紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ メディーの変わる日

 

パメラ・スカーレットの魔術により、庭園迷宮第3層”湖”に転移させられたメディーは、付近に飛ばされた狼女の警備兵……オルガと共に、脱出を目指し、”湖”をさまよっていた。

しかし、彼らの行く先に、黒いゴブリンの群れが立ちふさがり、メディーとオルガは辛くも勝利をおさめたが……

 

メディーは、オルガに肩を貸し、ひたすらに歩いていた。

そして、肩を貸されているオルガは、息を荒くし、わき腹からぽたぽたと血を流していた。

辛くも黒いゴブリンの群れから勝利をおさめ逃れた、二人だったが……メディーを後ろから襲おうとしていた黒いゴブリンからオルガが庇い、彼女はわき腹に深手を負ってしまっていたのである。

メディーが咄嗟に、白衣を破き、その切れ端で応急処置をしても、こうして血がポタポタと垂れてしまう程の出血……オルガがもし、脆弱な人間だったのであれば、とっくに死んでいたであろう出血は、狼女だからこそ、ギリギリ生きている状態だった。

 

「メディー……せんせぇ、足手まといな私は、おいて……早く避難を」

「バカなこと言ってんじゃねぇッ!」

 

弱気になるオルガに、メディーは一喝する。

メディーにとってオルガは、いや、オルガを始めとした狼女たちは、自分の大切な仲間だ。

そんな仲間が、死にかけているのに、置いて行けるか、死なせてたまるか、メディーの頭はそれでいっぱいだった。

メディーの前世は医者だ。口の悪い名医として、よく知られた医者だった。

 

―――そして、医者だからこそ、()()()()()()()……

 

よぎった考えをメディーは振り払い、ひたすらに脱出へ向けてひたすらに歩き続ける。

段々とメディーにかかる重さと、抜けていく温もりに、メディーは涙をこらえることができなかった。

楽観視していた、みんなならきっと大丈夫だと、想っていた。

自身が初めて参加した戦いである”聖母(マリア)戦争”でも、怪我した奴らはいた。でも、死に至るような怪我ではなかった。だから、油断していた。準備をしていなかった。心構えを、忘れていた。

メイド長に、やんわりと注意されていた、医者はいつでも動けるように、器具が無くても治療できるように魔術を習えと、万全の準備をしていろと言われたのを……油断と、慢心で……忘れていたんだ。メディーの後悔がじわりじわりと心を焦がす。オルガの重さが、冷たさが、重く重くのしかかる。

 

(俺は、医者だッ!仲間一人、救えないで……畜生ッ!!)

 

深い後悔が心を焦がし、あと一歩、踏み出そうとしたとき。

オルガの力がフッと抜け、地面に倒れこんだ。

 

「っ、おい……嘘だ、だめ……目を、開けてくれッ!!」

「うっ……ううっ。」

 

まだ、息はある。弱弱しいが、脈もまだある。

けれど、血が……血が、止まらない。

 

「くそっ、くそっ!くそっくそぉおおおっ!!止まれ、止まれよッ……止まってくれよぉッ!!」

 

慟哭と悔しさを響かせながら、傷口を強く圧迫する。

鉄錆びの臭いが、気持ちわるい。オルガの顔色が、白くなってゆく。

 

『哀れだなぁ。』

 

そこに、パメラ・スカーレットの声が聞こえてくる。

 

『前世の記憶を持ち……医者だったからこそ、目の前の命を救えない悔しさに涙を流すしかない……実に哀れだ。』

「なあ……オルガ、まだ、番ができてないんだろ?いつか、赤ん坊を俺に抱えさせてくれるんだろ?まだ、まだ死ぬなよぉッ!」

『……絶望に打ちひしがれ、私の声も聞こえないか…………嗚呼、そうだ。一つ貴様に断れない交換条件を出してやろう。

 

―――貴様の命を差し出せ。そうすれば、その娘は治療してやろう。』

 

パメラの言葉に、メディーは思わず顔をあげた。

自分の命を、パメラに捧げれば……オルガは、助かる?

