんです、レミリアお嬢様……では、ご質問させていただきますが、フランお嬢様のお部屋のタンスの奥に仕舞われているノートの中身は―――」
「「「「ノートなんてない!」」」」
「ちょっ、なんでそれしっ―――へ?」
また一人、今度は勝ち気なフランドールが、
「ふふっ……おっと、では次の質問です。」
「レミリアお嬢様、気のせいじゃなければ、今、
「メイド長を助けたらメイド長に教えましょう」
「レミリアお嬢さま、
「な、何でもないわ、でしょ
「はい、そうですね!」
「……じゃあ、次の質問です。メイド長の下着の好みは!?」
「―――なんて質問してんのよアンタ!?」
「―――なんて質問してるんですか
本格的にこの子ちょっと天然が過ぎるんじゃないかしら。いや、まあ、あの姉あってこの妹ありって考えるとまあ……二人のアンナが全力で首を横に振るビジョンが見えたわ……。
頭を抱えながら、フランドールたちの答えを待つと……
「「…………。」」
二人のフランは顔を赤らめて回答を控え―――
「白レースのドエロいの!」
「黒紐のマイクロタイプ!」
自分の性癖に正直なフラン二人は答えた瞬間に額にナイフが突き刺さってそのまま絶命した。
幸い、どっちもドッペルゲンガーだった。いや、それはそれで性癖に正直になったドッペルゲンガーは気色悪いが。
「私のお母様はそんな下品な下着は履きませんッッッ!!」
いや、アンタが質問として出題したんでしょうが……答えに逆切れしてどーするのよ……
と言うか、回答を控えた二人のフランはメイド長の下着の好みを知ってて、そのうえで顔を赤らめたの?えっ、メイド長普段からどんな下着履いてるのよ。
「ちなみにレミリアお嬢様、お母さまの下着の好みは水色のリボン付きです。普段はかぼちゃパンツで隠してますが、間違いなく履いております。」
「は?かわいい。少女かよ。美少女だったわ。(言わんでよろしい!)」
「レミリアお嬢様、本音と建前が逆になっています!!」
……コホン。
さて、残ったフランも後二人……ドン引きしていたフランと、普通に女の子っぽいフラン。最後のドッペルゲンガーはずいぶんうまく化けていたみたいだ。
「じゃあ次は―――」
「
「はいレミリアお嬢様。と言うわけで
「もごっ。」
これ以上
後ろから組み付いて、口に手を当てての口封じ……けれど
「さて、最後の質問は私よ。これに正確に答えた方を本物、と判断するわ。」
私がそう宣言すると、どっちかのフランがごくりと生唾を飲んだ。
「最後の質問よ……この私、レミリア・スカーレットの執務室にあるティーカップの内―――」
「―――割れた方は、私たちで直した思い出の品!」
先に答えたのは、普通に女の子っぽい方のフランドール。
「ですが―――」
「ッ!?」
「どうして割れたのか、答えなさい?」
「―――えっ、あっ……えっ?」
「……お姉さまと、喧嘩しちゃって、つい、能力で割っちゃった。」
ポツリと、ドン引きしていたフランが答える。
その答えを聞いて、私はグングニル・レプリカを投げた。
「……どう、して?」
私が投擲したグングニル・レプリカは、
シュゥ~と白い煙が噴き出し、フランだったドッペルゲンガーの化けの皮が剥がれてゆく。
完璧な変装と、記憶のコピーだった。けれど、完璧すぎた。
「あのカップを割ってしまったのは、まだ私が10歳の頃よ?まだ5歳の幼いフランが覚えているわけないじゃない。」
「お姉さま……っ!趣味が悪いよ~……。」
「ふふっ、ごめんなさいフラン。」
ギュッと、本物のフランを抱きしめる。
普段は大人びて淑女のフランだけれど、自分の偽物が現れるという想定外の事で、年相応の女の子になっていたのは、かわいかったが……すこし意地悪をし過ぎただろうか。
ばたりと最後のドッペルゲンガーが倒れ、「くそっくそっ」と悪態を吐きながら死んでいった。
「さてこれで、庭園迷宮第2層も完全攻略完了ね。」
「終わってみれば呆気なかったですね。」
「むぐ~(それでもなぜか、長く感じました。)」
少しだけ、肩の力を抜きながら……私は、私を抱きしめているフランの頭を撫でるのだった。