紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
庭園迷宮、第7層。
そこは、パメラ・スカーレットが手がけた、最も新しい庭園迷宮の最深部。
石造りで荘厳な装飾が施され、火あぶりの処刑台のように棺桶が置かれた、
その部屋につながる大扉は固く閉ざされており、そして門番のように赤く黄金の装飾が施された鎧が大剣の切っ先を地面に突き刺し、杖のように柄頭に手を置いて佇んでいた。
誰もいない空間で、ただ目立つその鎧だが、階段から誰かが下りてくる気配を察知するとその鎧は埃を振り落としながら動き始め、大剣を地面から引き、階段を見据え始める。
鎧、いや、リビングアーマーは大剣を構え、魔術で動かされているとはいえ、重苦しい威圧を放ち始める。
階段を下りてきたのは、ルージュを引き連れたレミリアとフランの二人だった。
ルージュとフランがリビングアーマーに気づき、警戒を強めるが……レミリアが二人を落ち着かせ、リビングアーマーに近づいてゆく。
止められたとはいえ、相手は剣を構えたリビングアーマーだ。ルージュとフランは冷や汗を流しながら、赤いリビングアーマーをにらんでいた。
……だが、しかし。
「……っ? レミリアお姉さまっ、これって……?」
「フラン、庭園迷宮の攻略を始めようとして、パメラがみんなを飛ばしたとき、最後の階層に待ち構えているボスをなんて言ったか、覚えているかしら?」
「へっ?……えーっと……あっ。」
フランはその時のことを思い出し、パメラの発言でこの鎧をなんて言っていたのか思い出した。
そして、そんなリビングアーマーが退き、武器を収めたということは……。
「お父様ったら、私たちのこと大好き過ぎない?」
フランがコロンとしたかわいらしい笑みを浮かべながらうっすらと涙を浮かべる。
「ええ、そうね。お父様は、私たちのことが大好きだもの。」
レミリアはフランの笑顔に似た、けれど少し違う大人の笑みを浮かべ、大扉に手をかけたのだった。
自分の持つ能力の力で、過去を覗きながら。
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「はぁ……はぁ……くっ、おなかが……痛いっ。」
過去の庭園迷宮。その6層たる大森林を一人のおなかの大きな吸血鬼がよろよろと進んでいた。
その吸血鬼の名は、パメラ・スカーレット。能力たる”未来をすべて知る程度の能力”を使い、自分が望む未来にしようと、未来のレミリアたちに暗躍を仕掛け、つい先ほどまでその準備にいそしんでいた。
しかし、フランドールを妊娠しながらの準備は、思ったよりもうまくいかず、フランドールが早産なのか何度も陣痛が始まって、それを魔術で抑えていたものの……今回ばかりは、もう止められそうになかったのである。
「はやく、はやく……もどって、フランを……産んであげなきゃ」
木に手をつき、息を整えながら庭園迷宮の出口に向かって歩くパメラ。
その足取りでは、絶対に間に合わないと、頭では理解していても……庭園迷宮は魔物や魔獣が跋扈する危険地帯だ。こんなところで産んでしまっては、産後疲れの自分なら死んでもかまわないが、フランドールは格好の餌食となり……無残にも食われてしまうだろう。
レミリアとフランの母として、そして緋色の公爵の妻として……それだけは避けたかったのである。
(……たとえ、私が死んだって、二人を……二人を守らなきゃ。)
グッと奥歯をかみしめて一歩、一歩確実に進むパメラ。
そんなパメラにとある声が聞こえてきた。
「パメラー!返事をしておくれー!!」
「……ラウ、ル?」
パメラは一瞬、頭が追い付かなかった。
ラウルは、スカーレット系と呼ばれる吸血鬼の血筋の長だ。当然、その仕事は膨大……妻たるパメラの出産にも立ち会えぬほど、多忙で、そして恨みを持たれている。
けれど、今回は来た……その違和感が、パメラの頭の片隅で、警鐘を鳴らす。
(……なんて、私はラウルを警戒しているの?)
