紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
パメラ・スカーレットの魔術により、庭園迷宮第3層”湖”に転移させられたメディーは、付近に飛ばされた狼女の警備兵……オルガと共に、脱出を目指し、”湖”をさまよっていた。
しかし、彼らの行く先に、黒いゴブリンの群れが立ちふさがり、メディーとオルガは辛くも勝利をおさめたが……
メディーは、オルガに肩を貸し、ひたすらに歩いていた。
そして、肩を貸されているオルガは、息を荒くし、わき腹からぽたぽたと血を流していた。
辛くも黒いゴブリンの群れから勝利をおさめ逃れた、二人だったが……メディーを後ろから襲おうとしていた黒いゴブリンからオルガが庇い、彼女はわき腹に深手を負ってしまっていたのである。
メディーが咄嗟に、白衣を破き、その切れ端で応急処置をしても、こうして血がポタポタと垂れてしまう程の出血……オルガがもし、脆弱な人間だったのであれば、とっくに死んでいたであろう出血は、狼女だからこそ、ギリギリ生きている状態だった。
「メディー……せんせぇ、足手まといな私は、おいて……早く避難を」
「バカなこと言ってんじゃねぇッ!」
弱気になるオルガに、メディーは一喝する。
メディーにとってオルガは、いや、オルガを始めとした狼女たちは、自分の大切な仲間だ。
そんな仲間が、死にかけているのに、置いて行けるか、死なせてたまるか、メディーの頭はそれでいっぱいだった。
メディーの前世は医者だ。口の悪い名医として、よく知られた医者だった。
―――そして、医者だからこそ、
よぎった考えをメディーは振り払い、ひたすらに脱出へ向けてひたすらに歩き続ける。
段々とメディーにかかる重さと、抜けていく温もりに、メディーは涙をこらえることができなかった。
楽観視していた、みんなならきっと大丈夫だと、想っていた。
自身が初めて参加した戦いである”
メイド長に、やんわりと注意されていた、医者はいつでも動けるように、器具が無くても治療できるように魔術を習えと、万全の準備をしていろと言われたのを……油断と、慢心で……忘れていたんだ。メディーの後悔がじわりじわりと心を焦がす。オルガの重さが、冷たさが、重く重くのしかかる。
(俺は、医者だッ!仲間一人、救えないで……畜生ッ!!)
深い後悔が心を焦がし、あと一歩、踏み出そうとしたとき。
オルガの力がフッと抜け、地面に倒れこんだ。
「っ、おい……嘘だ、だめ……目を、開けてくれッ!!」
「うっ……ううっ。」
まだ、息はある。弱弱しいが、脈もまだある。
けれど、血が……血が、止まらない。
「くそっ、くそっ!くそっくそぉおおおっ!!止まれ、止まれよッ……止まってくれよぉッ!!」
慟哭と悔しさを響かせながら、傷口を強く圧迫する。
鉄錆びの臭いが、気持ちわるい。オルガの顔色が、白くなってゆく。
『哀れだなぁ。』
そこに、パメラ・スカーレットの声が聞こえてくる。
『前世の記憶を持ち……医者だったからこそ、目の前の命を救えない悔しさに涙を流すしかない……実に哀れだ。』
「なあ……オルガ、まだ、番ができてないんだろ?いつか、赤ん坊を俺に抱えさせてくれるんだろ?まだ、まだ死ぬなよぉッ!」
『……絶望に打ちひしがれ、私の声も聞こえないか…………嗚呼、そうだ。一つ貴様に断れない交換条件を出してやろう。
―――貴様の命を差し出せ。そうすれば、その娘は治療してやろう。』
パメラの言葉に、メディーは思わず顔をあげた。
自分の命を、パメラに捧げれば……オルガは、助かる?
