紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□ 第6層 【力】を使う者

 

庭園迷宮第5層【大墓地】を攻略したレミリアとフランたち一行は、大墓地でハメを外して大暴れしていた赤いリボンのアンナ、エメナスとローウィルを救出し、そのままの勢いで第6層へ向かうことにした。

 

「……ねぇ、お姉さま。」

「なにかしら、フラン?」

「本当にリビングアーマーと幽霊騎士たちを連れていかなくていいの?」

 

そう言いながらフランは第5層に置いてきたリビングアーマーと幽霊騎士たちを心配する。

いくら、テレスの程度の能力(形を変える程度の能力)とマキシーネの種族的(ワイルドハント)な力で従わせているとはいえ、紅魔館(こうまかん)の貴重な代替可能な戦力……狼女たちより弱いとはいえ、傷つき、倒れても無尽蔵に補充できる戦力だ。

 

「ええ、むしろ大墓地の監視に使った方がいいのよ。」

「マルガさんの監視付きで?」

「……大墓地のアンデッド召喚魔術は今でも稼働しているわ。出てきたアンデッドを叩くのにあのふたつの軍団は都合がいい。

マルガに監視を頼んだのも、マルガがアンデッド召喚魔術を無力化か……アンナは嫌がるだろうけど、その魔術陣を把握できる可能性があるのよ。」

 

レミリアの答えにフランは、ふーんと納得したようにこぼし、ふとレミリアに聞いてみることにしたのである。

 

「お姉さまはどっちが見えてるの?」

「そうねぇ……無力化が7割、掌握が2割、暴走が0.5割、紅魔館(こうまかん)が爆発するのが残りね。」

「なにがあったら爆発するの!?」

 

