紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
争いの音が大きく減った庭園迷宮第3層の湖。だが、とある一角で大きな土煙がキノコ状に舞い上がった。
その場所の根元では、レーヴァテイン・レプリカを振り下ろして歯を食いしばっているフランドールと、レーヴァテイン・レプリカを額で受け歯を食いしばって撥ね退けようとする黒い化け猫……キャスパリーグの姿があった。
バチバチと火花が舞い散り、真正面から力と力をぶつけ合っているからか、キャスパリーグの足は地面に埋もれていた。
次の瞬間、キャスパリーグが頭を僅かにずらし、フランドールのバランスを崩し、そのまま猫パンチを放った。
普通の猫の猫パンチでさえ、爪のせいでかなり痛い。それが、キャスパリーグの一撃ともなれば……猫パンチで殴られたフランは、大きく吹き飛ばされ、木を何個かへし折った後に大岩にクレーターを作りながら叩き付けられる。幸い、ギリギリで障壁魔術が間に合ったのか、青白い障壁が砕けながら消えてゆく。
それでも大岩に叩き付けられた衝撃で視界が歪んでいるうちに、キャスパリーグは容赦なく光弾をフランドールに向けて放つ、シュンシュンシュンと音を立て、土煙を立ち昇らせ、やがてフランドールが叩き付けられた大岩を砕いた。
キャスパリーグは毛を逆立てながら、警戒を解かずに土煙を睨み続ける。
威嚇の鳴き声を漏らしながらも、相手がまだ死んでいないという確信がキャスパリーグに合ったのだろう。
再び、光弾を用意し始め放とうとした瞬間、土煙がブワリと払われ、同時にフランドールが翼を広げて空ヘと羽ばたいた……それも、燃え盛るレーヴァテイン・レプリカを振りかぶって―――
「そぉ……れッ!!」
空に飛び上がったフランは、そのままの勢いでキャスパリーグに向けて燃え盛るレーヴァテイン・レプリカを素振りする。直後、レーヴァテイン・レプリカの炎はまるでレーザーのような形を作り、無数の光線としてキャスパリーグに向けて降り注いだ。
キャスパリーグは、光弾を大量に展開し降り注ぐレーヴァテイン・レプリカのレーザーを迎撃し始める。次々と、レーヴァテイン・レプリカのレーザーとキャスパリーグの光弾がぶつかり大爆発を起こす中、レーヴァテイン・レプリカのレーザーが光弾をかいくぐりキャスパリーグに殺到する。
「ギニャァッ!?」
アーサー王伝説においてエクスカリバーを撥ね退けたキャスパリーグとはいえ、フランのセンスで制御されたレーヴァテイン・レプリカでの攻撃は、その毛皮の強靭さを無視するには十分であり、そしてレーザーが着弾したそばから爆発を引きおこし、キャスパリーグに確かなダメージを与えた。
爆発のダメージでぐらりと体を揺らすものの、すぐさま体勢を立て直し空でバランスを取り直しているフランドールを見上げて睨む。
「おっとっと……まあ、さすがに死なないかぁ。」
「フシューーーガルルルルッ!!」
空中で、宝石がぶら下がる翼をはためかせて、右手のレーヴァテイン・レプリカをクルクルと回すフランと、地上でその四脚を踏み込み毛を逆立てさせて威嚇を続けるキャスパリーグ。
お互い、殺し様も決めても存在する。しかし、相手もそれを理解しており、中々相手に致命的な一撃を叩き込むことは難しいだろう。
「……仕方ない、ちょっとだけズルさせてもらうからね?」
「フシャッ!!」
本能的に、フランのやろうとしていることを妨げなければならないと察知したのだろう、先ほどよりも光の強い光弾がフランに向けて放たれる。
光弾がフランの周りにたどり着いたと同時に、ひときわ強い光を放ったと思うと、レーヴァテイン・レプリカのレーザーに劣らない爆発を起こして、爆煙でフランを隠してしまう。相手が見えなくなったものの、キャスパリーグはさらに光弾を創り出し、爆煙の中に向けて放つ。
