紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
「うぅ…………あぁぅ……痛い……気持ちわるぃ…………痛み止めくださいぃ~……。」
「ちったぁ我慢しなっ、今のお前に、薬も魔術も使えねぇんだ……それに、厄介なものも貰ってきやがって……」
ダーティは涙目になりながらも包帯を巻きつけられつつ、体の中から起きる痛みを耐え続けていた。
包帯を巻き終えた後、メディーは自分のディスクに座り、ダーティのカルテを書き始める。
「第6肋骨から第10肋骨まで、右側を中心に計5本骨折。右の上腕骨は見事に粉砕。肩甲骨にも線状骨折、左肩は前方脱臼。おまけに胸椎T5〜T8にかけてヒビが入ってる。胃壁に損傷があって中等量の吐血、脳震盪もあって一時的に意識混濁……っと。
……敵の蹴りをギリギリ腕でガードできたのが逆に仇になったか。衝撃で岩壁に叩きつけられて、ここまでいくとはな。
……人間だったら、まず死んでる。
怪我はそれで全部か?」
「…………覚えてない。」
「だろうなぁ。まっ、それで全部だろうよ。ノワールの姐さんが作った検査のスクロールに間違いはなさそうだしよ……問題は、
「…………すやぁ。」
ダーティは、メディーの睡眠魔術によって眠らされ、安らかな寝息を立てはじめる。それを見届けたメディーは、もう一つのカルテを眺めながら、頭を悩ませると……医務室のドアの外が騒がしくなる。
メディーは先ほど、その辺をほっつきあるっていた狼女の警備兵に頼み、たとえレミリアから命令されようと絶対に医務室に入れるなと頼んでいたのである。
「ちょっと、通しなさいよ!」
「ご、ごごごっ、ごめんなさいレミリアお嬢様!ですが、メディーさんにレミリアお嬢様からのご命令であろうと絶対に医務室に入れるなと……」
「……メディーは、ただの重症じゃないの?
「わ、私も急に頼まれたものでして……詳しいことは何も」
どうやら、レミリア本人が、偶然ゴミの収取に来たカートから顛末を聞いて飛んで来たらしい。
メディーはペンを机に放り投げ、施錠された医務室のドアの前に立った。
「レミリアお嬢、扉越しで無礼なのは承知するが、そうもいってられねぇ。このまま、ダーティの容体を説明させてくれ!」
「……緊急時と判断し、その無礼を許すわ。それで、ダーティちゃんは?」
この対応に、レミリアも異常だと感じたのだろう。メディーの無礼を許すと同時に、さっそく本題を切り出してくれた。
「まず、ダーティが直接医務室に転移したおかげで、命に別状はねぇ。確かに重症だが、怪我だけなら1カ月で復帰可能だ。」
「……怪我の内容は?」
「肋骨が5本と、右腕が骨折……岩壁に叩き付けられたもんで、左肩と背骨に小さなヒビと……胃が傷ついて吐血、頭にも衝撃がいったもんで脳震盪を起こしてやがる。妖精って種族の中じゃ、戦闘向きな闇妖精だから、1か月程度で治るだろうよ……だが、問題は」
「ええ、さっきメディーが言った言葉、ちゃんと聞いてたわ。怪我だけならってことは、怪我じゃない大変な理由があるのね?」
流石は、何人ものメイドを従える主だ。とメディーは感心しながら、ディスクの上に置きっぱなしのもう一つのダーティのカルテを手に取る。
「発熱、悪寒、頭痛に体幹痛、倦怠感に嘔吐と吐き気……んで肺炎症状。」
「っ……まさか、
「レミリアお嬢も知ってたか……ああ、ダーティはそれを貰ってきやがった。幸い、ノワール様が予期してたのか、とんでもねぇ色の魔法薬をダーティの口にツッコんでたぜ?
おかげで、初期発症……まあ、ひき初めみたいな状態で回復の方向に行ってる。
だが、油断できねぇ……あまり人を医務室に近寄らせないでくれねぇか?」
「すぐに手配するわ。……ダーティちゃんは絶対安静?」
「ああ。だが、ダーティからレミリアお嬢、アンタに伝言がある。」
「聞かせて頂戴。」
「ヒュドラ、死す。敵は、ブラウ様。
―――だ、そうだ。」
~~~~~
ダーティの伝言を聞いた、レミリアは即座に医務室周辺をマキシーネが支配下に置いた幽霊騎士の部隊で封鎖。
レミリアの執務室に、主要なメンバーを集め、緊急会議を開くことになった。
大怪我を負っていた
ダーティの容体から話された、その執務室は、ダーティの伝言と同時に、無言と緊張、そして絶望に包まれることになる。
「第4層の敵は……ブラウさん、ですって?」
パチュリーがポツリとつぶやいた言葉に、レミリアは静かに頷く。
その様子に、
そして、
まず、べナミ・ディフェクタム。彼女は、第3次雇用ラッシュの際に、レミリアとの契約で、
次に、
そして、
その強さは、誰しもが
あのベナミが、そしてルージュが、一対一において絶対に勝てないほどの圧倒的センス。
かつての
その人が、敵。
「……そうか、ブラウが敵か。」
沈黙が支配する中、ノワールだけが、随分とうれしそうな声色でそんな言葉を零した。
全員が、ノワールに視線を向けると、片手で目を抑え、口角を思いっきり上げ、葉をむき出しにして笑いをこらえていた。
そして、ノワールから吹き出す漆黒の魔力が、レミリアの執務室に重苦しい重圧を創り出す。
その雰囲気は、今までのノワールではなく……過去を思い出したからこそ、口調が少しばかり変わってしまった。
「察するに……敵を素早く殲滅しようと、
「……教えなさい、ノワール……いや、ノワール・ブラックライダー。」
「……何を、だ?
チラリと、ノワールのすべてを吸い込む黒眼が、レミリアを見降ろす。
それだけで、レミリアの背筋が凍り、恐怖心が心を震わせる。
しかし、レミリアは彼女の主だ。様子が違っただけでビビる程、幼くはないのである。
「ブラウのすべてよ。」
「…………あぁ、了解した。レミリアお嬢様……私の知るブラウのすべてを語ろう。」
キッと睨み返したレミリアの勇気に、ノワールは黒い魔力をしまい、元の雰囲気に戻る。
頬を少し赤らめたところを見るに、昔の自分が出てきたことが少し恥ずかしい様子だ。
コホンと、咳払いを一つしてから、ノワールは順番に語り出した。
「まず、私の名がブラックライダー……と言うことは、プリム、ルージュ、そしてブラウはそれぞれ、かの黙示録の四騎士になぞられたもの……そう考えておられるな?」
「……違うの?」
フランがコテンと首をかしげながら聞き返す。
ノワールはその様子に、フフッと笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「確かに、我らの名は四騎士になぞられたものだ。しかし、プリムとルージュは、その名を模しただけ。私は、本物のブラックライダーから、”名”を奪った故……本物の四騎士ではないのだよ。」
「四騎士……ですか?」
「ヨハネという聖人が書き記した”黙示録”に書かれた、終末を司ると言われている人物たちよ。」
唯一、
しかし、一人だけ……フランだけは先ほどの言葉に違和感を感じていた。
「……ブラウは、そうじゃないの?」
フランがノワールをじっと見つめながら、そう言うと……ノワールは少しな悲しげな表情を浮かべて頷いた。
「あぁ、私は本物のブラックライダーから名を奪い、プリムとルージュは、その名を騙っている……しかし、ブラウは……ブラウだけは違う。
―――アイツは、本物の