「ラウル!私は、ここよ!!」
「……っ!パメラ、だいじょう……破水してるじゃないか!!」
一瞬、頭に浮かんだ警戒を振り払い、ラウルがわかるように大声を上げる。
ラウルはその声を聞きつけ、駆け寄り、そして状況を瞬時に理解しパメラを抱き上げた。
「すぐに戻るから、安心してくれ!!」
「……うん。」
これほどまで、安心できたことはいつ以来だろうか。
パメラはそう考えながら、ホロリと、パメラの目から涙がこぼれた。
ラウルの迅速な行動によって、パメラは無事に私室に戻ることができ、そして出産が始まった。
ラウルはウォルターに準備をさせ、自ら赤子を取り上げようと奮闘する。
パメラもまた、そんなラウルの姿を見て、元気な子を、フランドールを無事に産もうと息を整えた。
……どれほどの時間がたったことだろう、腹が空腹を訴え、のどが渇き始めたころ……ようやく、その子は生まれた。おぎゃぁ、おぎゃぁと元気な泣き声をあげる。宝石がぶら下がる枝のような翼の生えている女の子。
ラウルは、その子を慣れた手つきで産湯につけ、へその緒を切り、おくるみに包み、生まれた子を慎重にパメラのそばに運んだ。
「あぁ……フラン、フランドール……。産まれてきてくれて、ありがとう……。」
「パメラも、ありがとう……お疲れ様。」
「ラウル……ちょっと、疲れたから…………少しだけ、眠らせて?」
「……うん、大丈夫だよ。パメラの処置は、やっておくから。」
産後で疲れたのだろう、パメラはゆっくりと目を閉じる。
その様子を見たラウルは、浮かべていた微笑から一変、悲しげな表情を浮かべ、優しく、そっと、起こさないように自らの腹心であるウォルターにフランドールを預ける。
ウォルターは、その意図を知っていたのだろう……目を閉じ、小さく頷き、パメラとフランドールに昏睡魔術をかけた。
「……ぼっちゃま、これで奥様とお嬢様は、”何があっても”1時間は目が覚めないでしょう。」
「ぼっちゃまはやめてくれ……レミリアは?」
「先ほど、4階の奥に探索に出かけたのを、お見掛けしました。」
「…………。」
ラウルはそれを聞いて、顔を伏せる。
そして、懐から一つの小瓶を取り出した。十字架の付箋が張られた、水の入った小瓶。
それは、ラウルが襲撃してきた教会勢力から奪った、戦利品の一つ”聖水”であった。
「……ぼっちゃま、やはり」
「…………パメラを連れて、ここに戻る途中で、庭の迷宮にいろいろな魔術が仕組まれていた。
そして、ボクが、その魔力を間違うはずがない。」
「やはり……パメラ奥様は、」
「……未来の、ボクの娘の、言ったとおりだった。」
ラウルは、レミリアのような緋色の瞳を輝かせ、そうつぶやいた。
そして、懐から一通の手紙を取り出し、再び目を通した。
「この手紙は、確かにレミリアのものだ、あの子も書いたと言っていただろう?
だけど、字がきれいすぎる。あの子は、まだ3歳だ……神童だったとしても、こんなに字をきれいにかけるわけがない。」
「では、やはり……未来のレミリアお嬢様は、この時代のレミリアお嬢様を操って……?」
「…………それで、最悪の未来を回避できるんだ。」
「しかし、それでは!」
「ウォルター!!」
声を荒げる二人だが、パメラとフランは目を覚まさない。昏睡していれば、同然だろう。
「もう、決めたことだ。パメラは、パメラはここで、ボクが殺す。」
「……ぼっちゃま。」
「…………本当は、もっと早く、いや、パメラを吸血鬼にせず、あの時、人間のまま死なせてあげるべきだったんだ。」
罪を悔いるように、ラウルの瞳からボロボロと大粒の涙がこぼれだす。
走馬灯のように思い浮かぶのは、人間だったころの花のような笑顔を浮かべるパメラの姿……。
けれど、その記憶から目をそらし、聖水の蓋を開けた。
「パメラが、レミリアとフランを、スカーレットの未来を傷つけるというのなら……ボクは、いや、オレは迷わず、愛する妻だろうが殺す。」
「……このウォルター、たとえ地獄や煉獄であろうとあなた様についていきます。」
ウォルターの言葉に小さくうなづいた後、パメラの口元に聖水の口を寄せ……パメラに聖水を飲ませた。
最初は何の反応もなかった、だが次の瞬間体が拒絶反応を起こしたのだろう。ビクンと大きく体を振るわせる。
両手と両足は激しく痙攣し、体色が徐々に青白くなってゆく……だが、パメラは目を覚ませない。
……やがて、けいれんは収まり……指の先から、灰へと変わってゆく。
指先から、腕へ、腕から胴へ……やがて、ベッドの上には、人型に積もった灰だけが、残るのだった。
「……さようなら、ボクが愛した、ただ一人の女性よ。せめて、どうか……安らかに。」
ラウルは、灰の中から指輪だけを拾い上げ……静かにその部屋を後にするのだった。
と、いうわけで
”庭園迷宮の完全攻略”と”パメラ・スカーレットの死の真実”が明らかになりましたねw
そして、期限の通りキャラクター応募は、応募終了とさせていただきます!
応募してくださったキャラクターが登場するまでは、もうちょっと時間がかかりますが、それまでどうか首を長くしてお待ちいただけると幸いです!