紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ 第5層 屍の鏖殺

 

庭園迷宮の完全攻略も大詰め、救出するべきメイドも赤いリボンのアンナ、ルージュ、そして最奥のマリアの3人だけとなり、レミリアの策略の数々によりパメラ・スカーレット側が有利だと誤解されたまま、ここまでやってきた。

そして今、レミリアの号令の元、第5層、そして第6層の攻略の準備も進められていた。

ついに庭園迷宮も終盤に差し掛かり、やる気に満ち溢れたメイドたちがドタバタと動き回る中……

 

「……お姉様?」

「……フラン?」

 

―――フランドールは、レミリアが悩んでいる姿を目撃したのである。

来客用のソファーに座り、数少ない窓の外から、月が浮かぶ星空を眺めていたレミリアは、フランの声がけを受けてフランを見る。

少し悲しげで、けれどどこか納得がいった、そんなふうに見える複雑な表情を浮かべる姉に、フランはどこか、不安を感じたのである。

 

「……お姉様、大丈夫?」

「……えぇ、大丈夫よ?」

 

フランはレミリアの隣に座ってそっと寄り添い、大丈夫だと嘘をついた姉に、ちょっとだけムカッときて頬を膨らませる。

 

「……ごめん、ちょっとだけ大丈夫じゃないわ。」

 

フランが頬を膨らませたのを見て、レミリアは本音を零しつつフランの頭を胸元に抱き寄せる。

レミリアの胸元に顔を埋めているフランは、こういうのは逆じゃないのかなぁ……とは、思いつつも、きっと甘やかした方がお姉さまにとって安心できるのだろう。と考え大人しく甘やかされることにするが、フランはそこで気がついた……フルフルと、レミリアは小さく震えていた。

 

「お姉さま?」

「……。」

 

ギュッと、強く抱きしめられる。

どうやら、今、レミリアを悩ませている事はフランであっても伝えたくないものらしい。

フランはそれを察し、無言でレミリアの胸元に視界を埋める。

 

「……攻略が全部終わったら、話すわ。」

「……待ってる。」

 

