紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ 無垢な妖精

 

湖での戦いも終わりに差し掛かり、静寂が増えて来た湖の片隅で、一人の妖精が草むらの中に隠れていた。

 

「……みつかって、ない。」

 

その妖精の名前は、メア。

妖精メイドの中で最も幼く、パチュリーに育てられている妖精だ。

ガサリと草むらから顔をのぞかせ、辺りに敵がいないことを確認するとゆっくり草むらから出て、メイド服についた汚れや葉っぱを落としてゆく。

 

「むふーっ……かくれんぼの、てんさい。」

 

ここに転移されてから一度も見つからなかった誇らしかったのだろう、メアは子供らしく自慢げに鼻を鳴らした。

メアはパチュリーに育てられたおかげで、紅魔館(こうまかん)内で最も幼い妖精ながらも、既に落ち着いた性格に育っているがそれでもまだまだ幼い妖精。子供っぽい所は、まだまだあるようだった。

 

「……みんなに、ごうりゅうしないと。」

 

自慢げにしていたメアだが、自分の状況を思い出し冷静さを取り戻す。

メアがヴワル魔法図書館で絵本を読んでいた時に転移されたこの場所は、危険がいっぱいの戦場。ちょくちょく襲撃されている紅魔館(こうまかん)で育ったからだろう、その恐ろしさはよく知っており、一人でいることは危ないと教え込まれているのだ。

再び草むらに飛び込み、隠れていた場所からメアが抱えるほどの本を取り出した。

 

「まどうしょも、もってかないと。」

 

メアが抱えている本は、パチュリーがメアのために『黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)』の構造を真似て作った魔導書で、メアが魔術を使うための制御具として存在しているが、メアにとって、親でもあるパチュリーから与えられた大切な宝物。

表紙には『黒表紙の魔導書(フィンフィーベル)』とパチュリーの文字で書き記されており、大切に読まれているのか傷や折り目は少なくその代わりに付箋が何個か飛び出していた。

 

「えっほ、えっほ……」

 

