紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
フランドールがキャスパリーグと対峙している一方、黒いオーガに率いられた黒いゴブリンとオークの群れは一匹の闇妖精によって足止めされていた。
「グォォォオオオッ!セ、セカイガサカサマジャナイカ!ドウナッテイル!?」
「オ、オマエハナニヲイッテイルンダ!?オォオオッ、コッチニクルナァアアァツ!!」
「ナ、ナニモキコエナイ!オトガキコエナイゾ!!ダ、ダレカオトヲ、オトヲクレェエエエエッ!?」
「チクショウ!ナニガオコッテイル!?ナゼ、オレタチハタカガイッピキノヨウセイニオクレヲトッテイル!!?」
コチラも、阿鼻叫喚の地獄絵図……そして、それを創り出した闇妖精……ウルティマは、ロングソードとソードブレイカーを振るい、隊長たる黒いオーガを一匹一匹の間を縫うように走り回り、確実に潰していた。
道中の黒いゴブリンや黒いオークも斬り、ときおり混ざっているアンデッドの兵士には、ソードブレイカーでそのボロボロのショートソードにとどめを刺し、的確に首と手足を落として行動不能にさせていた。
(このまま数を減らしていけば、確実に勝てますね。)
ウルティマはそう確信していた。
事実、ウルティマの確信は間違ったものではなかった。ウルティマの能力である”対象を幻惑させる程度の能力”は相手の数が多ければ多いほど、相手の視界を混乱させる左目と聞いたものの聴覚を麻痺させる髪の効果は減少する。この弱点は、簡単に克服したり強化できるわけではなかった。何せ、発動条件が左目の視界に納めなければならず、相手に耳をふさがれると聴覚をなくす効果を発動できず、鍛えようにも物理的遮断方法と言う明確な防ぎようがある以上、いくら鍛えたところで防がれてしまえば無意味。
であればと
例えば、格上の相手や指揮者に対して、その能力を利用する。格下だと舐め腐っている相手の場合、視界に入り次第、そして音を利かせ次第に視界か聴覚をなくし、指揮官であれば状況を見たり聞いたりできずに指示をできなくなってしまう。
そのアドバイスが見事にかみ合った結果が、黒いオーガたちの阿鼻叫喚であったのである。
(……もっと強くなるために、
ぶっ飛んだ思考をしながら、これ以上の強さを求めたウルティマは最後の黒いオーガの首をロングソードで切り落とし、残った黒いゴブリンや黒いオーク、アンデッドの兵士たちの掃討を開始しようとした。
しかし、既に黒いゴブリンや黒いオークは、黒いオーガが全員倒された時点で散り散りになって逃げだしており、アンデッドの兵士たちだけが武器を向けていたのであった。
「申し訳ないのですが、アンデッドでは相手にならないので早急におくたばりくださいませ。」
ロングソードとソードブレイカーをクロスさせ、火花を散らさせた後に立ち向かってきたアンデッドの兵士たちに向けて突撃するウルティマ。
警備隊でアンナのアンデッドの殺し方講座を受けていたウルティマは、丁寧にそして迅速にアンデッドの兵士たちを始末していたのだが―――
(―――一人だけ、毛色の違う敵がいますね。)
全滅させた黒いオーガたちと同じ、黒い肌のオーガが現れたのだが、しかしそのオーガは様子が他のオーガと随分違った。
まず、姿。黒いオーガたちは頭髪は赤く、筋骨隆々で大柄だ。しかし、現れた黒いオーガは頭髪は白くなり、かつてはムキムキだった痕跡を残すだけの細い体を持ち、随分と小柄な年老いたオーガが、一本の見たことのない刀剣を持ち見慣れない服装を纏って、そこにいた。
そして次に、ウルティマの視線が言ったのは、その年老いたオーガの目と耳。
(目が白く濁っていて、耳は切り落とされて、包帯かなにかで塞がれていますね。)
おそらく相当な年齢なのだろう、目が白く濁り、おそらく見えていない。耳も過去の戦いで失い、聴覚を失っているのだろう。
……ウルティマはそんな相手を見て、楽勝だと思った。何せ、”対象を幻惑させる程度の能力”を使わずとも、相手はコチラを見ることはでいないし、音を頼りに反撃することもない。ただの自殺願望の年老いたオーガ。ウルティマはそう考えていた。
(生きているのもつらいでしょうし、早く楽にして差し上げましょう。)
ウルティマはゆっくりと年老いたオーガに近づき、ロングソードを構えて年老いたオーガに振るう。
しかし次の瞬間、ウルティマの一撃は年老いたオーガの持つ刀剣に防がれ、大きな隙を晒してしまう。
一瞬の出来事にウルティマはうまく対応はできずとも、
直後、ウルティマが居た位置に、鋭い斬撃が光の筋を残して振りぬかれていた。
「……
コイツは、自殺願望の
過去に、
「
「狙えるとしたら、一撃のみ……。」
ウルティマは、相手と自分の実力差を痛感していた。
なにせ、相手の隙が無い。片刃しかない薄く長いその
であれば、ウルティマが狙えるのは対応をさせない初見殺し……。
「
「……ヤァッ!!」
ウルティマが、身体をバネのように弾かせ、年老いたオーガの懐に飛び込む。
それを感じ取った年老いたオーガは、刀を抜刀……それと同時に、手首のひねりを利用しつつ
「……
「さようならです異国の戦士。次は女の子になって一緒に働きましょうね。」
「
その言葉を最後に、年老いたオーガがぐらりと倒れた。
ウルティマはその年老いたオーガの胸からソードブレイカーを抜き、珍しい武器であるその
彼が長年使い続けて来た宝物ではあるものの、戦いに出ている以上奪われることも仕方のないと理解してくれるだろう。と、ウルティマは考えていたのである。
すると―――
「あっ、居た!ウルティマちゃん!」
そこに、狼女の小隊がやってくる。
少しボロボロなのを見るになにかと戦っていたらしい。
「よかった、無事だったんだねウルティマちゃん!」
「怪我はなさそうだね……それに、その武器って?」
「わわっ、みなさん落ち着いてください。私はアンナ様のように二人と言うわけじゃないんです。」
ウルティマは、しばらく狼女の正体に甘やかされながら、湖を脱出するのであった。