紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
ノワールが、ブラウは『本物の
しかし、今は、そんな場合ではないため、レミリアはノワールに声を掛けることにする。
「ノワール……思い出に浸るのは、後にしてほしいわ。」
「おっと、すまない。さて、どこまで話したか……あぁ、そうだ。ブラウが”本物の”
詳しくは私も知らないが、少なくとも奴はペストを多く使っていた。
そして、皆も知っているであろう、あの強さ。あの強さは、正直私でも、どうしてあそこまで強くなったのか分からないぐらいだ。ただ一つ言うのなら、その圧倒的な戦闘能力は”死を司る”者としては低い方なのだろう。
しかして、それは神々や、私と言う異端者から言わせればの話だ。レミリアお嬢様たちでは、その強さは天上のものだろう。
ふむ、加えて言うのなら……奴は目がよく、反射神経が早く、勘もいい。
戦士として満点の奴に、隙も弱点もほぼないだろう。
さて、この高すぎる壁に、レミリアお嬢はどうするのだ?」
ノワールは、フッとレミリアに笑いかけるが、レミリアには今、そんな余裕はなく、どうやってブラウを正気に戻すか、超高速での思考が続けられていた。
その様子に、ノワールを覗いた全員が不安げな様子を浮かべる。なにせ、相手は、無限の再生能力を持ち、神すら殺す毒を持った神話の怪物”ヒュドラ”を倒した存在。
もし、そんな存在と戦うのであれば……犠牲は、逃れることはできないだろう。
全員の頬に冷や汗が、そして、レミリアにも焦りの色が見え始める。
「……レミリアお嬢様、私なら、ブラウの正気を戻す勝算はある。」
「っ、レミリアお嬢様!ノワールさんの言葉通りなら、ノワールさんに任せましょう!」
「そ、そうです!ノワールさんが勝てるなら、無理に考える必要も―――」
「――――――それは、ダメよ。」
ノワールの言葉に、
「……おそらく、ノワールの言う勝算は、その戦闘で発生する被害を”無視”した上……よね?」
「そう、なるな。」
「……そしてその勝算とは、最上級の超火力を出せる魔術で
「接近戦のリスクを避け、最小限の被害で勝つには、な。よくて、私の腕は斬り跳ばされるだろうな。」
「っ、それって!?」
「―――第5層への侵攻不可、場合によってはブラウかノワール、もしくはそのどちらもが死に、救出にいけず、赤いリボンのアンナ、ルージュ、そしてメイド長が死ぬ。
それじゃあ、ダメなのよ。」
……レミリアの言葉が、執務室内の空気を重くする。
パメラ・スカーレットの目論見が不明な以上、誰一人とて犠牲を出すことはできない。その難しさを、誰よりもレミリアは理解しているものの、今ここで躓いたら、パメラの言うこの先の不幸に太刀打ちすることもできないだろう。
ヒュドラであれば、まだ勝算はあった。いくら不死の怪物とはいえ、どちらが上かわからせれば、服従なり支配なり、やりようはあった。
しかし、暴走したブラウとなると話は変わる。ブラウもまた、この
長い長い思考の檻、出口の見えない永遠の迷路、犠牲がでてしまう運命。
全ての運命に目を通し、犠牲の出る運命は斬り捨て……たった一つ、分の悪い賭けだが、たった一つだけ、だれも犠牲にならないかもしれない道があった。
「……ノワール。アナタ、昔に、正気を取り戻させる魔導具を持っていたわね。」
「えっ…………あー、あのハンドベルの事か?アレをお使いになるので……って、本気で言ってるのか?」
「使い方は?」
「効果範囲がすごく狭いので、聞かせる対象の耳元で鳴らすしか効果が出ないのだが……。」
「聞かせれば、確実に治るのね?」
「あ、ああ。アレは元々、とある神から譲り受けた神器で…………本気でやるのか?」
ええ、本気よ?そう言いながら、冷や汗を浮かべつつ獰猛な笑みを浮かべるレミリアに、ノワールは、真名を明かすのは早かったかもしれないと、珍しい焦りの表情を浮かべるのであった。