紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
かつて、庭園迷宮の第4層は冷たい空気の漂う静かな洞窟だった。
だが、その一角……ブラウが送られた、その場所では”死”が広がっていた。
首のない死体が、縦に真っ二つの死体が、下半身と切り分けられた死体が、首を折られた死体が、頭を蹴り砕かれた死体が、泡を吹いている死体が、喉を掻きむしった死体が、吐しゃ物を詰まらせた死体が、頭を抑えた死体が……その多くの死体の山の中でも目立つ、全身に異常な色とりどりのふくらみを作り死んでいるヒュドラの前―――
―――”死”が、そこにいた。
白く綺麗な羽が、黒くドロリとした泥のようなものになり、その目に光はなく、表情もなく、メイド服でさえ、返り血と病死で屠ったであろうゴブリンやオークたちの吐しゃ物で汚れ、ブラウに渡されていたショートソードは、ヒビだらけで今でも壊れそうになっていた。
……力なく膝立ちのまま俯き、ブツブツと本当に小さな声で何かを呟く
何をするでもなく、ただその”死”の中で、無気力に座り込んでいた。
……そこへ、銀色の雨が降り注いだ。
降り注ぐと同時、
ナイフの持ち手と、砕かれた刃の破片がまるで雪のようにキラキラと、壁から生える光を放つ結晶の光を反射しながら地面に落ちる。
ドガァアアアアアンッ!!
大爆発が、周辺に転がる死体の山を吹き飛ばし、振動で天上の岩盤から埃と小石がパラパラと落ちてくる。
すると、いくつかの地点で、爆炎と埃が不自然な動きを見せる。煙が人型に除け、埃が何もない所に積もっている。
《透明化魔術、切れるわ。》
パチュリーの通信魔術の声と共にスゥーッと現れたのは、緊張した面持ちの
「これで、やられてくれたら…………よかったんですけれどね。」
「……殺気って、こんなに冷たく感じるものなの?」
己が敵を確認するためか空虚な光の無い目がギョロギョロと動き、そして視線を定める。視線が向けられた先にいるのは、アストレア。
グッと姿勢を思いっきり低くした、次の瞬間には―――跳躍。
地を這う蛇のように地面すれすれを移動し、アストレアの前で踏み込んだと思うと、身体のばねを利用した剣先の突き上げ……
「ぐっ!?」
アストレアはそれを何とか視線で追い、ほぼしりもちをつくような形で避けることに成功する。
しかし、次の瞬間にはショートソードを逆手に持ち、そのまま振り下ろしたのである。
「っ!?」
横に転がり、振り下ろされたショートソードを避けるアストレア。
それですら
ガシャガシャガシャ!と音を立てながら、リビングアーマーだった甲冑が地面に転がり、またナイフの嵐が襲い掛かる。
メリーの『ナイフを操る程度の能力』で、自由自在に動き回るナイフは3次元的な動きで
《―――金属を、銀を、腐らせた……ですって……?》
《っ、みんな気をつけろ!いま、奴の羽根は、人外すら殺す劇毒になっている!!アレの触れるなッ!!》
おそらく様子をみていたであろうノワールの警告の直後、ウジュルウジュルと嫌な音を立て
黒い泥が羽根に戻るその間に、アストレアは体制を戻し、再び構える。しかし、その表情はあまり芳しくなく……少し恐怖に怯えているように見える。
その隙に、指揮権を与えられている
せめてもの壁代わりだが……相手が
「……どうします、アンナさん。白旗振って逃げましょうか?」
「……ぶっちゃけ、放置して第5層を攻略した方がいいとはおもう。」
そのあまりの不気味さに、
しかし、この戦闘の前、レミリアに召集され行われた作戦会議では、成功のカギは
それを胸に、恐怖を振り払い
「幽霊騎士とリビングアーマーを前進させろ!