メアが魔導書を抱えつつ、足元に転がる黒いゴブリンや黒いオークの死体に転ばないように進み始める。

 

~~~~~

 

「えっほ、えっほ……あれっ、ここどこ?」

 

メアが黒表紙の魔導書(フィンフィーベル)を抱えながら進んでいると、霧が立ち込める森の中に足を踏み入れていた。先ほどまで聞こえていた戦いの音はどこかへ消え、静寂だけが霧の中の森に広がっている。

嫌な予感を感じたメアは来た道を戻ろうと振り返るも……そこにあったのは、道を覆い塞いでいる大木。完全に、進むしか道はないようだ。

 

「……だいじょうぶ、だよね?」

 

不安に小さく身を震わせながらもメアは魔導書を大切に抱えて歩き出す。

歩けば歩くほど、森を包む霧は濃くなってゆき、前も段々と見えなくなってゆく。段々と恐ろしくなる周りの様子に、メアはぐすりと涙をこらえる。

また一歩踏み出したと同時に、どこかでカラスが飛び立ったのだろう。カーカーと鳴きながら羽ばたく音を響かせながらどこかへと飛んでいった。その音に驚いたメアは、ギュッと魔導書を抱え込んでしゃがみ込んでしまう。

 

「うっ……うぅ、こわいよ~。」

 

メアが弱音を口にする。

メアは生まれてからかなりの時期がたったとは言え、妖精メイドの中で最も幼い存在。

まだまだ子供である以上、気丈に振る舞っても……怖いものは怖いのだ。

と、どこからともなく足音が聞こえてくる。

 

「ぴぃっ……だっ、だれぇっ!?」

 

メアが黒表紙の魔導書(フィンフィーベル)を開いて魔力を流し込み臨戦態勢を整えた。

自分以外の誰か、それが自分の味方か、敵か。それは分からない。分からないのなら、構えなさい。そうパチュリーに教え込まれた成果であった。

魔力を流し込まれた黒表紙の魔導書(フィンフィーベル)は表紙に魔術陣を展開し、いつでも魔術を放てる準備を完了させていた。

ザッザッザッと足音が次第に近づき、大きくなってくると……霧の中から見覚えのある人物が現れた。

 

「さ、さくやおねえちゃん?」

「っ…………メア、ここにいたの?」

 

やってきたのは、『十六夜 咲夜(さくや)』だった。

銀髪のボブカットでもみあげが三つ編みに結われており、青色の瞳、ミニスカートのメイド服。そこにいたのは間違いなく『咲夜(さくや)』だ。

 

「おねえちゃ~~~んっ!!こわかったよぉお~~~~~っ……」

「きゃっ……ふふっ、無事でよかったわ。」

 

メアは『咲夜(さくや)』に抱き着き、不安を薄めた。

咲夜(さくや)』は、右腕でメアを抱き寄せ、ギュッと抱擁する。

 

「ぐすん……どうしてここに?」

「そ、それは……そ、そう!れ、レミリアお嬢様に頼まれたのよ。それで、メアを探しに来たの。」

「そっか……そうなんだ~。」

「……さっ、ここは危ないし。レミリアお嬢様の元まで帰りましょう?」

「うん!」

 

メアと『咲夜(さくや)』は手をつなぎ、霧の中を歩み始めた。

しばらく歩いたところで、さらに霧が濃くなり、手の感覚が無ければ『咲夜(さくや)』が居ないのではないのかと思えるほど視界が悪くなる。

メアが不安に思っていると、どうやら『咲夜(さくや)』が止まったようだ。メアの繋がれている手が引っ張られる。

 

「メア、もうすぐこの霧がなくなって、レミリアお嬢様のところに行けるわ。」

「そうなの……じゃあ、いっしょに、かえろう?」

「…………いいえ、私は……まだ戻れないわ。」

「レミリアさまから、べつのごめいれい?」

「そうなの、だから……ひとりで行けるかしら?」

「だいじょうぶ、メアはつよいこ。」

「……ふふっ。そうね、メアは強い子だものね。」

 

咲夜(さくや)』がメアの手を少し名残惜しそうに離す。

メアの手には、『咲夜(さくや)』の手の温もりが残されており、メアはもう霧の中でも怖くなくなっていた。

 

「それと、私がメアを助けたのは、レミリアお嬢様であろうと秘密よ?」

「……?どうして?」

「いいから……約束。」

「……うん、わかった。」

 

「……じゃあ、またね。メア。」

「うん!さくやおねえちゃんも、またね!」

 

メアは元気よく『咲夜(さくや)』に言葉を返し、魔導書をしっかり抱えて霧の中を進み始める。

しばらく進めば、段々と霧が薄れてゆき、やがてどこからか争いの音が聞こえる湖へと戻っていた。

メアが辺りを見渡すと、ちょうど黒いトロールと戦闘中のレミリアを目撃した。

メアはふんすと鼻息を出して気合いを入れると、黒表紙の魔導書(フィンフィーベル)に魔力をこめ、炎の魔術を黒いトロールに向かって放った。

放った火球は、剛速球で黒いトロールの頭に当たり、そのまま仰向けに倒れる。レミリアが警戒しながらメアの方をにらむものの、メアの姿を見て安堵の表情を浮かべる。

 

「メア!無事だったのね!!」

「ただいまです、れみりあさま!」

《メア?……メア!無事なのね!? けがは、怪我はない!?》

「だいじょうぶだよ、おかーさん。」

 

メアはレミリアに抱き着き、通信魔術から聞こえてくるパチュリーの声に落ち着いた声で答える。

その様子を、深い森の奥から眺めている人影が居たが……しかし、無事にレミリアのもとにメアが戻ったのを見て、口元を緩ませそのまま森の奥へと消えてゆくのであった。




長かった応募キャラのスポットライト当ても終わり、ついに本編が進む……。
ぶっちゃけめちゃくちゃ苦しかったですが、皆様の応募してくださったキャラクターは魅力的なのでまたやりたいです。
ただし、次やるなら、本編終了後かもしれないがなぁっ!!()
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