紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
side:プリム
「はぁああッ!」
「ギャーーーーッ!」
使い慣れないショートソードを振るい、醜悪な黒いゴブリンを斬り捨てる。
紫色のきったない血を撒き散らしながら、斬り捨てた黒いゴブリンは倒れるが、周りを見渡せば似たようなゴブリンがゾロゾロと棍棒やら拳やら、ボロボロの剣や槍を構えていた。
倒れた死体だけでも、この場所だと60体はくだらなさそうなのに……見ただけで動いているゴブリンは100体以上いそうで、数えるのもおっくうになる。
もう時間も分からないほど、この庭園迷宮の湖での戦いは続いていて……私も、いつ寝たのか忘れてしまうぐらい、戦い続けているような気がする。
こういう、手荒なことは、ルージュかブラウの特技だ……魔術が得意なノワールならまだしも、戦いの場においては弓しか取り柄のない私に、こういった荒事は向いていない。それに、長い事ディスクワークのお仕事が長かったからか、運動不足も手伝って、正直、体中が筋肉痛で悲鳴を上げている。
「はぁ……はぁ……」
息を整えながら、ショートソードを構え直す。
ケガをした戦闘妖精メイドから借りたもので、よく手入れされたものだったけれど、もうすっかりボロボロ……。ヘスティーナに叱られそうね。なんて考えつつも、敵から目を外さないでおく。
敵でる黒いゴブリンもまた、威嚇やウロチョロするぐらいしかせず、完全に私を舐め腐っている。それに、奴らの視線は警戒……と言うよりも、私の体に向けられている。
下心が丸見えの、胸やおしりにしか視線を向けておらず、鼻息を荒くしている奴や鼻の下を伸ばしている奴が多い。私のスタイルは、メイド長の中でも平均的なもので、何の面白みもないと思うのだが……。
それでも、こんな奴らに見られたという不快感が、段々イライラに変わって募り、冷静さを失わせかけている。
警戒を続けていると、私の背後から黒いゴブリンの短い悲鳴と共に、何人かの狼女の警備兵の子や、戦闘妖精メイドの気合の入った叫び声が聞こえてくる。
「プリム雑務メイド長!救援に来ました!!」
「おそい……のよぉっ!」
息も絶え絶えになりながら、悪口が少しだけ出てしまう。
実をいうと、私は一人でこの大軍の相手を引き受けたように見えるが、実際はその逆……みんなと合流しようと移動をしていたら、敵の本隊とぶつかってしまったというのが正解だ。
「申し訳ありません!ですが、プリム様のご活躍で、大半の妖精メイドたちを救出できました!!」
「……大半の?」
「まだ救出できていないのは、セキュアちゃん以下特別なメイドたちだけです!!」
「…………助けに、行きなさいっ。まだ私はッ」
「彼女たちより、プリム様の方が消耗しておられます!ここは大人しく、引き下がってください!!」
彼女の言い分も正しい……強がってはいるが正直限界だ。
それでも、私は……ディスクワーク中心の雑務メイド隊のメイド長とは言え、メイド長だ。メイドたちより先に救出されることは、許されない。私の立場は、メイドたちを統率し、護る責任がある。
「オリエット隊長!」
「どうした!?」
と、私に肩を貸してくれている狼女の警備兵の子に、別の狼女の警備兵の子が駆けつけてくる。
その様子は少し焦っているような、けれど嬉しそうな表情で―――
「―――敵軍本拠地、その後方にレミリアお嬢様の御旗を確認!!本隊到着、救援です!!」
その言葉を聞いただけで、私は力が少し抜けた。来た。レミリアお嬢様が、フランお嬢様が……来た。
それも、私たちを襲う敵の……根城のすぐ後ろに出現した。という事は、第2層に続く階段は、そこにある。
この階層にバラバラになっていたメイドたちは、既にほぼすべて救出されている。
敵の本隊も……事故とはいえ私が戦力を少しだけ削る結果になっている。
「オリエット……」
「プリム様?」
「……私、少し疲れたわ。」
「私たちの陣までお連れします。」
「…………たの、む……わ。」
慣れない近接戦をしていて、そして極度の緊張がほぐれて……私の瞼がゆっくりと視界を閉ざしてゆく。
狼女の警備兵の子……オリエットの声が聞こえてくるけれど……眠すぎるのでそのまま眠ることにした。
それに大丈夫だよ、オリエット……今のレミリアお嬢様なら、大丈夫。必ず勝てるよ。