紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

136 / 161
□ 幻惑の妖精はむそうする

 

フランドールがキャスパリーグと対峙している一方、黒いオーガに率いられた黒いゴブリンとオークの群れは一匹の闇妖精によって足止めされていた。

 

「グォォォオオオッ!セ、セカイガサカサマジャナイカ!ドウナッテイル!?」

「オ、オマエハナニヲイッテイルンダ!?オォオオッ、コッチニクルナァアアァツ!!」

「ナ、ナニモキコエナイ!オトガキコエナイゾ!!ダ、ダレカオトヲ、オトヲクレェエエエエッ!?」

「チクショウ!ナニガオコッテイル!?ナゼ、オレタチハタカガイッピキノヨウセイニオクレヲトッテイル!!?」

 

コチラも、阿鼻叫喚の地獄絵図……そして、それを創り出した闇妖精……ウルティマは、ロングソードとソードブレイカーを振るい、隊長たる黒いオーガを一匹一匹の間を縫うように走り回り、確実に潰していた。

道中の黒いゴブリンや黒いオークも斬り、ときおり混ざっているアンデッドの兵士には、ソードブレイカーでそのボロボロのショートソードにとどめを刺し、的確に首と手足を落として行動不能にさせていた。

 

(このまま数を減らしていけば、確実に勝てますね。)

 

ウルティマはそう確信していた。

事実、ウルティマの確信は間違ったものではなかった。ウルティマの能力である”対象を幻惑させる程度の能力”は相手の数が多ければ多いほど、相手の視界を混乱させる左目と聞いたものの聴覚を麻痺させる髪の効果は減少する。この弱点は、簡単に克服したり強化できるわけではなかった。何せ、発動条件が左目の視界に納めなければならず、相手に耳をふさがれると聴覚をなくす効果を発動できず、鍛えようにも物理的遮断方法と言う明確な防ぎようがある以上、いくら鍛えたところで防がれてしまえば無意味。

であればと美鈴(メイリン)がウルティマにしたアドバイスはこうだ。能力を使う相手を限定する事。

例えば、格上の相手や指揮者に対して、その能力を利用する。格下だと舐め腐っている相手の場合、視界に入り次第、そして音を利かせ次第に視界か聴覚をなくし、指揮官であれば状況を見たり聞いたりできずに指示をできなくなってしまう。

そのアドバイスが見事にかみ合った結果が、黒いオーガたちの阿鼻叫喚であったのである。

 

(……もっと強くなるために、美鈴(メイリン)隊長と結婚しよう。)

 

ぶっ飛んだ思考をしながら、これ以上の強さを求めたウルティマは最後の黒いオーガの首をロングソードで切り落とし、残った黒いゴブリンや黒いオーク、アンデッドの兵士たちの掃討を開始しようとした。

しかし、既に黒いゴブリンや黒いオークは、黒いオーガが全員倒された時点で散り散りになって逃げだしており、アンデッドの兵士たちだけが武器を向けていたのであった。

 

「申し訳ないのですが、アンデッドでは相手にならないので早急におくたばりくださいませ。」

 

ロングソードとソードブレイカーをクロスさせ、火花を散らさせた後に立ち向かってきたアンデッドの兵士たちに向けて突撃するウルティマ。

警備隊でアンナのアンデッドの殺し方講座を受けていたウルティマは、丁寧にそして迅速にアンデッドの兵士たちを始末していたのだが―――

 

(―――一人だけ、毛色の違う敵がいますね。)

 

全滅させた黒いオーガたちと同じ、黒い肌のオーガが現れたのだが、しかしそのオーガは様子が他のオーガと随分違った。

まず、姿。黒いオーガたちは頭髪は赤く、筋骨隆々で大柄だ。しかし、現れた黒いオーガは頭髪は白くなり、かつてはムキムキだった痕跡を残すだけの細い体を持ち、随分と小柄な年老いたオーガが、一本の見たことのない刀剣を持ち見慣れない服装を纏って、そこにいた。

そして次に、ウルティマの視線が言ったのは、その年老いたオーガの目と耳。

 

(目が白く濁っていて、耳は切り落とされて、包帯かなにかで塞がれていますね。)

 