『あぁ、そうだ。貴様の命と引き換えに、そこの娘の命を助ける。ギブアントテイク……まっとうな、等価交換だ。』
「……お前は、治せるんだな?」
『約束しよう……貴様の命を対価に、その娘の傷を癒すとな。』
まさに、悪魔の取引。
絶望し、パニックを起こしているメディーに持ちかけらえたパメラの取引は―――
―――その実、パメラは守る気などなかった。
パメラにとって、オルガもレミリアの
『さあ、早く望め。出なければそこの娘は死ぬぞ。』
「―――だが、断る!!」
『なっ!?』
「俺は、医者だ……自分で面倒を見ると決めた患者は、最期まで面倒を見る医者だ!!テメェに……テメェに仲間を任せられるかよ!!」
『……愚かな。では、貴様の手の内でゆっくりと仲間が死ぬ感覚を味わうがいい……どちらにせよ、貴様にも死んでもらうとするがな。』
その声が聞こえた直後、蓄音機が壊れる。
そして、ドスン!ドスン!と大きな足音を立て、一つ目の黒い巨人が、木々をかき分け、血の臭いをたどりやってきていた。
「……ここまで、か」
メディーはオルガの患部を抑えながら、ポツリとつぶやいた。
メディーの脳裏には、自分が妖精として生きてきたこれまでが、思い浮かんでは消えてゆく……走馬灯が見えていた。
メディーとして転生し、セキュアに出会い……セキュアの住処に居候することになって、セキュアの迷子に何度も頭を悩ませて……巡り巡って、メイド長にであり、セキュアに頼まれ
「……セキュア、俺がいなくても、もう大丈夫だよな。」
最期に思い浮かんだのは、セキュアの笑顔。
とんでもない方向音痴で、子供っぽくてアホな親友。いっつも手を焼かされたが……
黒いサイクロプスの棍棒が勢いよく振り下ろされる。
メディーは目をつむり……せめて痛みが一瞬であることを祈り―――
―――ぬくもりのある炎が、メディーとオルガを包んだ。
「道案内、かんりょーです!」
「滑り込み、セェーフッ!!」
聞こえてきた声に、メディーは目を開いて、そして大粒の涙を浮かべた
「セキュア……フランお嬢!!」
「メディー!もう、大丈夫だよ!!」
「メディーさん、すぐ片付けちゃうから待ってて!でりゃーーーっ!!」
サイクロプスの棍棒を、レーヴァテインで輪切りにし、そのままサイクロプスの顔面付近に跳躍するフランドール。そしてそのまま、焦った様子で瞳孔を小さくした目玉に拳を突き刺し、殴り飛ばした!!
「きゅっとして、ドカーン!!」
殴り飛ばされた、サイクロプスはそのままフランドールの能力で弾けるように死んでいった。
勝利もつかの間、フランはメディーとセキュア、そしてオルガの近くに慎重に着地し、回復魔術と痛み止めの魔術を使用する。
「……だめ、血が足りてないッ!メディー、この子の血液の回復手段は!?」
「っ!俺の血を使え!妖精の血だが、O型……誰にでも血を分けられる!!」
「わかった……すこしクラっとするけど、許してねッ!!」
フランはメディーの手首をつかみ、オルガの心臓に手を添えた。
そして、何かしらの赤い色の魔術陣を起動させると……メディーは自分の血が大きく減った感覚が起き、貧血で倒れてしまう。
「………オル、ガは?」
「大丈夫……間に合ったみたい。」
「……よかったぁ。」
メディーはフランのその言葉を聞いて、眠るように気絶してしまった。
血が一気に無くなったこと、フランが来たことによりアドレナリン切れで気絶したのだろう。
幸いにも、メディーは妖精だ。寝ていればその内、魔力が生命維持を行って起きてくるだろう。
「私の役割は……とりあえずこれで終わりかな。」
ふぅーと息を付き、メディーの手を心配そうに握るセキュアの頭を撫でる。
「……あとは任せたよ、お姉さま。」
レミリアに与えられた命令は、これで終わり……あとは、レミリアが頑張るだけだ。