フランは何よりも爆発する可能性が気になってしまった。

しかしレミリアは「どうかしらねー?」とフランを揶揄う様にケラケラと笑いつつ、第六層へ繋がる階段を降り続けたのであった。

 

~~~~~

 

一方、第六層……『大森林』へと転移させられていたルージュは、愛用の大剣の切っ先を地面に刺し、柄から手を離しグーッと背伸びをした。

身体をほぐす為と言うこともあるだろうが、何よりこの大森林の爽やかな空気と天井から降り注ぐ魔法の光が、まるで太陽の光のようで、彼女にとっては心地の良い場所でもあったのだ。

 

そんな背伸びをするルージュの周りには、この大森林を根城であり人間で言う首都とし他階層をもその戦力を伸ばしていた勢力……黒いゴブリンとオークの群れが死体となって転がっていた。

その死体の山の中には、大型の個体や進化していた個体、ゴブリンロードやオークジェネラルといった支配個体さえも混ざっており……酷く臭う血の匂いが、唯一大森林の空気を汚染していた。

 

「……はぁ、せっかく()()()()に似たいい場所なのに。

汚したのは自分のはいえ、ちょっと嫌になるなぁ……。」

 

しょうがないと小さくつぶやくと、ルージュは指を1回鳴らす。

次の瞬間、ルージュの周りに転がっていた死体たちが一斉に青い炎に包まれる。

 

「地獄の炎に焼かれて消えろ……みたいな?」

 

誰もいないからか、ルージュは少しキメ顔でそう言った後、周りに誰かいないか注意深く探し……ホッと安心のため息をついた。

 

(さて、そろそろ……だったかな?)

「いつまで見てるの?」

 

ルージュはあえて視線を向けずにそう声を発した。

すると、どこからともなくあの蓄音機が出現し、パメラ・スカーレットの……随分と苦しそうな声が聞こえてきた。

 

『……なぜ、お前までもが……うぅぅっ』

「(あ、そこか。)随分苦しそうだね、私なんかに構ってる暇無いんじゃない?」

『黙れっ、私は……私はフランを産む前にお前たちを、お前だけでも始末しなければっ……』

「あっそう。説得は無駄ってこと……言っておくけれど、お前が私をどうしようと、その一切合切を壊して……そして、レミリアお嬢様に試練を与えるのは変わりないから。」

『だからこそぉっ!』

 

蓄音機からパメラ・スカーレットが吠える。

それと同時に、ルージュを取り囲むように多種多様な召喚魔術が出現し、黒いゴブリン、オーク、オーガ、ワイバーン、ゾンビ、スケルトン、リッチー、ゴーレムやガーゴイル、リビングアーマーが大勢召喚されルージュに敵対的な視線を向けた。

 

『死ね、偽りの赤染めの騎士(レッドライダー)ッ!!』

 

パメラの叫びとともに、パメラの手勢はルージュへと咆哮をあげ殺到した。

 

ーーーーー

 

さて、思い出して欲しい。

この庭園迷宮の戦いにおいて、最大の戦いであった青ざめた騎士(ペイルライダー)との戦いを……あの戦いでは暴走したブラウの正気を取り戻すために、紅魔館(こうまかん)の猛者をぶつけ、そのうえで偽物とはいえ白塗りの騎士(ホワイトライダー)であるプリムと、本物から名を奪った真っ黒な騎士(ブラックライダー)のノワール、神器たるグングニルを鍛えた”グングニル・エクリプス”を携えたレミリアの一団を持ってして数人の重傷者を生み出した。

察しの通り、これが庭園迷宮の中でこれほどの被害を払って勝った戦いはない。

―――何が言いたいか、と言うと……

 

ルージュはまるでダンスのようにステップをふむ。

大剣を片手で振り回しながら、楽しそうに、そして優雅に……そんな彼女彩るものは、パメラの手勢の血と肉と石と鉄……彼女が踊る曲は手製の悲鳴、彼女が踊るものは戦神の舞踊……そうして振り下ろされた大剣は虹色のオーラをもって敵を斬り裂いていた。

 

『バカな……なんだ、その力はっ?!』

「見て分からない?」

()()()()()()()聞いたのよッ!!』

 

蓄音機からパメラの悲鳴が響くが、それよりもパメラの手勢の悲鳴の方が際立つ。

パメラは自分の能力、”未来をすべて見る程度の能力”越しに見るルージュの大剣が恐ろしくてしか無かった。

それは決して、大剣が極彩色に輝いているからとか、ルージュの圧倒的な戦闘能力に怖気付いたとか、そんなものではなかった。

それよりも、もっと恐ろしいもの……そうでしかないと思われていた摂理が壊れるもの。

 

『なぜ……なぜお前は魔力だけでなく、()()()()使()()()ッ!?なぜ()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()!?

それだけではないッ!魔力以外に貴様に放つそのオーラはなんだッ!?』

「……言ったところで、お前はそれを調べることはできないのに?」

『ッ……生意気なッ』

 

ルージュの言葉にパメラは舌打ちをし、再び苦しそうな呻き声をあげる。

フランの出産、パメラ・スカーレットのタイムリミットはこれ以上延長することは出来なそうであった。

 

『ここまで、か……しかし、こうなる前に手は打ってある……精々苦しんで死んでしまえ!』

 

呪詛にもならない罵倒を最後に、パメラの蓄音機がガラガラと音を立てて自壊する。

長年放置していたゆえの次回だろうが、ルージュはその蓄音機が糸の切れた操り人形に……ひいては、パメラのこれからを暗示しているようにも見えた。余裕を浮かべる表情だが、その瞳にはどこか寂しさを浮かべていた。

だが、その寂しさを浮かべた瞳をかき消すように大きな足音と地響きが起こる。パメラの切り札のひとつ……第六層フロアボス、苔むすほど太古からエンシェントゴーレムが、木々を掻き分けながらあらわれた。

 

「■■■■■ーーーーーッ!!」

 

エンシェントゴーレムが、身体を震わせて鳴き声のような音を鳴らす。

森を荒らした罰なのか、それともパメラにより操られているかは不明だが、エンシェントゴーレムの目は敵意に塗れ、まっすぐルージュに向けられていた。

 

「……ん、この程度の強さなら私以外でも勝てそう。

でも―――邪魔だから斬るね。」

 

エンシェントゴーレムを見上げながら、ルージュは大剣を両手で構え―――

 

エンシェントゴーレムは何も出来ずにただ、真っ二つになった。

 

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