その隙に、
一歩、また一歩と、ガチャガチャと音を立てながら幽霊騎士とリビングアーマーたちが
だが、次の瞬間、その幽霊騎士たちもまた、首を刎ね飛ばされ、上半身と下半身を切り分けられ、縦に真っ二つにされ……次々と幽霊騎士たちも倒されてゆく。
数では圧倒的有利であり、背後からも攻撃をくわえ、隙の無いように同時に攻撃をされているのに、
正面からの槍の一撃を、ショートソードで弾いたと思うと、そのまま、回転切りを放ち、数多くのリビングアーマーと幽霊騎士を斬り捨てる。
回転切りの硬直を狙い、斧を振り上げて来たリビングアーマーの懐に飛び込むとそのまま左手でサレットを掴み、そのまま握りつぶし、無力化し、その亡骸を強い力で蹴りつけ、何十体ものリビングアーマーと幽霊騎士を巻き込ませて体勢を崩させ、包囲網に穴をあけるも、
そして、また死角から幽霊騎士がブロードソードで斬りかかるも、今度は羽根の泥がブワリと動き、斬りかかろうとした幽霊騎士を飲み込んでしまう。しばらく人の形が蠢いていたものの、すぐにグジュルと地面にすべて落ち、その後
次は、複数の幽霊騎士とリビングアーマーが、見事なタイミングで同時にスピアを突き出すも、しゃがみ込んで回避され、そのまま足払いで転ばされてしまい、次の瞬間には、羽根の泥がまた動き出し、転んだ幽霊騎士とリビングアーマーを溶かしてしまう。
ゆらりと立ち上がる
……ダメージを与えたのは、立ち上がるほんの一瞬の隙をついて
……けれど、
「さっきの……お返しだぁあッ!!」
怖がらせられた怨みのこもった一撃は、
アストレアもまた、攻撃後はすぐに幽霊騎士とリビングアーマーの群れの中に隠れ、そして、アストレアの作った隙を彼女の同僚二人が突く
「喰らいなさいっ!」
「外しはしないわっ。」
メリーの能力で捜査され爆発の魔術式が組み込まれたナイフの嵐と、マキシーネの『サムハイン』から放たれた麻痺の魔術式が組まれた鉄針。
二つの追撃は、アストレアの一撃で怯んでいた
ガクリと、
「これで力を奪うッ!」
『特注の大型メイスです!』
「とっておき……だぁっ!!」
青いリボンのアンナの力を奪う聖なる光を帯びた双剣が舞い、ビビオンが大剣のようなメイスを振り下ろし、仕上げにベナミがウォーハンマーを振り上げ、顎をかち上げた。
その一撃により、頭が跳ね上がり……
だが、まだ意識はあるのか、反撃しようと拳を振り上げようとしたとき―――
「いまが、チャンス!!」
―――マグノリアが、
組み付かれ、首を絞められた
もう少しで、勝てる!
《―――
ノワールの焦るような絶叫が聞こえた。
その声が、全員の耳に届き、誰よりも
誰も、疑いもせず、マグノリアでさえ、拘束をやめて、距離をとる。
直後、光の柱が天井の岩盤に仕掛けれられていた魔術陣から放たれ、力なく倒れる
《―――やってくれたな……パメラ・スカーレットォォオッ!!》
ノワールの怒声が、恐怖を、絶望を予感させていた。
「こっちだ、レミリアお嬢!みんな!!」
庭園迷宮第4層の別エリア……ヘスティーナ先導の元、レミリアとフラン、フォリアとクエス、数人の狼女兵と共に進んでいた。
目的は、ヘスティーナの旧工房……そこにある道具を使い、レミリアのグングニルとフランのレーヴァテインを強化するのが目的だ。
神器の強化、それは鍛冶師にとっては、神話にしか載っていない偉業。しかし、
(……お願い、
ときおり感じる、大きな振動。
それに一抹の不安を感じながらも、レミリアはヘスティーナを追いかけるのであった。