 

『あぁ、そうだ。貴様の命と引き換えに、そこの娘の命を助ける。ギブアントテイク……まっとうな、等価交換だ。』

「……お前は、治せるんだな?」

『約束しよう……貴様の命を対価に、その娘の傷を癒すとな。』

 

まさに、悪魔の取引。

絶望し、パニックを起こしているメディーに持ちかけらえたパメラの取引は―――

 

―――その実、パメラは守る気などなかった。

 

パメラにとって、オルガもレミリアの()()()成長のためには不必要な存在。たかが、羽虫一匹の命と引き換えに、わざわざ治療してやる必要などないのだ。メディーの命を奪い、外見だけ治してやれば、内部で血を流し、やがて死ぬ。パメラはこれほど、うまくいった事例に嬉しさを隠せ切れていなかったのだる。

 

『さあ、早く望め。出なければそこの娘は死ぬぞ。』

「―――だが、断る!!」

『なっ!?』

「俺は、医者だ……自分で面倒を見ると決めた患者は、最期まで面倒を見る医者だ!!テメェに……テメェに仲間を任せられるかよ!!」

『……愚かな。では、貴様の手の内でゆっくりと仲間が死ぬ感覚を味わうがいい……どちらにせよ、貴様にも死んでもらうとするがな。』

 

その声が聞こえた直後、蓄音機が壊れる。

そして、ドスン!ドスン!と大きな足音を立て、一つ目の黒い巨人が、木々をかき分け、血の臭いをたどりやってきていた。

 

「……ここまで、か」

 

メディーはオルガの患部を抑えながら、ポツリとつぶやいた。

メディーの脳裏には、自分が妖精として生きてきたこれまでが、思い浮かんでは消えてゆく……走馬灯が見えていた。

メディーとして転生し、セキュアに出会い……セキュアの住処に居候することになって、セキュアの迷子に何度も頭を悩ませて……巡り巡って、メイド長にであり、セキュアに頼まれ紅魔館(こうまかん)で働きだして……たくさんの仲間や、友ができた。あの特別牢獄を知った時は、メイド長に掴みかかったこともあった。

 

「……セキュア、俺がいなくても、もう大丈夫だよな。」

 

最期に思い浮かんだのは、セキュアの笑顔。

とんでもない方向音痴で、子供っぽくてアホな親友。いっつも手を焼かされたが……紅魔館(こうまかん)で働くようになってからは、成長して、友達もいっぱい作って―――

 

黒いサイクロプスの棍棒が勢いよく振り下ろされる。

メディーは目をつむり……せめて痛みが一瞬であることを祈り―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ぬくもりのある炎が、メディーとオルガを包んだ。

 

 

 

 

 

「道案内、かんりょーです!」

「滑り込み、セェーフッ!!」

 

聞こえてきた声に、メディーは目を開いて、そして大粒の涙を浮かべた

 

「セキュア……フランお嬢!!」

 

「メディー!もう、大丈夫だよ!!」

「メディーさん、すぐ片付けちゃうから待ってて!でりゃーーーっ!!」

 

サイクロプスの棍棒を、レーヴァテインで輪切りにし、そのままサイクロプスの顔面付近に跳躍するフランドール。そしてそのまま、焦った様子で瞳孔を小さくした目玉に拳を突き刺し、殴り飛ばした!!

 

「きゅっとして、ドカーン!!」

 

殴り飛ばされた、サイクロプスはそのままフランドールの能力で弾けるように死んでいった。

勝利もつかの間、フランはメディーとセキュア、そしてオルガの近くに慎重に着地し、回復魔術と痛み止めの魔術を使用する。

 

「……だめ、血が足りてないッ!メディー、この子の血液の回復手段は!?」

「っ!俺の血を使え!妖精の血だが、O型……誰にでも血を分けられる!!」

「わかった……すこしクラっとするけど、許してねッ!!」

 

フランはメディーの手首をつかみ、オルガの心臓に手を添えた。

そして、何かしらの赤い色の魔術陣を起動させると……メディーは自分の血が大きく減った感覚が起き、貧血で倒れてしまう。

 

「………オル、ガは?」

「大丈夫……間に合ったみたい。」

「……よかったぁ。」

 

メディーはフランのその言葉を聞いて、眠るように気絶してしまった。

血が一気に無くなったこと、フランが来たことによりアドレナリン切れで気絶したのだろう。

幸いにも、メディーは妖精だ。寝ていればその内、魔力が生命維持を行って起きてくるだろう。

 

「私の役割は……とりあえずこれで終わりかな。」

 

ふぅーと息を付き、メディーの手を心配そうに握るセキュアの頭を撫でる。

 

「……あとは任せたよ、お姉さま。」

 

レミリアに与えられた命令は、これで終わり……あとは、レミリアが頑張るだけだ。

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