おそらく相当な年齢なのだろう、目が白く濁り、おそらく見えていない。耳も過去の戦いで失い、聴覚を失っているのだろう。

……ウルティマはそんな相手を見て、楽勝だと思った。何せ、”対象を幻惑させる程度の能力”を使わずとも、相手はコチラを見ることはでいないし、音を頼りに反撃することもない。ただの自殺願望の年老いたオーガ。ウルティマはそう考えていた。

 

(生きているのもつらいでしょうし、早く楽にして差し上げましょう。)

 

ウルティマはゆっくりと年老いたオーガに近づき、ロングソードを構えて年老いたオーガに振るう。

しかし次の瞬間、ウルティマの一撃は年老いたオーガの持つ刀剣に防がれ、大きな隙を晒してしまう。

一瞬の出来事にウルティマはうまく対応はできずとも、美鈴(メイリン)に叩き込まれた咄嗟の回避行動をとった。

直後、ウルティマが居た位置に、鋭い斬撃が光の筋を残して振りぬかれていた。

 

「……◆◆◆◆◆(避けおったか)。」

 

聞き慣れない言語(日本語)を話す年老いたオーガに、ウルティマは自身の評価を覆さずを得なかった。

コイツは、自殺願望の年老いたオーガ(ただのおいぼれ)などではない。その年になるまで戦い続けて来た歴戦のオーガ(生き残り)だ。

過去に、美鈴(メイリン)だけでなくブラウやノワールと言った強者たちに散々教え込まれた言葉、”老兵に気をつけろ”と言う言葉をウルティマは思い出し。気を引き締め治すことにした。

 

◆◆◆◆◆(雰囲気が変わりおった)◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆(よく教え込まれた良い戦士じゃ)。」

「狙えるとしたら、一撃のみ……。」

 

ウルティマは、相手と自分の実力差を痛感していた。

なにせ、相手の隙が無い。片刃しかない薄く長いその()は、油断なく構えられており、盾も短剣も持たないその無防備な姿は間違いなく、ただ相手を斬ることに特化した姿。

 

であれば、ウルティマが狙えるのは対応をさせない初見殺し……。

 

◆◆◆◆◆(来るか、小娘!)

「……ヤァッ!!」

 

ウルティマが、身体をバネのように弾かせ、年老いたオーガの懐に飛び込む。

それを感じ取った年老いたオーガは、刀を抜刀……それと同時に、手首のひねりを利用しつつ()を振り上げ、飛び込んできたウルティマを切ろうとしていた。盲目になり、耳も聞こえない年老いたオーガは、その振り上げた相手が本物だと思っていたが、振り上げた刀の感触は空を切り、身体が次の行動をできなくなってしまう。

()を振り上げられた、その一瞬、ウルティマはより下に、態勢を低くした。一瞬でも態勢を低くするタイミングを間違えれば、年老いたオーガの持つ()によって、斬られていたほどギリギリのタイミングで、下に潜り込み、ソードブレイカーを構えて年老いたオーガの胸に突き立てたのである。

 

「……◆◆◆◆◆(見事)。」

「さようならです異国の戦士。次は女の子になって一緒に働きましょうね。」

◆◆◆◆◆(何と言ってるが分からぬが)◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆(おそらく頓珍漢な言葉なのはわかるのぉ)……。」

 

その言葉を最後に、年老いたオーガがぐらりと倒れた。

ウルティマはその年老いたオーガの胸からソードブレイカーを抜き、珍しい武器であるその()を抜き、丁寧に鞘に納めて奪い取ることにする。

彼が長年使い続けて来た宝物ではあるものの、戦いに出ている以上奪われることも仕方のないと理解してくれるだろう。と、ウルティマは考えていたのである。

すると―――

 

「あっ、居た!ウルティマちゃん!」

 

そこに、狼女の小隊がやってくる。

少しボロボロなのを見るになにかと戦っていたらしい。

 

「よかった、無事だったんだねウルティマちゃん!」

「怪我はなさそうだね……それに、その武器って?」

「わわっ、みなさん落ち着いてください。私はアンナ様のように二人と言うわけじゃないんです。」

 

ウルティマは、しばらく狼女の正体に甘やかされながら、湖を脱出するのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。