それ以上の言葉は、レミリアとフランには要らなかった。

姉妹だからこその信頼……いつかマリアが、行き過ぎた姉妹愛になってしまうのではと思う程のお互いへの感情。

しばらくの間、2人は静かに甘えて、甘やかして……そうして第5層へと向かうのであった。

 

~~~~~~

 

第4層の次、第5層……『大墓地』。

フロア丸々ひとつが、数多のスカーレットと、そのスカーレット家に仕える・仕えていた一族の霊園であり、本来であれば、死者たちの眠りを感じさせる静寂のみが支配するその階層……しかし、パメラ・スカーレットの手で、霊園に眠る遺体たちはゾンビやスケルトンとして復活し、操られていることすら知らずに、最も若きスカーレットであるレミリアとフラン、そしてその従者たちに牙を向いている……のだが―――

 

さて、覚えているだろうか。

パメラ・スカーレットによってここに送られたのは、あの"アンナ"だ。旧名"アンナ・ゲールマン"、元教会の対アンデッド特化二つ名持ちバトルシスター【墓守のアンナ】、こと紅魔館(こうまかん)においては最強には届かずとも喰らいつける実力者。

決して死なず(場合によっては増える)、死を恐れて死なないために死に物狂いで戦い、死したとしてもそれを糧に蘇る。

そして、アンデッド嫌いでもあり、アンデッドが相手であれば、その実力は数倍に跳ね上がる。

 

―――つまり、アンデッドだらけの大墓地に送られたアンナは……

 

「ヒャッハーッ!!アンデッドは皆殺しっスゥッ!!!!」

「グルゥァッ!!」「グーーールァーーーッ!!」

 

何故か、エメナスとローウィル夫妻を引き連れ、ハイテンションでアンデッドを鏖殺していたのである……。

 

これには、助けに来たレミリアとフラン、狼女たちもだが恐らく意識が希薄であろうリビングアーマーや幽霊騎士たちまでもがその光景にドン引きしていた。

まだ、アンナはいい。アンナがアンデッドを圧倒し、一方的に殺戮しまくっているのはまだ納得できる。

でも、問題はアンナと一緒になってアンデッド軍団に襲いかかっているキメラの夫婦、エメナスとローウィルだ。

普通のキメラは新鮮な動物の生肉を好む。エメナスとローウィルも、大好物は新鮮な動物の生肉だ。よく食べるのは野菜であっても、大好物はキメラの本能そのままだ。

そんなキメラでも、アンデッドを食うことは無い。

アンデッドは人間の遺体が動いている以上、動物や魔法生物にとって、腐肉が動いている程度の認識だが……アンデッドは、その体を動かすための魔力……死霊魔術に使われている魔力の()を嫌う。動物や魔法生物にとって味はあってないような物なのだが……やはり、不味いものは食べたくないのである。(ユグ君の場合は、植物のため味覚が存在せず、植物ゆえにアンデッドは栄養価の高い肥料としか見ていない)

しかし、どういう訳かエメナスとローウィルは嬉々としてアンデッドに襲いかかっては、頭から丸かじり……ある程度食らったら次のアンデッドに襲いかかるという魔法生物としてはありえない捕食行動を見せていた。

 

『あ、ありえない……どうして、エメナスとローウィルがアンデッドを食べてるの……?』

 

そのありえない光景に、飼い主兼製作者であるパチュリーは目を輝かせ、今すぐにでも調べたいという雰囲気が声色からわかるほどに思考の海に沈んでいた。

しかし、レミリアがわざとらしい咳払いでパチュリーを思考の海から引き戻させた

 

「パチェ~?調べるのは助けた後に思う存分調べなさい……今は、大墓地がどうなっているか調べて頂戴。」

『ご、ごめんなさいレミィ……すぐ調べるわ。

…………なるほど。レミィ、今、大墓地はパメラ・スカーレットの魔術によって無限にアンデッドが蘇れる状態になっているわ。

特定の墓標にアンデッドの呼び出し魔術が仕掛けられていて、流されている魔力がそれを起動させ続けている。

本来なら、無尽蔵に表れるアンデッドに苦しめられるところなのでしょうけれど……アンナとエメナス、そしてローウィルが相手のせいで、ほとんど蹴散らされているわね……』

 

パチュリーは少し引き気味に声をこぼす。

しかしレミリアたちにとってその引き気味の声でさえ、どこか遠くで聞こえているようだった。

なにせ大墓地に響いているのは、アンナのぶち上がったテンションの叫びとエメナスとローウィルの咆哮、そしてアンデッドたちの悲鳴混じりに斬撃音や爆発音、ボトボトと切り分けられたアンデッドが落ちる音……。

 

「……あっ、お姉さま……アレ……。」

「なにか見つけたの? って、アレって……リッチーよね?」

 

「だ……だれか……た、たすけ……がくっ」

 

『あっ、大墓地のフロアボスの反応が消えたわ……そっちで何が起きてるのよ?』

 

第5層大墓地のフロアボス、リッチー、死亡!

 

なんとも呆気ない最期ね……なんて考えつつ、レミリアはアンナとキメラ2匹を止めるために声をかけることにする。

少し息を吸い、声を大きく出し

 

「アンナ、エメナス、ローウィル、そこまでよ!!」

 

「ヒャーハハハ……って、レミリアお嬢様っ!?」

「グルゥァ?」

「グルァ!」

 

レミリアの声が大墓地に響き、アンナとエメナスとローウィルが正気に戻り、レミリアの元に駆け寄り……一瞬、レミリアの背後に控えるリビングアーマーと幽霊騎士に目の色を変えて襲いかかろうとしたもののレミリアの目が赤く光っているのを見て、冷静になり、レミリアの前に跪く。

 

「アンナ、そしてエメナスとローウィル……まずは大墓地の制圧、ご苦労さま。

まさか、私たちの救援を待たずにあなたたちだけで制圧するなんて……流石、と言うべきかしら?」

「ア、アタシは自分の出来ることをやったに過ぎないっすよ!」

「グルゥァ〜。」「ぐるぁ……。」

 

照れくさそうに鼻を擦るアンナと、同じように照れくさそうに毛繕いを始めたローウィルだが……エメナスは何かを察したのか反省するように背筋をただし、レミリアを見つめ出した。

 

「それはそれとして、アンナ……私とマグちゃんに何か言うことはないかしら?

そしてローウィル? あなたも飼い主のパチェに何かやることがあるんじゃないかしら?

エメナスはわかっているようね?」

「……ッスゥーーー……」

「グゥーン……」

 

アンナとローウィルはレミリアが言いたいことを理解し、アンナは息をのみ、ローウィルは情けない鳴き声を発した。

にっこりと、レミリアが()()()()をアンナとローウィルに向ける。

 

「なにか、言うことと、やることは?」

 

「青いリボンのアタシに任せて、1人テンションに任せて大暴れしてすみませんっス……」

「クゥーン……」

 

 

~~~~

 

先程までアンデッドたちの悲鳴が響いていた大墓地は一転、こめかみに青筋を浮かべたレミリアのお説教が響いており、その光景を横目にフランがリビングアーマーと幽霊騎士を指揮し、アンデッドの死体の片付けや、瓦礫の整理も行って、第6層"古代森"への階段を探していた。

 

「ほんと、マグちゃんなんて酷かったんだからね!?アンタがいないのにみんなを心配させない為に空元気で働いてたし、アンタに会えないイライラのせいで暴走までしたんだから!!」

「ほんっとに!ホントに申し訳ないっす!!すぐに帰還してマグちゃんに会いに行ってくるっす!!」

「早く行きなさいこのオタンコナス!」

「それと、ローウィル!アンタも今まで一体どこに行ってたのよ!!エメナスが定期的に教えてくれていたけれど、アンタ飼い主のパチェにひとっことも言わずにこんなところに来てんじゃないわよ!!」

「クゥーン……クゥーン……」

「ぐるぁ……。」

 

……フランにとってレミリアのお説教は初めて聞いた。

メイドたちから、誰々がお説教を受けた。という世間話は何度か聞いた事はあるものの現物を聞くのは初めてだったりする。

心優しく身内にはとても甘い姉が、ああも青筋を浮かべて叱咤する姿が物珍しいということもあるが、怒っている姿がなんとなく自分の姉たるレミリアらしいなぁなんて考えてもいる。

自分のためだけではなく、心配かけた他人に代わって怒れる優しい姉。

……フランは、そんな優しい姉が大好きだと、心の中で再認識した。

だからこそ、パメラの望む自分たちを考えてみて……ただワガママに振る舞って理不尽に怒る姉には、寒気がした。

そして、狂気に呑まれあるがままに暴れる自分……きっと、自分の姉はそんな妹は嫌うだろうな、と考えつつ、リビングアーマーと幽霊騎士たちにテキパキと指示を飛ばすフランなのであった。





私事ですが、執筆に使っていたパソコンが不調で動かなくなったために、更新速度が大幅に低下します。
いつ新しいパソコンを買えるかは未定のため、しばらくスマホからの投稿となります!

そのため、次話の投稿も首を長くしてお待ちいただけると幸いですm(_ _)m
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