紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ 早すぎるラスボス

 

ノワールが、ブラウは『本物の青ざめた騎士(ペイルライダー)』であると暴露した直後、ノワールはどこか懐かしみを帯びた遠い目をしていた。どうやら、とても古い記憶を思い出しているようであった。

しかし、今は、そんな場合ではないため、レミリアはノワールに声を掛けることにする。

 

「ノワール……思い出に浸るのは、後にしてほしいわ。」

「おっと、すまない。さて、どこまで話したか……あぁ、そうだ。ブラウが”本物の”青ざめた騎士(ペイルライダー)と話したところだったな。

 

青ざめた騎士(ペイルライダー)たるブラウの能力は、”病死を司る程度の能力”、相手が人間であれ、怪物であれ、妖精であれ、その手で触れた生物を病に侵し、即座に病死させることができる能力。

詳しくは私も知らないが、少なくとも奴はペストを多く使っていた。

 

そして、皆も知っているであろう、あの強さ。あの強さは、正直私でも、どうしてあそこまで強くなったのか分からないぐらいだ。ただ一つ言うのなら、その圧倒的な戦闘能力は”死を司る”者としては低い方なのだろう。

しかして、それは神々や、私と言う異端者から言わせればの話だ。レミリアお嬢様たちでは、その強さは天上のものだろう。

 

ふむ、加えて言うのなら……奴は目がよく、反射神経が早く、勘もいい。

戦士として満点の奴に、隙も弱点もほぼないだろう。

 

さて、この高すぎる壁に、レミリアお嬢はどうするのだ?」

 

ノワールは、フッとレミリアに笑いかけるが、レミリアには今、そんな余裕はなく、どうやってブラウを正気に戻すか、超高速での思考が続けられていた。

その様子に、ノワールを覗いた全員が不安げな様子を浮かべる。なにせ、相手は、無限の再生能力を持ち、神すら殺す毒を持った神話の怪物”ヒュドラ”を倒した存在。

もし、そんな存在と戦うのであれば……犠牲は、逃れることはできないだろう。

全員の頬に冷や汗が、そして、レミリアにも焦りの色が見え始める。

 

「……レミリアお嬢様、私なら、ブラウの正気を戻す勝算はある。」

「っ、レミリアお嬢様!ノワールさんの言葉通りなら、ノワールさんに任せましょう!」

「そ、そうです!ノワールさんが勝てるなら、無理に考える必要も―――」

 

「――――――それは、ダメよ。」

 

ノワールの言葉に、咲夜(さくや)美鈴(メイリン)が一縷の希望を託すものの……パチュリーがきっぱりと否定する。咲夜(さくや)美鈴(メイリン)は、泣きそうな表情になりながらも、パチュリーを見る。

 

「……おそらく、ノワールの言う勝算は、その戦闘で発生する被害を”無視”した上……よね?」

「そう、なるな。」

「……そしてその勝算とは、最上級の超火力を出せる魔術で()4()()()()()()()()()。そうでしょう?」

「接近戦のリスクを避け、最小限の被害で勝つには、な。よくて、私の腕は斬り跳ばされるだろうな。」

「っ、それって!?」

 

「―――第5層への侵攻不可、場合によってはブラウかノワール、もしくはそのどちらもが死に、救出にいけず、赤いリボンのアンナ、ルージュ、そしてメイド長が死ぬ。

 

それじゃあ、ダメなのよ。」

 

……レミリアの言葉が、執務室内の空気を重くする。

パメラ・スカーレットの目論見が不明な以上、誰一人とて犠牲を出すことはできない。その難しさを、誰よりもレミリアは理解しているものの、今ここで躓いたら、パメラの言うこの先の不幸に太刀打ちすることもできないだろう。

 

ヒュドラであれば、まだ勝算はあった。いくら不死の怪物とはいえ、どちらが上かわからせれば、服従なり支配なり、やりようはあった。

しかし、暴走したブラウとなると話は変わる。ブラウもまた、この紅魔館(こうまかん)の住民たちにとって、なくてはならないメイド長の、家族の一人。殺さず、殺されず、その正気を取り戻すために手加減までしなければならない。殺す気で掛からねば殺される相手なのに、その正気を取り戻さなければならない、大切な家族なのだ。

 

長い長い思考の檻、出口の見えない永遠の迷路、犠牲がでてしまう運命。

全ての運命に目を通し、犠牲の出る運命は斬り捨て……たった一つ、分の悪い賭けだが、たった一つだけ、だれも犠牲にならないかもしれない道があった。

 

「……ノワール。アナタ、昔に、正気を取り戻させる魔導具を持っていたわね。」

「えっ…………あー、あのハンドベルの事か?アレをお使いになるので……って、本気で言ってるのか?」

「使い方は?」

「効果範囲がすごく狭いので、聞かせる対象の耳元で鳴らすしか効果が出ないのだが……。」

「聞かせれば、確実に治るのね?」

「あ、ああ。アレは元々、とある神から譲り受けた神器で…………本気でやるのか?」

 

ええ、本気よ?そう言いながら、冷や汗を浮かべつつ獰猛な笑みを浮かべるレミリアに、ノワールは、真名を明かすのは早かったかもしれないと、珍しい焦りの表情を浮かべるのであった。

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