「フランのオリジナルの魔術……名付けるなら、『禁忌:スリー・オブ・ア・カインド』」
爆煙の中からフランの声が響いたと同時に、炎によって刀身を作りだしたレーヴァテイン・レプリカと、レーヴァテイン・レプリカのレーザーが
キャスパリーグは咄嗟に、振りぬかれたレーヴァテイン・レプリカを交わしたのち、走り回りながら光弾でレーザーを迎え撃つ。
レーザーを迎え撃ちながら、キャスパリーグはフランドールの方を見ると……信じられない光景に瞳孔を小さくしていた。
「きゃははっ、アタシらを呼び出すなんて、ソートー手詰まりだったってわけぇ?ねぇ、オリジナルぅ。」
レーヴァテインを振りぬいたのは、ショートカットでミニスカートの赤いナイトドレスを見にまとう、少し表情が生意気な二人目のフランドール。
「で、でも、それぐらいピンチだったのは、私は知ってるからね?」
そしてレーザーを放ってきたのは、編み込みロングヘアでロングスカートの赤いナイトドレスを見にまとう、少し雰囲気の暗い三人目のフランドールがそこにいた。
「良いから、相手に集中!役に立たないからアンタたちからキュッとしてドカーンだからね?」
「オォ~、コワイコワイ~。じゃあ、オリジナルに壊されないように、遊んであげるよクロネコちゃ~んっ!!」
「うぅ……猫さんを傷つけるのは嫌だけれど、て、敵である以上、容赦はしないからっ!」
キャスパリーグは、己が一気に不利になったことを悟り、光弾の数を増やしながら防御に意識を向け始めた。
~~~~~~
「キャハハハッ!どうしたのクロネコちゃ~ん? オリジナル一人相手だと互角だったのにぃ~……アタシたちが増えたら怖くなっちゃったの~?やぁ~だぁ~か~わ~い~い~!そんな、よわよわザコザコなクロネコちゃんは、思う存分、い~じ~め~ちゃ~うッ!!」
生意気なフランドールが、燃え盛るレーヴァテイン・レプリカを振り回しながら、キャスパリーグを追い回す。
キャスパリーグは、生意気なフランドールが振るうレーヴァテイン・レプリカの攻撃を的確に除け、隙を見て反撃を試みようとするものの、直後その試みを断念し大きく後方に跳躍することで、太いレーザーを回避する。
「うぅ、よ、避けられちゃったぁ……」
太いレーザーを放ったのは、レーヴァテイン・レプリカを
先ほどから、キャスパリーグが反撃を試みようとするベストタイミングで、避けなければいけない大ダメージの攻撃を放ってくるのだ。
「ちょっと、暗い私!あとちょっとであたるところだったんだけど!?」
「うっ、ご、ごめんね!元気な私!!」
……しかし、連携力はおざなりのようで、先ほどから口論が酷い。
付け入る隙はここだと、本能で理解し、そのまま反撃に移ろうとするキャスパリーグだが……
爪を出し、猫パンチをしようとした途端、キャスパリーグの体のすぐ近くに赤い魔術陣が回転しながら出現し、魔力が急速に高まってゆく。
キャスパリーグがその魔術陣が設置型の爆裂魔術と気付いた瞬間にはすでに遅く、複数の爆裂魔術の魔術陣が大爆発を起こす。
「はいはい、どっちの私もそろそろ集中して。」
「はぁ~い……ちぇ~。」「う、うん、ごめんね!」
そして、的確にキャスパリーグにとって嫌な手を打ってくるオリジナルのフラン。
フランが『禁忌:スリー・オブ・ア・カインド』を発動してからという物、戦いの主導権を握っていたのはフランだ。キャスパリーグは、増えたフランの対処で手いっぱいで攻撃の余裕がなく、ダメージを与えられ続けていた。
しかし、致命的なダメージにはならないように調整し続けたおかげで、キャスパリーグはまだまだ戦える。
実際、キャスパリーグは爆煙の中で、どうやって反撃に移ろうか考えていた。
そして、キャスパリーグは決断する。
自らの、能力の使用を。